【慈愛】信仰の一閃。 ~偽りの神を射抜く眼差し~
「神聖な静寂」に包まれた漆黒聖域。
バロールは、己の支配権が急速に剥がれ落ちていく感覚に、戦慄を覚えていた。
「巫女……だと? 神に仕える身でありながら、創世の理を司る我に牙を剥くというのか!」
バロールが絶叫し、神力が「復讐」という形を成す。
触れた者の過去を、絶望で塗り潰し、怨念の泥へと沈める概念の奔流。
「死ね! その清らかな魂ごと、我が憎悪に呑み込まれるがいい!」
激流となって押し寄せる闇。
だが、葵は一歩も引かず、静かに――愛しき人を想うように、まぶたを伏せた。
「……それが神の御業とでも? 愛を知らぬ孤独が、形を求めて歪んだだけ……」
葵の指先が、神刀『叢雲』の鍔をわずかに押し上げる。
「――失礼。レインへの祈りの時間ですので、手短に」
ただの「鞘走り」。
カチリ、と硬質な音が響く。
放たれた衝撃は、「概念」を真っ向から切り裂き、清らかな光へと浄化した。
「な……!? 我の『復讐』が……救われているだと……!?」
崩れ落ちるバロールの前に、葵は歩み寄る。
瞳には軽蔑も憎しみもなく、透き通る慈愛だけが宿っていた。
「跪きなさい。貴方が仕えるべきは……世界を照らす愛の温もりなのです」
葵がそっとバロールの額に手を触れる。
その瞬間、創世神としての傲慢な自我が、神々しさに耐えきれず、崩壊を始めた。
敗北ではなく、葵の「愛」に屈した瞬間だった。
「……ああ、これが……本物の、光……」
バロールの姿が光の粒子となって消えていく。
漆黒聖域が崩壊し、温かな「夜明け」の光が差し込んだ。
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