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獣人クリルの大陸見聞録  作者:
第一章 旅立ち
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第一話 狐尾人の里にて



 大陸の東、亜人の領域のさらに東の果て。

 豊かな自然と共生するように狐尾人(レナルド)の里は佇んでいる。

 中央から定期的に訪れる商隊が、ちょうど里に滞在しているところだった。



「……すごくきれい。これは何?」



「ふっ、聞いて驚くなよ?こいつはな、火鳥の羽だ。魔獣避けには最高なんだ」



 狐耳の少女の質問に小人(ハーフリング)の商人が得意げに答える。

 その答えに少女は薄黄色の瞳を一層輝かせる。



「……すごい。じゃあこれは?」



「そいつはドワーフ産の腕輪だな。まったく大した技術だよな。こんな綺麗な装飾見たことねえし、値も張りやがるから買い手も付きやしねえ」



 少女の表情は大きくは変わらないが、その尻尾のゆらめきは徐々に大きくなっていく。



「広いね、世界は。知らないことばっかり。"商人"は自由だね」



「……まあ、いいことばっかじゃねえよ。この間なんか――」



「おーい、ロビ!いつまで油売ってるんだ。荷出し手伝え!」



 話の途中、仲間の商人から声がかかる。ロビと呼ばれた小人の商人は苦い顔をした。



「へいへい……悪いな、また今度いろいろ話してやるよ」



「ううん、いつもありがと。外の話は楽しい。またそのうち来るよね?」



「いつも通り、イトゥアンで10日ぐらい滞在したら中央へ引き返す。帰りにまた寄らせてもらうさ」



「うん、じゃあね。行っていいよ」



「ああ、またな、クリル」



◆◆◆



 クリルは狐尾人(レナルド)族の里に生まれ、里で育った。大陸の東、ガンドレ山脈の東の端、豊かで厳しい自然の中で生きる術を学んできた。

 


 亜人と呼ばれる者の中には多くの種族が存在する。その種族の多くは独自の共同体を作り、自然の中で生きていく。

 狐尾人族もそんな種族の一つだった。

 


 外に出ていく者は少なく、外部との交流は辺境までわざわざ足を運ぶ物好きな商隊くらいのものだった。

 その多くない外を知る機会にクリルは毎度のように、世界の広さに心を躍らせた。



「本物の"旅人"だったらよかったのに」



 空飛ぶ鳥を眺めながら、そう呟いた。



◆◆◆



 コルコニアに生きる知性ある生物のほとんどはそれぞれ『役割』を与えられて生まれてくる。誰が何のために役割を与えるのか、それを知る者は誰もいない。

 だが、ほとんどの者は役割はこの世界の神によって与えられる贈り物であり、神に愛されている証、たった一つの何よりも尊ぶべき物であると認識していた。

 


 自身の役割は自ら自覚する以外に、他人から知る方法はないと言われている。

 クリルは10の年になる頃、自らの役割を知った。ほとんどの者は個体差はあるが6の年までには役割を自覚する。遅くまで役割のなかったクリルは両親を大いに心配させたのだが、ようやく知ったその役割は里を巻き込む火種となるのだった。



『旅人』



 それがクリルに与えられた役割。

 誰もが見たことも聞いたこともない役割だった。





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