その八
地球さんを三人がかりで休憩室まで運び込んでから、十五分ほどたった時だった。僕ら以外誰もいない休憩室に、マナーモードのバイブレーションが鳴り出した。
「あ……」
鳴っていたのは僕のスマホだった。見れば古都さんからだ。
「……出てあげてください」
出ていいものなのかと迷っていると、だいぶ調子を取り戻してきたらしい地球さんがか細い声で呟く。頷いてから、聞こえるようハンドフリーモードに切り替える。
『――――今すぐっ、三つ子山に来てください!!』
流れ出したのは、始めて聞く古都さんの叫び声だった。山の中を駆け下りているかのように、背後で激しい風切り音が響いている。打ちつける雨音も酷く、聞き取れるのが不思議なくらいだ。
『見えたんです、つけもの石に!』
「つけもの石?」
『UFOの大群が、頂上に押し寄せて、二人の、〝黒い異星人〟が――――!!』
「――――二人? どういうことですの!?」
『わかりません、でも見えたんです!! 〝緑の力〟で山が崩れて、〝赤い力〟が、森を焼き尽くして……空には、二つの異星が浮かんでました! とにかく来てください、万美さんたちが、大変なんですっ!!』
「……二つの、異星?」
呆然と聞き入るしかない僕らの耳に、ちゃりんと軽快な金属音が届いた。
気がつくと、ベンチで横になっていたはずの地球さんが、案内所のカウンターにもたれかかるようにして立っていた。
「――――急ぎましょう」
……今さらだけど、思い出したことがある。地球の〝星の力〟は、〝緑〟だったはずだ。




