その四
「――――じゃあ、あたしらはそろそろ……」
「そろそろおいとましますね」
魚々乃女さんの部屋で丸テーブルを囲み、二時間ほどたったところで、樹理さんと万美さんが立ち上がった。ついさっき大貫さんが注いでくれた紅茶を飲みつつ、首をかしげる一同。
「まだ五時前ですわよ。何か用事でもありまして?」
魚々乃女さんは、ちょっと焦ったような顔で引きとめようとする。
「悪いな、水やりの時間なんだ。三つ子山の花も気になるし」
「午後から天気が崩れるそうなので、外のお花を引っ込めないといけないんです」
「……そうでしたの。それなら、仕方ないですわね」
心の底から申し訳なさそうな顔をする万美さんに、魚々乃女さんも喰い下がることはなかった。急ぎ足で出て行った樹理さんに続き、甘いお菓子のような香りを残して万美さんが出ていく。
二時間ぶっ通しでテスト勉強していたとはいえ、なんだかんだ続いていた会話が途切れ、部屋は水を打ったように静かになった。
「まぁ、メアドも交換できましたし、良かったじゃないですか。もう、すっかり友達ですよ」
「そうですわね……」
魚々乃女さんは、どうにも浮かない顔だ。
「……でも、なんだか実感がわきませんわ」
「そんなモンじゃない?」
「距離を縮めるためにも、やはり遊園地は不可欠ですわねっ」
「それなんですけど、今度の三連休はダメかもしれませんよ?」
おずおずと告げると、魚々乃女さんが紅茶を飲む手を止めた。
「どうしてですの?」
「さっき万美さんも言ってましたけど、今日、天気が崩れるじゃないですか。予報だと、台風のせいでこのまましばらく雨が続いて、大荒れになるって」
「……それは、確かなんですの?」
「あぁ、ソいえばニュースで言ってたね。そんなようなこと」
「はい。テスト期間中は大丈夫なんですけど、その後の一週間は暴風警報が出て、遊園地どころじゃなくなるかもしれません」
「そんなっ!!」
釣り上げられた魚のように口をパクパクとさせる魚々乃女さん。今にも泡を吹きそうな勢いだった。
「で、でも! 今朝の予報では――――」
魚々乃女さんはすがるようにテレビの横のリモコンに飛びつき、電源ボタンを連打した。高そうな大型の薄型テレビに一瞬線が走り、すぐに画面がついた。
『――――北陸、関東平野部では晴れ間が広がるものの、それ以外の方面では午後から大荒れが予想されます。外出の際は細心の注意を払い、十分気をつけてください』
泡を吹き、意気消沈する魚々乃女さん。力なく崩れ落ち、机におでこをぶつけたまま動かなくなった。数秒後、天気予報が中断され、鋭いチャイムが耳に飛び込んできた。
『速報です。今日未明、三つ子山のふもとで、〝星の力〟が武力行使された形跡が発見され、警察は、たった今、付近の住民の目撃証言をもとに、火遊びをしていた二人組の男の身柄を拘束したと発表しました。現場からは使用済みの花火などが見つかっており……』
「トモカさん、これって!」




