その一
「――――カズマさんっ!!」
翌日の昼休み。弁当を食べ終えたタイミングで、魚々(ぎょぎょ)乃女さんが現れた。出入り口の戸を開け放って、古都さんの正面に座る目の前の僕に呼びかけてくる。教室中の男子の視線が背中に突き刺さっていたい。
「魚々乃女さん。……なんか、お久しぶりですね」
「お久しぶりですね、じゃありませんわ!」
波打つ青い長髪を振り乱し、魚々乃女さんはものすごい剣幕で迫ってくる。走ってきたのか、息が乱れていた。
「どったの?」
弁当をしまう手を止め、きょとんとした顔になるトモカさん。
「どうしたもこうしたもありません、私のお友達の件はどうなったんですの!?」
「……あぁ、アレね」
「そんなことも、ありましたね」
二人して目をそらし、机の下から上履きで僕の足をつんつんつついてくる。
……僕に相手をしろと?
「忘れたわけじゃ、ありませんわよね?」
一番近くにいるということもあってか、前かがみになってのぞきこんでくる、というか睨みつけてくる魚々乃女さん。髪から漂う海の香りで、心臓の鼓動が早まる。
「まっ、まさか。ほら、僕たちがいるじゃないですか……」
「ギョギョッ!?」
苦しい言いわけかと思いきや、魚々乃女さんは意表を突かれたように目を見開き、顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。
「……そ、それも、そうですわね。私としたことが……」
恥ずかしそうに膝をすり合わせ、もじもじする魚々乃女さん。
「いった!」
首をかしげていると、二人からすねを蹴られた。
「なんですかっ」
「ナンでもない」
「なんでもありません」
古都さんもトモカさんも、なぜか不機嫌そうだった。
「…………なんなんだよいったい」
「それはそうと、当たったんですの!」
「ナニが?」
「遊園地っ! ――――せっかくですので、今度の三連休、皆さんで行きましょう!!」
そう言って、魚々乃女さんは二人組ペアチケット計三枚を、机に叩きつけた。




