その四
現れたのは、泣きはらした顔の古都さんだった。
「こっ、古都さん?」
「……ふぇぇ、ひっぐ、ひっぐ。体育の先生に怒られて、消防署の人にも怒られて、お母さんにも怒られて。……ひっく、占いセット、取り上げられちゃいましたぁ……」
よく見ると、おでこに丸文字で『バカ』とかかれていた。……発想が小学生レベルだ。
「じゃ、じゃあ、もう占いはできないんですか?」
「はいぃ、今度勝手に使ったら、メル○リで売るって……」
現代っ子なお母さんだった。
泣きながら教科書やノートをカバンの中につめ、帰りの支度を済ませると、古都さんは教室を出て行った。
「……今日はっ、もう帰ります」
律義に出入り口の戸を閉めておじぎし、古都さんはしょんぼりした様子で帰って行った。
……自業自得とはいえ、さすがに不憫だった。
「……弱ったな。アイツにボヤ騒ぎの犯人を占ってもらうつもりだったんだが」
「いえ、一応、占ってはもらえたんですけど――――」
「そうなのか?」
「ただ……」
言い淀む僕の代わりに、トモカさんが答える。
「山奥の縄文杉ダッテ!」
「縄文杉?」
「今回の件とは、あまり関係なさそうですね」
万美さんは困ったように眉をひそめた。
「他には何か言ってませんでしたか?」
「さぁ……特に何も」
「あ、ソ言えば昨日、電話で緑の宇宙人がドウとかって」
「緑? そんな色のやつ、太陽系にいたっけか?」
首をかしげる樹理さん。他の二人も似たような反応だった。僕にも心当たりがない。
「……てコトは、緑の宇宙人は、異星人なのかな?」
「〝黒い異星人〟の次は、〝緑の異星人〟かよ」
「〝黒い異星人〟よりは、よっぽど現実的だと思いますけど」
「ソウだね、普通にその辺にいそう」
「でも、私見たことないです。緑の髪の方って」
万美さんの一言に、みんな行き詰ってしまった。確かに、僕も見たことがない。異星どころか、違う銀河にいるのかもしれなかった。そのとき、僕は教室の窓辺が赤い夕焼け色に染まっていることに気づいた。
「――――雨、やんできましたね」




