笑顔の破壊力 lv.98
「明日も王宮の見学に行きますか?」
「うーん、イチノの街に出たいな。ルルがイチノに無い物はほとんど無いって言ってたんだよね。ニライの中心街であれだけ賑わってるなら、イチノはすごそうだなって思ってたんだ」
イチノの街は、一度見てみたかった。
「私も行きたいと思っていました! 今度こそ、私に案内させてくださいね」
オルレアはすごく嬉しそうだ。
そこから、イチノの街について話した。
イチノで買えないものは無い、というのは事実のようだ。
沢山の店が立ち並び、国内外の沢山の人が訪れる。
サンチとシームが隣接している為、新鮮な食材で作る料理が堪能でき、賭博から観劇まで様々な娯楽が集まっているようだ。
「楽しそうな街だね。劇なんて観たことないから、全部落ち着いたらルルと三人で観に行こうよ」
「はい! 今から楽しみです!」
オルレアは満面の笑顔で言った。
すると、ドアをノックする音が聞こえた。
私がノックに答えると、扉が開いた。
「失礼致します」
ジェイナが部屋に入る。
「レイル様、オルレア様、夕食の準備が出来ました。こちらにお持ちする事も出来ますが、どうされますか?」
「王宮で食事なんてそうそう出来るものじゃないし、私は違う所で食べたいかな」
私が希望を伝えてからオルレアを見ると、すごく難しい顔をしている。
「部屋で食べない場合は、食堂での食事になるのでしょうか?」
オルレアが不安そうにきくと、ジェイナはにっこりと笑う。
「はい、その通りです。王宮で暮らす、ほとんどの方が食堂で食事をとられていますよ。お二方も、ぜひお越しください」
「そうですよね。では、アークさんも呼びましょう。人数は多い方が美味しいですから。アークさんに『思話』を繋げますので、少しお待ちください」
そう言うと、オルレアの表情が固まった。
珍しく私の意見を聞かずに、淡々と話を進めていく。
今、オルレアはアークと思話で話しているようだ。
食事に誘うだけだと思っていたが、話が盛り上がっているのか、長い。
その間も、オルレアの表情は固まりながらも、目だけがキョロキョロと動いている。
しばらくすると、オルレアの顔に表情が戻った。
「盛り上がってたみたいだね。アークは来れるの?」
「少し話したい事があったので……アークさんも今から食堂へ向かうそうです。私達も行きましょうか」
そう言うとオルレアは立ち上がった。
私も立ち上がり、部屋を出る。
「では、ご案内致します」
ジェイナは、私達の前を歩き出した。
私とオルレアはそれに続く。
部屋から食堂は近かったらしく、すぐに着いた。食堂の扉の前にはアークが立っている。
「早かったな。じゃあ入ろう」
アークはゆっくりと扉を開けていく。
「はあ……そうだよな」
完全に扉が開くと、中にはヨウリとユウニがいた。
二人は長方形の大きなテーブルに、向かい合い座っている。
二人がこちらを見た。
ヨウリの表情はパアッと明るくなり、ユウニは不機嫌そうな顔になる。
「やあ、君達も夕食を食べに来たんだね。レイル、また会えて嬉しいよ。僕の隣に座っておくれよ」
ヨウリが立ち上がり、こちらに向かってきた。
すると、アークが私の前に立つ。
「ヨウリ食事中だろ。早く座れよ」
「まだ何も運ばれてきていないさ。僕はレイルと話したいんだ、そこをどいてくれるか?」
「レイルは、君に会いに来た訳じゃなく、食事をしに来たんだ」
アークは、ヨウリの背中を押して椅子に座らせ、その隣に自身も座った。
「アーク……まさか君も……」
「ちょっと黙ってくれないか。レイルに聞こえるだろ」
「ははは。そうだね、レイルに意識されるのは僕だけで良い」
コソコソと話している。
「あの二人凄く仲が良いんだね。アークは私に、ヨウリ様の隣を譲りたくなかったみたい」
私はオルレアに耳打ちした。
「ふふふ、そうですね。お二人はすっごく仲良しなんですよ。なので、レイちゃんのお隣には私が座りますね」
オルレアは嬉しそうに言った。
オルレアがユウニの隣に座り、私はその隣に座った。
「アーク様が私の斜め前にいらっしゃる。何か話しかけるべき? でも話題を考えないといけないわ。アーク様が今好きなものは何なのでしょう。好きなもの……好きな女性……」
ユウニが、わざわざ身を乗り出し私をキッと睨んだ。
正直、その顔が可愛くて悪い気はしない。
オルレアが焦ったようにユウニを座らせる。
「ユウニ殿下、何もしていない方に対して攻撃的な態度を取るのはダメですよ! それに、レイちゃんは恋愛には全く興味が無いんです。男性に好かれても何の意味も無いので、安心してくださいね」
ユウニを説得しているはずのオルレアは、何故かヨウリとアークに目を向けて言った。
「僕は、いずれレイルと婚姻を結びたいと思っているけど、友として過ごす期間があるのも悪くはないね。お互いを深く知る事も必要だ」
「だめだ、婚姻は絶対に俺が阻止する。友達なら何も言わない。むしろ、レイルに友達は多い方が良い」
アークがヨウリを牽制し、友達でいる事をすすめている。
私がヨウリを拒否していると勘違いしているのかもしれない。だが、まだ恋愛をしたくない私にとって、アークのヨウリへの提案はありがたい。
「姉としてなら、あの娘を認めてあげても良い気がします。私はお兄様の恋路を全力で応援しましょう。私とアーク様の未来に必要な事なのです。早速作戦を立てなければなりません」
ユウニが早口でボソボソと呟いている。
「ではレイル様、オルレア様、何かございましたらお申し付けください」
ジェイナは、テーブルにフォークやナイフをセッティングし終えると、壁際に並んでいるメイド達の先頭に立った
すると、バンッと勢いよく扉が開く。
「お! レイルもいるじゃねえか……ゼン達は流石にいねえか。俺らも混ぜてくれよ」
「ジェットさん、遊びじゃないんですから混ぜてくれというのは変わっていますよ」
「イシス、変わっていますじゃなくて、変ですで良いんだろ?」
ジェット、イシス、グランが食堂にやってきた。
魔人も普通の食事をとれる事に驚いたが、特別な個体であるこの三人なら、おかしい事ではない。
ジェットがこちらに歩いてきて、私の隣にどかっと腰掛ける。
「よお、レイル元気そうじゃねえか。明日暇なら俺が付き合ってやるから遠慮なく言えよ」
「ジェットさん、それってデートの伺いですか?」
「伺いじゃなくてお誘いなんだろ? ジェットはレイルとデートがしたいんだろ?」
何やら、ジェットの何気ない言葉をイシスとグランが変に解釈している。
「ちちちちげえよ! な、何言ってんだ、ててめえら! ぶっ飛ばすぞ!」
ジェットは噛みに噛んだ。
「アーク、ジェットもレイルを?」
「それが、本人に自覚が無さそうなんだよな」
「じゃあ、刺激しないようにしようか」
ヨウリとアークがコソコソと話している。
アークはゼンともよくこんな風に話していた。
男の子とはこういうものなのかもしれない。




