笑顔の破壊力 lv.83
神力の威力を上げる方法。
何倍にも増幅させるには……何処かで聞いたような気がする。
思い出した。ルルと魔法の話をしていた時だ。
私にも魔力があるのか、魔法が使えるのかとルルに聞いた事がある。
『魔法とは、本来持っている魔力を変換・増幅して絞り出す物です。ご主人様は神力の濃度を相当……いえ、尋常じゃないレベルで下げないといけません。その修行は大変じゃすまないですよ!』
あの時ルルは私にそう言った。
『神力』を魔法に変換・増幅させると、威力がありすぎるらしい。
『普通に魔法を撃つだけでも、街を消滅させることができるでしょう』
そうルルから言われた時、私は自分が兵器なのだと自覚した。
だが……今の私には好都合だ。
「……あの、前にルルから、神力を魔法に変換して使うと、普通の魔法でも街を消滅させる事が出来るって言われたんですけど、それって、今使えますか?」
私の答えに、ゼンはニヤッと笑う。
「さすがはルル様、レイルちゃんに伝え済みか。今はただ、神力を飛ばしているだけの状態だけど、神力が魔力の最上位のものだとすると、それで魔法を使ったら、『魔法が通らない魔の者』にでも貫通する最強の攻撃になるよね」
ゼンがアークに向き直る。
「ここで提案なんだけど、レイルちゃんは魔法を使った事がないから、修行をするにしても、使えるようになるまで、どれだけかかるかがわからない。そこでアーク。君がレイルちゃんに精神操作をかけて、魔法を放つ事はできないかな?」
ゼンは、私とアークが力を合わせたら、神力で魔法を使う事ができると考えたらしい。
アークは、驚いた表情をした後、少し考える素振りを見せた。
「レイルの意識を残したまま、魔法を使うサポートをする事は出来そうです。レイルに魔法を使った事があると錯覚させて、自然に撃てるように誘導します」
そう言うと私と目を合わせる。
「怖いよな……俺がレイルの不安を取り除けるよう頑張るから、安心してくれ。精神操作が得意な事は知ってるだろ?」
アークは優しく笑った。
……精神操作が万能すぎる。
マイナスなイメージしかなかった能力だが、こんなにも多くの使い道があるのだと、驚いてばかりだ。
「へえ……精神操作が得意な勇者ねえ。面白いじゃないか。ゼン、その方法は安全なのかい?」
「ぼくが考えた中で、一番安全で一番確実に、数千の敵を一掃出来る方法だよ。アークの精神操作は、ぼくが自分の身体で体験して危険がない事は実証済みだからね」
ローズの質問に答えると、ゼンはニッコリと笑った。
安全に数千の敵を一掃……すごい言葉だ。
皆の能力を見せ合った日に、ゼンはアークから精神操作を受け、操られそうになっていた。
ゼンが手加減した事で、アークの精神操作が効いたと言っていたが、それでもゼンが安全を保障すると断言したのは、アークの能力を高く評価している証だろう。
魔法に関して、ゼンのお墨付きがある以上に安心できる事はない。
「私、やります。アークとゼン様を信じてるので、不安も無いです」
私はローズに宣言した。
「じゃあ奴らを倒すのは、アークとレイルちゃ……レイルに任せようか。始める前に、あたしの能力の説明をするから良く聞いておきなよ」
ローズは、ゴウカの大地が魔力を吸収してしまう問題を、どうやって解決するかの説明を始めた。
まず、ローズの能力は大きく分けて二つ。
『従属』と『浄化』らしい。
この正反対とも言える能力は、ローズ自身の二つの性格にピッタリ当てはまっている。
まず『従属』は、『自身と同じ種族の者のみ』を、何人でも、何体でも従わせることが出来る、今までで一番ヤバい能力だ。
五十年前、人間だったローズは魔物を従属させる事が出来ず、足掻いた末に砂に変わってしまったらしい。
二つ目の『浄化』は、指定した場所にある、あらゆる物を元の自然な状態に戻すことが出来る。
ゴウカの大地に『浄化』をかけ、砂に混ざる魔力を取り除き、ただの砂に戻すらしい。
砂の元の姿が人や植物等であっても、『浄化』により戻せるのは、砂としての自然な状態までのようだ。
狭い範囲であれば、半永久的に効果が続き、広範囲になると、効果がすぐに切れてしまう。
『浄化』で大地に含まれる魔力が無くなった状態で、大きな魔法を使い、吸収される前に魔法の痕跡を無くす。
「この規模の『浄化』は、試した事がないからなんとも言えないが、恐らくもって、二十数えられるかどうかってところだ」
ローズは残念そうに言った。
二十秒で、それも一撃で、ゴウカにいる『魔の者』を全て倒さなければならない。
アークとゼンが大丈夫だと言っているなら、成功するのだろう。
……私が魔法を使うところを、ルルに見せたかった。
アークが精神操作をかける事にも、私が魔法を使う事にもルルが反対して、物凄く揉めるのだろう。
そして最後は、アークとゼンに文句を言いながらも、『ご主人様を信じています!』と言って、私の意見を尊重してくれるのだ。
そんな事を考えると、顔が綻ぶ。
「どう? なんだかやれそうな気がしない? するよね? 準備ができたら二人のタイミングで始めてよ。ローズ達が吹き飛んだら大変だから、ダンも含めてぼくが結界で守るからね」
ゼンがこちらにワープしてきた。
目がキラキラと輝き、満面の笑みでこちらを見ている。
完全に楽しもうとしている顔だ。
「助かります。なんだか上手くいきそうな気がしてきました。アーク、ローズさんにずっと『従属』を使ってもらうのも悪いから、出来るだけ早く始めたいんだけどいける?」
「俺はすぐにでもいけるぞ。魔物の核の位置を知るための精神操作と違って、レイルの記憶に入り込む訳ではないから、そこまで違和感なくやれると思う」
アークはこちらを向き、優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ、アークの事信じてるから」
私が笑うと、アークは頷いた。
「じゃあアーク、レイル、頼んだよ」
ローズの声がすると、ゼンが指をパチンと鳴らし、皆を結界に入れた。
アークは私と目を合わせる。
「レイルいいか? 少しでも怖い、嫌だと思ったらすぐに言ってくれ。心の中で強く思うだけで良い。無理はするなよ」
私が眼鏡を外し、力強く頷くと、アークは私の後ろに立ち、肩に触れても良いかを聞いてから、両手で両肩に触れた。
私は目を閉じて、集中する。
すると、経験した事がない魔法の記憶が頭にパッと浮かんだ。
本でよく見る、血液のように身体中を流れる神力を、変換させ、増幅し、目に集中させて撃ち込むイメージ。
ここで気がついた。
私は、目以外から技を出せないようだ。
神力の流れを感じていると、魔法の放出口が目にしか無い事がわかる。
そして、魔法を使うには『笑う』必要がある。
やはり、この能力からは逃げられないらしい。
魔力には種類がある。
火、水、土、風、光、闇、大まかにはこれらの魔力属性があり、組み合わせて魔力を変換、増幅して魔法を放つ事ができる。
神力はどれにも属さず、どれにでもなれる。
神力は魔力ではないため、神力を変換した魔法であれば、魔人に効くようだ。
となると、第一に考えないといけない事は、目から放った時、一番変じゃない属性はどれか……だ。




