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笑顔の破壊力が物理的な破壊力!  作者: ぽこむらとりゆ


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笑顔の破壊力 lv.37

「先程は、大神官の娯楽のために、ご主人様の神力を見せるなどと言う、バカみたいな提案をお断りしましたが、事態は深刻です。出来る事はした方が良いかと思います」


 ルルは真剣な表情をしている。


「バカみたいな提案……」


 ゼンが小さな声で言った。


 各々使える技を見せ合う。というのは良いかもしれない。


 戦場で初めて見ることになった時に、思っていたのと違い、連携が取りにくい可能性もある。


「それは良いね。でも、どこか良い場所あるかな? 私の家なら神力(しんりょく)を通さないけど、結界を張るにも、剣を振るにも狭いよね」


 私が言うと、


「それならここの大広間でやれば良いんだよ。 オルレアが結界を張ってその中でするなら問題ないでしょ?」


 ゼンが、目を輝かせて言った。


 ワクワクを隠しきれないようで、今にも飛び跳ねそうな声色だ。


 ニライの神殿は、イチノの大神殿程では無いのだろうが、大きな建物だ。


 神殿に入ってすぐにある、大広間も相当な広さだったが、オルレアが結界を張るにしてもまだ問題がある。


「神力はオルレアの結界じゃ防げないんじゃない?」


 私は気になる事を聞いた。


 神力は普通の魔法と違い、威力がおかしい。『聖女の結界』といえども、さすがに防げないのではないかと不安だ。


「大丈夫ですよ! 今、ここには聖剣を持った勇者がいますから! 遺跡から離れてしまってもまだ魔力は集め続けているはずです! 神力も例外ではないでしょう! なので、勇者に向かって思い切り撃ちましょう!」


 ルルはノリノリだ。


「ちょっとそれは、いくらなんでも……」


 と、焦るアークにゼンが近付き、何かを耳打ちした。


「やりましょう。レイル、俺に思い切り撃つんだぞ」


 何を言われたのだろうか。


「じゃあ、そろそろ移動しようか」


 ゼンがそう言って、指をパチンと鳴らすと、私達はゼンの部屋から大広間にワープしていた。


 ブレスレットを使うワープは、一瞬、浮遊感があるが、ゼンの魔法のワープは、気付いたらここにいた。という位にワープした感覚がない。


 ゼンは魔法使いとしては本当にすごいのだろう。


「では、結界を張りますね」


 オルレアはそう言うと、大広間の中央に立ち、目を瞑り、両手の指を組み、祈るようなポーズをした。


 すると、オルレアを中心にして、透き通った半円が大広間いっぱいに広がった。


 四角い天井に結界が当たり、隙間を埋めていく。


 結界の形を自在に変えられるとは驚きだ。


 それにしても、前に、植物たちの声を私に届けてくれた時にも思ったが、オルレアの魔法は本当に綺麗だ。


 聖女の名に相応しい能力。


「結界も張りましたし、私が見せた方が良い流れですね。他には治癒が得意なのですが、どなたかお怪我をされていたり……しませんね」


 オルレアは、周囲を見回して言った。


 神殿なのに病人がいないとは……。


 それを聞いたルルが、


「治癒能力は、聖女という称号をもっている時点で、見せてもらわなくても大丈夫ですので、下がってください」


 と冷たく言った。


 オルレアは、しょぼくれながら後ろに下がった。


「じゃあ次は勇者で良いですよ。剣技を見せてください」


 ルルは、素っ気なく言った。


「ルル、俺らに冷たくないか?」


 アークが言うと、


「聖女と勇者の能力はだいたい予想できるのでつまらないのですよ。まあ、勇者の『精神操作』に関しては少し興味がありますが」


 そう言ったルルは、小馬鹿にしたような表情だ。


「聖剣を振り回すだけじゃつまらないから、人形でも置こうか」


 ゼンがパチンと指を鳴らすと、オルレアが書いた魔物の絵と同じものが10体出て、床に等間隔に置かれた。


 本物の魔物より、オルレア画伯の描く魔物は、ヒョロヒョロしていてかわいらしい。


 大きさは、3ミールに統一されているようだ。


「じゃあ剣術からいくぞ」


 アークは聖剣を構えた。


 すると、アークの気配が消えた。聖剣の存在を物凄く感じる。


 「どうだ?」


 アークがこちらを見て言った。


 まだ何もしていないのに何を言って……。


 ドサッ!


 全ての人形が真っ二つに切られている。


 剣術が得意というのは、本当だったようだ。


 確か、間合いに入った敵を一瞬で斬る技が何かの本に載っていた。


 アークの場合は、何も見えない。ただ、聖剣の存在を感じたと思ったら終わっていた。


「すごいよ! アークがこんなに強いなんて知らなかった。私がいなくてもアークがいれば、今回の戦闘はいけるんじゃないかな」


 私は興奮気味に言った。


 アークは焦ったように、


「いや、レイルがいないとダメだ! 俺が守る……レイルに守られないように頑張るから! だから一緒に戦ってくれ」


 そう言ったアークは、捨てられた子犬のような目をしている。


 こういう時、俺1人で大丈夫だ、と言ってかっこつけるものでは無いのか。


 何か理由があるのかもしれない。


「わかった。私がどれくらい使い物になるかわからないから、アークの活躍に期待してる」


 そう言って私は笑った。

 

「絶対に活躍する!」


 アークが叫んだ。


「うるさいですよ。勇者。次は『精神操作』ですね。誰にかけますか? ルルにはきかないので、ご主人様以外が受けてください」


 ルルは、当たり前のように私を省いた。


 ここでゼンが、


「オルレアには酷だろうから、ぼくが受けるよ。ぼくを動かせたら君の実力は本物だ」


 そういうと、ニヤリと笑った。


「では、いかせてもらいます」


 アークはゼンに向かって手を伸ばした。


 しばらくすると、


「……うっ。いいねアーク。さすがは勇者だ」


 ゼンが、少し苦しそうな声を上げた。


 はたから見ていると何が起きているかわからない。


 アークとゼンには5ミール程の距離があり、ただ、アークがゼンに向かって両手を上げ、手の平を向けているだけだ。


 しばらく膠着状態が続き、


「どうだ……レイ……ル。すご……いだ……ろ」


 ゼンが苦しそうに言った。


 そこで、ゼンが指をパチンッと鳴らすと、何かに弾かれたように、アークの手がおりた。


「まさかここまでやるとは思わなかったよ。ただ、ぼくは精神操作にかからない様にもできるんだ。君の力を見るために、あえて、人に使うと精神を破壊してしまうくらいまでの力を引き出してもらった。君の才能はすごいよ。誇って良い」


 ゼンからのお墨付きだ。アークは精神操作において、相当な実力があるらしい。


 アークじゃなければ距離を置きたいような能力だが、味方にいると心強い。


「ありがとうございます。剣術も、精神操作もこんなに強く無かったはずなんだけどな。特に剣術は自分が自分じゃないみたいに、素早さと威力が上がっていた」


 アークが困惑しながら言った。


 これにルルが答えた。


「当たり前じゃないですか! 勇者が持っているその聖剣は、ご主人様の神力を吸収した事により、本来の何倍もの威力を発揮する事ができるようになっています」


 そう言って、剣を振るフリをしてからルルは続けた。


「精神操作に関しても、聖剣を抜いた事により、勇者の魔力量が増え、その中にご主人様の神力も入っている事から、聖剣から供給される神力で魔法の威力も強化されていると考えられます」


 大気中に漂う魔力を聖剣が吸収し、聖剣の魔力をアークが吸収しているらしい。


 そして、その中に私の神力も含まれている。実質、アークは神力の使い手になったようだ。


 このシステムなら、魔法でのバトルの定番『魔力切れ』とは無縁だろう。


 ルルの話を聞いて、アークの顔が赤くなった。


「俺の中に、レイルの力が……」


 アークが呟いた。


 それを聞いたオルレアが、


「アークさん。変な事考えないで下さいね。神力は確かにレイちゃんの力ですが、レイちゃんの一部ではないですから。魔力を分けてもらう感覚であるということをお忘れなく」


 そう言うと、


「わかってるよ! 変な事ってなんだよ。別に何も考えてないからな!」


 アークは顔を真っ赤にして動揺している。


「君たちは本当に良いね。1日中見ていたいよ」


 ゼンが笑いながら言った。


「では、最後にご主人様。能力を見せていただいても良いですか?」


 ルルがこちらを向いて言った。


 それを聞いたアークが、


「よし。俺がレイルの笑顔……いや、神力を受け止めるから、遠慮せずに思いっきり撃ってくれ」


 そう言うと、少し離れてから聖剣をこちらに向け、構えた。



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