第5話 香りが告げる真実
翌日、紗那は再び宴会場に足を踏み入れた。
昨日の香炉の違和感――微かに酸っぱい匂い――は、黒幕の仕掛けを示す重要な手がかりだった。
「今日は絶対に見逃さない」
紗那は心を引き締め、香りに全神経を集中させた。
宴が始まり、後宮の部屋は華やかで甘い香りに包まれる。
しかし紗那の鼻は、昨日と同じ微妙な違和感を捉えていた。
その香りは、宴に招かれたある侍女の衣にわずかに移っている。
「……ここから匂いが始まっている」
紗那はその侍女に近づき、声をかける。
「少し、香の調合を見せてもらえますか?」
侍女は驚きつつも、紗那の穏やかな目を見て、包まれた香料の袋を差し出した。
紗那は手袋越しに香料を確かめ、微かな変化に気づく。
「この香粉……微量の酸味は、炭や香木ではなく、香油の混入によるものだわ」
紗那は宴会場の香炉に香油の香りをたどり、誰が香を操作したかを見抜いた。
すると、部屋の片隅にいる侍女長の視線が少しだけ変わったのを感じた。
「……黒幕は、香料を管理する上層部の誰か」
紗那は静かに心の中で推理をまとめる。
香を操作したのは下働きではなく、后妃や宮廷の権力を揺るがせるために動いた人物。
紗那は香炉の煙に目を凝らし、微かな香りの違いから黒幕の行動パターンを割り出した。
宴が終わる頃、紗那は小さく笑う。
「香りは、真実を教えてくれる」
後宮に戻った紗那は、香炉の匂いと煙を頼りに、事件の全体像を整理した。
誰かが后妃を狙って香を操作しようとしたが、紗那が気づいたことで大事には至らなかった。
そして、黒幕の存在もほのめかされた――次の事件で、紗那は必ず正体を突き止めるだろう。
香りの迷宮の中で、紗那の心は少しずつ、しかし確実に強くなっていた。
香りが告げる真実を信じ、少女は今日も宮廷の謎に挑む――。
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