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【WEB版】エレメントエンゲージ ―精霊王の寵姫たち―【第1巻発売中/第6部まで完結】  作者: 雨宮ソウスケ
第1部

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第29話 そうして彼の旅路は続く

 夕暮れ時。

 ガサガサガサ……。

 ライドは繁みをかき分けていた。

 かなり深い繁みだ。丈夫な枝葉は魔剣で切断する。

 もはや獣道でもない場所だった。

 しかしながら、ここはあえて強引に突き進む。

 繁みのすぐ向こう側に街道がもう見えていたからだ。

 そうして、ライドは随分と長かった森を抜けた。


(やっとだな)


 肩についた木の葉を軽くはたいて払う。

 夕日が眩しかった。

 ようやく辿り着いた街道は、紅く染まっていた。

 街道といっても、石畳で舗装されたような道ではない。

 剥き出しの地面をただ整地した程度の道だ。

 けれども、森の中を進むよりは遥かに歩きやすい道だった。


「さてと」


 ライドは街道を見やる。

 出た道は一本道だった。行き先は左右にある。

 左側はシンドラットに続く道だった。


「向こうはシンドラットか。なら行く先はこっちだな」


 ライドは右側に目をやった。

 右側の道は少し進んだところで分かれていた。


(……分かれ道か)


 はてさて。

 どちらを選ぶべきか。

 どちらに進んでも国境の街に辿り着くはずだ。

 従って、ここでの選択は次に訪れる国を決めるということだった。

 ライドはとりあえず分かれ道のところまで進んだ。

 そこで愛用の魔剣を腰から外した。


 その場で立てる。

 グラリと魔剣が傾いた。

 魔剣は右側の道へと倒れた。


「……こっちか」


 右側の道を見据えてライドは呟く。


「こっちの国境の先は確か『ラスラトラス王国』だったか」


 貿易が盛んな海岸沿いにある小国だと記憶していた。

 所属する街の数は少ないが、王都が大規模な港町らしい。

 そのまま海に出てみるのもいいかしれない。

 ダグとソフィアは、南方大陸にある国に腰を落ち着けたと聞いている。

 ガラサスは東方大陸に帰郷した。

 これを機会に彼らに会いに行くのも良さそうだ。

 ティアとレイが、今どこ辺りを冒険しているのか聞けるかも知れない。

 果たして二人はどこにいるのか。

 最大規模の広大さを誇る中央大陸にいるのだろうか。

 それとも高ランクのダンジョンが多いという話の北方大陸だろうか。

 ダグたちと違って、二人の所在は不明だった。

 ダグたちと再会した後は、ティアたちの行方を探してみたい。


 ティアは仲間であることだけではなく、心から愛した女性である。

 自分でも未練がましいとは思うが、今もその想いはある。店の経営と子育てで忙しかったこともあるが、未だ独身であることに彼女が無関係とは決して言えない。


 そして、レイはライドの可愛い弟分だった。

 意外と泣き虫で暴走してばかりの手の焼ける弟だった。

 しかしながら、手間がかかる弟ほど可愛いものなのである。 


 ティアは、きっとあの頃よりもさらに綺麗に。

 レイは凛々しい青年に成長しているに違いない。

 二人にも是非会いたかった。


(そうだな。本当に海を渡るのもいいかもしれない)


 ライドは心惹かれた。

 いずれにせよ、行き先は決まった。

 ライドは魔剣を拾い上げて、再び腰に差した。

 そして右側の道を進んでいく。

 街道には、人の姿も行商の馬車の姿もない。

 森沿いにただ長い道だけが続いていた。


「これはいささか寂しいな」


 ライドは思う。

 特にグラフ王国では常にアロが傍にいたので尚更そう感じる。


「冒険者にはやはり仲間が必要だな」


 改めて思う。

 悠久の風(シルフォルニア)に所属していた時は寂しいと感じることなどなかった。

 マキータ国でアレスたちと行動を共にしていた時もだ。

 まあ、若い彼ら相手には少しばかり引率者気分にもなったが、楽しいものだった。

 つくづく仲間とは有り難くあり、大切なものだと実感していた。

 当てもない旅。いわゆる傷心旅行。

 そのため、あえてソロで行動していたが、方針を改めてもいいかもしれない。


「……うん。そうだな」


 おもむろにライドは足を止めた。

 周囲に人影や馬車がないことを再度確認する。

 そうして呟いた。


雷王獣(シクス=マティス)


 直後、雷雲もなく、ライドの後ろにて巨大な落雷が起こる。

 そして雷の柱の中から、白い体毛の四足獣が姿をのっそりと現した。

 六合(シクス)の第九階位相当の精霊魔法。

 ――雷獣バチモフである。


『バウっ!』


 と、バチモフは元気に吠えた。

 長い尾もブンブンと振っている。


「バチモフ」


 ライドはバチモフの頭を撫でた。


「お前がオレの仲間になってくれるか?」


『バウっ!』


 バチモフは再び元気よく吠えた。

 快く承諾してくれたようだ。

 しかし、少し問題はある。


「お前はかなりデカいからな。そこはどうしたものかな……」


 バチモフの体躯は牛ほどもある。

 ずんぐりむっくりとしたモフモフの体に、愛嬌のある顔をしているのだが、この大きさでは魔獣と誤解されてもおかしくない。このまま街道を一緒に歩くのは問題である。

 そもそも連れて街に入るのも問題だろう。

 犬や狼といった動物を訓練して相棒にしている冒険者はいるが、流石にこのサイズは見たこともなければ、聞いたこともない。

 中央や北方大陸では小型魔獣を調教して戦力にする『調教師』と呼ばれる職業があると噂で聞いたことがあるが、少なくともこの西方大陸では見たことがなかった。

 ライドが「う~ん……」と頭を悩ませた時だった。


『バウっ! バウっ!』


 バチモフが吠えた。

 途端、バチモフの体がみるみる縮小されていった。

 ライドは「え?」と目を剥いた。

 わずか数秒ほどで、バチモフのサイズは劇的に縮んでしまった。

 それでも大型犬よりも結構大きいのだが、これならどうにか『少し珍しい犬種』で押し通せそうなサイズだった。


 しかし、それにしても――。


「お前、そんなことまで出来たのか……」


 ライドはかなり驚いていた。

 創造者であるライドも初めて見る能力である。

 もしかすると、必要に応じてたった今手に入れた能力なのかも知れない。

 まあ、流石にバチモフも喋ることまでは出来ないので確認しようはないのだが。

 バチモフは尾を振って『バウっ!』と吠えるだけだった。


「お前って本当に何なんだろうな……」


 腕を組んで、思わずそんな台詞を呟くライド。

 相も変わらず摩訶不思議な存在であるバチモフだった。

 ともあれ、これで旅の相棒は出来た。

 ライドは歩き出す。

 バチモフは尾を振って、ライドに並んで走り出した。

 夕日が、一人と一頭の影を長く伸ばした。

 


 風の吹くまま。

 気の向くまま。

 ライド=ブルックスの旅路は続くのであった。




 第1部〈了〉


読者のみなさま!

本作を第1部まで読んでいただき、誠にありがとうございます!


しばらくは更新が止まりますが、第1部以降も基本的に別作品との執筆のローテーションを組んで続けたいと考えております。


さて。少しあとがきを。

主人公をときどきぐらいには存在感を示しつつも、あえてほとんど空気にしてみようと試みて執筆しはじめた本作。

ふと気付けば、第1部がほぼほぼ丸ごとプロローグになってしまいました(;´Д`)


裏のサブタイトルを付けるのだったら、ハンター放出回です(笑)

現在、三体のハンターが解放されました。(■_■)(■_■)(■_■)

潜在的にはさらに二体追加かも。(■_■)(■_■)

(※色々としくじりまくった結果、謎の仮面剣士にクラスチェンジした彼女だけはハンターというよりも、ドローンみたいなサポートメンバーっぽい扱いなので除外中)


これだけはぶっちゃけた話、第2部も確実にハンター……もといヒロインが増えます!

傷心旅行でありつつも、それなりに自由でけっこう旅を楽しんでいるライドは、果たしていつまで呑気で優雅で気ままなお一人さま旅が続けられるのか(笑)



そして少しでも面白いな、続きを読んでみたいなと思って下さった方々!

感想やブクマ、『★』評価で応援していただけると、とても嬉しいです! 

読んでくださった証でPVが増えていくことは嬉しいですが、やはりブクマや『★』評価は特に大きな活力になります! もちろん、レビューも大歓迎です!

作者は大喜びします! 大いに執筆の励みになります!

感想はほとんど返信が出来ていなくて申し訳ありませんが、ちゃんと読ませて頂き、創作の参考と励みになっております!

今後とも本作にお付き合いしていただけるよう頑張っていきますので、これからも何卒よろしくお願いいたします!m(__)m


2025/12/1追記

【宣伝! HJ文庫さまより、第1巻発売中!】 

現在、第1巻はAmazonさまのKindle Unlimitedにて読み放題、無料公開中です!

イラストレーターは布施龍太さまになります!

布施さまの美麗なイラストに加えて、書下ろしなどもありますので、少しでも多くの方に読んで頂けると嬉しく思います!

(ちなみに個人的には二枚目のアロのイラストは、プロってすげえって思いました!)


Amazonさまの本作ページを下記に記載しております!


https://www.amazon.co.jp/dp/B0FNW8ZLMS/


改めて、本作を何卒よろしくお願いいたします!m(__)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎話楽しく拝読させていただいております。 嫁候補がどこまで増えるのか、今後の展開も楽しみです。
[一言] 「は!? 今の段階で完結マーク付いとる!?」 と思って見てみたら第一部了ですか……把握。 続き待ってます。 ……それはそれとして正直外したほうがいいと思うけどネ。
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