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7話・白銀のロングソード

 俺はエリンの尻を物理的に叩きつつ彼女と共にクラネの森林の奥にに進む。


「潰れろ」


 奥に向かう途中で出くわしたゴブリン達には容赦なく呪いスキル『レベル・ステータスオール1付与』を使って倒す。


(これはいいストレス発散になる)


 呪いスキルを使って敵のレベルを1にして討伐。この手段の効率が高く敵を倒しやすい。


(ドンドン倒していくか)


 俺は襲ってきたり通り道にいるゴブリン達をショートソードと風魔法を使って討伐。エリンは手出しせずに俺の戦闘が終わった後に喋り始めた。


「なあガスト、この辺のゴブリンってこんな簡単に倒せるもんなのか?」

「うーん。グリーンゴブリンのレベルは11〜15辺りで弱い分類に入るが、お前の方がレベルが高いから簡単に倒せるだけだろ」

「あ、そりゃそうか」


 エリンが俺の前で尻を振って誘惑してくるのでパチンと平手で叩く。


「!」

(コイツ)


 彼女は俺に尻を叩かれ慣れできたのか微動だにしない。俺は少しイラっとして次は鞭か棒でエリンの尻を叩きたくなった。


(このムカつきをどうするかだな)


 単純にエリンの尻を平手で叩き続けるのもありだがそれだけでは物足りなくなってきた。


(他のストレス発散はこの辺の魔物を殺すしか無いよな)


 俺は腹立ちもあるか虚しさも感じ始める。


「って、俺はこんな感情人間だっけ?」

「お前は感情人間だろ」

「そ、そうかのか?」

「少なくともアタシはそう見えるぜ」


 エリンの言葉を聞いて俺は考える。その時、エリンが何かに気づいたみたいで口を開く。


「おい、ガスト! 外見が違うゴブリンがいたぞ」

「え?」


 いきなり予想外の言葉を耳にした俺はエリンが見ている方に向く。


(なんだあいつは?)


 俺が見た方向にはさっきいたグリーンゴブリン。コイツよりも一回り体が大きくボロボロでは無い銀色のロングソードを持った奴がいた。


(まさか!)


 俺はデカゴブリン(仮名)に向かって〈能力鑑定〉を発動し相手のステータスを確認。


「アイツは上位種のボブゴブリンでレベルは25だ」

「上位種でレベル25……結構強そうだな」

「そうだな……って、ステータス的にお前と互角だ」

「ほう、それは骨がありそうだ」


 今までの戦闘でレベル27に上がったエリンとほぼ互角のステータス。


「面倒な相手だな」

「普通ならそうだな」

「まぁ、お前には関係ないから)


 エリンの言葉に俺は頷きある事を実行。


(呪いスキル『レベル・ステータスオール1付与』を使おう)


 正々堂々なんざ綺麗事は無視して俺はボブゴブリンに向かって『レベル・ステータスオール1付与』を発動。


(前と同じくボブゴブリンは動けなくなったな)


 ボブゴブリンは呪い受け、地面に倒れてもがき始めた。


「今だ!」


 俺はダッシュでボブゴブリンに近づき、手に持っているショートソードで相手の首元を斬りつける。


『ギャバァ!?』

「はい、終了」


 ボブゴブリンの断末魔を聞いた後、相手の体は紫色の煙に変わり魔石と素材が残った。


「うん? 銀色のロングソードと鞘も残ったか」

「あ、ガスト。このロングソードをもらってもいいか?」

「別にいいぞ」

「サンキュー」


 銀色の刀身に青色の宝石がハマっているロングソード。


(こんな綺麗なロングソードを持っているボブゴブリン……何か引っかかる)


 ボブゴブリンからドロップしたレア物ぽい銀色のロングソード。この白銀の剣はありがたく使わせてもらう。

 

「おお! カッコいいな」

「確かに見た目はいいな」

「この銀色のロングソードがドロップしてよかったぜ」

(喜んでくれてなりよりだ)


 今回手に入った銀色のロングソードを背中に背負い喜んでいるエリン。俺は彼女の面持ちを見て頷いた後に言葉を口にする。


「新しい武器も手に入ったしもっと奥に向かうぞ」

「だな! アタシも手に入った銀色のロングソードを試してみたいぜ」

「そうだろうな」


 エリンから予想通りの返答が返ってきたので俺は苦笑いを浮かべる。


(ん、なんだこの感覚は)


 今の俺はエリンといる事で嬉しいと思っている事に気づく。


(俺はエリンといるのが楽しいのか)


 昨日出会ったばかりのエリンを信じられるかは無理だけどなんか彼女を信じたくなる。


「なんだんだ?」

「ん? 何か言ったか?」

「いや……」


 その『なんか』に俺は悶々としつつエリンと共にクラネの森林の奥に進んでいく。


「しかしまぁ、さっきよりも敵のレベルが上がったな」

「そうか? アタシは楽に倒せているぜ」

「そりゃあ俺がレベルを下げているからだ」


 クラネの森林の深い地点まで来たみたいで通常のGoogleゴブリンでもレベルが20前後だ。


(レベルが上がっているな)


 この辺の魔物レベルなら学園に通っている学生ならサシで戦って倒せたら平均くらいにはなる。


「裏技を使って攻略しているみたいだ」

「呪いスキルがチートなだけだろ」

「まぁな」


 見つけたグリーンゴブリンや上位種のボブゴブリンに向かって片っ端から呪いスキル『レベル・ステータスオール1付与』を使ってステータスを下げて倒す。


(イージーモードみたいだな)


 流石に同じ事を繰り返すのは飽きてきた。俺は自分の能力がチートだと思っているとエリンが喋る。


「なんか暇だな」

「……俺もお前と一緒の事を思っていた」


 エリンも俺と同じことを思っていたみたいで暇だと口にした。俺はそう思いながら空を一回見上げた後に一言。


「そろそろ昼飯にするか」

「!? やったぜ!」


 空を見上げた時に太陽が真上にあったので俺はエリンと共に倒れている木の方に座る。


(この弁当一つ500Eか)


 なけなしなお金で購入した弁当を開き食べ始める。エリンは何か思ったのか質問してきた。


「そういえばこの森林の奥には何か強いやつがいるのか?」

「うーん、俺は行った事はないがボスが存在するみたいだぞ」

「ボス……なんか強そうだぜ」

「そりゃな」


 俺はサンドイッチを口に運びながら持っている情報をエリンに告げる。


「前に聞いた内容だとクラネの森林のボスはゴブリンキングらしいぞ」

「ゴブリンキングってどんなやつ?」

「あー、それは俺にもわからない」

「わからないんかい!」

 

 俺の返答に思わず突っ込んだエリン。彼女は微妙に呆れているみたいでサンドイッチを勢いよく口に含む。


「落ちこぼれの俺がボスと戦えるわけないから無駄な情報だと思ったんだよ!」

「まぁ、それを言われると言い返せない」

「だろ!」

 

 呪いスキル『レベル・ステータスオール1付与』を手に入れたがレベル5の雑魚である俺。


(能力の違いがありすぎるだろ)


 エリンはマイナススキルがなくなり俺からの能力付与も含めるとレベル38。そのため俺とエリンのレベルには大きな差ができた。


(奴隷契約してなかったら見捨てられる)


 普通に考えて雑魚で使い物にならない俺とチームを組んでも足手纏いにしかならない。


(今でも荷物持ちだからな……)


 俺は相手の立場ならそう思うと感じるが内心では納得できない。

 

「所詮は俺は何も変わらない雑魚だな」


 エリンがドンドン成長していく中、俺は何も変わらずに呪いスキルである『レベル・ステータスオール1付与』を使うだけだ。


(なんかな……)


 俺が魔物を倒しても『レベル固定』のマイナススキルからあるから何も変わらない。


「何にも変わらないな」

「うん? 何か言ったか?」

「いや、なんでもない」


 俺がポツリとつぶやいた言葉はエリンの耳にはどどかなかったみたいだ。


(無能な俺にはこのままがお似合いか)


 俺は空になった弁当箱を鞄にしまいながら次の事を考え始める。


「ここまできたらボスの能力を奪いたいな」

「そんな簡単に出来るのか?」

「それはやってみないとわからない」


 おそらくボスの能力は強力。俺はエリンにその事を伝えボスがいそうな場所に向かう事を決める。


「エリン、これからボスがいそうな所に向かうが大丈夫か?」

「もちろんだぜ!」


 弁当を食べ終わったエリンは俺の言葉を聞いてニッコリ笑って立ち上がった。俺達は昼休憩を終わらせてボスを探すために森林の奥深くに進む。


(ここか?)


 奥に向かっているいていると森林が開けた所に到着。中心部には俺の身長の倍はありそうな巨体で緑色の皮膚に尖った耳をした化け物を見つけた。


「なあガスト、あれがボスじゃないか?」

「あぁ、俺の能力鑑定でもゴブリンキング・レベル40と書かれているからアイツだな」

「よしいくぜ!」

「いや待て」


 俺は飛び出そうとするエリンを止める。


「なんで止めるんだよ」

「まだ呪いスキルを試してない」

「あー」


 今のやり取りで相手が気づいたかもしれないと思うが、ゴブリンキングは瞑想をしているのか目を瞑っていた。


(良かった)


 ゴブリンキングの変化のなさをみ見た俺は好機だと思い呪いスキルを発動。しかし『カキン』と音がして呪いスキル発動失敗が出た。


(なんだと!?)


 呪いスキルが失敗。その時、俺の頭にいろんな情報が入ってきた。


「がづ!」

「おい! 大丈夫か?」

「い、いや、大丈夫じゃない」


 俺はエリンの心配そうな声になんとか反応する。


(ぐっ)


 今の俺の頭の中にはよくわからないノイズが走っておりパニックになる。


(どうしようどうしよう!?)


 もはや俺は自分が何も考えているかわからなくなった。その時、中心部で瞑想をしていたゴブリンキングがいきなり目を開いた。


『グオォ!!』


 ゴブリンキングが立ち上がって傍らに置いていた大剣を手に取り空に向かって咆哮。


「ぐうう!」

「ちいぃ!」


 俺とエリンはゴブリンキングの咆哮を受けて耳を押させる。


「大音量すぎるだろ!」


 ゴブリンキングら咆哮が終わった後、コチラに振り向き鋭い目で睨みつけてきた。


「ぐっ、やるしかないな!」


 エリンが腰に装着している銀色のロングソードを引き抜き戦闘態勢に入る。


(なんだこのノイズ!)


 俺はノイズがおさまらずに蹲る。


「あ、あぁ」


 俺はゴブリンキングの咆哮とノイズの影響で何も出ない。それを知ってかエリンはゴブリンキングに向かって果敢に攻撃を仕掛けている。


「ガハッ!」


 エリンがゴブリンキングの攻撃を受けて地面を転がった。


(クソクソ!)


 俺は自分の無能さが重なり悔しさと辛さが混じり地面に拳を叩きつけた。


「俺には何もできないな!」


 ここで浮かぶのは『諦める』しかなかった。だが俺の『諦める』はエリンのおかげでいい意味で裏切られる事になった。


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