8話・ゴブリンキング
俺が何もできずに蹲っている時、エリンはゴブリンキングの攻撃を銀色のロングソードを使いなんとか捌いていた。
『グオォォ!』
「チッ、一撃一撃が重いぜ!」
ゴブリンキングの得物は大剣で大ぶりな攻撃が多い。そのため受けに回ると不利になのはエリンもわかっているみたいだ。
「まだなんとかなりそうだぜ!」
『ガァァ!』
余裕そうな表情を浮かべるエリンだが、ゴブリンキングとの能力差的に反撃する手段が限られている。
「つったく! ガストの呪いスキルが効かないのは想定外だぜ!」
『グオォ!?』
ゴブリンキングの振り下ろしを間一髪で回避したエリン。彼女は右手に持つ銀色のロングソードでゴブリンキングの足元を切りつけダメージを与えた。
「チッ、かすり傷しかならねーのかよ!」
『ガァ!?』
エリンは相手にダメージを与えた時に反応が遅れ、ゴブリンキングの蹴りをまともに喰う。
「ガハッ!」
「エリン! うぐっ、なんで俺は動けないんだ!」
蹴りを喰らったエリンは地面を転がるがすぐに起き上がる。しかし彼女は防具を装備しないので体の至る所にはアザができていた。
「もういい! 逃げるぞ!」
「それはできない!」
俺は無理矢理でも立ち上ってエリンと逃げようと思う。だが彼女はそれが嫌みたいでゴブリンキングを睨みつけた。
(なんでだよ!)
今動けないのは虚しくなるが一番はエリンが使えない俺を見捨てないかだ。
「主人の俺が死ねばお前は自由になれるのに……」
ゴブリンキングが俺を殺す。そうなればエリンの奴隷契約している相手がいなくなる。
(お前は自由になれるんだぞ!」
俺が死ねばエリンは自由になれる。その事を彼女は知っているはずなのになぜ戦うんだ?
(意味がわからない)
エリンはなぜか俺を守るために戦っているのでよくわからなかった。
「待っていろガスト! こんなボスはさっさと倒してやるぜ!」
「は? 何を言ってるんだお前は!」
殴られた唇から血を流し服は破れて痛々しい傷が見える。だけどエリンは辛い面持ちを浮かべずに戦い続けた。
(さっさと逃げろよ!)
俺はこの時、何故かイラつきの感情を覚えゴブリンキングを視野に収める。
(『レベル・ステータスオール1付与』!)
『付与失敗』
もう一度呪いスキルを使うがまた弾かれた。しかし俺は諦めずに何回も使う。
「効いてくれ!」
すると俺の祈りが届いたのかゴブリンキングの動きが徐々に悪くなってきた。
『グォ!?』
ゴブリンキングの動きが悪くなった時、エリンの横薙ぎが相手の右腕に直撃し切り裂く。
「コレで大剣を使いにくくなる!」
だがゴブリンキングは大剣を捨てて体術を使いエリンにカウンターを仕掛けた。
「その攻撃ならさっき見た」
ゴブリンキングの拳を紙一重で躱したエリン。彼女はジャストポジションで力のこもった反撃を繰り出す。
「くたばれ!!」
エリンの渾身の攻撃がゴブリンキングの土手っ腹に直撃。
「はあぁぁ!!」
さっきまで右手だけて持っていた銀色のロングソードを両手で持ち渾身の力で振り払った。
「トドメだ!」
エリンの斬り払いを受けたゴブリンキングは真っ二つに切断された。
『グオォ!?!?』
ゴブリンキングは残った上半身を使ってエリンに最後の抵抗を試みる。
「それは読めているぜ!」
エリンはすでにバックステップを踏んでおりゴブリンキングの攻撃する攻撃範囲にはいない。
(アイツすごいな!)
俺はゴブリンキングが地面に落ちる寸前、さっきから発動していた『レベル・ステータスオール1付与』のスキルに進歩があった。
『レベル・ステータスオール1付与がバージョン2(V2)になりました』
よくわからないわからないアナウンスを聞き。俺は効果を確認せずに死にかけのゴブリンキングに使用。
『討伐したボスの能力を奪いますか』
(勿論だ!)
俺はゴブリンキングのレベル・スキルを奪う事に成功。
「や、やった!」
俺がなんとか動けるようなったので起き上がる。
(ふう)
ゴブリンキングの体が紫色の煙になり魔石と素材に変化。後はボス攻略で出る宝箱が出現した。
(え、いきなり銀色を引き当てたのかよ)
ボスを倒した時に出てくる宝箱にはランクがあり銀色は超アタリの分類に入る。
(運がいいな)
俺は先に宝箱を開きたいが我慢してボロボロで動けないエリンの方に向かう。
「おい、大丈夫か?」
「あ、あぁ大丈夫だ」
俺は鞄に入っている回復ポーションを取り出しエリンに飲ませる。
「ふう、助かったぜ」
エリンが回復ポーションを飲みゴブリンキング戦で負った傷が少しずつ治っていく。
(コイツが生きていて良かった)
俺はホッとする気持ちを感じているとエリンは不安そうに喋り始めた。
「なあ、お前にとってアタシ必要か?」
「ん? 必要に決まってるだろ」
「……そう言ってくれてありがとうな」
なんか物語の感動の最終話みたいになっている。
(エリンとは昨日会ったばっかりだよな!)
しかもドラマティックな感動シーンかよ!と俺はそう考えてなんか呆れてきた。
「なんか焦って損した気持ちだ」
「いや、ゴブリンキングはやばい相手だろ」
「うーん、まぁそうだったな」
今回はエリンがいなかったら俺は死んでいた。そうなると復讐も出来ずに終わっていたので体が震える。
(そう考えるとエリンには感謝だな)
俺はエリンが無事なのを確認して少し離れた場所にある銀色の宝箱を開き中を覗く。
「これは……白銀の盾か」
銀色の宝箱の中に入っていたのは白銀のの盾で大きさ的にはそこそこ大きいカイトシールド。
(持ちにくいな)
それを見た俺は宝箱からカイトシールドを取り出しエリンの方に向かう。
「おお! めっちゃカッコいい盾だな」
「見た目はな……」
(結構重い)
宝箱から回収した銀色のカイトシールドをエリンに見せると本人はかなり喜んでいた。
(俺が今まで付き合った事のないタイプだな)
今まで見下されてきたり馬鹿にされてきた。他には何も出来ずに痛めつけられて虐げられた。
(だけどエリンは違うのか)
『マイナス感情』ばかりだった自分が今は『プラス感情』がある。それだけでも俺自身気持ちが軽くなった。
「でも俺は何もしてないな……」
「いや、ガストがいたからアタシは戦えたんだぜ」
「え? 俺がいなくてもお前はよかっただろ」
「それはどうかな?」
今のエリンならボスのゴブリンキング相手でも五分五分で戦えた。そんなやつがレベル5(固定)のマイナススキルを持つ俺がいるのか謎だ。
(なんでだ?)
しかも俺はさっきまで地面に倒れて足手纏いになっていた。
「いやなんで……」
「なんでと言われてもアタシがお前の奴隷だからだよ」
「それでも! お前は俺を見捨てて逃げれば自由になる事だって出来たはずだろ!」
契約内容は〈俺に危害を加えない〉〈俺の命令には従う〉の二つ。それ以外は何もしてないし『逃げるな』の命令もない。
(それなのにエリンがボロボロになってまで戦う意味がわからない)
俺は意味不明だと思っているとエリンがいきなり抱きついた。
「確かにお前を見捨てて逃げる事はできた! だがアタシはお前に助けられた恩を忘れたわけじゃないぜ」
「いやいや、そんなの無視すればいいだろ」
「悪いがアタシは馬鹿なんで無視出来ないんだよ!」
(コイツはバカだろ)
俺はエリンの言葉を聞いて真っ先に馬鹿、しかも彼女は大馬鹿だ。
「別にいいだろ馬鹿なんだから」
「それもそうか」
本人が開き直っているのか『馬鹿』と言っても笑っていた。
「それにお前も相当の馬鹿だろ」
「うぐっ、それを言われると弱い」
「だろ! アタシ達は馬鹿なんだよ」
俺は自分が今までやってきた行動。それを思い出して言葉に詰まっているとエリンは笑顔で頷いた。
(言い返せない)
俺はなんとも言えない雰囲気になったが得たものは大きいと思った。
「最悪が最高になったな」
「だろ!」
今まで使う事のなかった言葉『最高』が自然に出てきた。なので俺はエリンと共に動く事を決める。
(ん、あ……あぁ!?)
俺はこのタイミングである事を思い出した。それはコレからの運命に直結する事だ。
ーー
・ゴブリンキング(ステータス)
・能力(レベル40)
・筋力135
・耐久力128
・賢さ112
・精神力124
・素早さ105
〈スキル〉
・大剣術レベル3、体術レベル3、怪力レベル2、
・威圧レベル3
〈レアスキル〉
・筋力アップ、幸運
『レベル・ステータスオール1付与(V2〉』
・レベル・ステータスオール1付与(能力吸収)
・レベル・スキル付与(譲渡)
・ステルス機能(透明化)〈New〉




