27話・奥に向かう
あれから第2層の森林エリアで一通りクラスメイト達を探したが彼らの姿は見えなかった。
「なんでここまで見つからないんだ?」
もしかしてガセ情報か?と思って青髪イケメンの言葉を疑う。だが隣にいるエリンは何か気になっている事があるみたいでポツポツと言葉を口にした。
「見かる見つからないよりも人が見当たらなくないか?」
「それは、スタンビートの兆しを危険と思った奴らが入ってないだけだろ」
「そうか?」
天金の迷宮の出入り口には武装した戦闘職ぽい人達がたくさんいた。でも中に入ると生きている人間を一人も見ない。この時点でおかしく感じるがスタンビートの影響があるので、その事を考えるとまだ理解できる範囲だ。
(いや、そうじゃないな)
俺は自分が言った内容に疑念を持つが内容や分析まで出来ていない。そのためモンモンとなりながら考えているとエリンが暇そうに言葉を口にした。
「さっきも言ったけど馬鹿なアタシ達が色々考えても無駄だろ。それなら前に進もうぜ」
「……そうだな」
(ここで俺が考えて意味がないか)
さっきからイタチごっこみたいな事が続き。俺はその事で自分が学習をしていないと思い悲しくなる。
「色々考えてしまうのか仕方ないと思うぜ」
「あ、フォローありがとう」
「どういたしまして」
俺がお礼を言った時にエリンは嬉しそうに返答してくれた。その光景を見て俺は自分の心が軽くなったのを感じた。
(さてと改めて進むか)
未来なんてどうなるかわからない事を忘れていた。俺はその事に気づかせてくれたエリンに感謝しながら彼女と一緒に迷宮内部を進む。
そして階段を降りて第3層に到着しエリアを見渡す。
「うーん、この辺は渓流エリアか」
「少し離れた所に鹿みたいなやつがいるな」
「あ、アイツか」
渓流エリアに入った瞬間に見つけたのは大きなツノを持つ鹿っぽい魔物。
(ステータスはどれくらいだ?)
俺は鹿っぽい魔物に向かって『能力鑑定』を発動。映し見たステータス画面は〈フライングガゼット・レベル32〉だった。それを確認した俺は唖然とする。
(おいおい!? 中堅レベルの戦闘職の人達よりもレベルが上だな)
ステータス的にも高くて面倒な相手に見える。なのでどうするか迷っていると隣にいるエリンが動いた。
「とりあえず殺ってくる」
「あ、おい!」
左手の銀色の盾を構えて突撃を仕掛けるエリン。彼女の攻撃を探知したフライングガゼットはエリンの方に向き、自慢そうなツノを向けコチラも突進を仕掛ける。
「単調だぜ!」
エリンはフライングガゼットとぶつかる前に左にサイドステップを踏む。この時に腰からロングソートを引き抜き、通り過ぎようとしているフライングガゼット。コイツをエリンはロングソードで上から斬りつけた。
『ぎゃあん!?』
フライングガゼットがエリンに斬りつけられた事に悲鳴をあげる。だがエリンのロングソードはフライングガゼットの胴体を真っ二つにした。そして相手は紫色の煙をあげて魔石と素材に変化した。
「ガスト、魔石と素材の回収頼むぜ」
「あ、あぁ」
エリンの可憐な剣捌きに魅了されていた俺は固まる。だが彼女は余裕そうに腰の鞘にロングソードを戻した後、ニッコリとした面持ちでコチラに振り向く。その姿はまるで凛とした女騎士だと思った。
(って、俺は何を考えているんだ?)
俺達がいる所は天金の迷宮で中には危険な魔物がウヨウヨしている地点だ。俺一人なら速攻でぶち殺されるところなのにエリンのお陰でここまで来られている。
(他人視点からすると俺はエリンに寄生している様なもんだな)
よくよく考えるとエリンは俺の奴隷。でも今は対等な関係になっていると思い嬉しく感じる。そう思って魔石と素材をアイテムバックの中に回収し立ち上がる。するとエリンは嬉しそうな面持ちから一転、いきなり険しくなった。
「ガスト、少し離れた場所で戦闘が起こっているぜ」
「……それって!」
「いや、お前が言っている奴らかは分からない」
エリンの言葉を聞いた俺は驚きながら頷き、次の動きを口にする。
「行くか」
「あぁ、ガストはアタシの後ろにいろよ」
「当たり前だろ! 俺はこんなところで死にたくないからな」
「お前、めっちゃダサいぞ」
「……言ってて思った」
自分でもなんでこんな悲しい事を言ったのかがわからない。だがそんな建前を気にしている場合ではないので俺は改めてしゃべる。
「進むぞ」
「だな」
エリンがコチラの指示に頷いたのを確認。俺はエリンと共に戦闘が起こっている地点に向かう。
「あそこだ!」
能力の差があるので俺はエリンに背負ってもらい戦闘が起きている地点に到着。音がする方を見てみるとさまざまな装備をした戦闘職の人達が魔物に囲まれていた。
「なあ、あの中にお前が知っている顔はるあるか?」
「……いや、ないな」
囲まれてボロボロになっている戦闘職の人達。彼らの顔を見るがクラスメイト達ではない。
(人違いか)
クラスメイト達がいると思ってきたから外れた。そう思った俺は吐息が出そうになる。しかしこの状態はある意味好機だと思い俺はエリンにある指示を出す。
「エリン、お前ならあの人達をボコボコにしている魔物くらい余裕で倒せるよな」
「もちろん倒せるぜ」
「なら倒してきてもらってもいいか?」
「別にいいが、助けてもアタシ達には得がないだろ」
「いやあるぞ」
俺はあの人達に聞きたい事があるのでエリンに魔物討伐を頼み。彼女は渋い表情をしながら腰のロングソードを引き抜き、魔物の群れに突っ込んだ。
「おい! 手助けはいるか?」
「!? あ、お願いします!」
魔物の横取りにならない様にエリンが相手方に確認を取る。すると相手方が承認したのでエリンは30匹ほどいる魔物。コイツらに向かって果敢に攻撃を仕掛けた。
「この程度!」
まずは目の前にいるフライングガゼット3匹に向かって盾を構えて突進。そのうちの1匹を弾き飛ばした後、逃げ遅れた左側のフライングガゼットにロングソードの一閃。相手は真っ二つに切り裂かれて紫色の煙に変わった。
「さあ、ドンドン行くぜ!」
(こうなるよな)
エリンは余裕そうな面持ちで周りにいる魔物を確認しロングソードの切先を相手に向ける。そして攻撃を仕掛けて魔物の数をドンドン減らしていく。その光景はまるで閃光だ。
「すげぇ、なんだアイツは!」
「見た目も美しいしまるで姫騎士だ!」
「可憐よね」
「てか、あの数を相手に圧倒できるのかよ」
「私も彼女みたいになってみたいわ」
周りにいる戦闘職の人達はエリンの外見や強さに惹かれたみたいで目を輝かしている。しかも中にはヤバそうなやつもいるので離れて見ている俺はドン引き状態になる。
(なんだろうな……)
ここまできたら悲しさを通り越して無になる。俺が今まで感じていたエリンへの羨ましさや嫉妬心、それが逆にプラスの感情に変わる事を感じた。
「ふう、終わったぜ」
「「「ええ!?」」」
そこまで時間が経ってないのにエリンは周りにいた30匹ほどの魔物を倒した。それを見ていた戦闘職の人達は硬直していたので少し離れ場所にいる俺は彼女の方に向かって歩く。
「お疲れさん」
「おいガスト、この程度じゃあ面白くないぜ」
「お前な……だんだん戦闘狂みたいになっているぞ」
「そうか?」
最初にあった時はボーイッシュのソバカスの少女で今は可憐な女騎士。外見の変化があったが性格は男らしいまま……というか、さらに拍車がかかっている気がする。
(オッパイのついたイケメンかよ!)
外見と中身のギャップがありすぎて可愛いもあるがカッコいいが出てきてしまう。俺はエリンをそう評価した後に地面にへたり込んでいる戦闘職の人達の方に向く。そして相手の顔をしっかり見て聞きたかった事を言葉にする。
「あの、この辺で学園の生徒を見ませんでしたか?」
俺がしたこの質問を聞いた戦闘職の人達は互いに顔を見合わせる。その顔には疑問符が浮かんでいる様だった。




