26話・今の現実
下の階層に行くための手がかりを探す。俺とエリンはその事を目標にして第1階層ウロウロしているとある物を見つけた。それは……。
「「……おい」」
いきなり下の階層に行くための階段を見つけ俺は何も言えなくなる雰囲気を感じた。だ、だが、次に進めるので無理矢理納得して俺達は階段を降りて行く。
「なんか気味悪いぜ」
「それも感じるがなんかおかしくないか?」
「うん? ガストは何かを感じたのか」
「まあな」
階段の壁を見ると紫色の光を発する結晶。これがどうも引っかかる。なぜなら基本的に迷宮で光を発する結晶の色は黄色がほとんどだから。
(調べた情報が違うかもしれないが)
俺の情報がアテにならない事は自分自身が一番よくわかっている。だがそれでもおかしいと思った事は気にした方が生き残れる。少しのズレが死に至ると考えると考えすぎも悪くないかもしれない。
だが考えすぎを肯定するとゴチャゴチャ考える割に行動しなくなるのでほどほどがいい。
「まぁ、その辺は進んだらわかるだろ」
「そうだな」
エリンのポジティブな言葉に俺は頷き話していると第2層に到着。目の前には大きな木が生い茂っておりここが森林エリアだとわかった。
「なんかクラネの森林に似ている気がするぜ」
「それは俺も思った」
見かけは少し違うが生い茂っている木のエリア。そこだけは似ていると思うので周りを確かめる。すると少し離れた場所に緑色の体で手がカマになっている魔物を発見。
(なんだあいつは)
俺はすかさず能力鑑定を発動。そこにはグリーンマンティス・レベル23と書かれていた。
「スキルは〈鎌術レベル2〉と〈酸攻撃レベル1〉か」
「うん? その程度なら普通に倒せるだろ」
「エリン、頼むぞ」
「了解、アースバレット!」
『ゲァ!?』
流石に気持ち悪さを感じたのかエリンは土魔法であるアースバレットを発動。エリンから放たれた土の礫がグリーンマンティスに直撃し紫色の煙に変化。地面には魔石と素材が残ったので俺はすぐさま回収する。
「この程度の敵なら余裕だな」
俺一人ではとても言えないセリフ。その事を自覚しながらブツブツ呟き、魔石と素材を手に取ってアイテムバックに放り込む。
「ああ、この辺の魔物なら簡単に倒せるぜ」
「そりゃあそうだろ」
(レベル63のエリンなら楽に倒せる相手だな)
エリンとグリーンマンティスの間にはトリプルスコアくらいの差がある。そんなの余裕に決まっているので内心で突っ込む。
「しっかし歯応えがないから面白くないぞ」
「お前からすればそうだろうな」
「あー、ザ・レッドクローズみたいな強敵はいないのかよ!」
「そんな奴がポンポンいたら国が滅びるわ!」
レベル60越えのボスが大量発生とか悪夢でしかない。俺はエリンの言葉を聞いて震えながら伝えたい事を口にする。
「その事は置いといてクラスメイトの奴らの方だな」
「うーん、いま気になった事を口にしてもいいか?」
「? いいけど」
「あのさ、ソイツらを助けてお前に何の得があるんだ?」
「うん? そんなの奴らをあえて生かしてさらなるドン底に落とすためだ」
「本当にそれだけか?」
「……」
エリンの鋭い意見に俺は何も言い返せなくなり言葉を失った。するとエリンは俺を一瞥した後、呆れたように手を振る。
「自分の辛くてしんどい気持ちを相手にもわかって欲しかった。だから他の奴らのレベル・ステータスを1にしたんじゃないのか?」
「!? それは!」
「図星だろ」
自分の心の中をドストライクに当てられた感覚。俺はエリンの一撃を喰らい地面に蹲りポツポツと話し始める。
「〈何もできない落ちこぼれ〉が俺で才能もないしマイナススキルの影響でレベルも固定。そんな最悪な状況を知らないから奴らは好き勝手に言えるんだよ!」
「確かにお前の意見は間違いじゃない。だがその後の事を考えたのか?」
「その後の事? 奴らがドン底に落ちて苦しむ事だろ!」
「そうか? お前がドン底に落とした奴らは親ガチャ成功者で高スペックだったんだろ」
「それがどうした?」
ここまできたらエリンへのイライラが止まらなくなり口も悪くなる。だが俺の汚い言葉を聞いても彼女は一歩も引かなかった。
「あのな、お前やアタシは元々ドン底だったから見下される事に耐性があるだろ。だが高スペックな奴らはどうだ?」
「そりゃあ耐性がないだろうな」
「……じゃあ、有能な奴がいきなり無能に落とされた時の気持ちがわかるか?」
「そんなのわかるわけないだろ!」
今まで無能で見下されてきた側。それなのに見下す側の気持ち……あ!
「……もしかして前の俺と同じ気持ちになっていたのか」
「その可能性は高いと思うぜ」
「そうか」
エリンが言いたい内容はある程度理解はできた。だが俺の中でどうも納得できない事がある。
「エリン、お前が言っている事は理解できた……が、ソイツらは俺を散々いじめてきた奴らだぞ! それで納得できるか!」
「確かに徹底的に仕返しはしていいとは思うぜ」
「だろ!」
「ただな、相手の人生を狂わせるほど潰したら元も子もないぜ」
「なるほど……って、俺が悪いのか?」
「いや、この場合は8対2くらいで相手が悪いとアタシは思うぜ」
「リアルな数字だな」
この言い合いを含めて疲れたので俺は後ろの木にもたれかる。エリンも俺の隣に座り続きの言葉を口にする。
「まぁ、アタシの意見としては奴らを潰すのはいいがやり方は考えた方がいいと思うぜ」
「……そうだな」
いきなり悟りを開いたかのような発言をするエリン。俺は彼女の代わりように驚きつつエリンに言われた内容をまとめる。
(つまりは生殺しにすればいいのか)
俺はクラスメイト……特に1軍の奴らに対して大きな遺恨がある。
「ギリギリまで追い込んでたまに緩める。この手段はやりやすそうだ」
「ついでにコッチの方が復讐が楽しく感じると思うぜ」
「エリンの内容だと相手を長く苦しめる事ができるな」
ここで俺は自分しか見えてなかった事に気づき無性に恥ずかしくなる。
(あー! もっと冷静に考えればよかったな)
自分がパニックになったり復讐心に振り回された。その結果、相手を追い込み過ぎて厄介な事になっている。
「うん? 難しい」
「あ、アタシに感謝してもいいんだぜ」
「確かにそうだな」
ありがとう、俺は今までほとんど言った事ない言葉をエリンに伝える。すると彼女はニッコリ笑って一言。
「なぁ、帰ったら高級肉ステーキを食べていいよな!」
「……お前らしいな」
さっきのシリアスな雰囲気を自分からぶち壊したエリン。俺は彼女の温度差に呆れながら喋る。
「まあ、お金は残っているし一緒に食べに行くぞ!」
「やったぜ! あ、アタシのは特盛で頼むぜ」
「高級店に特盛ってあったか?」
「そんなのは知らん!」
「だよなー」
俺も高級店なんぞには入ったこともない。そのため互いにズレた言い合いをするハメになった。
(って、高級店の事で言い合いをしている場合か!)
俺は天金の迷宮に来た訳。1年3組の奴らを助ける事を思い出す。
「ん? 何かあったか」
「いやな、そもそも俺達がここに来た理由を思い出したんだよ」
「あー、お前のクラスメイトを助ける事か」
「そうだ」
ここで助けないと後が終わるし復讐が出来なくなる。そんなのは嫌でしかないので俺とエリンは立ち上がる。そして荷物を持ち直してクラスメイト達を探し始める。
「あんまり奥には行きたくないぜ」
「俺も同じ事を思ったがアイツらはそうは思わないだろうな」
「全くだせ……って、アタシはソイツらの事を知らないから考えても意味ないか」
「だな」
よくよく思い出してみたらエリンと1年3組の奴らとの面識はない。
(ん、そうなれば)
面識がない。その事である考えが浮かんだ。それは……。
「エリン、ある事を頼みたい」
「ん? なんだ」
俺は今考えた作戦をエリンに伝える。すると彼女はニコッと笑った。
「それアリだと思うぜ!」
「なら決行するぞ」
「了解」
このタチの悪い作戦を立案できた俺は笑いが止まらない。そう思いながらクラスメイト達を探す為に迷宮の奥に進んでいく。




