14日目:ゴブリンのゴブリンによるゴブリンのための国づくり
最初の犠牲者である門番が殺されて半日、オズの村は若い女以外の死滅という結果を最後に、無事に加藤一行によって占領されることになった。その目的は先の冒険者パーティーの撃退により予想される、人間の大規模な鬼族殲滅隊の派遣が現実味を帯びてきたからだ。元々10人以上いた銀級冒険者クランの壊滅は相当人間を警戒し、焦らせただろう。それは人間がこの村に直ぐ密偵を放ったことにからも察せられる。そのために敵が態勢を整えてない隙に拠点を奪い、そこの女を使ってゴブリンとオーガを繁殖、戦力の増強に図ろうとしたわけだ。ただオーガに関しては妊娠してから出産までひと月を有し――それでも人間と比べたらかなり早いが――それが武器を持って戦えれるようになるのにも一月かかる。そのため当分は出産、そして自立するの合わせて2週間ほどのゴブリンが戦力の中心となる。
そしてこの拠点を中心として戦力を蓄えるのに必要なのはなにも繁殖だけではない。むしろその繁殖により増加するであろう集団の規律、運営が重要となってくる。
そのため捕まえた女の無力化と、その女の空き巣の倉庫への収容、そして村の食糧や武器、使えそうな日用雑貨をこの村の名手の屋敷の地下にある倉庫に移した加藤は、早速グーガに法律の制定を提案した。
「法律?それも加藤の世界にあったものなのか?村の掟と何が違う?」
「まぁほぼ一緒さ。ただちょっとカッコつけた言い方にする法律になる」
「で、どんな掟を作るのだ?」
「実はもう決めてあるんだ。名前は加藤純一法典ってよ、恥ずかしいもんだが」
加藤は苦笑いを浮かべながら恥ずかしそうに頭を掻き毟る。
そして先程から握っていた羊皮紙をグーガに見せた。
「これは…人間の…いや加藤の世界での文字か?」
「おっ!よく分かったな」
「この世界の人間の文字ではない。まして鬼族は文字を使わんからな。まぁもっともそのせいで何て読むのか理解できんが」
「最近は息子達に俺の世界の文字を教えてるんだ。そっちのほうが後々便利だと思ってな。暇だったら
グーガにも教えるよ」
「うむ。それはありがたい事だ。して、なんて書いてあるのだ?」
グーガの問いに加藤はゆっくりと羊皮紙に書かれた内容を読み上げていく。最近文字を書けるようになった子供達や、前世の概念など知りもしないグーガの為にだ。
加藤純一法典(鬼族法典)
一、統治者は絶対不可侵にして犯すべからず。
二、統治者は軍事、行政、立法、司法の全ての権力を総攬する。また共同統治者に至っては権力の重複は不可。
三、私有財産の制限、公共財産の尊重と私的乱用の禁止。
四、私有財産の所有と使用の尊重、公権力の行使の自由と尊重。
五、主権の有する統治者の下に臣民に与えられる権利は法律の範囲内とす。
六、臣民は神の前に平等である。
七、殺人、反逆は死刑。賄賂は送った者、受け取った者両方を死刑。窃盗はムチ打ち20回。意図的な器物破損は弁償、もしくはムチ打ち10回、その他の事例に関しては個人間の取り決めを尊重とする。
八、官民問わず、捕虜にした女は公共財産とし、捕獲者は恩賞と初回開通権を与える。土地及び建造物、川、森林、山はすべて公共財産とし、これらの使用は公権力の許可を必要とす。またそれ以外のものにかんしては、一番最初に得た者に対して私的所有を認める。
九、全ての臣民は初等教育を受ける義務と権利を有する。
十、全ての臣民は勤労の権利と義務を有する。
十一、鬼族は第一臣民、人間は奴隷とし、その他の人種に関しては隷属民とす。
「今言った法律に従って集団を運営したい。だから食糧なんかも統治者が全て管理して配給制したいと思う」
「なるほど。我としては問題ない。元々われの村も食糧は皆で分け与えていたしな」
「分かった。それと当然だがこの法律を守るのは村の下々の民だけじゃない。俺やグーガなんかの統治者もだ。この法律に違反しない様に村を運営していく」
「加藤の住んでいた世界の掟だ。我として特に問題はない」
自分と並んで統治者となるグーガの承諾を得た加藤は時間は限られてると、急ぎでそれ以外にも決めるべき事案をグーガとの協議の上でさばいていく。そして今日中に決まった事は主に4つ。
まずは先程加藤が提案した加藤純一法典の正式制定。ほよび共同統治者として政治と立法を加藤が、軍事と司法をグーガが握ることになる。そしてその下の副官としてお互いを任命し合い、相互補助の関係となった。
また加藤とグーガの住居としては村の名手の屋敷が使われることになり、それ以外のゴブリンに関しては今後人口が増えることも考えて、五人に一件を割り当てることになった。
そして村の周辺や女奴隷の収容所の警備に関しては、交代制で務めることとなった。
「飯も食った事だ…息子たちよ!!」
屋敷の二階の窓から加藤は叫ぶ。するとすぐさま近くの民家からゴブリンたちが飛び出した。
「父上!なんでありましょう!
「グーガとボルに関しては申し訳ねぇが…飯を食ったらやることは一つ!女を犯しに行くぞ!!」
加藤の言葉にゴブリンたちは歓喜した。
「おお!!」
「ついに女を抱けるんだ!」
「早く雌を屈服させてぇよぉ~」
「ぐひゃひゃひゃひゃ!!楽しみだなぁ~」
反応はそれぞれ個性は有れど、そこに写っている彼らの顔はまさにあの悪意に満ちた、どれだけ飲み込んでも飽き足らない強欲な鬼のモノであった。
「お前ら!俺より先に乗り遅れるんじゃねぇぞ!!突撃ぃいいいい!!」
そう言いながら加藤は屋敷の二階から飛び降りた。小さな小鬼のものとは思えないような、鈍く重たい音を立てながら地面に着地をすると、振り向きながら上を向く。
さすればグーガが此方を見つめながら溜息をついていた。
「おめぇの分も取っとくからよ!先に楽しませてもらうぜ!!」
「好きにしろ…まったくこれだからゴブリンは……」
呆れた様子で溜息をつきながら村の周囲を見渡すグーガをよそに、加藤純一を先頭にゴブリンたちは甲高い叫び声を上げて、女が収容された倉庫へと走って行った。
「犯せ!犯せ!犯着床させろ!!俺たちゃ百億の精子だ!!卵子を食い尽くせ!!」
それから三日三晩は、女の悲鳴と鬼の雄叫びがこの人気のない村に響き渡るのであった。
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