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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
九夏三伏
129/174

演舞

樂と2人で美味しい屋台料理を食べていると少し向こうにある茂みが揺れる。


虎雅「猫?」


樂「匂いにつられたか。」


樂が茂みに向かってポンと米を投げる。

すると見慣れた黒い影が姿を表す。


虎雅「刹牙だ。なんでここにいるの?」


耳頭みみあたまの女に連れてきてもらった。なんだ?祭りか?』


耳頭…?


虎雅「お祭りだよ。知ってるんだ?」


刹牙が米を食べ終え僕たちの食べ物をじっと見ながら僕の膝の上に乗る。

僕は刹牙が食べられそうな物をあげながら話す。

いつも以上に腹ぺこなのかとてもよく食べるな。


『何度か連れてきてもらったことがある。あの時は冬だったけどな。』


虎雅「へぇー、冬のお祭りってなんだか珍しいね。」


樂「何でここにいるんだ?飛べないだろ。」


虎雅「耳頭?に連れてきてもらったって言ってたけど誰だろう。」


「おーい。刹牙くーん。」


少し焦った女の子の声が聞こえたのでそちらを見ると愛芽李さんが茂みに体を突っ込んでいた。


虎雅「愛芽李さん!刹牙ここにいますよ!」


愛芽李「あ!ありがとうございます。」


トトトっと駆け寄り、刹牙の無事を喜ぶ愛芽李さん。


樂「どうした。かしらはいいのか?」


愛芽李「かしらが今日ぐらい遊んで来なさいと仰ったので、虎雅さんに用がある刹牙くんも連れて来ました。」


虎雅「用?」


『ああ、そうだった…』


と、刹牙が話そうとした時に男女4人の痴話喧嘩が邪魔をする。

様子を見に行くと絢愛さんとアキ、琥崙・嘉蘭さんが言い合いをしている。


琥崙「何で絢愛の手を掴んでいる。」


アキ「怪我が痛そうだったから俺が支えになってるんだ。」


琥崙「自分が絢愛を支えるからお前はどっか行け。」


嘉蘭「お兄ちゃん、私はー?」


琥崙「お前は怪我してないだろ。」


絢愛「じゃあみんなで手を繋ごうよ。」


「「「それは違う!」」」


いつも通りだなぁと駆け寄り、なだめると愛芽李さんが絢愛さんの支えになる事になった。


絢愛「そう言えば、二轅と龍門がいたよ!」


樂「太鼓、叩きに来てるからな。」


虎雅「そうなんだ!いつから始まるの?」


樂「後…、15分くらいか。」


会場に設置された時計を見ながら教えてくれる。


絢愛「一番いい席取るために今から行こ!」


樂「場所分かってんのか?」


絢愛「分かんない!」


樂が呆れながらみんなを案内した場所は神楽殿かぐらでん

中は明かりは付いているけれど薄暗い。目を凝らしてやっと大きな太鼓が見える。


少しするとだんだんと人が集まってきて真司たちとも合流する。

みんな手には人形焼きが詰められた新聞紙で出来た袋を持っていた。


虎雅「ここだと見えにくいでしょ?前の方で見てきたら?」


彩晴「うん!オレより背の低い奴で行こう!」


彩晴が小さい子を連れて前の方に向かっていく。


すると神楽殿からゆったりとしたお囃子が聞こえ始める。

スルスルとすだれが上がり、中の部屋が明るくなる。

部屋の隅ではイブの団員さんが演奏をしている。


そのお囃子の音が大きくなる事に周りの騒めきが小さくなっていく。


すると二轅と龍門の後ろから、顔に布をつけた女性らしき人が広く用意された舞台の中央に立つ。


樂「…誰だ?」


嘉蘭「天音さんだよ。みんなに内緒で練習してたの。」


絢愛「そうなの!?天音さんはやっぱりかっこいいなぁ!」


嘉蘭「お兄ちゃんが曲調に合う振り付けをして半日で吸収しちゃったんだって。」


琥崙「…天音さんは記憶を失っても中身は変わらない。あの時みたいに誰かの背中を追っているみたいだ。」


虎雅「天音さんはどんな人だったんですか?」


琥崙「…天音さんは咲さんと凌太さんと同じ班で、その2人に置いていかれないよう必死に着いて行っていた。その背中を見失おうとも足跡でも何でも追いかけたいと話していた。」


虎雅「…咲さんと凌太さんは魅力的な方だったんですね。」


嘉蘭「2人は異質な魅力で着いていく人も多かったけど追いかけ続ける事がとても難しい人たちだったの。

けど、天音さんはどんなに周りの人が脱落しようとも自分が辛かろうと2人を追いかけ続けてたの。

あの2人はどう思っているか分からないけど、天音さんは今でも2人の事を想ってるんだよ。」


絢愛「…天音さんのためにも、咲さんと凌太さんを連れ戻したいな。」


愛芽李「そうですね…。」


僕は舞台に立つ天音さんを見る。


あの時、天音さんは2人のために凶妖を殺しに来たのだろうか。

あの2人の背中を追うために、自分の自我を殺してまで着いて行こうとしたのか…?


あの2人は異質…。


けれど、着いて行きたくなるほどの魅力を持った人で今もそれが数字に表れている。


2人は着いて来てくれる人をどう思っているんだろう。

天音さんを眺めながら僕は思いを馳せる。


3人の準備が終わるとお囃子が止まり、天音さんが手を畳につけて立ち膝のポーズで止まる。


二轅と龍門が大太鼓越しにアイコンタクトをし、始まりの合図を言葉で交し太鼓を叩き始める。

腹に来る震音しんおんが観客を一気に惹き付ける。


カカッと太鼓の縁を叩くと同時に、団員さんたちが演奏を始め、天音さんが舞いを始める。


その動きはとてもしなやかで蝶の様に舞っているようにも見えるけれど、時折見せる力強さが天音さんの今まで生き抜いてきた努力を感じ、僕たちみんなを魅了する。


布の隙間からたまに見える天音さんの目はここではないどこかを見ているようで、やっぱり2人の事をどこかで想っているだなと感じた。


あっという間の30分近い演舞をこの少人数でやりきり、大喝采が沸き起こる。


みんな髪を濡らしながらとてもいい笑顔で挨拶をして裏手に入っていった。


真司「カッコいい…。天音さんカッコよすぎる!」


嘉蘭「元はあの2人の次に力を持ってたから、このくらい楽に出来ちゃうの。本当に凄いよね。」


絢愛「終わったばっかりだけど、みんなに会えるかな?」


彩晴「オレ、太鼓叩いてた子と写真撮りたい!」


人混みをかき分けて戻ってきた彩晴たちと合流する。


翔馬「翔も!」

優太「ゆうも!」


虎雅「じゃあ行ってみよ!」


僕たちはみんな分の飲み物を買って、舞台裏に行ってみる事にした。



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