わがまま
清くんと僕で使ったものを元あった場所に戻していくけど、その間ずっと無言。
清くんが物の元の位置が分からなかった時、二言会話をしただけ。
一層の事思いっきり嫌われていいから、聞いてしまおうかな。
あと少しで物が片付け終わりそうな頃、僕は思い切って聞いてみる事にした。
虎雅「清くん。僕の何が嫌だ?」
清「…。」
清くんはその言葉を聞いて少し動きを止め、また片付け始めた。
虎雅「僕が気づかずに清くんの嫌な事をしていたなら、ごめ…」
清「謝らないで。虎雅は悪くない。」
虎雅「そう…、なの?」
清「うん。」
清くんが俯き、手を止める。
虎雅「何が嫌で、僕とあまり話したくないの?」
清「虎雅自身、嫌いな訳じゃないんだ。僕の知り合いに似ている人がいてその人が苦手なだけ。」
僕は話を聞きながら、こっそり清くんの顔を覗き込む。
清くんは目を強く瞑り、苦しそうな顔をしている。
虎雅「そっか。どういう所が似てる?直せるなら直したい。」
僕は清くんの背中をさすりながら聞く。
清「…2人とも、いつも物足りなさそうな顔してる。」
虎雅「えっ…?」
まさかの答えに僕は数秒思考が止まった。
清「2人とも持ち合わせはあるのに、足りないものだけを見てる感じ。」
どう…、直せばいいんだろう。
清「虎雅はマキさんが亡くなった時、真司が連れ去られようとした時、僕が意識が戻った時、春宵一刻のパーティ後の時、梵唄さんが熱で倒れた時、その後いつにも増してそういう顔をする。それが僕の中ではあの人を思い出すから言葉が詰まる。」
だから今も目を瞑ったまま話しているのか…。
虎雅「…ごめん。僕、みんな出来る事が出来なくてよく悩んでる。それでこの間は熱が出ている樂を更に体調を悪化させてしまったり、凌太さんと対面しても連れ戻す事が出来なかったから僕ってダメだなって。」
清「何言ってるの?出来ない事があるからみんながいるんでしょ。」
清くんは前髪の合間から細目で僕を見る。
虎雅「あの時、僕1人しかいなかった。もっと僕に出来る事が多ければ…」
清「僕は凶妖の声を聞く事は出来ないし、銃は反動が大きくて狙いがブレる。声はこの傷のせいで30分以上出すとガラガラになる。それでも僕はいいんだ。側にいてくれる人がいるだけで。それで満足。」
清くんはゆっくりと目を開けていく。
虎雅「僕は側にいてくれる人、大切な人を守りたい。」
清「守れない事もある。僕は側にいても守ってあげられなかった。守りたくてもどうしようもない事がある。」
虎雅「側にいるなら諦めたくない。」
清「側にいても助けられない事もあるんだよ。」
どうして、そう諦めが付いてしまうんだろう。
その人は清くんにとって大切な人だったんじゃないのか?
清「虎雅、全て自分が満足いくようにはいかないんだよ。欲しいもの全部は手に入らないんだよ。」
虎雅「だからって、途中で諦めたら手に入れられるはずだった未来は来ないよ。だから僕はそれを掴むまで手を伸ばし続ける。」
清くんは顔を上げると、呆れた表情をしていた。
けど、僕は自分が望む未来を手に入れるためにここに来たのだからやるしかないんだ。
救える命を救いたい。
もう理不尽に大切な人たちが死んでほしくないんだ。
清「諦めが悪すぎるね。」
虎雅「僕の事を守ってくれた人たちの為にも、僕が大切に思ってる人たち、みんなの大切な人たちを守りたい。
だから、今の自分じゃ力不足なんだ。」
清「欲張りだね。」
虎雅「望まないと人は行動に移せないから。」
清「…そっか。それは自分のため?」
虎雅「ううん、みんなのため。」
清くんは少し沈黙し、
清「…ごめんね、虎雅は虎雅だったね。」
清くんは姿勢を正して、僕に体を向けて申し訳なさそうに笑った。
虎雅「謝らなくていいよ。こっちこそ今まで嫌な思いさせてごめんね。これから物足りなさそうな顔?しないようにする。」
清「もう大丈夫。あの人と虎雅は違うって分かったから。僕たちで出来ることやっていこうね。」
清くんがいつもより心地よい声で、少し口角をあげて言った。
虎雅「…うん!そうしよ!」
僕は思いっきりの笑顔で清くんの頭を撫でる。
清くんは少し恥ずかしそうにしていたけど、拒否する事はなかった。
2人で片付け終えて、樂の元に行くと樂と真司しかいなかった。
虎雅「みんな終わったのー?」
真司「ぼんにぃがこの4人で片付けるから他の団員さんは屋敷で休憩してろって言って、みんなそのまま屋敷に入っちゃったよ。」
虎雅「えー!?なんでそんな事言っちゃうかなぁ。せいさん待ってるのに。」
樂「真司が不服そうにしてたから仕事を増やしただけだ。」
真司「わぁ…。鬼だな。」
清「早くやろう。」
真司「そうだな。」
と言って、2人は周りにある物を片付け始めた。
僕は樂と一緒に作業していた所にある道具を先に片付けようと思い、樂の側に寄る。
虎雅「みんなでやれば一瞬なのに。」
樂「みんなでやったら、意味ないだろ。」
虎雅「何言ってるの?」
樂「鈍感は健在か。」
樂は少し乾き始めた絵の具がついている筆を洗う。
樂はたまに何したいかよく分からないな。
僕たち4人で片付けをしながら、お喋りをする中いつもと違う事が1つ。
僕の言葉に清くんが質問を返してくれたり、応答してくれるようになった。
それが嬉しくてずっとニコニコしてたら、樂が鼻で笑ってくれた。
今日はいい事がいっぱい起こるなと感じつつ片付け終えて、せいさんたちの元へ向かった。




