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第六十二話 落ち着け エルト

 さて、状況を整理しようか。

 ちょっと黄昏ていたら、夜間警備を任せていた諜報部統括のグレッセリアからマリアルイーゼが誘拐されたなんて通報が来た。

 面白くてたまらない口調で来たから、アイツがわざとその状況を見逃したのはすぐに理解した。

 よく覚えていないが、思いつく限りの罵詈雑言を念話で垂れ流しつつ慌てて家から飛び出し、下手人がどこにいるか聞き出してそこに飛んだ。

 途中、グレッセリアからの合図があったためにそこへ下り立てば、結構な数の馬鹿どもの姿が。

 さっさとグレッセリアにマリアルイーゼを連れていかせれば、速攻で塵も残さずに消し飛ばせたのに、何故だか知らんが残るとか……。

 いくら俺でも非戦闘員の、しかも荒事未経験のお嬢様の前でグロい光景は遠慮するぞ。

 だからわざわざカンフーアクションで非殺をする羽目になった訳だが……死んでねぇよな? とりあえずブチのめしたけど。

 それで撤収しようとしたらマリアルイーゼが離してくれず、とりあえず落ち着かせることを第一に転移で俺の家に連れてきちまった。

 まぁ、これで一晩落ち着かせて、朝になったら無事に家に送り届ければいい。


 そう思っていたんだがなぁ……。


 マレアのことを知ったとか。

 手を離してくれないとか。

 ちょっと涙目の女の子の表情にゾクゾクしたとか。

 そんなことをすっ飛ばす勢いで好きとか。

 綺麗系の女の子から告白されるとか、想像の埒外だよ。

 しかも言うだけ言って寝落ちしやがるし。


 どぉぉしろってんだよぉぉぉぉぉぉぉっ!


 いや俺も男だから?

 結構な人数のピンチを救ってきた訳で。

 その時にこう、恋愛フラグっていうの?

 ピンチを救ってくれた男にこう、キャーステキー、なんていうのを期待した時期もあったさ。

 でもなぁ。どいつもこいつもコブつきでなぁ。

 さすがに相手がいるとなると萎えるんだよなぁ俺。

 そこに来て、マリアルイーゼな訳よ。

 最初見た時は某怪盗の仲間の某和服剣士のように「可憐だ」なんてほざいたが、この娘にも相手がいるんだろうなと諦めていた。

 しかし蓋を開けてみれば、そんなこともなく。

 けれどここには年頃の男がわんさかいて、こんな綺麗ならすぐに見つかるなと思っていた。

 でも。

 毎日嫌な顔せずに起こしてくれるし。

 笑顔で味噌汁作ってくれるし。

 こんな俺でも頼りにしてくれるし。

 絆されるよ、普通。

 こんな綺麗な、しかも淑女で貴族な令嬢だぜ?

 見た目もそうだけど、中身まで素敵ってどんだけよ。


 そんな娘に告白されるって、俺は夢でも見てるのか。

 うむ。頬を抓っても痛くない。


 マジかぁ……。


 うん。

 儚い夢かと思っていたが、こんな俺にもチャンスが来たのであれば……。

 大丈夫か?

 俺って駄目人間だぞ?

 団長って位置にいるにはいるが、定職に就いているとは言い難いぞ?

 金は唸る程あるがな? 色々と賊やら後ろ暗い連中を殲滅した時に接収したやつが。

 しかしなぁ。

 こんだけ人殺しも厭わん男が、こんな純粋培養されたような女の子の相手ってどうなんだろう。

 流石に非戦闘員を殺すことはそうそうないが、もう長い事殺伐とした殺し合いをやってきたし、敵を殺すことに躊躇はしないし、まだ絶対に殺すべき存在もいる。

 そうなってくると、マリアルイーゼを殺伐とした状況に近付けてしまう。

 いやまぁ俺がいる時点で【獅子の咆哮】自体が危ないっちゃ危ないけど。


 それを差し引いてもこんな娘が嫁に来てくれたらそりゃ嬉しいってなもんよ。

 俺だって恋人と手を繋いでデートしたいさ。

 そんでもってムードある場所でキスしたいさ!

 そんでもってヤリたいさ!!


「ん……」


 !?

 ふう、寝言か。

 綺麗な寝顔だな。

 無防備に寝ているってことは、俺を信用してくれてるってことだよな。

 ……キス、してもバレんか?


「グルル」


 フーよ、寝ていても野生は健在か。

 だらしなく腹見せているにも関わらず。


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