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ガクト  作者: 死兎
9/12

 








 ハルマの前に現れたのは、やはり、ガクトだった。そこには、並守と同じように、右腕の代わりに槍のように鋭く尖り、白光した・・・骨?


 そうしてる内に、気づく。このガクトが、一体誰なのか・・・。


「ハルマ」


 そうして、彼女は振り向く。


「今のうちに店ん中のやつ、全員逃がしてくれ。頼む。あいつは俺がやる」


 ハルマはただ呆然としていた。噛み合わない像と像が混ぜ合わされ、目の前で何が起きているのかわからない。

 姿も変わった、喋り方も変わった。・・・本当に、本当に、君は・・・・・


「クレナ・・・なのか?」


 二人の間を、沈黙が包む。


 ふいに、彼女はハルマに背を向ける。歩き始める。そして、


「ああ」


 クレナは駆けていった。そして店の外に出、見えなくなった。


 ハルマははっと気づき、店内に向かって、


「皆さん!今のうちに逃げてください!!今なら反対の出口から!はやく!!!」


 堰を切ったように逃げ出す人々。店内はざわつく。荒い足音が、ハルマの後ろの方で順々に流れていく。


(店長・・・大丈夫か・・・?)







 店外。フェンスで囲まれた小区間に、車が一台のみ。そして少女。


「どこだ・・・」


 後ろで微小音がした瞬間、振り向く!相手の攻撃を凌ぐが、二手目の蹴りをくらい、後方に吹っ飛ぶ。

 相手はその勢いのまま向かってくる。大地を踏みしばり、敵方へ飛ぶ。相手の攻撃の眼前で移動方向を横へ()らし、攻撃をいなす。その瞬間に身体を回転させ、その速度で相手の背に強烈な一撃を食らわす。吹き飛ぶ。


  ガシャァァァァァンッ!!!!


 フェンスにぶち当たる。よろめきながら立ち上がる並守。血の混ざったつばを吐く。


「・・・ったく、何がしてぇんだてめ。あん時のガキが何の用だよ!まさかガクトだったとはな・・・」


「何切れてんだよ。(いか)ってんのはこっちの方だぜ?余計な真似しねぇ内に潰してやろうと思ってたのに。ホント散々な日だ」


 目の力を強めたまま、自嘲気味に笑う。


「ここの新人バイトもお前だったってわけか。ますます意味わかんねーな。そこまでして何がしてぇんだよ。・・・知らねぇわけねぇよな?俺たちに、どんな血が、流れてるのかよぉ!!」


 並守は飛び出す。そして攻撃を繰り出す。袈裟、薙ぎ、薙ぎ、逆袈裟、袈裟!

 対して、かわす、受ける、かわす、受ける、払う、そして薙ぐ!並守は受ける。


  ガキィィィィンッ!!!


 鍔迫(つばぜ)り合う。


「・・・俺たちに流れてるのは、復讐の血だ。ヒトどもに復讐すること。それが俺たちの宿命!・・・のはずが、てめぇは何してる!わざわざ何の為に俺の邪魔してくれてんだ、あぁ!!」


 並守が大きく払う。両者後ろへ引く。そして大地を蹴り、クレナの肩めがけて突く!すかさず彼女は身をそらすが、その隙をつき、上方へ蹴り上げる。しかし、すぐに空中で姿勢を立て直し、落下速度で相手を切り落とす!が、横にかわされる。が、そのまま其方(そなた)めがけ飛び、鋭く薙ぐ!


「ぐはっ!!」


 クリーンヒットし、並守は後方へ退(しりぞ)く。




 一人の青年が、こちらに来る。店長を安静な場所に置いた後、すぐさま来た。車の陰に隠れ、状況を確認する。今起こっているのはガクト同士の闘い。本当なら、危険すぎて近づくべきじゃない。でも、今は店に関わることだ。それに何より、闘ってるのは、クレナなんだから・・・・・。

 しかし、辺りは静かだった。いないのか?いや、いる!クレナと・・・・並守も。ハルマは、ただ、静かに様子を伺った。


 クレナが話し始める。


「・・・5年前かな。その時まで、俺はただのヒトだった。そう思って生きていた。でも、突然、親に告げられた。俺はガクトだ、と。・・・そん時はそれがどういう事なのかわからなかった。だけど、ガクトについて知るようになっていく内に、自分ってのが何なのか、わかるようになってきた。復讐の血・・・。それまでヒトとして生きてきた俺にとっては、そんなものが体の中に流れているのが、耐えられなかった。・・・・・楽しかった。それまでの生活が。何かあったわけじゃねぇけど、それでも楽しかった。それが無くなるなんて、嫌だった。・・・・・だから、決めたんだ。この血に抗ってやるって。例え、醜く、おぞましい血が流れていようが、俺のやり方で生きてやる。たかだか血なんかに、人生変えさせたりしねぇってな。だから、お前らみたいな復讐信者、全員ぶっ潰してやるんだよ。そうやって俺の生き方を証明する。・・・それが、お前を邪魔した理由、かな?」


「んだそれ。とんだおせっかい野郎だな」


「そりゃどーもっ」


 再び、両者間合いを詰め、斬り合う。


 青年は静かに聞いていた。彼は、自分の中の思い違いを訂正していた。

 彼女はガクトだった。でも、復讐のために人を殺したりするようなガクトではなかった。彼女は、おぞましい怪物ではなかった。それにーーーーー


(・・・クレナ・・・・・・強いんだな、君は・・・・)


 斬る、斬る、斬る、斬る!両者引かない。しかし、一瞬速く、並守が次の斬撃を繰り出す。クレナは後方へ吹き飛ぶ。

 並守はすかさず追撃に出る。彼女は立ち止まり、構え、力を溜める。そして、

 電光石火のごとく、一直線に駆ける。並守の肩を突く、が、かわされる。が、そのまま駆け抜ける。そして、もう一度駆ける。が、またかわされる。駆け抜ける。が、もう一度ーーーーー


「しつけぇんだよぉ!!!」


 並守は大きく薙ぐ。それを瞬時にかわし、彼の左足へ、一撃を与える。駆け抜ける。

 並守はよろめく。姿勢を立て直す。そして、


「どこだ、あのガキ・・・」


 辺りを見渡す。奴は、奴は、・・・・・、その時、目の前に飛び込んで来たのはーーーーー


「ここだ!!」


  バギィィィィィィィンッッ!!!!!!


 鋭く一直線に、目の前を駆け抜ける。並守の肩を貫く。彼の"白槍"は、宙を舞う。そして、豪快な音をたて、地に落ちる。彼は、肩から装っていた武器を失う。血の出る"腕の生えていたところ"を抑える。






 ーーーーーー勝敗は、決した。



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