太陽
「・・・・・ガッ・・・・う・・・・・・・てめ・・・・・・・・」
「なんだよ。腕ならしばらくすりゃ、生えてくるだろ」
並守は痛みにもだえつつ、クレナを鋭く睨む。
「・・・殺してやる。ぜってぇ殺してやる。待ってろ。いつか必ず殺してやる!!復讐だ、復讐だ!!!ハハハハハッ!!!覚えてろよ・・・。俺に歯向ったせいで死ぬんだァ!!お前は殺す。殺す、殺す、殺す、殺すぅーーー!!!!!」
そういって、彼女を背にし、よろめきながら彼方へと逃げていく。
「あっそ」
そこはいつものように静かになった。武器が激しくぶつかり合う音もしない。
彼女は、落ち着きから、ため息をつく。
すると、次第に額から出ていた角が縮んでいく。また、牙も口の中に消えていく。腕に取って代わっていた"槍"も、"太い一本"に巻きつく細く、曲を描いた何本もの骨へと姿を変えてゆく。そうして、細い骨が没すると、現れたのは綺麗な肌色をした腕だった。
彼女は、ヒトとしての姿に戻った。彼女が、自分の真だと思っていた姿に。
「ク、クレナ・・・・・」
車の陰から姿を現した青年は、彼女の名を呼んだ。
彼は、なんといっていいかわからなかった。仮にも彼女は復讐の血を持つガクトだと、わかってしまった。今までとは、もう違う。
「・・・怪我とか、大丈夫か・・?」
彼女は近づいてくる。ただ、ハルマは不安を感じていた。彼女はもう帰ってこないのではないか・・・・・
小さくうなづく。そして、
「・・・ありがとう」
困ったように、付け足すように笑った。今、先輩と正面から向き合える自信はない。
ただ、彼には違って見えた。
空には厚い雲がかかっていた。自分の知っている人は、その雲の向こうに消えてしまっていた。けど、その時、雲を貫く一筋の光が見えた。その奥には、少しの間共に過ごしてきた彼女の、無邪気な笑顔が映っていた。覆っていた暗い雲は、その光を何倍にも増して輝かせていた。目の前のその笑顔は、何よりも輝いていた。彼にはそう見えた。しかし、笑顔とはそういうものなんだろう。吸い込まれそうな光に、思わず彼の鼓動は。
俺はーーーーーーーー。
店を守ってくれたことの、感謝の言葉も忘れてしまっていた。
彼女は、そんな彼の横を切なく通り過ぎていった。




