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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第三章

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82/325

第八二話「大所帯な旅は楽勝ですか? それとも……」

《――サーブロウ伯爵から

ある“老人”の元を(たず)ねる様勧められた主人公。


そして、引き続き伯爵の説明に耳を傾けて居た

主人公(かれ)に対し――》


………


……



「……君に(たず)ねた“温泉”に関してもそうだが

あの“旅館”ならば君が望む真実の情報が全てあるだろう。


そもそも、私が全ての真実を君に伝えてしまっては

あの老人と私が交わした約束を

反故(ほご)にしたとも取られかねない。


……彼の信頼を裏切る事だけは何としても避けたい

だからこそ、君自身が

あの老人を(たず)ねるべきだと私は思う。


だが、わざわざ遠い所から私の絵本について興味を持ち

(たず)ねて来てくれた君に御礼もしたいと思って居るんだ

第一、このまま何も持たせず帰すのも申し訳無い……


……其処(そこ)で私は、君に対し

今までに出版した絵本の全てを進呈(しんてい)しようと思って居る。


それとも……既に持って居るのかな? 」


「いえ……所謂(いわゆる)

“たこ焼き”の絵本だけを頼りに此処(ここ)まで来たのですが

それすらも“とある国”で、国立図書館の司書さんに

懇願(こんがん)されて譲っちゃいまして……と言うか。


進呈(しんてい)”って……たッ、無料(タダ)で頂けるんですか?! 」


進呈(しんてい)と言ったのだから勿論(もちろん)お金は取らないが

それよりも……君は欲がある様で無欲(むよく)でも有る様だね。


……より一層気に入った!

少し嵩張(かさば)るが大丈夫かね? 」


「はい! ……凄く光栄ですッ! 」


《――と、主人公が返事をしたと同時に

サーブロウ伯爵は上機嫌で使用人を呼び

絵本の全巻を持って来させた。


の、だが――》


………


……



「あの、この量って……マジですか? 」


「ああ、少し嵩張(かさば)るかも知れないが

君の真剣さに心打たれた私からの御礼だ!


……是非、受け取って欲しい」


《――上機嫌にそう言ったサーブロウ伯爵の横には

全一〇〇冊を超える絵本がうず高く積まれており――》


(い、いやいやいや!! ……どんな量っ?!

これ全部持って帰るとしたら荷馬車が絶対に足りないって!!

どう考えても無理ゲーじゃん! ……)


《――などと考えていた主人公だったが

伯爵の優しさを無下(むげ)にする訳にも行かず――》


「有難うございます! けど

俺達の荷馬車だと明らかに運べない量で……」


《――と、遠回りに遠慮した主人公に対し

サーブロウ伯爵は――》


「ふむ……ならば、荷馬車も本が乗るだけの台数進呈しよう!

他に欲しい物は有るかね!? 」


《――と、満面の笑みで

何とも満足げに(たず)ねて来たサーブロウ伯爵に対し

主人公は(なか)ばあきらめた様に、そして

安心した様に、彼の厚意を受け入れたのだった――》


「……さて、後は私から君に対し

“頼み事”と……もう一つ“お礼”が有るのだけれど構わないかね? 」


「ええ、俺で出来る事なら頑張りますけど……」


「有難う……ではまずお礼から。


……私は君が訪ねて来るまで

“絵本”と聞いただけで寝込む程に心が疲弊(ひへい)して居た。


正直、最初は君もその

“原因たる者達”と同類なのだろうと思って居たが

君の真剣さ、知識……その全てが私の苦しみを

完全とは言わないまでも薄めてくれた。


本当に感謝している……有難う」


《――そう言うと

主人公に対し深々と頭を下げた伯爵――》


「いいッ!? ……いや、俺は(ただ)

情報を聞きに来ただけですし!! ……でも

心の重荷が少しでも軽くなったと(おっしゃ)られるなら俺も嬉しいです!


と、兎に角! その“頼み事”の方は……」


「ん? ……ああそうだった!

君に頼みたい事と言うのはだね……


……ポール、例のアレを此処(ここ)へ頼めるか? 」


《――執事に対しそう頼んだ伯爵

(しばら)くの後、慎重に運ばれて来た木箱を

執事から受け取った伯爵は、机の上に置いた木箱を

これまた慎重に開けつつ――》


「君達がこれから訪れるであろう旅館の総支配人であり

私に絵本の執筆を許可してくれた“老人”から教わった物の中には

“とある焼き物”の情報があってね……邸宅に帰って(しばら)くの間

それを作る事に大層ハマってしまった私なのだが

数多く作った焼き物の中で、最も自信作である“これ”を

あの“老人”にプレゼントしたいと思って居るのだよ。


(ただ)、彼は焼き物への造詣(ぞうけい)が深いので

私の作った焼き物程度では――


“まだまだじゃな!”


――と、言われてしまうかも知れないが

仮にそう言われたとしても

私の全身全霊を注いで作り上げたこの焼き物を

世話になったお礼代わりと言えば大層かも知れないが

どうしても渡したいと思って居るのだ……だが

外を出歩くのは正直……まだ怖くてね。


……そう言う訳なのだが、頼めるだろうか? 」


勿論(もちろん)です! ……それに

伯爵様が(おっしゃ)られる様な性格の御方でしたら

仮に伯爵様のお作りに成られた焼き物の出来が

本当に“まだまだ”であったとしても

きっと、とっても喜んでくれると思います!

なので……“結果”も伝えに帰って来ますので

それを楽しみに待っていて下さいませんか? 」


「ああ! ……何よりも心待ちにして居ると誓おう! 」


《――(しばら)くの後

サーブロウ伯爵から提供された

“絵本全巻”の乗る荷馬車数台と共に旅を続ける事と成った一行


だが……(ただ)でさえ大所帯な荷馬車旅の上

更に本で埋め尽くされた荷馬車が追加され

より一層“大名行列感”の増してしまった一行の車列。


……そんな様子に若干引いて居る主人公だったが

この後、それに輪をかける様な“存在”が

同行を願い出てしまい――》


………


……



「主人公様ッ! ……次はどちらへ向かわれるのでしょうかッ?! 」


《――突如(とつじょ)物陰(ものかげ)から現れ

主人公に対しそう“怒鳴(どな)る様な声で”質問したのは――》


「ひぃぃッ!? ……って、貴方は“一番隊の隊長”さんッ?!

さ、先程お帰りに成られたのでは?! 」


《――そう慌てて(たず)ねた主人公(かれ)に対し

“隊長”は――》


「いえッ! 部下には門の警備に戻る様命じましたが

私は念の(ため)御一行様の警備を引き続き行おうと思い

(みずか)らの判断で“こちら”でお待ちしておりましたッ! 」


《――そう言って彼が指し示した場所には

何処(どこ)から持って来たのか

先程までは無かった筈の“植え込み”が用意されていた。


当然、この事にドン引きしていた主人公だったが

同時に“どれ程断った所で無駄だろう”と判断し

彼に対し完全なる“取って付けた様な笑顔”で――》


「た、助かるなぁ~ッ! ……では早速行きましょうか! 」


《――そう感謝を伝え、すんなり受け入れると

改めて伯爵に対し御礼を言った主人公。


一方……この一部始終を間近で目撃し

主人公と同じく“ドン引き”して居た様子の伯爵は

主人公に対し“老人の経営する旅館”への地図を手渡した。


……地図には目的地に大きく丸が書かれており

其処(そこ)には“温泉旅館エリュシオン”との名前が

(しる)されて居て――》


「有難うございます! ……では、行ってきます! 」


「ああ、気をつけて……報告、楽しみにしているよ! 」


《――直後


伯爵との別れを済ませ再び荷馬車に揺られる事と成った一行

だが……やはり

日之本皇国(ヒノモトコウコク)は広大で――》


………


……



「……それにしても山道が長いな。


道が舗装されてて揺れが少ないのがせめてもの救いだけど

それでも疲れる……ってかそう考えると

ギュンターさんのオベリスクって

やっぱり相当凄かったんだな……」


《――少し淋しげにそう言った主人公

そんな彼に対しメルは――》


「ええ、でも良くない意味の離れ離れって訳では無いですし

それに……私が拾った絵本が原因で

こんなにも沢山の国を旅する事が出来るなんて

思いもしませんでした……主人公さんは

こんなにも沢山の国を旅するなんて思ってましたか? 」


「いや……びっくりする程様々な国に行ったし

まさかこんなに長旅になるとも思ってなかったよ。


楽しい事も沢山あったし

いろんな事があったと振り返る事もある……けど

その分怖い思いも沢山する羽目に成ったし

大切な仲間との別れも沢山経験したから……


……今“何一つ持ってなかった”昔の事を考えると

あの時の苦しみの方が余程(よほど)軽かったんだって思ってるよ。


何て言うかさ……両親以外に

“離れて辛い相手が居る”事すら知らなかった昔の方が

(むし)ろまだ楽だったのかも知れないって……」


《――疲れからか

つい複雑な心境を吐露(とろ)してしまった主人公。


だが、そんな主人公に対しメルは――》


「……主人公さんの(おっしゃ)られる様に

沢山の大切な人達との別れも有りましたし

私もとっても寂しいですっ……でもっ!

その全てが建設的な物だったと思いますし

その全てが、主人公さんや私達の思う大切な人達の幸せを

(はぐく)む”(ため)の別れだったと思うんです。


それにきっと……いえ、絶対にまた会えますっ!

だから寂しく思う必要なんて無いんですっ! ……」


《――そう言ったメルの言葉に

(わず)かに涙腺を(ゆる)ませてしまった主人公は――》


「やっぱりメルは凄いな……有難うメル。


てか、旅のリーダー任されてる俺が

こんなに励まされてばかりじゃ駄目だよな! ……よぉ~しッ!!

出来るだけ急いで、一刻も早く

“温泉旅館エリュシオン”とやらに辿(たど)り着くぞ~ッ!! 」


「はいっ♪ 私も手伝いますから一緒に頑張りましょうっ! 」


《――仲間に支えられ

励まされ、その優しさを受け取り……少し肩の荷が降りたのか

それとも……(ただ)の空元気であったのか。


この後、ひたすらに荷馬車を進めた主人公の顔からは

いつの間にか“迷い”が消えて居た。


……この後、丸三日を掛け

荷馬車での寝泊まりを繰り返しつつ、目的地である

“温泉旅館エリュシオン”を目指しひたすらに進み続けた一行

そして、備蓄食料も心許無(こころもとな)く成り始めた頃。


(つい)に――》


………


……



「ほ、本当だッ!!

……これこそ(まご)う事無き“旅館”だッ!! 」


《――眼前に(そび)え立つ“温泉旅館エリュシオン”を見上げ

そう感嘆(かんたん)の声を上げた主人公。


……仲間達が荷馬車を降り、背伸びをしたりあくびをしたりと

長旅の“コリ”を取ろうとして居た一方で

(なお)も興奮状態な主人公は

“旅館”へと飛び込む様に入館し――》


「す、凄いッ! 中も完全に温泉旅館の(たたず)まいだッ! 」


《――と、疲れなど吹き飛んだかの様に

飛び回る様に其処彼処(そこかしこ)を見て回って居た。


一方、過度な興奮状態の主人公の様子を

彼の(そば)で満足そうに見つめて居た仲間達。


そして、そんな一行の様子を

更に遠くから不審そうに見つめて居た一人の女性は

直後、意を決した様にそっと主人公に近付くと――》


………


……



「……よ、ようこそ温泉旅館エリュシオンへ!

わ、私は当旅館の若女将……エリアスと申しますっ!

ご利用は初めてですか?

そ、その……何名様でご利用に成られますか? 」


《――と、主人公に対し緊張気味に声を掛けた。


彼女は金色に輝く髪を(かんざし)(まと)

着物に身を包んだエルフ族の女性で――》


「き、着物ッ?! ……っと、失礼しました!

えっと、俺達はサーブロウ伯爵の紹介で……」


《――主人公が其処(そこ)まで言い掛けた所で

エリアスと名乗った若女将は――》


「あっ! ……成程(なるほど)

だから貴方様も着物の様な物をお()しに成られているのですね!

今“シゲシゲ”をお呼びしますのでお待ちになって居て下さいねっ! 」


「シ、シゲシゲ? ……はい! 宜しくおねがいします!! 」


《――若女将(エリアス)はそう言うと旅館の奥へと消えて行き

(しばら)くの後、一人の老人と

数人の従業員らしき者達を連れ一行の元へと舞い戻った――》


………


……



「エリアスさんや、伯爵の御友人と言うのはこの方々かな? 」


《――現れるなりエリアスに対しそう(たず)ねたのは

彼女が“シゲシゲ”と呼んだ老人であった。


……明らかに日本人と言った様子の風体

見た目から察するに年齢は九〇代後半と思われる彼に対し

主人公は――》


「あ、あのッ!……サーブロウ伯爵の紹介で

こちらの旅館を(たず)ねる様、言われまして

その……俺が求める情報を得る(ため)には、伯爵からでは無く

“本人に聞くのが一番”との事だったので

(たず)ねしたのですが……確かに完全に旅館ですし!

エリアスさんのお(めし)に成られて居る着物も

完全な和服ですし! ……」


《――と、興奮冷めやらぬ様子で矢継(やつ)(ばや)に話した主人公。


だが、そんな主人公の話し振りに

エリアスの連れて来た老人と従業員達の表情は

見る見る内に強張(こわば)り、警戒心を(あらわ)にし始めて居て――》


「話の途中ですまないが……少年

話し振りにしても、着て居る物にしても……まさかとは思うが

サーブロウ伯爵は全ての正式名称を御主に話したのか? 」


《――この瞬間

主人公に対し、そう少々高圧的に(たず)ねたのは

老齢なエルフの従業員で――》


「へッ? い、いえいえ! そもそも俺が既に知ってただけで! ……」


《――と、(こた)えた主人公

だが、そんな彼の発言を(さえぎ)ると――》


「ほう……では御主が着ているその着物だが

一体何処(どこ)で手に入れた? ……誰が製造をした?

そもそも御主達は一体何者なのか、全て答えて貰おう」


《――と、尚更(なおさら)に高圧的な態度で

(なか)ば“尋問”の様な雰囲気で(たず)ねた老齢なエルフの従業員。


一方、そんな彼を(たしな)めた若女将のエリアスは

一行に対し――》


「もう! ボルグさんっ! ……少し押さえて下さいっ!

とっ、取り敢えずは大部屋を用意致しますので

続きはそちらで……って!?


う、後ろにいるのは……ゴブリンっ!? 」


《――エリアスがそう慌てるや否や

引き連れて居た従業員達は一斉に警戒態勢を取った。


だが、その間に割って入った主人公は警戒する彼女達に対し――》


「ま……待って下さいっ!

ゴブリンに対する憎悪とか恐怖とか警戒心は分かりますけど

彼らは“その手”のゴブリンとは違います!

彼らは俺達の大切な仲間なんです。


……絶対に人間やその他の者達に対して危害を加えません!

(むし)ろ仲良く出来る子達なんです!

だから(ほこ)を収めて下さい! ……お、お願いしますッ!! 」


《――そう言ってエリアス達に対し深々と頭を下げた主人公の

必死な様子に、警戒こそしたままではあったが――》


「わ、分かりました……では取り敢えず

大樹(たいじゅ)の間へご案内します……どうぞ」


《――直後


彼女(エリアス)の案内に()り“大樹(たいじゅ)の間”へと通された後

旅館側との話し合いの場が“(もう)けられはした”


だが――》


………


……



「まず最初に……何故(なぜ)正式名称を知っている?

何故(なぜ)着物を着ている? ……何故(なぜ)シゲシゲを(たず)ねて来た? 」


《――と、大層警戒した様子で

主人公に対し矢継(やつ)(ばや)に質問した老齢なエルフ

もとい“ボルグ”――》


「で、ですからそれは! ……」


「……いや、聞かずとも想像はついた

彼奴(サーブロウ)所詮(しょせん)は人間だ、(みずか)らの()に成ると踏んで

約束を(たが)えただけの事だろう……」


《――と、(みずか)らの判断で

真実とは異なる発言をし始めたボルグ……一方

そんな彼に対し――》


「だ、だから……違いますッ!!!

サーブロウ伯爵は断じてそんな人では有りません!!

彼は心根の真っ直ぐな(しっか)りと筋の通った方です!

そもそも……エルフ族はとても知的な種族の筈

俺の説明を最後まで聞いてから答えを出しても

決して遅くは無い事位お分かりの筈ですッ! 」


《――と、凄まじい剣幕で言い放った主人公に

旅館側の者達は警戒し、(ふところ)の武器に手を掛けて居た。


だが――》


「それは失礼した……では、続きを聞かせて貰いたい」


《――と、ボルグが主人公に対し頭を下げた事で

その様子を見た旅館側の者達は皆(ほこ)を収め

そして――》


「ええ、では全て説明をさせて頂きます……が

その前に二つ程、確認をしたい事が有りまして……


……宜しいでしょうか? 」


《――(わず)かに息を整え、そう(たず)ねた主人公

直後、ボルグから質問の許可が降りると――》


「では一つ目の確認を……そちらにお座りに成られている御方が

伯爵がお世話になったと言う方で間違い有りませんか? 」


相違(そうい)無い……この旅館の全ては

此処(ここ)に居る“シゲシゲ”の知識が元に成っている」


「ありがとうございます……では、二つ目の確認に(うつ)る前に

一つだけお願いがございまして」


「何かね? 」


「その……“シゲシゲ”さんにだけ確認したい内容なので

出来れば一度二人きりにして頂けると……」


《――と主人公が言うや否や

ボルグは――》


「御主、シゲシゲに何をするつもりか

サーブロウの名を出し我々の信頼を得たつもりかも知れないが

今日現れたばかりの得体のしれぬ者と

シゲシゲを二人にするなど断じて受け入れられない! 」


《――ボルグがそう言うや否や

旅館側の者達は再び警戒心を(あらわ)にしてしまい――》


「わ、分かりました!

かッ……確認したい事は後回しにします!

ですからそんなに興奮しないで下さい! ……あッ!

そ、その……サーブロウ伯爵からシゲシゲさんに渡す様

(ことず)かった物が有りまして! ……これなんですが」


《――と、この場の空気を変える(ため)

主人公は静かに箱を差し出した……だが、その一方

差し出されたその箱を(ひど)く警戒しつつ

魔導らしき技で中身の“検査”をしたボルグ。


……(くど)い程に確認をした後

恐る恐る箱の蓋を開け、ボルグが中身を取り出した瞬間――》


「おぉ~っ! これは見事な“備前(びぜん)焼”じゃのぉ~?!

伯爵め……相当に腕を上げた様じゃな! 」


《――と、焼き物に目をやりつつ嬉しそうにそう語ったのは

これまで旅館の者達から“シゲシゲ”と呼ばれて居た老人で――》


「えッ?! その名称を知ってるって事はやっぱり……」


「ん~? ……その“名称”じゃと?

お前さん、もしやとは思うが……ワシと同じく

“ヒートシンク”に成って“飛ばされた”のかのぉ? 」


《――そう主人公に対し(たず)ねた

老人、もとい“シゲシゲ”……一方

(たず)ねられた主人公は――》


(ん? ……ヒートシンク?

一体何故(なぜ)に今この老人は“機械等の冷却部品の名称”を?

いや待てよ? ……“飛ばされた”とも言ったよな?

もしかして俺で言う“トラック転生”みたいな事で

“ヒートシンク転生”みたいなのがあるのか?!

いや違うな、意味不明過ぎる……


……“ヒートシンク”……“老人”……ハッ!! )


《――直後

何かに“気付いた”様子の主人公は

“シゲシゲ”に対し――》


………


……



「それ……“ヒートショック”だと思うんですがッ!! 」


《――と

“ツッコミ”を入れたのだった――》


===第八二話・終===

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