第八〇話「一からやるって楽勝ですか? 」
《――日之本皇国への帰路に就いたオベリスク
だが、ミカドの落胆振りは凄まじく
そんな彼女の様子に申し訳無さそうにして居たテル。
だが……本来、一行が訪れる数時間前までは
テルの説明通り海賊達はこの小島を拠点として使用して居た。
……にも関わらず
一行が海賊達を取り逃がす事と成った原因は
一行の訪れる、その“数時間前”に有った様で――》
………
……
…
「ま、不味いですぜッ!! 」
《――去る数時間前
小島へと到着するや否や
島の海賊達に対しそう言った一人の海賊
寛いで居た海賊達から“何の騒ぎか”と訊ねられ――》
「そ、それが……一隻殺られちまったみたいなんですが
生き残り共が言うには、船員のガキが二名程連れて行かれたそうで
連れて行った奴らは何かの情報を集めてたらしく
不味い事に、そのガキ共はどうやら
“この場所”の事を知って居るらしいんでさぁっ! 」
《――この者がそう告げた瞬間
島で寛いで居た海賊達は一気に慌ただしく成った。
だが――》
「貴様ら黙れ! ……其奴らの目的地は何処だ? 」
《――慌てふためく海賊達を一喝し
そう訊ねたのは海賊の長らしき者であった――》
「生き残り共の話だと、方角的に恐らく“例の国”かと……」
《――直後、長の迫力に少々怯えつつそう返した男
すると――》
「不味りやがって!!! ……あの国は
つい最近、海軍の軍備を増強しやがったんだぞ?!
その上、ガキ共がこの島の構造でも話しやがったら
砲弾の雨あられで遅かれ早かれ俺達は一巻の終わりに成っちまう
テメェら“ボンクラ共”はその事を理解ってやがるのか?!! 」
《――そう激昂した海賊の長。
そして、この直後“生き残り達”を並ばせると
即座にその者達を撃ち殺し――》
「チッ……気に入らんがこの島を捨てる
其奴らへの借りは何れ返す……だが今は撤退だ
幸い島はまだ幾つか有る、どれもゴミみたいな島だが
例の国に掛け合えば遣り様は幾らでも……って。
……テメェらッ!! 何をボーッとしてやがる?!
ボンクラ共がッ!! ……出港準備を急げッ!!! 」
《――こうして
“本拠地”は放棄される事と成ったのだった。
一方、日之本皇国へ帰還した後
再び居城へと戻り、再度テルから細かな情報を聞き出そうとしたミカド
だが……テルは既に
知る限りの事を全て話して居た様で――》
………
……
…
「分かった……ならば先ずはテル君を送り届けよう」
《――そう言って主人公に対し転移魔導を行う様頼んだミカド。
直後、報奨の入った袋を持ち
主人公の肩に手を置いた彼女は
テルを含めた三人で彼の家へと転移し――》
………
……
…
「……テル君のお陰で有力な情報が得られた事、感謝する
少ないかも知れないが、これを報奨として受け取って欲しい」
《――母親に対しそう告げ、袋を手渡したミカド
だが、その様子を間近で見て居たテルは
自らに対する評価の高さを否定するかの様に
何かを言い掛けた、だがミカドはそれを遮り――》
「有り難うテル君……君の協力に感謝する」
《――彼に“続きを語らせない為”そうしたのだろう
この瞬間、その独特な雰囲気を察したテルは口を噤み
直後、ミカドは主人公に対し
居城へと戻る様頼んだのだった――》
………
……
…
「……手間を掛けたね主人公君。
それから……彼の母親との約束を護り
我が国の海軍までをも救う事が出来たのは
ギュンターさん、貴方の咄嗟の判断力に依る所だ。
本当に……心から感謝しています。
……それ故、本来ならば
この“約束”も護るべきなのだが……」
《――其処まで言い掛けた所で
俯き……拳を強く握り締め
自らの太腿を強く叩いたミカドは――》
「心苦しいが、言わせて貰う……感謝はして居る
して、いるが……私の要求は満たされていない
任務が失敗に終わった以上
私は主人公君の欲する情報を渡す訳には行かない。
……そして、貴方達にこのまま立ち去る事を許す訳にも行かない
我が国の国防に関わる“機密”を知った以上は
貴方達には……もう一方の要求を飲んで貰う他無いのだ」
《――ミカドは感情を押し殺した様子で一行に対しそう告げた
この瞬間、彼女の言った“もう一方の要求”
それは――》
「ギュンターさん……貴方にはこの国の防衛力と成って頂きます
貴方が先程見せた咄嗟の機転
そして、技術と知識……何れに置いても
現在、我が国が最も手に入れるべき物だと考えて居るし
それらを全て持ち合わせて居る貴方を
私は何としても手に入れたい……無論タダでとは言わない。
主人公君の欲する“サーブロウ伯爵”の情報について……」
《――そう要求する彼女を遮る様に
“約束が違う! ”……とミカドに対し怒りを顕にした主人公。
だが――》
「もう一度だけ言う……任務は失敗したのだ!!
許せとは言わない……私が間違って居るとも分かって居るッ!
だが、だとしても! ……このままでは
我が国は滅亡の危機を回避出来ないのだッ!!! 」
《――これまで押し殺して居た筈の感情を顕に
そう言い放ったミカド……一方、そんな彼女を暫く見つめた後
ギュンターは――》
「私めの技術や知識を高く買って頂けるのは光栄です……が
ミカド様はどうやら、ご自身の根本的な“間違い”を
認識して居られないご様子ですな? 」
《――と言ったギュンターに対し
ミカドは不機嫌極まる様子で
“私の間違いだと? ”
と訊ね――》
「ええ……唯の間違いでは御座いません
“大”間違いで御座います」
《――そう、強く念を押す様に返したギュンター
直後、眉間にシワを寄せたミカドに対し
彼はさらに続けた――》
「あくまで、仮に“そう成った”と仮定してのお話ではありますが。
……私めがこの国に残り
この国の海軍力の一部と成ったと致しましょう。
先ず、ミカド様が最も危惧しておられる
“海賊問題”が最悪の想定で進んだ場合、海賊達は
この国の外周を囲み一斉に襲い掛かる様な戦法を取るでしょう。
もし仮にそうなれば、先ず間違い無く
私めが防衛する事の出来る海域以外は
壊滅的な被害を被る事に成るでしょう。
……これが幸運なのか不運なのかは存じ上げませんが
私めは一人しか居りませんので、只今ご説明差し上げた
“最悪の結末”は想像に難くない筈で御座います。
にも関わらず……失礼とは存じますが
この際ハッキリと申し上げさせて頂きます。
ミカド様ご自身もご存知の様では有りますが
この国の有する海軍力は、現状ミカド様が仰られる
“お飾り海軍”……つまりは“赤子同然”の練度で御座います。
……その様な軍の中に私めが兵として加わった所で
この国の海軍力を引き上げる要因には成り得ません。
ですが……」
《――ギュンターが其処までを語った頃
彼の言わんとする事の全貌をディーンだけが理解して居た。
直後、全てを察したディーンは主人公に対し――》
「主人公……ギュンターの代わりに私が先に謝って置こう
私達は少しの間、この国に留まるらしい。
……君との約束を違える選択と成る事を謝る
本当に……すまない」
《――そう言った、だが当然
これに強く反発した主人公……すると
ギュンターは――》
「主人公様……どうか私めの説明を最後までお聞き下さい
私めは何もこの国の“兵”に成るのでは有りません
これは、この国の海軍力の増強を考えての事なのです。
……私めの持てる技術や知識を用い海軍兵達を再教育し
この国の海軍力を育成すれば、後々私めがこの国を去ろうとも
この国は自力で国を護る事が出来る様に成るのです。
そうすれば、ミカド様の憂慮も消え去り
主人公様が憂慮為さって居た
テル様、サナ様の生活をもお護りする事が叶うので御座います。
主人公様……私めを含めたディーン隊全員の命は
皆、主人公様に救われた物で御座います……成ればこそ
私めがこの役目を引き受ける事で
主人公様がお目指しに成られて居た
旅の“最終目標”を達成する為の手助けと成れるので御座います。
……私めに取って、これ以上の幸運は御座いません。
無論、心優しい主人公様にはお辛い決断かと存じますが
私めを含めたディーン隊の力をどうか信じ
私めの決断をお許し頂けないでしょうか? 」
《――そう告げ、深々と頭を下げたギュンター
長い静寂の後――》
………
……
…
「ミカドさん……最低何ヶ月とかの区切り
取り決め、契約……どう呼んでも良いですが。
……絶対に護って頂けますね? 」
《――ミカドに対し
少々語気を強めそう訊ねた主人公――》
「ああ、勿論だ……だが
一度約束を反故にした私の言葉では
真には信用出来ぬのでは……」
《――そう問うたミカドに対し
主人公は――》
「で、あれば……失礼な言い方に成るかも知れませんが
俺の“想い”を聞いて貰っても良いでしょうか? 」
《――そう訊ね
これをミカドが了承すると――》
「俺、ミカドさんの国を想っての行動とか
護ろうって気持ちに関しては
紛う事の無い本物だと信じて居るんです。
ですが、俺が仲間の事を大切に想って居る
“護る”って気持ちは、そんなミカドさんの想いさえ
いとも簡単に超える位強いって断言出来るんです。
だから……どうか護って下さい。
国も、約束も……」
《――ミカドに対しそう告げた主人公。
この時彼が――
“失礼な言い方になるかも知れませんが”
――とまで前置きをして発したこの発言が持つ“真意”に
直ぐに気が付いたミカド……主人公は
彼女に対し――
“約束を違えるならば
日之本皇国全土と刺し違える覚悟すら有る”
――そう断言して居たのだ。
そんな不遜とも、宣戦布告とも言える発言をした主人公の
“警告”に――》
「ああ……肝に銘じよう
君の優しさをこれ以上“侵害”したりはしないと」
《――そう宣言したミカドの目を暫くの間見つめた後
少し安心した様子の主人公は、一筋の涙を流した。
そして……この国に残る事を選んだ者達に対し
暫しの別れを告げたのだった――》
「ディーン、ギュンターさん……タニアさん
お互いに全員無事な状態での再会以外
選択肢にはありませんからね? ……絶対ですからね? 」
《――涙を拭いつつそう言った主人公
ギュンターはこれに対し――》
「心得ております……まだまだ若いつもりでおります故
“老衰”も有り得ませんのでご安心を」
《――と、冗談を交え返し
タニアは――》
「主人公様、その……私、滅多な事では
ディーン様以外の殿方を褒めたりは致しませんが。
あ、貴方のお顔は……悪くないですし
魔導の腕前も含めれば……そ、それなりにモテる筈ですわ!
そ、その事を心得て旅を続けてくださいませっ! ……では! 」
《――と顔を真っ赤にしながら主人公を褒め称えて見せたのだった
恐らくは彼女なりの別れの挨拶であったのだろうが――》
「な゛ッ?! ……そ、それを言うならタニアさんだって
誰もが認める程の美女なんですから
悪い男に騙されない様にお願いします。
と言うか、もしそんな奴が居たら俺は其奴を
“吹き飛ばして”しまうと思いますので……お願いします」
《――そう返した主人公の“本気度合い”に
タニアは照れて俯いてしまったのだった。
ともあれ、最後に残ったディーンは――》
「主人公……どうか安心して欲しい
ギュンターは教育者としても優秀だ。
その上、私達も手伝うのだからそれ程長く掛かりはしないだろう
直ぐに合流出来ると約束する……だが、私も寂しくはある
故に……全力で急ぐ事も約束しよう」
《――そう告げ
直後、二人は固い握手を交わしたのだった――》
………
……
…
「……では、私は約束通り
君達に対しサーブロウ伯爵の情報を伝えよう。
だが……本当に会いに行くつもりか? 」
《――暫くの後
主人公達に対し改めてそう訊ねたミカド。
だが――》
「ディーン達と離れる原因に成った程の情報です
たとえ使えない情報で有っても教えて貰います」
《――と、何かを勘違いした様子で
不遜に返した主人公に対し、ミカドは大層慌て――》
「い、いや……別に情報を出し渋っている訳では無くだね?!
もし君達があの“イカレた老人”に会うのなら
恐らく相当に嫌な思いをする事に成るのではと
私なりに気を使って! ……」
「あ~……そう言えば
最初に聞いた時もそう言ってましたよね?
と言うか、どの辺が“イカレた老人”なんです? 」
《――主人公がそう訊ねると
ミカドは何かを思い出し身震いをした。
……そして、怪訝な表情を浮かべたまま
主人公に対し、自らの経験した
“被害”を話し始めたのだった――》
「……私がサーブロウ伯爵と言う
あの“イカレた老人”と初めて会ったのは数年前の事だ。
私を含めた各地域の統括者達が集まり
国防や国政、その他様々な事柄を話し合う為
大きな会合が開かれた日の事だった。
……だが、私達が統括を任される理由は
その地域で最も“腕が立つ”事でね……故に
国防を考えれば、あまり長時間
自らの統括する地域を留守にも出来ない。
其処で、出来る限り各地域から離れず話し合いを行う為
専用の城を建てるべきだ……と常々話し合われて居たのだが
丁度良い位置に“伯爵家”と言うある程度身分の保証された者が
“立派な住居を構えた”……と聞いてね。
これ幸いと、その屋敷に集まり
会合を開く事を全会一致で決めたのだが……」
「其処がサーブロウ伯爵のお屋敷だったんですね? 」
「ああ……その日、私は他の地域の統括者達より少し早く到着し
会合が行われる予定の部屋へと案内された……だが
早く到着し過ぎた所為か、少し小腹が空き始めてね。
屋敷の使用人に対し“軽食の様な物を用意してくれないか? ”
と頼んだのだが……提供された食事を見て私は驚いた」
《――そう言うと再び“身震い”をしたミカドは
ゆっくりと深呼吸した後、再び説明を続けた――》
「て……邸宅を借りておきながら
こう言う事を言うのは少々お門違いとは思うが
仮にも“重要な客人”である筈の私に対し
あろう事か使用人は“腐臭を放つ豆”を持ち現れたのだッ!
……当然、私はそれに文句を言った
すると、その事を聞きつけたサーブロウ伯爵が
慌てた様子で私の元へと現れたから私は思わず奴を問い詰めたのだ。
“一体、使用人にどう言う教育をしているのか!? ”
……と。
すると奴は――
“ああ、これは発酵で御座います……体に良いのですよ?
匂いは確かに強いですが、癖になる味で御座いますよ? ”
――と、言った。
だが、どう見ても
腐って居るようにしか見えなかった為に
“その様なゲテモノは食べられぬ! ”
と明確に拒否をしたのだが
するとあの老人は残念そうに
“それならば……”
と、今度は“腐臭を放つ干からびた魚”を持って来たのだぞ?!
私が――
“どれもこれも腐って居るでは無いか!! ”
――と言うと
奴は――
“ですから……先程のは発酵で御座いますし
これも発酵した液に漬けた魚を天日で干し
栄養価や旨味を上げた、他では食べる事の出来ない
特別な物でございますよ? ”
――と、不思議そうな表情を浮かべ
あろう事か反論をしたのだ!
直後、私は思わず奴に対し――
“他”では無く“純粋”に食べる事の出来ない物であろう!
――と、怒鳴った。
すると奴は不満げに――
“では、臭わなければ良いのですね? ”
――と、少し不遜にも聞こえる態度を取り
今度は丸く、小さな物が数個入った皿を持って来たのだ。
当然その料理も初めて見る物だったのだが
その丸い小さな料理の上では
“向こうが透ける程に薄い紙”が独りでに“踊って居た”のだ!
これは決して嘘偽りや誇張の類では無く
“言葉通りの意味で”だッ!!
とは言え……これまでの物とは違い香りは格段に良くてな
空腹も限界だった私は“踊る紙”を脇に避け
それを頬張った……確かに、これは美味であった。
だが、奴は何故か此方を見て
ずっとニヤニヤと笑って居たのだ。
それを不審思った私が――
“何が可笑しい!? ”
――と問い詰めた所
奴は――
“ミカド様はそれに使われて居る食材をご存知ですかな? ”
――と、言った。
私が知らんと答えると
奴は不敵な笑みを浮かべつつ一言――
“西の海で今朝、討伐されたばかりの
巨大八触手で御座います”
――と言い放ったのだ。
私だって巨大八触手位は知って居る。
私は……私は……それと知らぬ内に
あの様な化け物の肉を食わされたのだぞ?!
にも関わらず、それと分からぬ様に偽装し
私に提供した奴は、怒りに震える私に対し――
“食感がたまらんでしょう?
私はこれが一番好きな料理でしてね……”
――と、聞いても居ない己の好みを
何とも嫌味な口調で言い放ったのだ!
だがその事を責めようとして居た時
他地域の統括者達が到着し、その場は有耶無耶に成ってしまった。
唯……その後、会合の場で提供された茶は純粋に美味でな
これは私も気に入り、材料を聞いたが問題は無く
先程までのゲテモノ料理の“詫び代わり”にでもしておこうと
会合終わりにそれを煎れる方法まで教わり
茶葉……と呼ぶべきかは疑問だが“それ”を受け取ると
それ以上、事を荒立てず帰ったのだ。
……そして居城に帰り、その茶を煎れ楽しんで居たのだが
少々作り過ぎてな……翌日、再びそれを飲んだ辺りからだ
その……私は……は、腹を……下してな……」
《――少し頬を赤らめながらそう言ったミカド
一方……そんな彼女に対し大きな溜息をついた後
主人公は――》
「……先ず一つ目の豆は断じて腐ってませんし
恐らくそれは“納豆”です……確かに匂いは独特ですけど
その伯爵が言う通り信じられない位、体に良い物ですし
女性に取っては喉から手が出る程に嬉しい栄養素の塊です。
そして二つ目……“腐った魚”と仰った物ですが
それは恐らく“くさや”ですね。
確かにあれの匂いは強烈ですし、口に入れるまでが地獄ですし
上記二つは日本……いや。
“その地域”出身の人間でも少し好みが分かれるでしょうし
流石に提供する相手を選ぶべきとは思います。
ですが……“たこ焼き”に関しては美味しかったんでしょう?
そもそも、ミカドさんにとってはゲテモノ食材でも
“その地域”の人間にとっては立派な食材です。
それに“宵越しの麦茶は飲むな”って
教えてなかったサーブロウ伯爵も悪いですけど
ミカドさんがお腹を下した理由は
単にミカドさんの保存方法が悪かっただけです
冷蔵出来る環境に置けば
其処まで問題には成らなかった筈です。
あと……俺の話し振りで分かったと思いますけど
サーブロウ伯爵についての情報は俺達に取って凄く有用です。
ご理解頂けたなら……知ってる限りの情報を全て教えて下さい」
《――友との別れに苛立って居たからか
此処まで涙目で語り続けて居たミカドに対し
そうキツく言い放った主人公。
一方、そんな主人公の態度に圧倒され
固まって居たミカドは暫くの後
我に返ると――》
(な、何やら私は主人公君を怒らせてしまったのだろうか?
だが、一体何故私が怒られているのだろう? ……)
「……とっ、兎に角約束は約束だ!
此処まで聞いてその反応ならば恐らく大丈夫だろう!!
サ、サーブロウ伯爵の邸宅は……」
《――色々と纏まりがつかない様子のミカドではあったが
直後、サーブロウ伯爵邸の場所を地図に記し
その地図と、大門を通る為に必要な
“通行手形”を主人公に手渡すと――》
「そ、その……何故かは分からないが
何れにせよ私は君に謝るべき様に思う。
色々と……すまなかった」
《――そう言ったミカド
一方、主人公は肯定も否定もせず
“ありがとうございます”と、だけ返し――》
「……では、そろそろ俺達は行きます。
ディーン……ギュンターさん、タニアさん
勿論ミカドさんも……どうかお元気で」
《――そう、妙にあっさりと挨拶を済ませると
やけに急ぎ足で荷馬車に戻り、皆を引き連れ
見送りに立ったミカドやディーン達の方を振り返りもせず
地図の邸宅を目指し進み始めた主人公。
無論、日本的な物を見つけ喜んで居る訳では無い様子。
一方……仲間達は皆その異様な態度に何も言えず
唯唯、主人公の決定に静かに従ったのであった――》
===第八〇話・終===




