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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第二章

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第六十三話「信じる者は救われ?掬われ?……取り敢えず楽な方でお願いしますっ! 」

《――洞窟探検をえ、次なる目的地へと向かった一行。


……だが、道のりは長く

数週間に渡りオベリスクに揺られていた一行は

消費量の増えた“備蓄びちく食料の残量”に頭を悩ませていた――》


………


……



「う~ん……どうするかなぁ。


次に辿たどり着いた場所でちょっと多めに食材買っておかないと

この調子だと足りない可能性が高いな……」


《――オベリスクの保管庫を眺めながらそうつぶやいた主人公。


一方、アリーヤはそんな彼に対し申し訳無さそうに――》


「……迷惑かけてすまないねぇ

何処かで野生動物でも狩れそうな所があれば良いんだがね……」


「い、いえいえ! ……食材に困らない位

“お金の備蓄びちく”はありますからお気遣い無く!


……なので、次の国なり村なりを見つけたら

出来るだけ多めに買っておきましょう! それで解決する問題なので! 」


《――などと話しつつオベリスクに揺られていた一行


道なりに続く道を進み続け……日も落ち掛けた頃

遠くに明かりが見える事に気が付いたギュンターは

速度を上げその場所を目指した、すると……


……見えて来たのは立派な門構えの大きな村であった。


直後、村の付近へとオベリスクを停めたギュンター

周囲を警戒しつつ下船した一行は、村の周囲を確認した……だが

明かりこそ見えるものの、門番らしき者は居らず――》


………


……



「すみませ~~ん! ……旅の者なんですが~!

……料金はお支払いしますので食材をお譲り頂けませんでしょうか~! 」


《――村に向けそう呼び掛けた主人公

村の奥に人影の様な物は見えるが、彼の呼び掛けに答える者は無く……


彼が再度呼び掛けようとしたその時――》


「我が村に来客とは珍しい……丁度夕食の支度をしておりまして

応対が遅れてしまい大変申し訳ございませんでした。


……私はこの“神々の守りし村”の村長、キーンでございます

詳しいお話は夕食の席でお聞き致しますゆえ

ご遠慮なさらずどうぞ! 」


《――終始笑顔のまま、一行に対する警戒心など微塵みじんも無く

まるで待ち望んだ来訪者かの様に一行を出迎えたのはこの村の村長であった。


この後……念の為、そして“あらぬ誤解”を受けぬ為

アリーヤらを船内に残し、村へと入って行った一行は

村“集会場”の様な所へと案内され

集まって居た村人達からこころよく迎えられた。


そして……村長と同じく

村人達は警戒心も無く待ち望んだ者達かの様に一行を扱った。


だが……余りにも“無害むがい過ぎる”この扱いに

一行の心にはわずかながらの警戒心が芽生え始めていた。


その一方……一行が席についた頃、村長は村人達と共に

遠くに見える山の方角へ向かい祈りを捧げ始めて居て――》


………


……



「……神々よ、新たな出会いを感謝致します。


我らに新しき知識やみのり、幸せをえずお与え下さる神々に

心からの感謝と祈りを捧げます……」


《――暫くの後、祈りも終わり

一行の前には温かい食事が運ばれた。


……だが、この時点でも警戒をゆるめては居なかった一行

タニアは食事に毒物等が混入していないかを村人達に感づかれぬ様

秘密裏に確かめた……だが、それらしい細工はほどこされて居らず

これに安心した一行が食事に手を付けようとしたその時。


村人達は“再び祈り始めた”――》


「……神々よ、我らと隣人に糧を与えてくださり感謝致します


我らの……」


《――再び始まったこの祈りはとても長く

湯気の立ち上がるスープが適温を少し下回る程であった。


……ともあれ。


暫くの後……祈りも終わり、村人を含め皆が食事を始めた頃

主人公に対し唐突とうとつに質問をした村長――》


「所で、村の入り口でおっしゃられていた件ですが……」


「ええ……でもその件の前に皆を代表してお礼を

豪華なおもてなしに心から感謝致します」


「いえいえ、これも“神々の教え”ですから……それで主人公様

入り口でおっしゃられていた件についておたずねしたいのですが……」


「ええ……その、俺達は旅の途中なんですが

備蓄びちく食料の残りが心許無こころもとなくて……勿論

正当な対価はお支払いしますので

備蓄びちく可能な食料があればお譲り頂けると助かるのですが……」


《――そう頼んだ主人公に対し、笑顔でこれを快諾かいだくした村長。


だが……主人公が“対価”をたずねると首を横に振る

その意味を理解出来ずに居た主人公に対し

村長は笑顔でこう答えた――》


「……対価など必要ございません“神々の教え”がございますので。


そもそも……食料は余りある程にございますから

どうぞ好きなだけお持ちに成って下さい」


「えっ? ……でも、俺達は何かしらのお返しをしないと

駄目な気がするんですが……」


「おお……何と心根のお優しい旅人様でしょう。


……では、お返しを受け取らせて頂くと致しましょう。


ですが、我が村にはお金も労働力も必要ございません……」


《――ここまで聞き、主人公は警戒をした。


だまちでもするつもりなのでは無いか”……と。


……だが、続けて発せられた村長の言葉に

主人公の警戒心は良くも悪くも砕け散る事となる――》


………


……



「……皆様が旅の中で出会った国や村

その中でされたであろう様々な経験のお話を……少しで構いません。


我々の為にお話頂くと言う事で“お返し”とするのは如何いかがでしょう? 」


「……へっ?

そ、そんな事で良いんですか? ……」


「ええ……ですが“そんな事”などと謙遜けんそんするのはおやめ下さい。


我々の村には他国や他の村の情報があまり伝わりませんので

外の事をお聞き出来ると言うのはとても幸運な事なのですよ……」


「そ、そうなんですね……じゃあ……」


《――この後、村人達に対し村の外での話を聞かせた一行。


村人達は話を一つ聞き終わる度に“祈りを捧げ”

その度に、一行の間には何とも言えない空気がただよったのだった。


ともあれ……この後、一行の話に対するお礼とばかりに

村長は――》


………


……



「……いや~素晴らしい話を沢山お聞きする事が出来ました。


これも神々のおぼしでございますな……っと。


夜もけて参りました……皆様に対し

“お話のお礼”と表現するのはすこし変かもしれませんが

おりしも今日は週に一度の

“神々が降臨こうりんなされる”特別な夜でございますので。


皆様も一度“神聖なる神々”にお会いしてみては如何いかがでしょうか? 」


「えっ? ……良いんですか? 」

(とは言ってみたものの“神が降臨? ”……そんなバカな)


「ええ……きっと驚きに成られる程の神々しいお姿で御座います!

おぉ……そろそろ降臨なされる時間です!

皆の者っ! ……祈りを捧げますよっ!! 」


《――村長がそううながすと

村人達は全員、先程の山へ向かい祈りを捧げ始めた。


そして……祈りの途中

村のうら若き少女達は村人達が祈りを捧げて居る山に向かい

祈りの一環いっかんなのか、神々にささげると言う“舞”を披露し始めた。


すると――》


………


……



「お~っ……ジーハマ、ジーハマ、チャンネー達の“舞”ルーミーすんぞ! 」


「レーオはギーミのチャンネーしでござる」


「オウフww……ダリヒーのチャンネーが正義!

これだけは揺るがなスww」


「……僕っちには全員ワイカワーでメシウマ! 」


「拙者は一番さいちー子がグッド……」


「コンロリ乙! 」


《――突如として山の方から聞こえて来た謎の声

意味不明な言語を話しているが所々日本語に聞こえなくも無い。


主人公は少し悩みつつも山の方を見ていた……すると

現れたのは人間の一〇倍は有ろうかと言う巨体を持ち

背中には“翼”体の周囲には神々しい“オーラ”など

まさに神と呼ぶにふさわしい風体をした者達が現れ――》


………


……



「今北産業! 」


「主語無くて草! 」


「オウフww……村人達よ、拙者達に出来事の説明ヨロ! 」


《――と、やはり少々理解に苦しむ言語を操る

神々と呼ばれしこの者達の質問に対し、村長は深くこうべれ――》


「……あぁ神々よッ!


再び我らの元へ降臨こうりん下さり感謝のいたりで御座います!

……この方々は旅のお方で御座いまして

食料に困って居られたので備蓄食料をお分けしようとしておりました」


「ちゃんと三行で説明出来てて草www! 」


「村長優秀すぎて草www! 」


「拙者はチャンネーの舞の続きが見たス! 」


「もちつけwwでも禿同www」


「ワロスwww……と、他に問題は茄子? 」


「も、勿論でございます……神々のご加護のお陰でとどこおり無く

何不自由無く、我々の村は幸福で御座います……」


「そっかそっか……その人達には取り敢えず

僕っちが直々に備蓄食料を山程与えとくわ――


“コマンド”


――


“備蓄食料AからEを……取り敢えず一〇〇個づつ地面に出現っ! ”


……って、出しておいて何だけど

この量は“あの荷馬車”じゃ持って帰れないな。


って事で――


“追加で荷馬車も出現っ! ”


――っと、これで良いかな?

さて、苦労したから、我ら神々の為の舞……アンコールキボンヌ! 」


「途中まで神、その後完全な職権乱用で草ぁww!

……でも拙者も見たいから村長、はよ! 」


「は……はい勿論でございます!

では娘達よ……神々に捧げる舞をもう一度! 」


「おっ! キタコレwww……」


《――その半分以上が理解不能と言うべきやり取りの後


一行の眼前には“備蓄食料”と書かれた……何処からどう見ても

“ダンボール箱”に入った食材が

荷馬車と共に山の様にうず高く積まれた。


一方……この光景に呆気あっけに取られていた一行と

山を背に村の少女達の舞を満面の笑みで眺めて居た“神々”達の妙な絵面

そして時折聞こえる神々の妙な“声援コール”と

両腕と体をブンブンと振り回す妙な動きに

“とても大きな違和感”を感じていた主人公……だが。


ここで不用意な発言をする事を得策と思えなかった主人公かれ

えて何も言わず、この状況をただ静観せいかんしていた――》


………


……



「……皆様、大いなる神々にも大変お喜び頂き

この村の村長としてとても光栄な一日と成りました事、感謝致します。


っと、主人公様のグラスが空ですね……どうぞ」


「あっ、そんなお気遣い無く! 自分で注ぎますから! ……」

(……しかし、あの神達の喋り方には違和感だけじゃなくて

妙な既視感きしかんを感じるんだよなぁ……


……“ヲタ臭”と言うか“業界臭”と言うか

何か変だけど……まぁ、黙っておくか……)


………


……



「……おっとっとその辺で! 」


《――賑やかで楽しい時間を過ごしていた一行と


“謎言語の神々”……村人達も皆喜び、村の娘達の舞を眺めつつ

主人公は自らのグラスに注がれた飲み物を口にした……して、しまった。


村長にって注がれたこの液体にはある成分が入っていた。

それは――


“アルコール”


――気づいた時には既に遅く、例にって

滑稽こっけいな酔っ払い方をする”主人公かれの様子を見た神々は――》


「テラワロスww」


「酒弱っwwww瞬殺で草www」


《――などと手を叩きながら爆笑し始め

村人達は喜ぶ神々を見て再び祈りを捧げていた……だが、そんな中

あっと言う間に酔っ払ってしまった主人公は、酒の所為か口を滑らせてしまい

つい先程“心に秘めておく”と決めた筈の考えを

神々に対し暴言をいたとも取れる口振りで――》


………


……



「ヒック! ……草に草を生やすとか馬鹿かとアホかと!!


てか……神々と言うか、いいトコ“ネ申”か……“ヲタ”だよね?


つか何故ダンボールがこの世界に?

てかすっげぇ見覚えのあるデザインの箱だけど……確か

GoGゴット・オブ・ゴッドだっけ? 基本無料ゲー……」


《――と、くだを巻く様に話し続けていた主人公。


だがそんな彼の発言をさえぎると

村長は、少々不機嫌な様子で――》


「……もしや神々の言語を完全に理解されているのですか?

であれば“草”の意味とは? ……」


「え? ……理解してるのかと思ってましたよ

と言うかそもそも、神々の言語と言うより少し古い“ヲタ語”と業界……」


《――と、其処まで言い掛けた主人公の発言をさえぎる様に

一人の神は慌てた様子で――


“だっ、黙れッ!! ……そ、その者は悪魔の手先だッ!

ろ、牢屋に閉じ込める事を命じる! ……あ、悪魔祓あくまばらいは……そ、その……


……我らがとりり行うから急ぐのだ! ”


――そう言い放った。


だが、主人公は更に――》


「……はぁ?


てかそもそもさっきの食料の出現だって魔導技で再現出来そうだし

大体あの基本無料ゲーの“大外れ”で出る備蓄びちく……」


「……主人公ッ!

御主が“何かを知って居る”のはわかった……だが、もう止めておけ

不味マズい状況だぞ……」


《――と慌てて主人公かれを制止したグランガルド。


周囲の状況は……彼の言葉通りであった。


……酒の所為とは言え

村人達のあがめる“神々”を侮辱するかの様な発言を続けた主人公

“神々”の一人が“悪魔の手先”だと指摘した彼の“暴言”は

村人達の一行に向かう視線を

“恐ろしい物”へと急激に変化させてしまい――》


「ぜ……全員牢屋に閉じ込めるんだッ!

全ては神々の為ッ!! ……」


………


……



《――暫くの後

主人公かれの失言にり村の牢屋へ押し込められた一行。


……だが、村人本来の性格がゆえ

それともこの村がながき平和に包まれて居たからなのか

いずれにせよ……一行は誰一人として装備を奪われず

そのままの姿で牢へと放り込まれて居ただけであった。


言うまでも無くこの状態ならば脱走も容易よういなのだが……


……“問題”は主人公の“酔い”であった。


この所の疲れも重なったのか……単に深夜がゆえ

酒は、主人公を深い眠りへといざなって居た――》


………


……



《――その一方


“ネ申”……もとい“神々達”は主人公の存在に疑問と恐怖を感じていた。


……皆、口々に村人達にさとられぬ様

主人公かれが指摘した通り

“業界用語”と“ヲタ語”を混ぜながら――》


「主人公とか言うアイツ、絶対……オタクの知識有るよな? 」


「いや、そもそも俺達みたいな“転生者”なのでは? 」


いずれにしてもあのままべらべらと俺らの秘密をバラされたら

“イカれた宗教の村”を平和で良い人だらけな信奉者の村に作り変えた

俺達の努力が無駄にならねぇか? 」


「そりゃそうだけど……あれ、黙らせるのムズくね? 」


「かと言って“殺す”のはちょっと気が引けるわ……

マジで何とか説得出来ないかなぁ……」


「いや……最悪るべきかもしれんぞ」


《――そんな内容の話をしていた。


一方、そんな事など知るよしも無い牢屋内では

数時間の後、酒の抜けた主人公が目を覚まし――》


………


……



「……ん、何だ?


何だか良く寝た感じはするけど……って、牢屋ッ?!


そ、装備は?! ……って、全部あるな。


ハッ! 皆はッ!? ……って、全員いるな。


どう言う事だ? ……てかどう言う状況だ? これ……」


「はぁ~っ……やっとお目覚めですか主人公さん。


本当、主人公さんにお酒は厳禁ですね……災難です、本当に」


《――周囲を見回していた主人公に対し

あきれた様子でそう言ったマリア――》


「えっ? そういえば確か……すまん、俺の所為で……」


「……思い出したか主人公よ。


吾輩の制止が遅かったとは言え、あまり褒められた酔い方では無かったぞ……」


「ガルド、皆……本当にごめん。


でもその……何故牢屋なのに装備が全然取り上げられてないの? 」


《――この質問に対し

ディーンは――》


「……何故かは私にも分からない。


だが、少なくとも“脱出は容易ようい”だと言う事だ

一応試したが、この牢には“魔導を封じる能力”も無い様だからな」


「そっか……でも、何だか嫌だな」


「……何が嫌なんです? 」


《――と、不思議そうにたずねるマリアに対し

主人公は――》


「いや……酒の所為とは言え

俺が不味マズい発言をするまでは丁寧で優しい村人達だった訳だし

出来れば手荒な脱出にはしたくないなと思っててさ。


でも、このままだと……」


《――と、何時もの様に頭を抱えつつ思い悩んでいた主人公を横目に

マリアはあっけらかんとした態度で――》


「……って言うか私

主人公さんが寝てた間に考えてた事があるんです。


何と言うか……正直、前からちょっとだけ思ってたんですけど

主人公さんと居るとかなりの確率で“牢に入れられるな~”って。


そもそも、政令国家でも主人公さん自身が牢に入れられてましたし? 」


「う゛っ痛い所を……でも、本当にすまない」


「いや、責めた訳じゃなくて……兎に角続きを聞いて下さい!


……で、色んな国で頻繁ひんぱんに牢屋生活だったので

暇な時間を有効活用して“脱獄の為の案”とか

脱出後、主人公さんが“戦いたく無い”……って言い出した時とか

しくは“戦える状況に無い”……って時などに備えて

ある種の“言い訳”みたいなのを色々と考えてたんですけど

どう考えても一番使えそうに無い

“夜中のテンション”で思いついたアイデアが!

この状況だと……抜群に“使えそう”なんですよ! 」


「夜中のテンションって……で、どんな作戦なの? 」


「それはですね~!


……皆さん、近くに寄って下さい。


ではまず、ゴニョゴニョ……」


《――直後

皆に対し“夜中のテンション作戦”を細部に至るまで説明したマリア。


だが……彼女の作戦は少々、荒唐無稽こうとうむけいにも思える物だった。


とは言え……村人達を傷つけず、無事にこの村から立ち去る為には

一か八かこの作戦に掛けるべきと判断した一行は……この後

牢屋内で綿密な“リハーサル”を行い……村人達の寝静まった頃

こっそりと牢を抜け出し、先程まで宴会の行われて居た場所に到着して居た。


だが……其処には、先程“神々のリーダー”が出現させた

うず高く積まれた“備蓄びちく食料”と“荷馬車”が放置されており

オベリスク船内の“残量”の危うさを考えた一行は

食料の前で立ち止まったまま、持ち去るべきか否かで迷ってしまい――》


………


……



「ん? ……脱獄だッ!!!


……追え~ッ!!! 神々の敵を……殺せぇぇぇぇっ!!! 」


《――村人に発見されてしまった一行。


直後、寝静まっていた村人達は全員飛び起き

見るからに“残虐な見た目をした武器”を手に持つと

必死に逃げる一行を鬼の形相で追いかけ始めた。


……だが。


突如として立ち止まった一行は

全員一斉に村人達の方へと振り返り――》


………


……



「静まれッ! ……静まれぇぇぇぇィッ!!! 」

(何か“時代劇”みたいなセリフ回しに成っちゃったけど……まあ良いか)


《――主人公の怒声とも取れるこの発言に

村人達はある一定の距離をたもったまま一行の様子をうかがった。


一方、そんな村人達に対し――》


「……ず、お前達の神を“偽神”の様に扱った事

それをびよう……すまなかった。


だが……貴様達の信じる神々にも

我らに対しての謝罪を要求するべきだと……我は思う」

(うぅっ……何か強烈に恥ずかしいけど我慢だッ!

頑張れ、俺ッ!! ……)


《――内心身悶みもだえつつも必死に演じて居た主人公かれのこの発言に

村人達は――》


「貴様っ! ……悪魔の手先が何を言うか!

……大人しく地獄へ落ちろっ! 」


「そうだそうだ! ……お前達の様な悪魔の手先には

神々から直々に悪魔祓あくまばらいをして頂こうじゃないか! 」


《――等と怒りをあらわにしていた。


だが、その発言を全て受け流すかの様に

余裕の表情を“少々大根な演技で”おこなって居た主人公。


……そして。


村人達の発言をある程度受け流した所で、彼は更に続けた――》


………


……



「……おろかな人間達には判らないのだろう。


何せ、我ら“神”にも判らなかったのだから……」


《――そう言い切った主人公。


だがこの発言に激昂げきこうする村人も多く――》


「この悪魔がぁぁぁぁっ!!!

このおよんで神の名をかたるつもりかッ!

死ねぇぇぇぇっ!!!! ……」


《――そう言うや否や主人公に対し石を投げつけた一人の村人


だが、この直後……石は主人公かれに当たる事無く

途中でね返され何処かへと飛んで行った……


……当然これに驚いた村人達は思わず後退あとずさりした。


この村に、これが“ただの防衛魔導”である事に気付ける者が

誰一人として居なかったお陰で……


……一方、そんな村人達に対し

主人公は――》


………


……



「……静まれと言った筈だ、愚かな人間よ。


我が愚かな貴様ら人間共にも理解出来る様

噛み砕いて説明してやろうではないかッ!! ……フハハハハハッ!!! 」


《――と、引き続き演技を続けていた。


だが……そんな彼に対し

マリアはこっそりと耳打ちをした――》


「あの~主人公さ~ん……演技に熱が入り過ぎですよ~

神って言うより“魔王”みたいに成ってますよ~

もうちょっと控えめにしないともっとこじれますよ~……」


「……へっ?

う、うむッ! ……そうだな!?


でっ……では……我が右腕の……てっ、天使マリアよッ!

我の代わりに説明を……頼んだぞッ! 」


《――そう言うと、これ見よがしに

グランガルドの用意した椅子へと偉そうに座ってみせた主人公。


一方、予定外に“たくされて”しまったマリアは――》


「……なっ?!


で、では……私が代わりにご説明致しましょう。


村人、もとい……人間達よ。


神は外界において本来その能力を隠している物なのです……その為

神同士でも、お互いを神と認識出来ない事は多々あるのです……」


《――精一杯“天使らしく”えんじ、説明をしてみせたマリア


そんな彼女の迫真はくしんの演技に

村人達の中にも彼女の発言を信じる者達が現れ始めて居た頃

一行の言い分を信用して居なかった者達も少なからず居た。


そして、その中の一人が――


“お、お前達が神や天使だと言うなら……証拠を見せろ! ”


――そう言い放った事で

マリアの説明を信じ掛けて居た村人達もこれに同調し始め

一行に対し“神である証拠”を要求し始めた。


……だが

これにマリアは優しく微笑むと――


“良いでしょう……では……”


――そう言いつつ主人公に目で合図を送った。


一方……若干緊張しつつも、彼女マリアの作戦の一つである

“神の力”を村人達に見せる為、ゆっくりと立ち上がり

村人達にバレぬ様、とても小さな声で魔導の詠唱をおこなうと

空中へと浮かび上がった主人公。


……そして、この光景を目の当たりにした村人達は

急激に“天使マリア”の発言を信じた……そして、一行に対し

最大級の祈りとも取れる“土下座”をしたのだった。


だが、その一方で……慣れない“神の力”……もとい。


“風魔導での空中浮遊”にバランスを崩した主人公は

急激に落下し……有ろう事か

周囲に轟音ごうおんと衝撃が響き渡る程の

盛大な“墜落ついらく”をしてしまったのだった。


当然、この凄まじい轟音ごうおんと衝撃に顔をあげた村人達

だが、咄嗟とっさに“超速移動”をもち

主人公かれのミスを隠したギュンターのお陰でどうにか事なきを得た一行。


だがこの直後……突如として村で発生した“大騒ぎ”に

一度は山の向こうへと帰った“神々”は再び現れ

“一行が牢に入って居ない”事を確認すると

“ギョッ”とした表情を浮かべ、直ぐに村長を問いただした神々。


だが、村長はそんな神々に対し――》


………


……



「神々よ! この者達、いえ……この方々はどうやら

“別の神々”であった様で御座いますッ!


と、言いますのも! ……」


《――と“神々”に対しマリアの受け売り通りの説明をし始めると

神々達はこれを大層疑い始めた……至極真っ当である。


……だが、それすらも織り込み済みだったマリア

作戦は“最終段階”へと移行した。


直後……疑う神々の疑念を含んだ発言をさえぎった主人公は

“神々の言語”もとい――


“業界用語とヲタ語を混ぜた言語”


――だけをもち

村人達にその内容が漏れぬ様、細心の注意を払いながら

神々に対し、ある“取引”を持ち掛けた――》


………


……



「……お前達が何処の異世界から飛んで来たのかは知らないし

一体どうやって“俺の異世界”に飛んで来られたのかも知らない。


けど、そもそもこの世界は俺の作った俺専用の異世界だ。


……ただ、それを今更どうこう言うつもりは無いし

出て行けとも言わないし、そもそも俺の発言を信じなくたって良い。


それに……お前達がこの村であがめられ

娘達の踊り見て喜んでその代わりに村人達を幸せにしてるってだけなら

俺は別にお前達の“真実”と“性癖”をバラそうとは思ってない。


ただし……俺達と敵対する、しくは

この“ある意味”純粋な村人達を傷つけるつもりならその限りじゃない。


兎に角……出来れば俺は大事おおごとにしたくないし

むしろお前達の前から大人しく消えたい訳なんだけど……


……どうしたい?

GoGあのゲーム”で“タイタンサーバーランク一位”取った俺と戦うか?

それとも……俺達の事を同じ“神々”だと認めるか? 」


《――主人公のこの発言に“神々”達は大層驚いていた。


この後、暫くの間話し合い……そして


一つの答えを出した“神々”


その“答え”とは――》


………


……



「ネ……ネ申キターーーーwww」


「な、仲間だったとはーーーwww」


「き、気づけない程巧妙に隠されてて……く、草ぁぁぁ! 」


《――“神々”は主人公の案に“全乗っかり”する事を選んだ。


だが……一方で大変なのは村人達であった。


……知らなかったとは言え

別の“神々”を牢に入れ、あまつさえ石を投げつけるなどと言う

大層無礼な行動を働いてしまったのだから。


そんな中、一人の村人が早合点はやがてんをし――》


………


……



「か、神々よ!! ……どうか愚かな我らの過ちに対する怒りをしず

我々の村に厄災やくさいを降らさず、先程の“備蓄びちく食料”


……い、いえ!“ささげ物”を是非にお受け取りを!!

そ、それで足りなければ“生贄でも”ささげますッ!


ですので……どうか……どうかっ! ……」


《――これにつられる様に

村人達は皆、一行に対し“平謝り”と成ってしまった。


だが……これ以上大事おおごとにするつもりなど無かった主人公かれ

これをこころよく受け入れ


即興演技アドリブ”で――》


………


……



「……神をうやまい、信心深くあろうとするお前達人間に

我ら神々は意味も無く罰など与えない。


……これまで通り互いをうやま

互いに別けへだての無いきよい生活を送るのだぞ……」

(……う~ん。


こんな感じで良いんだろうか? ……しかし、神様役って難しいな

“ヲタ神達”は良くこんなめんどくさい役柄やってるな……)


《――ともあれ。


この後、内心“一杯一杯”な主人公の発した名(迷?)台詞に

村人達は大層感動し……中には

涙を流しながら祈りを捧げる者達まで見られた。


そして……暫くの後、オベリスクへ

大げさに浮遊魔導をもちいて“ささげ物”を運び込んだ一行は

村人達の見送りを背に村を後にしたのだった――》


………


……



<――この日

マリアの“夜中のテンション作戦”がこうそうして

全員無事に脱出出来た事はさいわいだった。


だが、同時に俺の脳裏のうりには大きな“謎”が浮かんでいた。


転生時にマリアから説明された――


枯渇こかつ後の異世界転生者は自分の作った世界で生きて頂きます”


――と言う項目をあまりに逸脱いつだつしている

今回の村で出会った“転生者達の謎”……そして

オベリスクで面倒を見ている“アリーヤさん達の謎”


俺は……皆が寝静まった頃にマリアを呼び出すと

違和感を感じる事柄について全て打ち明けた。


だが……暫くの沈黙の後

マリアから返ってきた答えは――>


………


……



「ええ……私も薄々感じてました。


この世界は主人公さんと作り上げたあの日から

明らかに色々と変わって居る……むしろ“狂ってる”とも言える位」


「なぁマリア……もしくるってるとしたら

この世界は一体どうなって行くんだ? 」


「……私にも正直分からないんです

それが良い方向に向かって居るのなら良いんですけど……」


===第六十三話・終===

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