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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝16万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第二章

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第六〇話「目標を見つけたら楽勝だと思ってました! 」

メリカーノア出国後


日之本皇国(ヒノモトコウコク)”の情報を頼りに、森の奥深くを進みながら

同時に森を占拠する魔族の捜索も(おこな)って居た一行


そして夜……投獄から数え、約一〇日ぶりの定期連絡


◆◆◆


「はい、本当にご心配をお掛けしてばかりで……」


「本当だよ全く! ……それと、(くど)い様だけど

オセロの利益、良い加減に主人公ちゃんも受け取りなっ! 」


「いッ、いえ俺は別に……と言うか発案料、凄い金額らしいですね」


「そうなんだよ……主人公ちゃんに貸したお金なんて

とっくの昔に上回ってる位さね、だから主人公ちゃんが……」


「いえ! ……だとしても、ミリアさんには

一生掛かってもお礼出来ない位の恩があるんです。

少なくとも俺はそう思ってます……だから

そのお願いは聞けませんッ! 」


「全く強情(ごうじょう)だねぇ……まぁ良いさ!

前も言ったが、帰って来たら

ウチの宿でずっと暮らしてて良いんだからね?

と言うより、主人公ちゃん達が住む専用の家を

一人に一軒建てられる程にお金が舞い込んでるんだけどねぇ……」


「えッ!? ……其処(そこ)までとは」


「なら……やっぱり受け取るかい? 」


「いえ! ……っと、そろそろ見張りの交代時間なのでまた明日! 」


「あぁ、怪我しない様にするんだよ! ……」


「はいッ! 」


◆◆◆


「……いや~それにしても、まさか

水を大量に買ってくれた“あの人”が

そこまで偉い人だったとはびっくりだよ……」


「ほら~! やっぱりもうちょっと高くしても良かったのに! 」


「マリアお前……引く程“ガメつい”な」


「骨までしゃぶり尽くすぞぉ~ガルルッ!

……って言うのは冗談ですけど、まぁ

私はミリアさんが(うるお)ってるならそれで良いんですけどね~」


などと話しつつ日之本皇国を目指して居た一行


◆◆◆


一方、政令国家では“ゲーム”の他に

バルン村名物の名水……通称“ミネラルウォーター”や

エルフ族お手製の“和装”などもムスタファの母国へ輸出される運びとなり

それらが国を上げての一大産業と成って居た頃……急遽(きゅうきょ)

母国での行事の(ため)、帰国する事となったムスタファは


「それでは皆様……特にミリアさん

貴女の作る極上の食事を(しばら)くの間口に出来ない事が

私に取って一番の不満ですが、それも……仕方の無い事なのですッ!


……くッ!! 」


ヴェルツで提供される

料理の(とりこ)と成ってしまって居た(ムスタファ)

母国の(ため)とは言え、余程(よほど)に悔しかったのか

目に涙を浮かべつつ、離れ(がた)そうにして居た。


だが、そんなムスタファに対し


「毎日来てくれてたもんねぇ……あたしも寂しいさ

だから、帰国途中に少しでも食べられる様

今日は少し多めに用意したよっ! 」


と、ミリアが差し出したヴェルツ特製弁当の量は凄まじく

並の成人男性ならば数ヶ月は持つのでは無いかと思われる程に

専用の荷馬車にうず高く積み込まれて居た。


これにムスタファは大層喜び


「なんとぉ?! ……ミリアさん!

もし我が国へお越しの際には、我が国でも最上級の

国賓(こくひん)待遇(たいぐう)”を是非ともお約束させて頂きたく思います! 」


そう、完全なる“職権乱用”を宣言した。


「国賓だなんて……光栄さねぇ~

主人公ちゃんが帰って来たら、その時一緒にお邪魔しようかねぇ! 」


「ええ、是非! ……ではラウド大統領

(しばら)くお会い出来ませんが、改めて今後とも

我が国との友好関係を末永(すえなが)く宜しくお願い致します」


勿論(もちろん)ですじゃ! ……所で

本当に護衛は一人も要らんのですかな? 」


「ええ! ……(じい)や直伝のこの構えがありますからっ! 」


例に()って

“大してキマって居ない構え”を皆に披露したムスタファ


直後……この場に居る皆の脳裏に浮かんだ“ある種”の不安感

だが、本人が必要無いと言う以上

無理に護衛を付けては失礼に当たると判断したラウド大統領は

“不安感”を完全に顔に出しつつも


「そ、そうですな! ……ではくれぐれもお気をつけて

無事なご帰国をお祈りしておりますぞぃ! 」


「ええ! ……(まつりごと)が片付き次第(しだい)

また直ぐにでも帰って来ます!


……ヴェルツの食事も恋しくなるでしょうし

今度は(じい)やも連れて来たいですしね……っと、いけない!

そろそろ旅立たねば……では皆様、また会える日まで~っ!! 」


そう言うと

ヴェルツ特製弁当がうず高く詰め込まれた荷馬車に乗り込み

ゆっくりと母国への帰路へと()いたムスタファ。


◆◆◆


この後……盛大に見送りをして居た政令国家の者達が見えなくなった頃

ムスタファは一人、荷馬車を(たく)みに操りながら

早速、ヴェルツ特製弁当を一つ開封し食べ始めて居た


「……やっぱり美味いっ!

それにしても素敵な国だったなぁ~政令国家!

流石(さすが)、主人公様の母国だ!


……我が国もあの国の様な姿を目指さねば!


だが……他国との争いをこれ以上続けて居ては

民達に本当の幸せが訪れる(はず)も無い。


……早く帰国し、政令国家で学んだ物事を

(じい)や達に相談しなければっ! 」


そんな決意を胸に

ヴェルツ特製弁当を一つ、あっと言う間に平らげたムスタファ


……そして、空になった空き箱を荷馬車の(はし)へと

静かに置いたかと思うと


「っと……ここら辺なら誰も見てないかな? 」


そう言って荷馬車を止めた、そして


「どれだけ信頼出来る国の人達であっても

“一枚岩とは限らない”……って(じい)やも言ってたし。


さてと……魔導通信――


――(じい)や、今から帰るから

正門前だけ防衛魔導を切ってて……うん、ありがとう。


転移の魔導:我が王宮・正門前へ――」


瞬間

荷馬車ごと母国へと転移したムスタファ

彼は“超長距離転移”が出来る程の攻撃術師(マジシャン)の能力を有していた。


◆◆◆


一方、日之本皇国を目指して居た一行は


「だぁぁぁ~~~っ! 主人公さ~ん!

ずーっと同じ様な道ばっかりで……(ひま)過ぎますよぉ~っ!! 」


と、船内で暇を持て余して居た。


どうやら、日之本皇国(ヒノモトコウコク)へ辿り着くまでには

相当な日数が掛かる様で


「あ~もう! 分かったから静かにしろってマリア!

って言うか……確かに恐ろしい程長い森が続いてますけど

ギュンターさん、地図では今どの辺になるんですかね? 」


「それが……地図上では大凡(おおよそ)この辺りなのですが

メリカーノアで新たに入手した地図と

私共が所持して居た地図を照らし合わせた所

どちらの情報も正しいとは言えず……妙なのです」


「えッ? ……それって大丈夫なんですか? 」


「……現在地の完全な把握は不可能ですが

周囲から危険な魔物の気配も魔族の気配も致しませんし

このまま進み続け、マギー様のご希望された

“森を襲う魔族共”の捜索と、その討伐任務も合わせて行いつつ

日之本皇国(ヒノモトコウコク)を目指す予定と成っておりますのでご安心ください。


……ただ、聞き及んだ限りですと

日之本皇国(ヒノモトコウコク)は遠い場所に存在する様ですので

それなりに到着までの日数は掛かる物かと……」


「えっと……どの位掛かります? 」


「正確には判断出来かねますが……三ヶ月は掛かるのではと

もし何処(どこ)かでトラブルが起きれば

それ以上掛かる可能性もございますね」


「うわ……相当遠いんですね」


「ええ、水ならば主人公様がお作りに成られるので問題ございませんが

食料は最低でも一度、何処(どこ)かの国や村で調達する必要があるかと思います

ですので、それも含めればその程度の日数を要する物かと試算致しました」


「そうですか……」


などと話して居た一行のその先

遥か遠くに薄っすらと見えて来た


“大きな門”


警戒しつつ近づいた一行だったが

其処(そこ)には門番も居らず門の扉は開かれて居た。


……(さいわ)いオベリスクが侵入出来る程の大きな門であった(ため)

そのまま門を潜り抜けた一行であったが

内部は“もぬけの殻”と言った状態で


「皆様、念の為警戒は(おこた)らずお願い致します……」


「……そうは言うがギュンター殿

領内には生物の気配が一切感じられないぞ?

この国は既に崩壊して居るのではないかと吾輩(わがはい)は思うのだが……」


そう、共に(かん)の鋭い

ギュンターとガルドのお陰もあってか

危なげ無く謎の国を探索して居た一行……だが。


領内を抜け、(しばら)く進んだ道の先


「皆さん……あれっ! 」


そう、遥か遠方で

(あらそ)う集団を()しながらそう言ったメル。


直ぐにオベリスクの速度を(わず)かに下げたギュンターは

(しばら)くの後、これが

人馬族(ケンタウロス)”と“牛人族(ミノタウロス)”の争いである事を知った。


この直後、彼らに気付かれぬ様

遠くからその様子を観察して居た一行……だが

野生の(かん)(ゆえ)か一行の存在に気がついた様子の二種族は

オベリスク目掛け急接近し、あっと言う間に

オベリスクの周囲を取り囲んでしまって


「何者だ?! ……荷馬車から降りろ!

従わなければ、不本意だが攻撃を行う事となる! 」


直後

人馬族(ケンタウロス)の男はそう言い放ち

素直にこれに従い、オベリスクから下船した一行……すると

マリーンを見た牛人族(ミノタウロス)の男は


「……貴様、魔族の匂いがするな?

まさか貴様ら……魔族の手の者かッ?! 」


言うや否や

この場にいる一行に対し武器を差し向けた、だが


「待ってくれ! ……まずは話をさせてくれないか!? 」


そう要求した主人公に対し

両種族は共に警戒を解かず居た……だが

人馬族(ケンタウロス)の長と思しき男が主人公(かれ)との会話を望んだ事で

事態は“不思議な方向へと”向かって行く事と成る


「……()ず結論から先に言っておきますが

俺の後ろに居る仲間達の誰一人として、魔族

もとい、魔王に(くみ)する様な人は居ません。


……確かにマリーンは半魔族ですが

彼女が危ない存在で無い事は俺の命を掛けてでも保証出来ます。


俺達は(ただ)、捜し物の(ため)に旅をして居るだけで

決して貴方達の平穏を乱そうとはしていない。


……もし、この地域に入った事自体が問題だったなら

迂回(うかい)するから大事にはしないで欲しい……どうでしょう? 」


そう丁寧に説明をした主人公

だが、人馬族(ケンタウロス)の長らしき男から帰って来た返答は

想像の“斜め上”を行って居た


「薄々そんな事だろうとは思ったが、一応確認をしたまでだ

怖がらせてしまったのなら謝ろう。


……だが、そんな事はどうでも良い!

そんな事よりも、お前達には

我らの勝負を見届けて貰いたいのだッ! 」


この想定外の求めに

主人公は(しばら)くの間“ポカーン”として居た。

だが、ふと我に返り


「えっと……どう言う事ですか? 」


と、至極真っ当な質問を投げ掛けたのだった。


ともあれ……この直後

人馬族(ケンタウロス)の長らしき男は主人公の質問に応える様に

(みずか)らの種族と、敵対する

牛人族(ミノタウロス)境遇(きょうぐう)を語り始めた


「……我ら両種族は見ての通り、その境遇(きょうぐう)が似通って居る

そして、居住に適した場所も似て居るのだ。


(ゆえ)に我ら両種族は戦い、奪い合う運命に……」


と、語る彼を(さえぎ)る様に

牛人族(ミノタウロス)の長らしき男は割って入り


「馬は馬屋で生活出来るだろうが!

我々の体は人間だが、貴様らは(ほとん)どが馬では無いか!!!

そもそもを紐解(ひもと)けば、貴様らが

我らの居住する場所を奪おうとしたのが始まりだった(はず)! 」


「何だとっ?! 我々の森に後から現れ勝手に家を建てッ!! 」


「まぁまぁまぁ!! お二人共落ち着いてッ!!!

あの、一緒に暮らすと言うのは……無理なんでしょうか? 」


主人公のこの質問に対し

両種族の長は激昂(げきこう)


「何を言うか!! ……こんな牛顔の者達が近くに居ては

我ら崇高(すうこう)人馬族(ケンタウロス)の格が下がる! 」


「……(なに)ぃっ?!

走りながら糞尿を垂れ流す様な体で良くも抜かす物だ! 」


「何をぉっ?!! 」


「い、いやそのお二方とも……あのッ! ……喧嘩は! ……」


両種族長同士の争いに

またしても火がついてしまった事で言い争いは続いた。


そして、それはとても長く


(……って言うかこれ、一体何の時間なのだろうか?

俺らにはそもそも関係ない争いだけど収まる気配も無い

てかそういえば、政令国家でもこんな事があった様な気がするな

今と成っては皆仲良く過ごしてるけど……懐かしいな

早く帰って皆にまた会いたいな……って。


……それにしても長いな?


てか……マジで何なんだ?


イライラして来たな……


……あ゛ッ~もうッ!!


知るかぁッ!!! ――)


「だから……喧嘩すんなって言ってんだろうがァァァッ!!! 」


この瞬間

突如として“ブチ切れた”主人公(かれ)の怒号に

両種族長同士の争いは止まり


「……あのですね、今から俺が

貴方達“愚かな”種族に対して少々説教させて貰いますけど……」


「何だと? 貴様、取り消さぬなら

我が(ひずめ)(サビ)にしてくれるぞ……」


「珍しく同意見だ、我が角の()やしに……」


「だから……黙って聞けってんだよアホ種族共!

まずは俺達を見ろ……(なに)か気付く事があるだろ? 」


この横暴とも言える主人公(かれ)の態度に

両種族の長は苛立(いらだ)ちつつも彼の言う通り、一行を見回した。


そして


「……多種多様な種族を引き連れ旅をして居るのは理解するが

貴様の無礼な発言を許すだけの理由には成らんぞ? 」


と、人馬族(ケンタウロス)の長

だが


「……いや、やっぱり理解出来てないよアンタ達

よく聞いてくれ、俺は別に仲間を“引き連れてる”訳じゃ無い。


仲間との信頼の元、上下関係無く

種族の差別も垣根(かきね)も無く

お互いがお互いの(ため)を思って

“協力”し“信頼”しあって旅をして居るんだ。


……それが、アンタ達は何だって?

どっちが上だのどっちが下だの

死ぬ程下らない問題で言い争って

挙句(あげく)()てに見ず知らずの俺達に対し

そんなつまらない上に全く意味の無い勝負の“見届人に成れ”と言う。


てか、そもそも俺達が本当に“魔族の手先”だったら

そんなつまらない勝負の見届けをして貰う(ため)だけに

わざわざアンタ達は“敵の攻撃範囲まで近付いた”事になる。


大体、アンタ達にはそれぞれの種族に()ける

良い所も悪い所もある(はず)だろ?

それが、何で相手の欠点ばかりを攻撃し続けて

何で全く協力出来ないのか

俺にはさっぱり理解出来ないんだよ。


……俺が納得出来る位の

真っ当な理由があるなら是非教えてくれよ」


苛立(いらだ)ちをぶつける様にそう言い放った主人公

直後、この問いに答える(ため)

重い口を開いたのは“人馬族(ケンタウロス)の長”で


「我らの争いを“下らん”と切り捨てるか……まぁ良い

貴様の暴言は不問にしてやろう、だが

貴様の言う“協力”など出来る訳が無い。


互いに、決して忘れる事の出来ぬ“負の歴史”があるのだぞ?

長きに渡る争いに決着をつけ

どちらかが正しいと決まるその瞬間まで……」


「だから……それが“下らない”って言ってんだよ

それに、それなら一つだけ聞きたい事がある」


「何だ? 失礼ついでにあと一つならば許してやろう」


「じゃあ一つだけ……


……アンタ達が俺達を“魔族の手先”だと勘違いした瞬間

たった今、アンタが協力出来ないと切り捨てた相手と

迅速に自然に陣形を組み、俺達を完璧に包囲したよな?


つまり、皮肉にも“協力出来て居た”訳だ。


……共通の敵さえ居れば協力出来るなら

下らない争いを止めて、一刻も早く協力関係を(きず)

いつか本当に訪れるかもしれない

“本物の魔族達との戦いに(そな)える”って気には成らないのか? 」


この主人公の指摘に

牛人族(ミノタウロス)の長は


「一理あると言えよう……だが

互いに負の歴史がある状況で過去の件に()びも入れず

その上、今日から“仲間だと認めろ”などと

(いく)ら防衛の為とは言え、遺恨(いこん)が残るとは思わないのか? 」


「その点が問題なのは俺だって分かるよ

けど俺は、俺を殺そうとした奴を牢に入れず

其奴(そいつ)の望み通り旅に出た身だ。


無論、俺にだってアンタ達の言う

遺恨(いこん)”が無かったとは言わない。


けどさ……いつまででもその“遺恨(いこん)”を理由に

互いに神経も体力もありとあらゆる物を削り合って……


……それ“楽しい”のか?


アンタ達は人間族より余程長生きなのかもしれないけど

それでもさ……命って、有限なんだぞ?

失われた人々は二度と帰ってこないんだぞ? ……」


主人公(かれ)は何かを思い出したかの様に

今にも泣き出しそうな表情を浮かべ

顔を歪ませながらそう言った……この、異様な雰囲気に

両種族は共に沈黙し……その後、主人公(かれ)に対し


静かに


「楽しい訳など……無いだろう」


「珍しいな……同意見だ」


と、言った

そんな両種族に対し、主人公は


「……確かに、ついさっき現れた俺には

アンタ達種族の根深い“遺恨(いこん)”がどんな物なのかなんて

本当の意味では理解出来てないよ……けど

アンタが説明したみたいに“境遇(きょうぐう)が似通っている”なら

お互いの負の部分をこれ以上責め続けてお互いに苦しむより

この厳しい世界を楽しく生きる(ため)、全力で協力して欲しいと思ってる。


……もし、どうしても住む所に困って居るのなら

少し遠いけど“政令国家”って所がある……少なくとも

人間以外の種族を差別的に扱う様な奴は居ないと思うから

協力以前に住む所に本気で困ってるなら移住する事も考えてくれ」


そう言った瞬間


「ほう? ……貴様にその権限があるかの様な口振りだな? 」


と言った牛人族(ミノタウロス)の長

これには人馬族(ケンタウロス)の長も同意し


「い、いやまぁ……権限がある様で無い様で

と言うか、困ったら何時(いつ)

“ラウドさんに甘えてるだけ”って気がしないでも……って!

兎に角……俺に権限云々は兎も角としても

移住が出来る様に話は通しておくから少し待っててくれ! 」


そう言った直後

ラウド大統領へ魔導通信を繋げた主人公。


◆◆◆


「魔導通信――


――ラウドさんへ!


あの、もしかしたら数週間から数ヶ月以内に

政令国家に人馬族(ケンタウロス)牛人族(ミノタウロス)の両種族が

移住するかもしれないんですが……問題ないですかね? 」


「ん? ……何時(いつ)もながらえらくいきなり沙汰じゃのぅ?!

まぁ構わんが……人数はどの程度じゃ? 」


「両種族合わせて(およ)そ……千名弱かと」


「ふむ……まぁその程度であれば

旧帝国城地域にも空きが有る事じゃし、構わんぞぃ? 」


「助かりました! ……でも

毎回いきなり無茶なお願いしちゃって本当に申し訳ありません」


「なに、何時(いつ)もの事じゃ! ……流石(さすが)に慣れたぞぃ!

所で……後ろに居られるのが両種族の長とお見受けするのじゃが」


「ええその通りです……なので

各種法律や種族毎の決まり事等々

移住を希望される場合は出来る限り早期に

できれば今すぐにでも話し合いをするのが適当かと思います……」


この後、ラウド大統領と両種族の長達による取り決めや

その他諸々の話し合いが()り行われ

さしたる苦労無く、近日中両種族とも

政令国家へと移り住む事が取り決められたのであった。


……だが、無事に決定した移住計画とは別に

両種族の間に“ある問題”が浮かびあがる事となる


◆◆◆


「……良かった、これでちゃんと俺も謝る事が出来そうだ。


()ず、俺の言い分を理解して貰う(ため)だったとは言え

族長であるお二人に対し失礼な態度と失礼な発言を続けてしまった事

どうかお許し下さい……この通りです」


主人公は深々と両種族長に対し頭を下げ

両種族長共|(こころよ)く謝罪を受け入れ

(むし)主人公(かれ)に感謝をするまでに(いた)っていた。

だが、問題は“其処(そこ)”では無く……


「とは言え……一つだけどうにも釈然(しゃくぜん)としなくてな」


と、人馬族(ケンタウロス)の長

続く牛人族(ミノタウロス)の長もこれに同意し


「三度続けば珍しくもないが……同意見だ」


そう言った。

そして


「何が釈然としないんです? 」


(たず)ねた主人公に対し


「頭では理解をした、だが……どうにも

体が闘争(とうそう)を求めて居る様なのだ


……今まで長きに渡り

決着のつかぬ勝負を続けていた我らに取って

いきなり仲間だと言われれば

正直な所、モヤモヤとしているのが実情だ」


そう、人馬族(ケンタウロス)の長は言った。

だが、この意見に主人公はニヤリと笑い


「成程……勝負が付けばスッキリする訳ですね? 」


と言い


「先程も言ったが

今の今まで我ら種族同士の勝負に決着がついた試しが無い。


……一体どうやって決着をつけると言うのだ? 」


人馬族(ケンタウロス)の長に言われ

再びニヤリと笑った主人公は


「では……この“ゲーム”で決着をつけてください!

スッキリと決着が付く(はず)ですッ! 」


そう言って主人公の取り出した“ゲーム”

それは、オセロであった。


……直後、物珍しさに目を輝かせる両種族の長に対し

ルールの説明を始めた主人公……(しばら)くの後

両種族の長達による“一騎打ち”が行われる運びと成ったのだが……


◆◆◆


……(しば)しの攻防の後

僅差(きんさ)牛人族(ミノタウロス)の長が勝利し

両種族による長きに渡った争いはここで幕を閉じた……かに見えた。


だが、当然の様に幕は閉じず……


……負けた人馬族(ケンタウロス)達は

声を揃え


“一度の勝負で決着を決めるなど! ”


と余計に興奮し始め、それに乗せられる様に

牛人族(ミノタウロス)達も興奮し始めてしまった。


当然、頭を抱える主人公……だが

彼は解決策を思い付かず頭を抱えた訳では無かった。


彼は……“手放さなければ成らない事に”

頭を抱えて居たのだ。


そう“オセロ”を。


「はい、両種族共“だまりやがれ”」


直後、そう

若干キレ気味に両種族を(なだ)めた主人公は

続けて


「……長々続いた争いですし

一回で結果が決まる事に納得出来ないのも理解しますし

結果が出たんだから黙れって言う側の気持ちも良く分かります。


……けど、このままじゃ何一つとして解決しない。


本当はこれ、とても大切な物なんですけど……でも

両種族の絆を(つむ)(ため)の道具になるなら

手放す他無さそうです。


……両種族の長にこのオセロをお(ゆず)りしますから

一ヶ月に一回でもこのオセロで勝負して

そして、勝った方が一ヶ月間所有出来る権利を持つ。


今後両種族間の“争い”はそれだけにして下さい……どうです? 」


主人公のこの発案に

今の今まで争って居た両種族達は大人しくなり


「それは平和的であり名案だな……その案、飲もう」


と言った

牛人族(ミノタウロス)の長に続き


「仮とは言え、負けたのだ……異論無い」


と同じく主人公の提案を受け入れた

人馬族(ケンタウロス)の長


「良かった……俺的には寂しいし悲しいですけど

平和な結果で良かったです。


じゃあ、これお渡ししますけど

本当に大切な物なんで、もし今度再び会えた時――


“少しでも壊れてたら”


――そこそこキレます」


そう言いながら

牛人族(ミノタウロス)の長に対しオセロを手渡した主人公。


だが……この発言と共に、珍しく主人公から放たれた

並々ならぬ殺気を感じた両種族は共に身震(みぶる)いをしたのだった。


ともあれ。


「さてと……これで問題は無くなったと思うので一つ質問を

俺達は“日之本皇国(ヒノモトコウコク)”って場所を目指して居るのですが……


……こっちの方角であってます? 」


主人公のこの質問に対し

両種族は共に首を横に振った……だが

それは、間違った方角と言う意味では無く

両種族共“その国を知らない”と言う意味であった。


……直後、その代わりとばかりに

(しばら)く進んだ先に人間の村がある(はず)だ”と伝え

その情報を頼りに両種族に別れを告げると

一行は再びオベリスクへと乗り込んだ……だが。


……見送りもそこそこに

両種族は再びオセロで勝負をして居て


「あれは“一ヶ月に一回”とは行かなそうだな……」


遠ざかって行く両種族を見つめつつ

主人公はそうボソッと言ったのだった。


ともあれ……そんな両種族を

微笑(ほほえ)ましく眺めて居た主人公と共に

一行の乗ったオベリスクは次なる村を目指し進むのだった


◆◆◆


所は変わり

ムスタファの母国“アラブリア王国”では


「ムスタファ様っ! ……お怪我はございませんかっ!? 」


ムスタファの帰国早々


(ムスタファ)の元へと走り寄った老齢な男性

どうやら、この男性はムスタファが“(じい)や”と呼ぶ者らしく


「ただいま(じい)や! 政令国家って言う国とね! ……」


そう話し掛けた直後

これを(さえぎ)られてしまう事と成ったムスタファ……だが

決して“(じい)や”に(さえぎ)られた訳などでは無く


「おい“じじい! ” “ばばあ”が居らぬぞ!

一体、何処(どこ)に行ったのじゃ?! 」


「カミーラ様……“じじい”では無く

(じい)や”とお呼び下さいと何度も……」


些細(ささい)な違いを気にするでないっ!

そんな事よりも……って?!


……兄様(あにさま)っ?! 帰って来てたのか?!

お帰りなさいなのじゃぁぁぁ~っ!!! ――」


瞬間

ムスタファに飛び掛かりそのまま抱きついたのは

ムスタファの妹“カミーラ”であった。


……彼女は(しばら)くの間

ムスタファに頬ずりをしたかと思うと

ムスタファの背後に止められた“荷馬車”から(ただよ)

(かお)り”に気付き


「……兄様兄様(あにさまあにさま)っ!

あの馬車から(かお)ってくる食欲を爆発させる物はなんじゃ?! 」


「ん? ……あぁ! それはね!

っと、此処(ここ)で話して居ても仕方無い

王宮に入ろうカミーラ……衛兵達

荷馬車の荷物を王宮へ運んでくれるかい? 」


直後

衛兵達に()って迅速に慎重に運び込まれ始めた


“ヴェルツ特製弁当”


この後……(ムスタファ)が帰還する(ため)だけに開かれて居た

“視認出来る程に”堅牢(けんろう)な防衛魔導は

その役目を果たす(ため)、再び完全な形で展開された。


===第六〇話・終===

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