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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第二章

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第四十四話「楽園?……いいえ地獄です。」

《――ギュンターの“ガス抜き”に

第一の依頼を危なげなく達成し、第二の依頼場所へと移動していた一行


だが、突如として一行の装着しているバッジから声がし始めた事で

彼らの状況は急激な変化を迎えた――》


………


……



“……皆様……我が国から相当離れておりますが

そのまま脱出されますと……自動的にバッジが爆散します

決して無事では済みませんので……くれぐれも……

お逃げに成らない様にお願いします……尚……

現在位置も追跡可能です……バッジを無理に外そうとしても爆散します

それでは討伐依頼の成功を祈っております……”


………


……



「……成程、何処までもいびつな国の様だ

主人公……出来るだけ急ぎこのいびつな国を脱出する事にしよう」


「ああ、そうだな……」


《――この後

暫く進んだ先で遭遇した討伐対象の魔物に対し

今度は主人公とディーンの二人にる“ガス抜き”が発生し

一切の危なげ無く、討伐依頼を達成し……暫くの後

再入国の為門を通過しようとした一行。


だが――》


………


……



「そこで止まれ……再入国だな?

其処で再入国手続きをしてから入国しろ」


《――門番の発したこの言葉に嫌な予感を感じつつも

素直に入国管理官の元へと向かった一行。


……不幸にも予感は当たり“再入国税”と言う名目で

共通金貨二五〇〇枚を要求され、持ち合わせでは足りなかった為

オベリスクから財宝を全て持ち出し再入国税の支払いにてた一行は

再入国後、達成した依頼の報酬を受け取りに向かった。


だが――》


………


……



「お待ちを……私めが行って参ります。


ディーン様、主人公様……どうか、今一度ご辛抱を……」


《――ギュンターがこれ程までに気を使う必要がある程

二人の形相は恐ろしい物と成りつつ有った。


そして――》


………


……



「ほう、お早いですな……ん?


……随分と討伐“超過”していますね?

では“契約違反”と言う事で“課税対象”になりまして

報酬は九割減少で……それでも多いですが“一二〇〇金貨”ですね」


「……その様な説明、最初に受けておりませんが? 」


「法律ですのでね……気に入らんのは分かりますがね? 」


《――ギュンターに対しニヤリと笑い掛け

そう告げた受付の男――》


「……良いでしょう」


《――はらわたの煮えくり返る様な怒りをしずめつつ

わずかな金貨を手に一行の元へと戻ったギュンター……そして。


そんな彼の様子を見たディーンは

直ぐにねぎらいの言葉を掛けた――》


………


……



「……お気遣い感謝致しますディーン様。


それよりも……色々と難癖を付けられ

一二〇〇金貨程にしか成りませんでした……食い下がっては見ましたが

あまり騒ぎを起こすのも得策ではないかと思い……


……申し訳有りません」


「構わん……気にするな」


「そうですよ、気にしないで下さいギュンターさん

こう言う国です、以降は俺も気をつけますから

お互いもう考えない様にしましょう。


ただ……これ以上イライラさせられるのも不愉快ですし

日も暮れてきましたけど、この国に長居してストレスを貯めるより

早めに出国して他の国で稼ぎませんか? それに……


……此処と比べるのが失礼な程

オベリスクの方が安心で安全で心地良いですから」


「主人公様まで……お気遣い感謝致します。


では、その様に致しましょう……」


《――直後


ウバン王国からの出国を決め正門へと向かった一行――》


………


……



「では私めが……」


「……いえ、俺が行きます。


今度は俺がかばう番です、ギュンターさん! 」


「重ね重ねお気遣い頂き……感謝のいたりでございます」


「ええ! ギュンターさんだって大切な仲間ですから!

では、行ってきます! ……」


《――笑顔でそう言うと

皆を残し入国管理官の元へと一人で向かった主人公。


だが――》


………


……



「おや? ……どの様なご用件でしょう? 」


「出国したい……全員」


「……そうですか。


ですが、後一日と半分程期間が残って……」


「構わない……全員分のバッジを返せば出国出来るんだろ?

早く手続きをしてくれないか? ……」


「……そうですか。


では、少々お待ちを……」


《――そう言うと席を立った入国管理官。


直後、彼は何処かへと魔導通信で連絡を取り始め……そして暫くの後

不穏な雰囲気をただよわせながら席に着いた入国管理官は

主人公に対し――》


………


……



「えー……誠に失礼ではございますが。


貴方……トライスターで有る事をお隠しに成られて

我が国へと入国なされましたね? 」


「……この杖が見えないのか? 俺は普通の魔導師だ」


「ええ、しっかりと見えては御座いますよ?


ですがそれよりも……“監視員バッジ”からの情報の方が

我が国では信じるに足りますのでね……ひひッ」


「成程……“のぞき見てた”訳か

ディーンの言う様にとことん歪な国なんだな此処は。


で? ……今度はどんな重税を掛けるつもりだ? 」


「おや、居直りますか……まぁ良いでしょう。


それと、お連れ様もただならぬ装備をお持ちの様で……


……あの様な“規格外の乗り物”を拝見した事は

今までに一度もございませんが、あの様な強力な兵器を隠し持ち

我が国へと入国されますと、我が国と致しましても……」


「だから……いくら税を取りたいのかはっきり言え」


「チッ! ……こっちが下手に出て居れば生意気な態度だ。


気に入らん……入国管理官への妨害行為も付きますが宜しいのですね? 」


「……ああ好きにしろ。


で、何度も聞いてるんだが……いくらだ? 」


「……そうですか。


では、以上を踏まえますと……おや?

……税金では収まりがつかない様ですな。


本来ならば禁固刑か死刑と成る重罪ですが……


……本日始めて我が国にお越しに成った御一行様ですので

特別に寛大かんだいな措置として――


“我が国の為に働くのであれば給料を税金の返済に当てる形で”


――ざっと三〇年程奉仕すれば出国が許される“かも”しれませんな? 」


「成程、冗談のつもりじゃ無さそうだな……」


「……どうお思いに成られても構いませんが

拒否されるならばバッジが……」


「“爆散”……ってか? 」


「ええ、良くご存知でいらっしゃいますね……ひひッ」


「……なぁおっさん。


何で今の今まで俺がこんなに我慢してたと思う? 」


「さぁ、存じ上げませんが……“死への恐怖”ですかな? 」


「全くもって不正解だよ……仲間の為を思えばこそ

仕方無くこらえてただけだ……だが。


お前はそんな俺の命よりも遥かに大切な仲間の命を奪うと脅した訳だ。


俺の目を見て答えろ……無事で済むと思うか? 」


「ほう、武力で脅すと? ……出来るのですか?

私を攻撃しようとした瞬間バッジは爆散……」


「ん? ……武力で脅すなんて

程度の低い事を、狂いそうな程“機嫌の悪い”俺がするとでも?


攻撃する必要なんて全く無いし

別の方法を見せてやるからよく見てろ……」


《――そう言うと、全ての装備を外し始めた主人公。


一旦は胸をで下ろした入国管理官だったが

主人公のただならぬ雰囲気を感じると次第に慌て始め

更に続けた――》


………


……



「……そ、装備を外していたとしても

何かしらの固有魔導を使える可能性はある筈っ!

わ、私に対し何かしらの魔導を放っただけでもば……爆散させますよ?!

そうでなくとも、何らかの暴力的な行為を行うつもりなら

そ、それでも……爆散させますよ?!


い、一体何をするつもりかっ! ……衛兵! この者を捕らえ……」


「……黙れよクズが。


固有魔導、限定管理者権限――」


《《――命令を承認しました。


“対象”へ限定的に管理者権限を移譲します――》》


「なっ?! ……何処から声が?!

貴様っ! 何をするつもりか知らないがバッジを爆散……」


「……これと同じバッジをこの世界から消去

制作方法も合わせて消去だ……」


《《――検索中


二件の命令を承認……消去完了デリーションコンプリート》》


「よし……次に、ウバン王国に存在する財宝

その他財力に関わる物を全て消去しろ」


《《――検索中


全て消去します……消去完了デリーションコンプリート》》


「……次ッ!


ウバン王国に属する……またはくみする者の装備する武器

その他武器に成り得る類の物を全て消去しろ」


《《――検索中


全て消去します……消去完了デリーションコンプリート》》


「俺、ディーン、ギュンターさんの魔導力を全て回復」


《《――命令を承認

“対象群”の魔導力を完全回復します。


完全回復完了フルリカバリーコンプリート……実行時間終了。


“限定管理者権限”を終了します――》》


………


……



「なっ、何を言うかと思えば!!


今の声が何なのかは分からんが……

いずれにしろ危険な行為を行おうとしたに違い無いっ!!!


そももそトライスターを逃す位ならば

バッジを爆散させた方が何倍も……ってあれっ!?

バッジが……無い?! ……衛兵ッ!


……なっ!? 衛兵達!! ……装備を何処へやった?!

何故肌着姿で立っている?!


なっ、なっ!? ……何をした貴様ァァァッッ!!! 」


「おい……今思いっきり“本心”が聞こえたぞ?

まぁ良い……所で、無事で済むと思うなって言ったよな? 」


「な……何をするつもりだ!

我が国は、我が国の民を脅かす様な野蛮な者には屈しない!! 」


「……形勢不利と見るなり“被害者面”とは恐れ入るが

悪いけど、俺もディーン達も

お前達を攻撃するつもりなんかさらさら無い……けど、その代わりに

お前達が無理やり閉じ込めてたハンター達について少し説明してやる。


……彼らのバッジも“消えてる”から

どう言う結果になるかはお前達次第だ……じゃあな」


《――そう言い残すと

慌てふためく入国管理官に背を向け

堂々とした足取りで一行の元へと戻った主人公に対し――》


………


……



「“やり過ぎだ”……と責めるべきとは思えない。


むしろ気が晴れた位だ……だがしかし、この国は終わりだろう

まぁ……終わるべきではあるのだが」


《――そう言ったディーン

彼に続く様にグランガルドは――》


「うむ……民もゆがむ程にいびつな国であったのだ。


他者の苦しみを直視せず、その上に成り立つ国など必要無い

厳しい様だが……吾輩も賛成だ」


「ええ、私も賛成でございますグランガルド様……」


《……ギュンターを含め

主人公かれの働きに気を良くした者達が居た一方で

其処では無い“別の結果”を見て居た者が一行の中に居た――》


………


……



「あ、あのっ! ……皆さんが怒るのも当然だと思いますし

私も凄く嫌な国でした……で、でもっ!


その……子供達には罪が無いですし……そのっ!!


わ、私の勝手かもしれませんけど……せめて

子供達とその親御さんだけでも助けたいんですっ!


お、お願いしますっ!! ……駄目、でしょうか? ……」


《――そう必死に訴え続けていたメルの後方では

開放されたハンター達によるウバン王国軍兵士への猛攻撃が行われていた。


今の所を見れば攻撃対象は兵士にのみ限られている様だが

長い間この国でしいたげられて来たハンター達の溢れ出る怒りの矛先が

遅かれ早かれウバン王国の民達にも向けられるで有ろう事など

容易に想像出来る程の惨状さんじょうで――》


………


……



「ええ……私もメルちゃんの意見に賛成よ

ねぇ主人公……私達が勝手な事を言ってるのは理解してる。


けど……どうにか出来ないの? 」


《――そうたずねたマリーン

そして


“私もお二人の意見に賛成です……子供達だけでも助けませんか? ”


と、マリアまでもが賛成した事で――》


「ああ……確かに子供達には罪は無いよな

其処まで頭を回せてなかったよ……皆ごめんっ!!


……でも、ハンター達を説得して止めさせた所で

此処ではもう、まともな生活なんて出来ないだろうし……


何をどうすれば子供とその親を本当の意味で助けられるんだろう……」


《――そう頭を悩ませていた主人公かれに対し

グランガルドが――


“……ならばラウド殿に連絡を入れると良い

何か良い案を貰えるだろう”


――そう言った直後

急いでラウド大統領へと魔導通信を繋いだ主人公――》


………


……



「ん? ……おぉ主人公殿!!

久しぶりじゃのぉ~……元気で居ったかの? 」


「え、ええ! ですがその……挨拶よりも緊急的な相談が有りまして!!

……約数百名程の子供とその親御さんが暮らしていける場所

若しくは手段を教えてください! 」


「な……何じゃね唐突に?

主人公殿、まさか旅先で彼方此方あちらこちらの女性と“ぱふぱふ”を……」


「な゛っ!? ……そんな訳無いでしょッ?!

仮にそうだとしたら“種馬”か何かですか俺は!! ……って。


……そんな冗談を言ってる暇は無いんですッ!


そうじゃなくてですね! ……紆余曲折有って!!


俺が国を! ……あの……その……滅ぼしちゃったんです……」


「ん? ……今何と言った主人公殿」


「い、いえその……ウバン王国ってご存知ですか?

その国が、俺の所為で“滅亡の危機”です……」


「ふむ……地図には載っておるが、どんな国かは知らん。


じゃが、一体何があったんじゃね? ……」


「そ、それが……

“外の人間から財力を奪う事で”国を繁栄させようとして居た国でして

事ある毎に税の名目でむしり取り

自国民には異常な程の贅沢をさせて居たんです。


それだけならまだ良かったんですが……端的に言うと

その所為で“俺や仲間達に危害を加え掛けた”ので

二度とそう出来ない様に、固有魔導を使ってらしめたんです。


でも俺……怒りに任せて明らかに後先を考えないやり方を……


……冷静に成った今ならもっとやり方だって思い付く筈なんですが

冷静さをいた行動に今は猛省している次第です……」


「ふむ、確かに主人公殿らしくないのぉ……

……それで、どうしたいのじゃね? 」


「はい……せめて子供と親御さんだけでも助けようと思っては居るのですが

何も思いつかなくて……でも、こんな難しい話

ラウドさんにしか相談出来なくて……本当に申し訳有りません」


「ううむ……いきなり難問じゃぞぃ、どうした物か……

……いや、思いついたぞぃ!! 」


「えっ!? ……ど、どんな手ですか!? 」


「……リオス殿から聞いたのじゃが

帝国はもぬけの殻じゃったんじゃろう?

ならば……“其処へ移住させる”と言うのはどうじゃろうか?


帝国ならば距離も然程離れては居らん故

生活に必要な物資も此方から送り届けやすいしのう? 」


「成程! ……でも、帝国城には遺体が山の様に有りまして……」


「……何、そんな物は任せるのじゃ。


帝国跡地には当然防衛魔導なんぞ展開されておらんじゃろうし

我が国の兵士を付近まで転移させ、急ぎ片付けさせるゆえのう。


これでどうじゃね? ……」


「……助かります! では大至急その様にお願いします!

でも……俺の所為でご迷惑をお掛けしっぱなしで

本当に申し訳ありません……」


「何を言うか! ……政令国家としても旨味の無い話では無いぞい? 」


「へっ? ……と言うと? 」


「……既に訪れたのじゃから知っておるじゃろうが

帝国の領土は我が国よりも遥かに広大で立地も良い。


それ故、放置しておけば他国があの場所を奪わんとも限らん。


そうなれば……次はその国との“いざこざ”が起きる可能性大じゃろう?

じゃが……そうなる前に政令国家の息の掛かった民を移住させておけば

他国との戦争を未然に防げると言う事じゃよ。


って……そんな事よりも急がんと危ないのじゃろう?

主人公殿は救うべき者達を集める事に必死になるのじゃよ!


……準備が整い次第連絡を入れるから

それまでに出来る限りの事をするんじゃよ?! 」


「はいッ、感謝します! ……では通信終了! 」


………


……



「――って事らしい。


その……申し訳無いけど皆にも協力して貰いたい」


《――この後、皆の協力に

民や移住を希望する者達の救出に成功した一行。


一方、未だ怒りの収まらないハンター達は

一行との戦闘をも辞さない構えを見せたが

一行の彼らに対する懸命の説得が何とか功を奏し

少なくとも既に救出した者達だけは守る事に成功した一行。


そして……暫くの後

ラウド大統領からの連絡を受けた主人公は

転移魔導を用いて旧帝国城へと救出した者達全員を送り届けた。


……だが、残念な事に救出が間に合わず失われた命も無視出来ない数存在し

悲しみに暮れる民達の悲痛な叫びは

主人公達の耳と心をつんざいた……


仲間の為……それが直接奪った命では無いにしろ

冷静さをいた状態で行使してしまった

余りにも強大過ぎる力と……その代償。


この行為は果たして正しかったのか……否か。


いずれであれこの一件は主人公の脳裏に深く焼き付き

彼の心に心的外傷トラウマとして色濃く残る事となったのだった――》


===第四十四話・終===

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