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異世界転生って楽勝だと思ってました。【17万PV突破感謝! 】  作者: 黒崎 凱
第二章

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第四二話「行楽気分の旅がしたい!」

出発早々“トラブル”に見舞われた一行は

気を取り直し、第一の目的地を目指して居た。


……一方、遡(さかのぼ)る事|暫(しばら)く

政令国家より北へと離れたある国の地下牢では


「ううっ……ママ……ごめんなさいっ……」


「反省したかしら? ……私は悲しい気持ちでいっぱいよ? 」


捕縛の魔導に依(よ)り身動きの取れないネイトに対し

そう冷たく言い放った彼の母“グロリアーナ”の姿があった。


「もうしないって約束するよ……

だからこの拘束を解いて、お願いだよぉ……」


「いいえ? ……約束を破る悪い子はずっとこのままよ? 」


「お願いだよぉ……もうしないから……グスンッ」


火傷だらけの顔で涙ながらにそう懇願(こんがん)したネイト。


そんな彼の姿にほんの一瞬、嫌悪感を顕(あらわ)にした母は

深く溜息(ためいき)を吐き


「全く……分かったわ

本当にもう勝手な行動はしないって約束出来るかしら? 」


「うんっ……ごめんなさいっ」


「仕方ないわね……ゲール、解放してあげなさい

それと……治療もよ」


そう自(みずか)らの部下らしき魔導師に命じ


「……かしこまりましたグロリアーナ様。


捕縛解除――」


一方、拘束が外れた瞬間

地面に倒れ強く咳き込んだネイト、そんな彼に対し


「……貴方が苦しむ姿を見るのは私だって辛いのよ?

兎に角……治療が終わったら

部屋で大人しくておきなさい……良いわね? 」


「はい、ママ……大好き……だよ? 」


「ええ……貴方が素直で良い子なら私も大好きよ。


さてと、私はお仕事があるから

貴方はお部屋でのんびりしていてね……


……けれど、くれぐれも同じ過ちは繰り返さないで頂戴」


そう言い残すと

振り返る事無く自室へと戻って行ったグロリアーナ。


……直後、自室に戻った彼女は

魔導通信を使い、何処(どこ)かへと連絡を取り始めた。


◆◆◆


「ええ……やはり命令に従(したが)わず単独で勝手な行動を。


私に取っては非常に厄介なタイミングですわ?

無論(むろん)、罰を与えたのである程度大人しくはなりましたが……


……正直、他の“複製体(ふくせいたい)”と同じ結果になりそうですわね? 」


「成程……やはりですか。


薬で素直に成るのは他の複製体(もの)でご存知でしょうが

やはりどうしても三割前後……酷(ひど)ければ

五割程度は戦闘能力が落ちますのでね……」


「ええ……いざと言う時の為(ため)の策(さく)として考えては居ます。


ですから今も私の手元には

不良品の如(ごと)き複製体(ふくせいたい)が何体も……


……他に解決策は無いのですか? 所長さん」


「ええ……申し訳有りませんが

やはり元に成ったご子息の“性格”に由来する部分が

良くも悪くも起因(きいん)しておりましてね……


……調節は都度(つど)|行(おこな)い生産致しましたが

それでも……技術は万能では有りません。


誠に……残念ですがね」


「……そうですわね。


追加生産は……やはり出来ないのですか? 」


「ええ、残念ですが……元となるご子息のご遺体が

“限界”を迎えた為(ため)、これ以上の生産となると

ご子息のご遺体が崩壊する恐れがあり

今後、完全な状態での保存が不可能に成るかと」


「!? ……そ、それだけは困ります!!

分かりました……こちらでも努力しましょう。


では、また後日……」


直後、意気消沈(いきしょうちん)した様子で

魔導通信を閉じたグロリアーナ……一方

彼女と通信をして居た“相手”は


◆◆◆


「全く……やはりあの複製体(ふくせいたい)は不具合が多過ぎる。


そもそも“元(ベース)”の程度が低いのは言わずもがなだが

“D.E.E.Nシリーズ”の足元にも及(およ)ばんとは……だが

追跡部隊からの連絡も途絶(とだ)えて久(ひさ)しい。


これは“失敗”と見て間違い無いか……


……全く、面倒な」


何処(どこ)かの国の研究所


机には“所長”と書かれた名札……眼前の“資料”を見つめ

大きな溜息を付きながらそう言った男……直後

ディーン隊全員の詳細な情報が記(しる)された紙を机に仕舞(しま)い込むと

不機嫌そうに机を叩いた……だが、そんな中

突如として何処(どこ)からとも無く彼の背後へと現れた

“法衣姿”の老人は


「おやおや……“損失(そんしつ)”を出しておきながら

他人事とは頂けませんね?


……このまま彼らを野放しにすれば国の損失です

所長……これ以上、私を失望させないで頂きたいですな? 」


と言った。

一方、この老人が現れた瞬間

所長と呼ばれた男は慌てて姿勢を正し


「なっ!? ……教皇(きょうこう)様?!

そ、その件に関しましては……お許しが頂けるならば

少々調整不足ですが……出来るだけ調整を急ぎ

“E.D.E.Nシリーズ”を捜索に当たらせますので

何卒(なにとぞ)ご理解を……」


「そうですか……仕方有りません、良いでしょう。


しかし、それでも発見出来なかった時

貴方は一体……どの様な責任を取るのです? 」


「ど……どの様な裁(さば)きでも受ける覚悟でございます」


「そうですか、まぁ……良いでしょう。


本来ならばあの様な禍禍(まがまが)しい実験体など

穢(けが)らわしく思えてしまい嫌なのですよ?


ですが背に腹は替えられません……調整終了後

E.D.E.Nシリーズの使用を許可します。


……くれぐれも早急に解決して下さいね?

心から祈っていますよ? ……では」


そう言い残し所長室から煙の様に消えた教皇

その、一方で


「チッ!! ……E.D.E.Nシリーズを急ぎ完成させねば!!

おい、其処(そこ)の研究員!!


……出来るだけ早く起動出来る様に仕上げろ!!

これ以上の失敗は許されないんだぞ?! 理解(わか)っているのか?!

クソッ!! ……老いぼれめ!!! 」


「……り、了解致しましたッ!!

E.D.E.Nシリーズの完成を最重要項目に変更します! 」


◆◆◆


一方、主人公達が旅立って数日後のヴェルツでは


「……ふははははっ!!

やはりだ……主人公(ヤツ)など居なくともこの国は平和だ!

奴との決闘には敗北したが……奴め

何をとち狂ったか“旅に出る”などと!

これで少しはこの国も安定し……」


と、彼の悪口を言い続けて居たジョルジュ

だが、その背後には“鬼(おに)の形相(ぎょうそう)”をした

ミリアの姿があり――


「……主人公ちゃんとの決闘に負けたにも関わらず

アンタみたいなのが自由にこの国を出歩けるのは

主人公ちゃんが“情(なさ)けを掛(か)けた”からだってのがまだ判(わか)らないのかい?!

アンタみたいな卑怯者の入店なんざお断りだよ!!

金は良いからとっとと出ていきなっ! 」


――言うや否や

手に持って居たジョッキの酒を

ジョルジュの顔面目掛け勢い良くぶちまけたミリア


「ぶはっ?! ……げほっ! げほっ!!


お……覚えていろ女将ッ!!

私にその様な態度を取ってタダで済むと思うなよッ!

い、行くぞユーグッ! ……」


「はい、ジョルジュ様……」


「……脅しのつもりかい?!

うちの店に何かしようってんなら

旦那が黙っちゃいないよっ?! ……良いね?!

二度と来るんじゃないよっ!!! ……全く。


それにしても……主人公ちゃん達は元気にしてるかねぇ?

ご飯、ちゃんと食べてるのかねぇ? ……」


ミリアがそう心配をして居た一方で

主人公達はオベリスクに揺られながら昼食を摂(と)って居た。


だが……


◆◆◆


「……はぁ~ッ、それにしても

政令国家を離れてたった数日なのに

既(すで)に寂しさが“限界突破”したんだけど

これってやっぱりホームシックなのかな?

何だか強烈にヴェルツに帰りたく成って来たんだが……


……ミリアさんの言う通り、部屋に転移しようかな? 」


「いつもならイジる所ですけど

確かに私も寂しいです……って言うか何で主人公さんって

後で後悔する様な事ばかり選ぶんですかね?

って言うか連絡入れましょうよ!

まだ、魔導通信も繋がるんでしょ?! 」


柄にも無く苛立(いらだ)ちを顕(あらわ)に

そう言い放ったマリア……だが、寂しさを感じて居たのは

彼女だけでは無かった様で


「そっ……そのっ!

わ、私も……お母さんとお話したいですっ! 」


「私もメルちゃんと同意見よ、私もお母さんと話したいわ?

って言うか主人公……余(あま)り負担に成らないのなら

一日に一度……もし負担が大きい様なら

一週間に一度でも良いから

定期的に連絡を入れられたら嬉しいんだけど。


……それに“政令国家(むこう)”の近況も気になるでしょ? 」


「ああ……それもそうだねマリーン

確か、距離が離れてても

魔導消費量に大した差は無かった筈(はず)だし

今まで魔導通信を負担に思った事なんて無かったから……


……よしッ!


じゃあ、これからは一日に一回位は連絡入れよう!

そしたら少しは寂しさも紛れるだろうし!

って事で……早速連絡してみるとするか! 」


この後

ミリアに対し魔導通信を繋いだ主人公


◆◆◆


「……ミリアさん、主人公です!

その……連絡遅れてすみませんでしたッ! 」


「なっ?! ……主人公ちゃん?!

どうしたんだい? ……何か遭(あ)ったのかい!? 」


「い、いえそうではなくて……その

これからは定期的に連絡をしようと思いまして! 」


「そうだったのかい! ……嬉しいねぇ!

しかし……離れて居ても声が聞こえるなんてねぇ!

皆は? ……近くに居るのかい? 」


ミリアさんがそう訊(たず)ねた瞬間

一斉に彼女に向け喋り始めた皆

そして、その声を聞いたミリアさんは


「おやおや、皆元気そうな声だねぇ……安心したよ!

そういえば……皆、ご飯はちゃんと食べてるかい? 」


「ええ、今も頂いてます!

ミリアさんお手製のお弁当とか、保存用の食料もですが

感謝してもし切れない程助かってますよ! 」


「そうかい! そりゃあ用意した甲斐が有ったよ!

って、それはそうと……ちょっと聞いてくれるかい? 」


「は、はい……何でしょう? 」


「それがねぇ? ……思い出しても腹が立つが

あの、恥知らずのジョルジュって子が居るだろう?

あの子ったら、あろう事かうちの店で

主人公ちゃん達の悪口を言ったんだよ!

勿論(もちろん)、酒かけて追い出してやったけどさ! ……」


「そんな事が……でもミリアさん

俺のせいで変に恨みを買う様な行動は控えてください。


……ミリアさんに対して彼奴(アイツ)が何かしないとも限らないですし

万が一にもミリアさんに何かあったら、俺は……」


「……大丈夫さ、うちには旦那も居るし

主人公ちゃんのお陰で大きくなったこの店には

今や“用心棒”だって居るんだよ? 」


「よ、用心棒ッ?! ……や、雇ったんですか? 」


「いや……専用で雇ったって訳じゃないんだがねぇ?

何を隠そう……“エリシア”だよ」


「エ、エリシアさんが用心棒?!

ど、どう言う経緯でそうなったんですかそれッ?! 」


「それがねぇ? ……主人公ちゃん達が旅に出てからと言うもの

あのエリシアが“薬草採集が楽しくない”

なんて言い出してねぇ……」


この、あまりにも衝撃的な発言に

俺達は全員言葉を失った


「ど、どう言う事ですか?!

何か悪い物でも食べた……とか? 」


「違う違う……単純に寂しいのさエリシアは

無論(むろん)、あたしもだが。


それでね――


“薬草採集をやる時間が丸々浮いたし

ストレス発散がてら用心棒をやりたい”


――って言い出して、それならって事でウチで雇ったのさ」


「な、成程……“ストレス発散”って所は凄~く気になりますが

って……それなら今、エリシアさんはヴェルツに? 」


「ああ、奥に居るが……呼んで良いかい? 」


「はい! お願いしますッ! ……」


◆◆◆


「は~ぁぃ♪ 主人公っち~!

元気にしてる~? ……皆も元気かな~っ? 」


「……エリシアさん! 皆も俺も元気です!

でも……直ぐに連絡しなくて本当に申し訳有りません」


「それそれ! ほんとだよぉ~っ……寂しかったよ~? 」


「い、以後気をつけますッ! ……ってそんな事よりも!

エリシアさん“薬草採集が楽しくない”って……大丈夫ですか? 」


「え? うん……まぁ、その辺は仕方無いよ!

一つ摘(つ)んでは皆の顔を思い出すから……寂しくてね!


でも、ミリアの所で用心棒してるから割と忙しいんだよ~?

悪酔いして暴れたり、喧嘩したりするお客を

“浮遊魔導”で浮かせて~……その後(のち)

軽ぅ~い“雷魔導”で感電させながら

外に投げたりとかね~っ! 」


「い、いやそれ……悪酔いに対する罰としては

余りにも“オーバーキル”に思えるんですけど……


……そこまでやるとお客さん減りません? 」


「え~? ……意外かも知れないけどそんな事無いよ~?

寧(むし)ろ“もっとやってくれ”って変なお客が一定数居るから

私も困ってる位なんだよね~っ……」


「エリシアさん、それは別料金……じゃなくて!

その手のヘンタ……いや“変人”には

その方法、逆効果かも知れませんね……」


「う~ん……その場合、どうすれば良いと思う? 」


「ま、まぁ……その手のお客はやんわり注意する程度って事で! 」


「そっか、そうしてみる~……って、忘れる所だった!

ねぇ、主人公っち……本当にジョルジュの事

“野放し”にして良かったの? ……」


「……ええ、彼奴(アイツ)に取っての俺は

ある意味“魔族よりタチの悪い存在”なんだと思います。


仮にも俺は彼奴(アイツ)の親を奪った訳ですから……ですが

もしあまりにも目に余る行動をして居るのならそれは別問題です。


……正直、エリシアさんに頼る形で申し訳ないですが

危ない状況を作りそうなら、それ相応(そうおう)の対応をお願いします」


「お~っ! 任せとけぃ! ――


“もうちょっと暴走してくれれば此方(こっち)だって対応が楽なのに”


――って思う位には私もアイツに苛立(いらだ)ってるから

後少しでも馬鹿やってくれたら私が責任を持って“焼き払う”からっ!


まっ! 取り敢えず元気な声聞けて安心したよ~

これからもちゃんと定期的に連絡してよね~! 」


「や、焼き払うのは流石(さすが)に……って、はい!

これからはちゃんと定期的に連絡しますので!


……ではまたッ! 」


「うん……またねぇ~! 」


この後

久し振りの連絡を目一杯楽しんだ俺達。


そして……夕暮れ時、俺達は

この日の目標地点である、魔王軍により壊滅(かいめつ)した

“旧帝国領土内”を進んで居た。


◆◆◆


「酷(ひど)い惨状(さんじょう)ですな……」


念の為(ため)

オベリスクを下船せず進み続けて居た俺達。


道には帝国国民の亡骸(なきがら)がそこら中に散乱して居て

ギュンターさんはそんな状況を見つめつつボソリとそう言った。


ともあれ……暫(しばら)くすると

巨大な城壁に囲まれた大きな城が見えて来た。


……とは言え、その殆(ほとん)どが崩壊し

最も魔王軍からの攻撃を多く受けたのだろう帝国城は

見る影が無い程(ほど)の甚大(じんだい)な被害を受けて居た。


正門付近に転がる兵士達の肉片や骨

それに集(たか)る蛆(ウジ)や蠅(ハエ)……言うまでも無く


周囲は“見るに耐えない”惨状(さんじょう)で


「……派手にやられておりますな

魔族に蹂躙(じゅうりん)されたとは聞いておりましたが

それにしても酷(ひど)い状況でございますね。


とは言え……魔族特有の気配も有りませんし

恐らく此処(ここ)は既に“もぬけの殻”では無いかと」


周囲の状況を確かめながら

ギュンターさんはそう言った……だが

周囲に一体たりとも魔族が居ない事に疑問を感じた俺が


「……帝国が崩壊したのは仕方が無いとしても

何故(なぜ)魔族が一匹も居ないんですかね?

魔族に取っては“領土”ってどうでも良い物なんでしょうか? 」


と訊(たず)ねた所、ギュンターさんは


「気配が無い所から察するに。

仰(おっしゃ)られる通り……“どうでも良い”ので御座いましょうね」


と、周囲を軽く見回しながら

僅(わず)かに嫌悪を感じた様にそう言った。


一方、ガルドはそんなギュンターさんの

“感覚”を信じた上で


「ふむ……ならば夜も遅い事だ。


今夜は捜索も兼ね、領土内(ここ)で停泊するのはどうだ?

もぬけの殻とは言え、何らかの情報は得られるかも知れぬ」


「ああ、確かに……俺もガルドの意見に賛成だ。


得られる情報は少しでも多い方が良いし

この国の状況的には違ってては欲しいけど

“サーブロウ伯爵”がこの国の出身かも知れないもんな。


……ディーンはどう思う? 」


「ああ、私も賛成だ……その件も含め領土内を軽く捜索し

終わり次第、オベリスクを宿とするのが適切だろう。


では、状況開始――」


ディーンの号令に依(よ)りオベリスクを下船した俺達。


だが、下船直後から強い腐臭を感じた俺達は

口元に布を当て、足早(あしばや)に入城し

帝国城内部の捜索を開始する事と成った。


「やはりもぬけの殻でございますね……しかし

外から見るよりも内側の方が被害は少ない様ですが

それでも……余り気持ちの良い物ではありませんね」


其処彼処(そこかしこ)に散らばる

帝国人の亡骸(なきがら)を見ながらそう言ったギュンターさん。


一方……周囲の状況に恐怖し

進む事すら覚束(おぼつか)なく成り始めて居た

“三人娘(メル・マリア・マリーン)”の姿に


「えっとその……少し刺激が強いし

三人は目を閉じて俺に掴まって歩くのはどうかな?

正直、俺も平気って訳では無いけど……その、頑張るからさ」


怯える三人を護(まも)る為(ため)

精一杯の勇気を振り絞りつつそう言った俺。


……直後、直ぐに目を瞑(むぶ)り俺の服の裾(すそ)を掴むと

先程よりは安心した様子で慎重に歩き始めた三人。


そして、そんな時


「主人公、強く在(あ)るのは大変な事だ……だが、踏ん張るのだぞ」


ガルドが俺の事をそう励ましてくれた

だが、その言葉に対し


「あ、あぁ! ……筋トレだよな! 」


と、的はずれな返答をしてしまう程度には

俺もこの状況に怯えて居たのだった。


ともあれ……この後も城内を捜索していた俺達、だが

突如として


「シッ! 遠くの方で何か音が……」


と言ったタニアさん、対するギュンターさんは


「妙ですな? ……人の気配も

魔族の気配も無かった筈(はず)ですが……」


と、首を傾げつつも警戒心を強めた。


「……ギュンターよ

曲がりなりにも此処(ここ)は“敵地”だ

警戒は怠(おこた)るべきでは無い……オウル、防衛魔導を」


「はい……“防護之衣(プロテクションローブ)”」


直後、ディーンの号令に依(よ)り瞬時に警戒を強めた隊員達

そんな中“三人娘達(メル・マリア・マリーン)”は


「気配が無いのに何か居るって……もしかして……」


メルがそう言った事を

皮切りに


「それって……お、おばけとか……」


とマリーン

そして、マリアまでもが


「の、呪われるとか……無いですよね?!

それこそ、無念の死に恨みを持ってる兵士の霊とかに! 」


と“マイナス思考な具体例”を出して怯え始めた

だが、三人を少しでも落ち着かせる為(ため)


「そ……そんな訳無いじゃないか~三人共~っ!

流石(さすが)に怖がり過ぎだぞ~? あはッ!

アハハハハ……」


と、必死に場の空気を和ませようとした俺

だが……その瞬間

大きな物音が俺達の“真後ろ”で発生し


「ヒャッハ?! フヒィッ!?! 」


「すまん主人公……廃材に足をぶつけてしまった」


「きッ、気をつけろよぉッ!?

オーク族族長グランガルドオォッ?! 」


「何故(なぜ)肩書ごと全て叫んだのだ主人公?

そもそも……吾輩(わがはい)はもう族長では無いぞ? 」


「そ、そうだったなぁガルドぉ~ッ!!! ……

……ってか、びっくりしたなぁもぉぉぉぉぉッ!!! 」


「シッ! ……あの部屋に何か居ますわ」


直後


そう言ってタニアさんが指し示した部屋からは

薄明かりが漏れて居た。


……光はゆらゆらと揺らぎ

不規則に動き……そして

耳を澄(す)ますと微(かす)かに音が聞こえた。


……息を殺しつつ部屋へと近づいた俺達

だが、この直後|一際(ひときわ)大きな音が部屋から発せられ

思わず大声を上げ掛けた俺の口を間一髪|塞(ふさ)いだガルド。


……正直、俺の恐怖心は限界に達して居た

だがそんな時、部屋の中から


「何か聞こえた様な……あっっ!! 」


と言う、何者かの声が聞こえた次の瞬間――


「トォォォォッ!! 」


――と、奇声を発し

俺へと飛び掛かって来た黒い影……だが。


幸いにも防御魔導に阻(はば)まれ

謎の黒い影は俺の眼前で尻餅をついた。


だが、そのせいで


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!! 」


と、俺の背後で発せられる事と成った三人娘達(メル・マリア・マリーン)の悲鳴

そして、この直後“何かが破ける音”が

城内へと響き渡った。


「うわぁぁぁぁぁぁぁッッッ!? ……って君は!! 」


「イテテテ……って、数日ぶりだね主人公っ!

ちょ~っと、びっくりしたけどっ! 」


黒い影はそう言って

“天真爛漫(てんしんらんまん)”な態度を取った。


……そう。


“黒い影”の正体は、黒い衣服を身に纏(まと)い

口元を黒い布で覆った、全身黒尽くめの“リオス”だった。


「おや……リオス様でしたか。


それにその布は……道理で気配が判らない訳でございますな

ですが、何故(なぜ)リオス様が

この様な場所にいらっしゃるのです? 」


そう訊(たず)ねたギュンターさんに対し

リオスは


「えっとね……魔族って意外にも

金目の物にはまるで興味が無いみたいで

幸か不幸か、こう言う場所には

価値のある物が大量に残ってるんだっ!


だから……その収集って感じかなっ? 」


「成程、左様(さよう)でございましたか

リオス様の“生活の知恵”……でございますね」


「うん! その通りっ! でも正直

“墓暴き”みたいであまり良い気分じゃないんだけどね。


……けど、訪れる国に依(よ)っては僕達の種族だけで入国する場合

“保証金”って名目で大量のお金が必要な時もあるから

その為(ため)の蓄(たくわ)えって感じかな?


後は……情報を得る為(ため)の“賄賂(わいろ)代わり”だったりも!

何だっけ……あ、そうそう!

“背(せ)に腹(はら)は変えられない”……って奴! 」


そう明るく語ろうとしていたリオス

だが、彼は僅(わず)かに切ない表情をして居て


「別に誰かを襲ってる訳じゃ無いし

リオスは種族の長として必死なだけだろ?

俺はそんなリオスが友達で良かったと思ってるし

誰が何と言おうと俺はリオスの味方だ。


……ま、俺じゃ不足かも知れないけどね! 」


「ううん……やっぱり主人公は良い奴だね!

僕こそ仲間で良かったと思ってるよ! ……って。


所で主人公……さっきからずっと気になってたんだけど

何だか主人公の“お尻の辺り”

妙に……“ひらひら”してない? 」


「ん? ……そう言えばさっきから

何かお尻がスースーする様なって思って……って。


……うわぁぁぁッ?!

なッ、なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁッッッ?! 」


瞬間

城内に響き渡った俺の絶叫……直後

俺の背後に居た三人娘はとても申し訳無さそうにしつつ


「あ、あのっ……ごめんなさいっ! 」


と

頭を下げたメルに始まり


「多分、私が“引き千切った”感じです」


そう言って

“自供”したマリアと


「そ、その……き、綺麗なお尻ね! 主人公! 」


と、何のフォローにも成っていない

フォローを口にしたマリーンの三人は

今の今まで握り締めて居た

“ズボンの切れ端(はし)”を手渡して来たのだった。


……と言うか、漸(ようや)く気付いた

三人娘達の悲鳴と共に城内に響き渡った

“何かが破ける音”は……“これ”が原因だと。


「それ……フォローに成ってないよマリーン」


直後、手渡された“切れ端”でお尻を隠しつつ

静かに壁を背にした俺……そして

何事も無かったかの様にリオスに対し


「な、なぁリオス……お金に成りそうな物の他に

何か情報が得られそうな物は無かった?

後……出来たら“ズボン”とか無かったかな? 」


「え、えっと……ズボンの在(あ)り処(か)は判らないけど

本とか地図とか薬草とか

そんなのが沢山ある部屋があったよ? 」


「おぉ! ……その場所を教えてくれ! 」


「えっとね……ここから真っすぐ行って

右に曲がると階段があるから

下の方まで降りるとすぐ分かると思う!


それと……主人公達は“ビンボー旅”だし

この部屋に残ってるお宝も

持って行った方が良いんじゃないかな? 」


「えッ? ……俺達も貰って良いの? 」


「うん、僕そんなに沢山持てないし!

後で仲間達も合流するけど

それでもそんなには持って帰れないからさ!

だから、主人公達も持って帰ってよ! 」


「ありがとう……正直助かるよ」


「感謝するリオス殿……では、ある程度頂いた後

その部屋を捜索するとしようか。


だが、その前に主人公……これを腰に巻いておくと良い」


そう言うと、羽織っていた上着を

そっと手渡してくれたディーン


「ああ、すまない……所でリオス、この場所で生存者

若(も)しくは魔族を見かけたりはしなかった? 」


「……どっちも居なかったと思うよ?

けど、そもそも匂いが強烈過ぎて感覚が当てに成らないから

“絶対”……とは言えないかな? 」


「それもそうだね……さて、俺達は情報を探ってくるよ」


「うん! ……僕も後で行くね~っ! 」


この後


リオスの説明通り城を進んだ先で

俺達がたどり着いた部屋の中には、数多くの本や地図

薬草や謎の液体などが数多く並んで居て……


◆◆◆


「それにしても……凄い量の本だな」


この後

合流したリオスとその仲間である獣人族達とも協力し

“サーブロウ伯爵”に関する情報を探し続けたが

役立つ情報は得られず


「それで最後よね? ……はぁ~疲れた……意外と大変ね」


汗を拭いながらそう言ったマリーン

一方のメルは地図を手に入れて居て


「で、でもっ……地図は手に入りましたし

これから訪れる国の参考には出来ますっ! 」


「ええ……それに薬草はレア物が沢山有りますわね?

必要そうな物を厳選し、少し頂いて行きますわね♪ 」


“薬草学”に長(た)けたタニアさんは

とても上機嫌な様子でそう言った


「しかし、夜も遅い……


……今日の所はこの場所で休むのはどうだ?

幸(さいわ)いな事に……この部屋には悪臭も無い」


そう

ガルドが提案すると


「なら……数日振りに会えたんだし

僕達も今日はここで休もうかな? 」


と、リオスが言った瞬間

丁度(ちょうど)お腹を鳴らしたマリアの“腹時計”に従(したが)い

皆で食事を摂(と)る事が決定し……この後

俺達はリオス達と数日振りに楽しく過ごしたのだった。


◆◆◆


主人公一行(かれら)が再会の宴(うたげ)に興(きょう)じて居た頃


同時刻……魔王城にて

痺(しび)れを切らした魔王の怒りが城中に充満して居た


「……例の小僧はまだ見つからぬのか? 」


「魔王様……それが、あの者が逃げたと思われる方角を

地図にて詳しく調べてみた所……怪しい国を発見致しまして」


「フッ……為(な)れば我も出向くとしよう

其奴(そやつ)を全軍で踏み潰すのだ……」


「ハッ! ……ですが魔王様

出立の前に一つ具申(ぐしん)させて頂いても宜しいでしょうか? 」


「何だ……申してみよ」


「あの小僧……認めたくは有りませんが

化け物の如(ごと)き力を有しております。


ですが、我らには優秀な“魔導師”が味方に居ります……


……今回の戦(いくさ)、奴にも協力させるのは如何(いかが)かと」


「我は“全軍”と言った筈(はず)だ……“奴”も例外では無い」


「し、失礼を致しました! ……おい、其処(そこ)のお前!

“奴”を呼び出しておけ! 」


「ハッ! 」


===第四二話・終===

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