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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝15万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第二章

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第四一話「旅立ちって楽勝だと思ってました!」

政令国家での別れを済ませた一行は

ギュンターの固有魔導“戦艦(オベリスク)”へと乗り込んだ。


……だが、目的こそあるものの

“目的地”を考えていなかった主人公と

妙に張り切り過ぎたギュンターのせいで

旅の初日は大騒ぎで始まる事と成る。


◆◆◆


「……主人公様、目的地をお(うかが)いしておりませんが

()ずはどちらに向えば(よろ)しいのでしょうか? 」


ギュンターさんにそう(たず)ねられた俺は

メルちゃんから受け取った絵本を見せながら

“この本の作者を見つけたい”と言った。


すると


「ほう……見つけ”たい”ですか、それは(すなわ)

何処(どこ)に居るかも不明”と言う事でございますね? 」


「え、ええ……その通りです」


「……確かに不思議な内容の絵本ではありますが

そもそも、何故(なぜ)この作者をお探しに成られたいのですか? 」


「その……これに(えが)かれている食べ物は

俺が前に居た事のある場所の物なんですが

本来ならこれを作れる……と言うか

その“知識がある”国がこの世界に存在する(はず)が無いんです。


にも関わらず、これには詳細に(えが)かれて居る

この絵本の作者に(たず)ねれば

何か分かるかもしれないと思ったんですが

持ち主であるメルに聞いても“拾い物なので知らない”と。


この絵本以外には情報も無いので

見つけられる確率の方が低い事だって分かっては居るんです。

でも……それでも何故(なぜ)か探してみたいんです。


正直、馬鹿げてますよね……」


と、ギュンターさんに対し

ある意味“馬鹿げた”旅の目的を話した俺。


だが、その様子を見ていたガルドは


「何を言うか……求める物が何であれ

御主の“失われし母国の技術”で有るのだろう?

探し求めようとするのは当然であろう?


……無論(むろん)吾輩(わがはい)は協力を(いと)わぬ」


と、(いささ)か盛大な“勘違い”をしてくれた心優しいガルド

直後、そんなガルドに同意する様に


「兎に角だ……内容がどうであれ

主人公の望みならば私も協力を惜しまないつもりだ

それに、様々な国を(しらみ)(つぶ)しに調べて回れば

何かしらの情報が得られるだろう」


“作者探し”への協力を惜しまない

そう約束してくれたディーン……だが、そんな中

ギュンターさんはある疑問を口にした


「……ええ、ディーン様

無論(むろん)、私めもその意見には賛成でございます

しかし、古い絵本ではある様ですが……主人公様

“この世界に存在し()ない”と言うのは少々妙では?


……主人公様が()られたと言う場所が存在して居た時

書き(しる)された可能性があるにも関わらず

何故(なぜ)“存在し得ない”と(おっしゃ)られたので? 」


この瞬間、そう言って“痛い所”を突いたギュンターさん

だが、俺を信じついて来てくれた人達に対して

俺の“真実”を語らないと言う選択肢は無くて――


「そ、それはその……ってマリア。


皆、俺に付いて来てくれた仲間達だ

出来る限りなら隠し事はしたくない……


……話しても良いか? 」


「ええ、どうぞ」


「ありがとな……えっと

皆さんは変に思う話かもしれませんが

これから話す話には、何の誇張も嘘もありません。


その――


“この世界は全て俺の創造物(そうぞうぶつ)だ! ”


――と言ったら、信じてくれますか? 」


(いた)って真剣な顔でそう(たず)ねた俺に対し

ディーンは


「主人公……(いく)ら君が“神懸(かみが)かり”的実力を持って居るとは言っても

(みずか)ら“神と思え”とは、あまりに荒唐無稽(こうとうむけい)だぞ? 」


「なッ?! ……違うって!そんな大それた事は言ってないよ。


その……俺は“異世界転生者”って存在でさ

別の世界からこっちに飛ばされたんだ。


(ただ)唯一(ゆいいつ)普通の転生と違うのは

俺の場合“自分で作った世界で生活しろ”ってルールがあって

それで、試行錯誤して作り上げたのがこの世界なんだ。


だから……ギュンターさんが疑問に思った

“絵本の内容”についても、俺の妙な“断言”も

絵本の中に描かれて居る“たこ焼き”が

俺の元居た世界の物だからなんだ。


……でも、そんな物を作り出した覚えは無いし

そもそも、この世界に本当に存在して居るかどうか自体……」


この後も必死に説明をして居た俺。

最初こそ皆は疑って居る様子だった、だが

最終的には皆、俺の発言を信じてくれた。


その上で、ディーンは――


「確かに今の説明は嘘と思えない……だが

だとするならば、この世界を作り直す事も可能なのか?


……そもそも、今の話が仮に全て嘘であったとしても

主人公の固有魔導を(もち)いれば、その本の作者を

今すぐここに“呼び出す”事も可能だと思うのだが……」


「……今から世界を(いじ)るのは無理だ。


それに、俺もこの世界の全てを把握出来てる訳じゃないし

分からない事の方が多くて……(ただ)

“固有魔導で呼び出す”件についてはそうかも知れない。


けど……作者を呼び出す事が出来た所で

“旅に出ます”と言って大手を振って出て来た手前

どちらにしろ、(しばら)く帰っては来られないだろ?

それから……今、俺が話した事は嫌かも知れないが真実だ。

まだ疑わしいと思うなら

俺の事を“自白の魔導”で尋問してくれても構わない。


だから……この件を聞いて

もし俺と旅をする事が嫌になったのなら

今のうちに政令国家に戻ってくれても構わない。


けど……その場合、馬車を借して貰える様

お願いして来て欲しい」


思った事、知っている事を洗いざらい全て話した俺。

すると、ディーンは高らかに笑い出し


「……全く、何を言うかと思えば。


我々は主人公に助けられた身

どんな事があろうとも君と同じ道を歩むと誓った(はず)

勿論(もちろん)、君が嘘をついて居るとも思っていない。


そもそも、(ただ)でさえ異質な固有魔導を持つ君が

我々の様に異質な……いや、少し待ってくれ。


……ギュンター、主人公がこれ程我々を信頼してくれたのだ

我々の“秘密”も打ち明けるべきだとは思わないか? 」


「そうでございますね……私めはディーン様にお任せ致します」


直後、隊員達全員に許可を取りディーンは

(みずか)らと隊員達(かれら)の秘密を話してくれた。


「我々も人の事を言える程

常識的(じょうしきてき)な”固有魔導では無い事、見て分かると思う。


……特に、ギュンターの戦艦:オベリスクは常時発動が可能で

通常使用ならば魔導負荷は無に等しく、例え(こわ)れても

自動修復される上、その他にも様々な能力を隠し持って居る。


私の愛銃である“魔銃:双頭之黒犬(オルトロス)”もそうだが

皆それなりに異質な力を持っている事は説明するまでも無いと思う。


……だが、我々の能力は元々持って居た物でも

自己で発現(はつげん)した能力でも無い……」


「ど、どう言う事だ? 」


「主人公……“白衣の男”が()いた内容は覚えて居るだろう?


……私達は奴の母国で“改造手術”を受けさせられ

固有魔導を無理やり“埋め込まれた”のだ。


そもそも、私達に(ほどこ)された技術は

あの国の最高機密事項だ……(ゆえ)

本来|攻撃術師(マジシャン)型の魔導師なら(おこな)える(はず)

転移魔導は使えない様、細工を(ほどこ)され

万に一つも逃げ出せぬ様、普段は拘束され

あの国の軍事力として利用され続けて居た。


……とは言え

今まで下された命令は魔族や魔物などの討伐が(おも)

命令を受け入れる事にもさしたる抵抗は無かった。


だが……ある日

どうしても受け入れ(がた)い命令が下ってしまった。


当然、拒否はした……だが、部下を盾に脅され

結果として私は命令に(したが)う事を選んだ。


だが、作戦実行の日私達の元に“幸運が舞い降りた”

今しかない……そう判断した私は

ギュンターに対しオベリスクの“ある能力”を使用させた。


“呪具”の発動範囲から逃げ切れるかは

正直、賭けだった……今、こうして此処(ここ)に居られる事は

奇跡と呼ぶ他無いだろう程に」


窓の外から遠くを見つめ、そう言ったディーン

そんな中、眠い目を(こす)りながら俺に近づいて来たライラさん

彼女は俺に対し


「“呪具”の呪い……主人公さんが

解除してくれたから……もっと助かった。


だから……ありがとう」


「い、いえそんなッ!!

俺がそうしたかったからそうしただけで! ……」


この後

隊員全員から感謝され続け

少々照れくさい時間を過ごす事と成った俺……ともあれ

一頻(ひとしき)り、互いの“身の上話”に花が咲いた後


「さて……まずはどちらに向かいましょう? 」


(かじ)を握り締めそう言ったギュンターさんに対し

マリーンは少し慌てた様子で


「ち、ちょっと待って! まだ決まって無いのなら

少しだけで良いんだけれど……寄って欲しい所があるの」


「はい、どちらにお寄り致しましょう? 」


「そ……その、出発前に“お父さん”に挨拶しておきたいから

出来たら“水の都”に寄って欲しいかなって……」


そう、だよな。


(しばら)くは帰って来られないだろうし

俺だって大切な娘さんを引き連れて旅をするんだ。


“ちゃんと挨拶しておかないと! ”


そう考えた俺は“一度訪れた場所”と言う事もあり

何の気無しに“転移魔導での移動”を提案した。


だが


「……駄目よ! これから

長い旅に成るかも知れないんだから

そうやって無駄に魔導を連発して

いざと言う時に足りなくなったりでもしたら

全員が危険な目に遭うかも知れないのよ?

だから……転移よりは時間が掛かるかも知れないけれど

“魔導負荷が(ほとん)ど無い”って言う

ギュンターさんのオベリスクに頼るべきだと思うわ? 」


「あ~……確かに、マリーンの言う通りだ

ギュンターさん……そう言う事なので

水の都まで、お願いしても(よろ)しいですか? 」


「ええ、お任せ下さい……しかし、マリーン様には少々

オベリスクが“鈍足(どんそく)”だと思われて居る様ですので

私めがあの国から脱出した(さい)使用した能力の

片鱗(へんりん)”をお見せすべきでは無いかと考えて居るのですが


……(よろ)しいでしょうか? 」


そう言って

マリーンに確認を取ったギュンターさん。


だが、この直後……(ギュンター)の物言いに

“地雷を踏んだ”と考えたマリーンは大慌てで


「ち、違うの! そう言う意味で言ったんじゃなくて!! 」


「いえ……誤解(ごかい)無き(よう)、ご説明させて頂きます

決して不愉快に感じご提案申し上げた訳では御座いません。


仲間で有る方々には“愛馬(オベリスク)”の実力を知って頂きたい


……そう、考えただけなのです。


ですのでお気に()さらず“深く着席”を

ディーン様……(よろ)しいでしょうか? 」


「ああ……許可しよう。


さて、皆|(しっか)りと椅子に座り

肘置(ひじお)きを(しっか)りと(つか)んでおく事を

強く……お(すす)めしておこう」


「えッ? ……そんなに? 」


「ええ、主人公様……“そんなに”でございますので

くれぐれもお手をお(はな)しに成られません様

どうか、お願い申し上げます。


では……参ります。


オベリスク、第二形態


駿馬(しゅんめ)型”ッ!! ――」


瞬間、オベリスクは途轍(とてつ)も無い揺れと共に

まさかの“変形”を始めた。


……俺を含め

皆椅子から振り落とされそうになりつつも

必死にしがみつき耐え続けた。


そして……(しばら)くの後

揺れの収まりと同時に聞こえて来た

マリーンの絶叫(ぜっきょう)


「……わ、私が悪かったからぁぁぁぁぁっ!!

って、も……もう、終わったのよね?! 」


軽いパニック状態に(おちい)りそう言ったマリーン

だが、マリアは対照的で


「楽しいですね~! ……もう一回っ! 」


「マリア様……お楽しみ頂けた様で私めも嬉しく思っております。


本機は少なくとも後二~三形態ほど変形出来ますので

機会がございましたらご経験頂けるかと……」


「本当ですか? ……やった~! 」


ギュンターさんの説明に大喜びしたマリア

そんな彼女に対し、俺は思わず


「そういえば“転生の時も”そうだったよな、お前」


昔を思い出しそう言った俺に対し

“あれ楽しかったですね~”と返して来た

絶叫マシーン“マニア”……いや。


“マリア”に若干イラッとしつつも

変形後は揺れも無く、内心ホッとして居た俺……だが

安心していた俺の耳に聞こえて来た

オベリスクの“出力上昇音”


この、直後


「さて……目的地は水の都でございましたね?

全速力で向かいますので、皆様引き続き

(しっか)りと肘置きをお掴み頂けます様お願い申し上げます。


では……オベリスク駿馬型

全速前進(ぜんそくぜんしん)ッ! ――」


瞬間、浮上し急加速したオベリスクは

景色を見る余裕など与えず凄まじい勢いで爆走し続けた。


……到着までに(よう)した時間はほんの(わず)かだったが

到着するまでの間、マリーンの悲鳴が

オベリスクの船内に響き渡り続けた事は

言うまでも無いだろう。


「……私が悪かったからぁぁぁっ!!!

ごめんってばぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! ……」


◆◆◆


「さて、到着でございます……が

マリーン様……私めの方こそ申し訳ございませんでした。


乗り心地が“少々”悪いのが“駿馬(しゅんめ)型”の欠点でございまして

今後はマリーン様へ配慮させて頂きたく

緊急時以外の使用は見合わせますので

どうかお許しを……」


と言うギュンターさんの謝罪には全く興味も示さず


「……い、生きてるのよね?

主人公……私、生きてるのよね?! 」


と“バキバキ”の目で俺に(たず)ねて来たマリーン


「ああ、生きてるよマリーン……けど、正直

俺も生きた心地がしてないかな?


てか“駿馬(しゅんめ)”と言うより

(むし)ろ“暴れ馬”に感じたんだが……」


「主人公様……申し訳ございませんでした

ですが……“暴れ馬型”は別でございます」


「あ、あるんですかッ?!

それは危なそうだ……ってメルッ?! 」


「はぅぅ~……」


俺達の中で一番

“こう言う状況”を怖がりそうに思えるメルが静かだったから

“意外と大丈夫なのか? ”……とか思って居たら

メルは、振り落とされまいと

肘置きを必死に掴んだまま目を回して居た。


それにしても、確かに凄まじい速力を有して居るとは思うが

ごく(わず)かな距離の移動で“これ”ならば


「えっと……取り敢えず

“緊急時以外は使用しない”方が良さそうですね」


心の底から思った事をそのまま口に出した俺に対し

申し訳無さそうにし始めたギュンターさん。

だが、そんな彼に対し


「え~? 私はすっごい楽しかったですよ?!

はいッ! もう一回っ! はいッ! もう一回っ! 」


「……だからマリアはアンコールやめいッ!!

って、さっきから大人しいけど……ガルドは平気なのか? 」


「いや、並の事では驚かんつもりであったが

これは流石(さすが)に……うぷッ!? 」


瞬間、強い吐き気を(もよお)したガルド


「ちょぉッ?! ……状態異常治癒(デバフヒール)ッ!! 」


「た、助かった……すまない主人公」


「グランガルド様まで……申し訳ございません」


と、深く反省している様子のギュンターさんに対し

追い打ちを掛ける様に


「二度目の(はず)だが……正直慣れん」


そう言ったディーンに続き、ライラさんは


「ドラゴンも……目を回してる……」


と、続け……そんなライラさんの横ではタニアさんが


「も、もう……らめぇ……」


と、ヘロヘロに……更には。


「今、敵に襲われれば……防御出来る自信は有りません」


そう、オウルさんまでもが言い切った事で――


「皆様、心よりお詫びを……」


ギュンターさんは

完全に意気消沈(いきしょうちん)してしまったのだった。


「い、いやその……そ、そもそも“緊急用”ですし?!

不満が出る位で丁度だと思います!

(むし)ろ、それ程の性能を持ってる事を

心の底から誇りましょう! ギュンターさんッ!


って事でマリーン! ……お父さんに挨拶しに行こうか! 」


実はこの

“ギュンターさんへの必死のフォロー”


その、理由に()ける内訳の(ほとん)どが

密かに我慢して居た“吐き気”を治癒する(ため)

一刻も早く下船しようとして居ただけ。


と言う物だったのは絶対に秘密だ。


まぁ、ともあれ……下船後、こっそり治癒魔導を発動し

無事に吐き気を(おさ)える事に成功した俺は

遅れて降りて来たマリアに対し


「……今日はマリーンのお父さんに挨拶するんだ

さっきまでの浮かれ気分は(おさ)えて真面目にな」


と、まるで

父親みたいな口調で注意したのだった。


だが、そんな中


「それは流石(さすが)に心得て……って

あれって“お墓”ですよね? 何だか人が沢山居ますけど……」


そう言ってマリアが指し示した場所には

大きな石碑の様な物が建てられて居て


「あれ? 本当だ……行ってみよう」


◆◆◆


この後、近づくにつれその姿がはっきりと見えたその“お墓”は

湖の(ほとり)に建てられた

とても立派な“慰霊碑(いれいひ)”だった。


……慰霊碑(いれいひ)には水の都の王の名前“アルフレッド”と

この場所で命を失った民達の名前が数多く(きざ)まれており

慰霊碑(いれいひ)の前では、数十人程の

水の都出身者達が祈りを捧げて居た


「……改めて見ると凄い人数だ。


でも……あの時、俺がもっと上手く動けていたら

この人達もマリーンのお父様も御存命(ごぞんめい)だったのかと思うと

正直、胸が苦しいよ……」


石碑に連なる名前の多さに驚き

思わずそう口にしてしまった俺に対し


マリーンは


「そうかもね……でも、私は貴方の必死さを見てたし

そもそも貴方が助けてくれなかったら、私達は全員……


……だから気にしないで、とても感謝してるわ」


そう言って

俺などよりも(はる)かに大人な対応をしてくれた。


……そんな中、俺達に気付いた一人の老齢な民は

マリーンの元へと近づき


「マリーン王女様……もしや

王へのご挨拶にお越しになられたのですか? ……」


「ええ……あなた達がこの墓を? 」


「……はい、国王様亡き後

長らく苦しんで居られたマリーン王女様とマリーナ女王様の(ため)

何より、失われた者達への慰霊の(ため)……皆で協力し

ドワーフ族やオーク族に頼み込み、ようやっと

この様に立派な慰霊碑(いれいひ)を建てる事が

叶いましてございます……」


「そうだったのですね……本来ならば王女である私が

あなた達よりも先に気付き、動くべきであったと言うのに……


……苦労を掛けました。


仮にも王女だと言うのにあるまじき体たらく

この通りです……(わたくし)を許して下さい」


そう言って民達に向け深々と頭を下げたマリーン

だが、老齢な民はこれに慌て


勿体無(もったいの)うございます!

頭をお上げくださいませ王女様っ!!!


……王女様も女王様も

我々民の(ため)に日々忙しくして居られました

ですから、私共も何か協力をさせて頂きたく思い

この慰霊碑を立てたのです。


もし、それでもまだ王女様が

“心苦しい”と(おっしゃ)られるのであれば

その気持ちは、亡くなった者達への祈りでお返し下さればと……


……恐れながら思っております」


「そうですね……私は駄目な王女です

民にこれ(ほど)までに気を遣わせてしまうなんて。


……民達よ、私は(しばら)くの間この国を離れ旅に出ます

ですが、帰国の(あかつき)には貴方達の誇れる王女として

少しでも成長し、皆の元へ帰って来る事を

この慰霊碑(いれいひ)に誓いましょう……」


「王女様……どうかお気をつけ下さいませ

貴女様がご無事でお帰りに成られる事だけが

我々民の心よりの願いでございます……」


「ええ……貴方達の愛に感謝します

貴方達が私の民で有るお陰で

私は誇りを持って旅立つ事が出来ます。


日々、貴方達が健やかである事を祈り旅を続けましょう。


さぁ……皆で慰霊碑(いれいひ)に祈りを」


……この日、俺達はマリーンの“王女”としての立場と

その立ち居振る舞いを目の当たりにした。


その迫力に圧倒されつつも、マリーンを尊敬(そんけい)

マリーンの民を(おも)う姿に神々しい何かを感じつつ

俺は、彼女と共に慰霊碑(いれいひ)へと祈りを捧げた


「……良い祈りでした

父にも、民の皆にも届いた事でしょう。


……(しば)しの別れですが

私は貴方達の平穏無事を祈っています。


行きましょう……主人公」


「あ、ああ……もう良いのかい? 」


「ええ……これ以上ここに居たら

皆に泣き顔を見せてしまいそうなの。


だから、早く……」


「……分かったよマリーン。


皆様……マリーン王女は

俺が責任を持ってお(まも)り致しますのでご安心を!


では! ……」


「ええ……お任せ致しますぞ主人公様」


◆◆◆


この後、暖かく見送られた俺達は

笑顔で水の都を後にした


「……皆様、心より感謝申し上げます

これで私も純粋な気持ちで旅が……って。


ごめんなさい、王女の話し方が抜けないわね……」


そう言って少し照れたマリーン、だが


「なぁ……俺、マリーンが言う様に

王女として駄目だとは思えないし

(むし)ろ、今日のマリーンは凄く(りん)として見えた。


嗚呼(あぁ)、マリーンってやっぱり王女様だったんだ

俺達には砕けて話してくれるけど、本来

仲間に加わって貰える事自体、光栄な事なんだ”


……そう思う位には凄く格好良かったよ」


「ちょっと……て、照れるからそんなに褒めないでよ!

そっ、それより! ……早く目的地決めましょうよ! 」


「う~ん……そうは言っても、地図的な物が無いと

一体|何処(どこ)に行けば良いのかが……」


と悩んで居た俺に対し、ディーンは


(しらみ)(つぶ)しに探すのであれば

手当たりしだいに様々な国へと出向けば良い話だ

それに、地図ならばある……()ずはこの国を目指そう。


とは言え、このままでは目立ってしまう

ギュンター……何時(いつ)も通りだが、任せる」


「承知致しました……では。


オベリスク:隠密型――」


瞬間、またしても変形を始めたオベリスク

だが


「おぉッ?! ……って、さっきよりは揺れが少ないですね」


「ええ、隠密型は文字通り“隠密用”でございまして

戦闘力は少々落ちますが、悪目立ちはしないかと。


では……隠密型

微速前進(びそくぜんしん)――」


直後、ギュンターさんの命令により

オベリスクは馬車程度の速度で進み始め


「成程……形状変化して偽装(ぎそう)まで行う事で

威圧感満載なオベリスクの存在を

他者から気取られない様にしてるって事ですね!

(のう)ある(たか)(つめ)(かく)す”って感じがして好きです。


それにしても、本当に羨ましいなぁ~ッ……」


と、羨ましさを一切包み隠さず口にした俺

だが、その一方で


(ただ)、一つ疑問が有るんですが……」


「……何で御座いましょう? 」


「その……どれだけ形が変わったとしても

外から見たら馬車以外の形をした

“巨大で異質な乗り物”だと思うんですけど

そう言った面で、面倒事に巻き込まれたりはしないんですか? 」


「いえいえ、外からはその様には見えておりません

隠密型の特徴は……」


とギュンターさんの説明を聞いて居たら

“お(あつら)え向き”に荷馬車強盗らしき(ぞく)が数名現れた。


……彼らはオベリスクの進路を(さまた)

武器で威嚇(いかく)をして居たのだが


「これはこれは……どうやら、強盗に狙われる程

“か弱い荷馬車”に見えて居る様です。


ディーン様……対応はどの様に致しましょうか? 」


「奴ら程度にオベリスクの火力は目立ってしまう

タニア……任せた」


「ハッ! ――」


直後、命令を受けたタニアさんはオベリスク後方より飛び降り

か弱い少女の様な態度で、(ぞく)共へと近付いた。


◆◆◆


「ん? 何だぁ? って……かぁ~わいい姉ちゃんだなぁおい!

金目の物を寄越(よこ)しな! そしたら命は助けてやるよ!

それか……おれ達と“良い事”しようぜ姉ちゃんよぉ! 」


「――ご、ご勘弁を。


馬車には(やまい)に倒れた両親が居るだけです

急いで隣町の病院へ連れて行かなければ

それに……価値のある物など、この馬車には……」


「……っるせぇよ!

ならお前だけでも貰ってやるだけの話だ! ……来いっ! 」


「いやっ! ……離してっ! 」


「へぇ~? ……離して欲しいのか?

なら、おれ達と気持ち良い事しようぜ?

そうすりゃ離してやらなくもないぞ?

どうだ? ……嬢ちゃんよぉ~っ! 」


「み、皆さんを気持ち良く……そっ……そんな!

皆さんをって言っても……そ、その

一体……何人をお相手に……」


「何人って……見ての通りおれ(たち)ゃあ~四人だぜ!

おれ達全員が満足したら此処(ここ)を通してやるよ!

どうだ、嬢ちゃん? ……“病気の両親”を

助けてやりたいんじゃないのかぁ~? 」


其処(そこ)までを聞いた瞬間

タニアさんの態度は“ガラリ”と変化し


「成程……では、これで“全員”と言う事ですか

なら、簡単な話ですわね――」


瞬間、タニアさんは盗賊達の視界から消え――


「何っ?! ……ど、何処(どこ)だっ?! 」


「……此方(こちら)ですわ?

それにしても、素直に引いておけば良かった物を……」


――慌てて周囲を見回す盗賊達に対し

そう言ったタニアさん……だが

彼女は既に遥か遠くの高台に移動しており

その場所で、前に見た“吹き矢を吹く様な構え”を見せた。


直後、盗賊達は跡形も無く“溶け去った”


◆◆◆


「……本当、世の中の男って腐ってますわね

素敵なのはディーン様と……主人公さん位かしら? 」


この瞬間、密かにそう言うとオベリスクへと帰還したタニア。


だが……その反面、一連の動きを目撃した主人公は

呆気(あっけ)に取られ、(わず)かながら

彼女(タニア)の戦法に“恐怖”して居て……


◆◆◆


「ディーン様……排除完了致しました」


「ああ、毎度の事ながら見事な手際だ」


「いえ、恐れ入ります……」


(……“毎度の事? ”

ひょっとして、何時(いつ)もあんな

“怖い対処方法”なのだろうか? )


「え………えっと、その……タニアさんを怒らせたら

ヤバそうだなって思いました……」


「いえ……お目汚し、失礼致しましたわ」


この瞬間、ほんの一瞬ではあったが

タニアさんは悲しそうな顔をした。


見覚えのある目……嗚呼(あぁ)、これは

“悪口を言われた”人間の目だ。


……良く考えれば分かった話だ。


彼女を含め、ディーン隊の皆は

母国で“汚れ仕事”を強要されていた。


彼女達に取って、一度でも“機会(チャンス)”を与えたこの対応は

まだ、優しい方だったんだ……俺は

転生前の常識だけで、彼女達の事を見て居た。


駄目だ、一刻も早く謝らなければ――


「そ……その……あんな奴らを野放しにしていたら

タニアさんの様に“対処出来る力”を持って居ない

弱い立場の人達は危ない目に遭い続ける事になる(はず)

いや……俺が今言うべきはこんな事じゃない!


タニアさん……失礼な事を言って

本当に……申し訳有りませんでしたッ!!! 」


直後、俺は

タニアさんに対し土下座をした


「なっ!? し、主人公様?! 何故(なぜ)その様な事を?! 」


「……貴女の行動は何も間違って無いのに

俺は軽はずみな考えで貴女に失礼な発言をしてしまった。


どうかお許しください……貴女を傷つける様な

(ひど)い発言でした……本当に……」


俺は床に頭を擦り付けながらそう言った

その一方で


「……い、いえそんな!

確かにあの技の見た目は決して美しい物では有りませんし

今度からは他の技を使いますから……その

主人公様から完全にお認め頂ける様な綺麗な技を……」


そう言って(なお)も俺の事を気遣ってくれたタニアさん

だが、そんな彼女に対しガルドは


「待てタニア殿……技に綺麗や汚いの貴賤(きせん)は無い

結局の所、相手を(あや)める(たぐい)の技は

(けが)らわしくあって(しか)るべきである。


私利私欲の(ため)悪用した訳でも無い

(むし)()(わきま)えず引かなかった奴らの失策だ。


御主が気に病む事など無い(はず)……


……吾輩(わがはい)賛辞(さんじ)で気が軽くなるのであれば

“良くぞやった”……そう、褒め(たた)えよう。


主人公よ……既に分かっては居るだろうが

以後は気をつけて物を言う事だ……


……吾輩(わがはい)も共に詫びよう」


「そ、それは光栄でございます……で、ですが

私も流石(さすが)にその……照れてしまいますので

その……もう、ご勘弁下さいませっ! 」


手際としてならば兎も角

今まで決して褒められる事など無かった

(みずか)らの技術に対する始めての“賛辞”に

彼女は、(ほほ)を赤らめ照れて居た。

そして


「……無論(むろん)、私もタニアの技は素晴らしいと思っている

恥じる事など微塵(みじん)も無い、誇るべき技術だ。


だが、其処(そこ)まで喜ぶのだと知って居たならば

常日頃(つねひごろ)、私も少しは褒めておくべきだった。


そう後悔して居る所だ……さて、主人公よ

タニアももう気にはして居ない様だ

そろそろ頭を上げ……」


主人公(かれ)に対し頭を上げる様|(うなが)した瞬間

突如として苦しみ始めたライラ


「ド……ラゴンっ……だめっ! ……」


そう言い残し

慌ててオベリスクの外へと飛び出したライラ

その(ただ)成らぬ様子に、彼女を追い下船した一行。


だが、次の瞬間――


「ギュオォォォォォォォォン!!!!! 」


「だ……めっ……! 」


ライラの命令を受け入れず

突如として彼女の体から飛び出した“緋色(ひいろ)巨龍(ドラゴン)


……(ひど)く興奮し、一頻(ひとしき)り周囲を飛び回った後

巨大な魔物を発見するとその魔物目掛け急降下し


その喉元へと()らいつき


「何……してる……のっ……! ドラゴ……ン……」


(なお)も呼び掛け続けて居たライラ

だが、一連の様子を見ていたメルは


「あ……あのっ!

あれって、魔物を……食べてるのではっ?? 」


……彼女の言う通り

巨龍(ドラゴン)(ただ)魔物を捕食して居るに過ぎなかった。


だが……妙に()

一心不乱(いっしんふらん)に魔物を振り乱しながら

凶暴な姿で捕食する姿を見たライラは、深く悲しんでいた。


「なん……で……何でッ!

……戻って……お願い……ドラゴン……」


彼女がどれ程呼び掛けようとも

見向きすらせず魔物を喰らい続けた巨龍(ドラゴン)


……(しばら)くの後、食欲が満たされたのか

一頻(ひとしき)り周囲を飛びまわった後

巨龍(ドラゴン)は何事も無かったかの様に

彼女の体へと舞い戻った。


だが……


「何……で……何でッ……」


……巨龍(ドラゴン)帰還後


(ひど)く落ち込み、(うつむ)いたまま

静かに涙を流し始めたライラ

そんな姿を(ただ)見守る事しか出来なかった一行……だが


そんな時、何かを思い出した主人公。


◆◆◆


「待てよ? ……あれだけ冷静に

“必要部位を()り分けた”巨龍(ドラゴン)

魔物を食べる(ため)に命令違反?

そんなに腹が……ってまさか!?


……ライラさん、本当に申し訳ありませんでした

今の巨龍(ドラゴン)の行動は、恐らく……俺のせいです」


「何だと? ……どう言う事だ主人公ッ?! 」


言うや否や俺の胸ぐらを掴んだディーン

ライラさんの悲しみの原因が“俺にある”と知った彼は

見た事が無い程に激昂(げきこう)して居た。

だが


「すまない……ディーン達の“呪い”を()いた時

巨龍(ドラゴン)のライラさんに対する“吸収行為”を

出来ない様、禁止設定したのは覚えて居るだろ? 」


「確かに言って居たが! ……ま、まさか

そのせいで巨龍(ドラゴン)が飢えて居た……と? 」


「ああ、恐らくはそう言う事だと思う……すまない」


「成程……いや、私こそ冷静さを()

この様な行動を……すまなかった、許してくれ」


「いや、仲間の事に真剣になるのは普通だ。


兎に角……あの時、固有魔導の“お姉さん”が

“定期的に餌やりが必要”って最後に言ってたのを

すっかりと忘れてた……だから、俺のせいです。


……ライラさん、本当に申し訳有りません

俺のせいでライラさんがこんな悲しい気持ちに……」


「……ううん、大丈夫。


ドラゴンと私が……無事なのは……主人公さんの……おかげ。


だから気に……しないで」


「……で、でも!!

このままではライラさんの心が苦しいままですし

俺に何か(つぐな)いを! ……」


タニアさんに引き続き

ライラさんまでもを傷つけてしまったこの瞬間

俺は、どうして良いのかさえ判らない(ほど)

強い罪悪感に(さいな)まれて居た。


だが、そんな俺に対しディーンは


「……まぁ待て主人公、これから先

多かれ少なかれ依頼を受け、魔物を相手取る事はある(はず)

その(さい)にでも必要部位以外の残りを

巨龍(ドラゴン)に与えて居れば問題には成らない(はず)だ。


……そもそも、今回の一件は不幸な事故の様な物だ。


ライラ、あまりドラゴンを責めてやるな

(ただ)、腹が減って居ただけだ

決してお前の事を嫌いになった訳では無い」


「はい……ディーン様……これからは

ドラゴンにご飯……食べさせます……」


◆◆◆


原因を知り、少し落ち着いた様子のライラ。


(しばら)くの後……一行はオベリスクへと戻り、改めて

第一の目的地へ進み始める事となるのだった。


===第四一話・終===

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