第四話「新たに得た装備、楽しい生活が始まるの……か? 」
マリアが検定官らしき人と何処かへ立ち去って暫く経ったが、何か問題でもあったのだろうか? ……いや、問題だよな。
遠目で見てても“騒ぎに成ってた”のは分かってたし……
……なんて事を考えながらラウドさんと話して居たら、“とんでも無い格好”をしたマリアが帰って来た。
「で! ……“ぱふぱふ”出来ると言う訳なんじゃよ~! 」
「な、成程……それは今度、是非一緒に行きましょうッ! 」
「ほほう、主人公殿は趣味が良いのぉ……わしも嬉しいぞぃ! 」
「主人公さぁ~~んっ! ……装備手に入りましたよ~っ♪ 」
「っと、マリアが帰って来たみたい……でッ?!
な……何だその格好ッ?! 」
何処の店に行けば手に入るのだろうか?
マリアの装備している防具はサイズが全く合っておらず、防具なのに“へそ出し状態”だった。
いや、成程……これがかの有名な“ビキニアーマー”か。
……と思う程に。
だが……唖然として居る俺の事などつゆ知らず、手に入れた装備を自慢するマリアの様子に俺は若干引いて居た。
「ねぇねぇ主人公さん! ……この装備、凄く格好良くないですか?
兎に角凄い装備なんですよ~っ?
って、主人公さん? ……何で固まってるんですか~?
似合ってます~?
似合うって言ってくれないと泣きますよ~? 」
この問いに対し、俺は……つい“思っていた事”をそのまま口にしてしまった。
「その……エロい」
「……なんて事言うんですか!!!
ここの隙間恥ずかしいのに!! 」
「ああ、一応“恥じらっては”居たのね」
「えっ? ……酷いっ!! 」
などと話していたら、急にラウドさんが取り乱し始め……
「そ、その装備はバーバリアンの……
……あの店主がお主に託したのかね?! 」
と訊ねたのだが。
バーバリアン? ……聞いた事が有る様な無い様な。
でも、俺そんな設定したっけか?
……なんて事を考えて居たら、二人は真剣な雰囲気で話し始め……
「はい“装備も報われるだろう”って仰ってました」
「そうかね……あの店主も救われたじゃろうて」
正直、横で聞いて居ても気になる内容だったので詳しい内容を訊ねた俺。
だが……
「……主人公さんには秘密ですっ!
“エロい”なんて語彙力もデリカシーの欠片も無い反応したから、絶ぇぇぇっ対に……秘密ですっ! 」
「い、いやその……ごめん」
どうやら俺はマリアを怒らせてしまった様だ。
“流石に悪い事をしたなぁ”……と思い始めて居たこの直後、十二時を告げる鐘の音が鳴り響き……
「……おぉ、丁度良い時間じゃ!
今度は主人公殿の装備も作らねばのぅ! 」
「ええ! ってあれ? 連絡は……」
「ん? ……先程“魔導通信”でしておいたぞぃ? 」
「そ、そんな事が出来るんですか?! 」
(電話みたいな物だろうか? )
「うむ、主人公殿も使える様に成るぞぃ? 」
「ほぇ~ッ楽しみだ! っとマリアも一緒に……って。
や、やっぱり宿に戻っててくれるかな?……」
(やっぱりその“格好”は破廉恥が過ぎると思うし)
「えぇっ?! 何でですか! 私も行きますよ?! 」
(……何か失礼な目線を感じます! )
「い、良いからお願い……戻ってて!
そ、そうだッ! ……物理職と魔導職は“犬猿の仲”らしいんだ!
マリアは物理職でしょ? ……だからほら!
おッ、俺は凄く凄ぉ~く来て欲しかったけどさ!
その、後々面倒事に成ったりとか……ねッ!?
マリアが大切だからさ! ……お願いッ! 」
(神様仏様……お願いだからこの子を止めてッ! )
「もぉ~……優しいですねぇ主人公さんったら。
分かりました、私は一度ヴェルツに戻ってますね~」
「有難う……何かごめんね! 」(……助かったァァァァ! )
「ふむ……では行くとしようかのぅ」
この瞬間、マリアが心変わりしてついて来ない様、ありとあらゆる神に祈りつつ、少し足早に立ち去った俺。
そして……決して豪華な佇まいでは無いものの、素人目に見ても分かる程、高品質な物しか扱わない事が見て取れるそんな店に案内された俺は……その“金額”に覚悟しつつ、店主と会話するラウドさんを少し後ろで眺めて居た。
「ラウドさんいらっしゃい……そちらの御仁が例の? 」
「そうじゃよ? ……主人公殿、自己紹介を」
「あっ……はいっ!!
主人公と言います、ラウドさんの紹介で本日は……」
「いえいえ……そう緊張されずとも宜しいですよ。
しかし……流石はラウドさん直々だ。
凄まじい魔導適性を感じますな? ……さて。
早速ですが、材料をこの鍋へ入れてくれますかな? 」
「え、あっその……全部入れたら良いですか? 」
「いえいえ……貴方が思う量で構いませんよ? 」
「そ、そうですか……では……」
直後、言われるが儘に目の前の鍋へ黄金の塊を数個投入した俺。
すると……
「……では、溶かす間に目を瞑り、貴方の想いを念じ、この鍋に“飛ばして”くれますかな? 」
「想いを飛ばす……難しそうですがやってみます」
勿論、完全に理解した訳では無いが、取り敢えず鍋に意識を集中してみる事にした。
すると……驚いた事に、俺の体から光の玉が発生するイメージが頭の中に浮かんだ。
正直かなりびっくりしたが、その光は鍋に向かって飛んで行き、溶けた黄金と混ざり合った……様な、“気がした”。
「まだ目を開けてはいけませんよ? ……ほう、成程。
……この“色”が出るとは」
そう言った店主の一言に、鍋の中がどうなっているのか確認したくて堪らなくなって居た俺。
そんな邪念の僅かに混ざった様な心境の中、“まだ飛ばし続けますか? ”と訊ねた俺に対し……
「あと少しです……よし完成だ。
もう、目を開けても良いですよ……」
そう言われ、期待を胸に目を開けた俺の前には……
「紫と、黒と……金? 」
「ええ……やはり、魔導適性が異様に高い様ですな。
さて……あとは少し冷えるまで待ち、形が出来始めましたら、貴方が手をかざせば完成です。
っと、ラウドさん……私は用があるので少し店をあけますが、暫くの間、店番を引き受けていただけますかな? 」
そう言うと店主は店を出て行った。
一方のラウドさんは鍋を覗き込みながら、“やはりこの色に成ったんじゃのぅ”と言った。
「あの……この色には何か意味が有るんですか?
見た所、マリアの装備も同じ様な組み合わせでしたけど……」
そう言いつつ、マリアの“ビキニアーマー”……もとい、防具を思い出した俺。
と言うか、あれは……ずっとあのままなのだろうか?
俺に取っては“眼福”だが、“あんな状態で”防具としての意味が有るのだろうか?
……などと考えていた邪念だらけの俺の精神を叩き直す程に、重苦しい話を始めたラウドさん。
「……昔、大きな戦いがあってのぉ。
初代トライスターが命を賭して辛くも勝利を収めたんじゃが、其の者が使用して居た装備と同じ色の組み合わせなんじゃよ」
「なッ……そ、そんな事がもう一度起きたとしても、俺は絶対に手伝いませんよ? ……」
色の禍禍しさも含め、段々と呪いの装備に思えて来た俺は思わずそう口走った。
だが……
「構わんよ……寧ろそんな戦いが起きたなら、主人公殿には全力で逃げて貰いたいと思っておる。
わしは、あの様な苦しい様をもう見たく無いからのぅ……」
「俺の事……責めないんですね」
「……彼も同じじゃった。
優しいオーラを纏った男でのぉ……嫌がっておった。
しかし奴にしか倒せなかった……
……周りの人間が次々と死んで行く中、一人の物理職の男が身を挺してトライスターを守った。
何を隠そう、それが先ほど話に出たバーバリアンじゃ。
漸くと言うべきでは無いのじゃろうが、それで決心をつけた彼は……っと。
……マリア殿が近づいてくる様じゃぞ? 」
「えッ?! ……この話の詳しい部分は時間のある時にでも! 」
ラウドさんがそう言った直後、扉が開く音がした……本当にマリアだった。
何故ラウドさんが言い当てたのかは兎も角として……
……妙だ、マリアの装備が先程見た形状とはかなり変わって居る……何と言うか、ちゃんと“防具らしい”形に成って居る。
一体、何があった?
「主人公さん遅ぉいっ! ……何してるんですか! 」
「……年寄の長話に付き合って貰って居っただけじゃよ。
すまんかったのぅ、マリア殿……」
「それなら良いんですけど……それはそうと!
私、主人公さんにこの装備の自慢をしたくてずぅ~っと待ってたんですけど、あんまり遅いので……来ちゃいましたっ! 」
「お、遅くてごめん……って、そう言えばその装備の形。
何か……“大幅に”変わってない? 」
「そう! ……それが伝えたかったんです!!!
主人公さんが“エロい”なんて言うので、部屋でどうにか出来ないか試行錯誤してたら!
……この装備凄いんですよ?
体に合わせてサイズと形状が細かく変更出来る造りになってて~……」
そう言いながら各部位を引っ張り、可動変形する構造の説明を熱心に語り始めたマリア。
……確かに先程までとは打って変わって防具として活用出来そうだが、そんな中、用事を済ませた店主が帰還し……
「いやはや、遅くなってしま……って、その装備は?!
お嬢さん……一体何処でその装備を手に入れられたので?! 」
「へっ? これは、物理装備専門店の……」
「彼奴が手放した?! ……それは本当に?! 」
「え、ええ“この装備も報われるだろう”って……」
「……お見かけしないお顔ですが、旅のお方ですかな?
何れにしろ、さぞ名のある斧使い様なんでしょう。
あいつがそれを手放す程となれば、差し詰めバーバリア……」
「え? いや……今日から斧使いになった新人ですけど? 」
「……はい?
き、今日は規格外なお客様が多いですな!
ゲホッゲホッ! し、失礼……」
些かキャラ崩壊気味の店主さん。
直後、迷惑を掛けた様に感じ、マリアの代わりに頭を下げた俺だったのだが……
「そ、その……うちのマリアが何かすみません」
「はい? ……もしかしてお知り合いで? 」
「はい、仲間ですけど……」
「何なんだ、今日は何なんだ……」
これが完全に逆効果だったから驚きだ。
ともあれ……この後、見た目のダンディさとは裏腹に、相当“面白い”状態に陥っていた店主さんに対し……
「……落ち着くのじゃ!
御主の“イケオジキャラ”が崩壊しておるぞぃ?!
そんな事より、早く主人公の装備を完成させてやるのじゃよ! 」
「そ、そうでした……
……余りの事につい取り乱してしまい申し訳有りません。
さて……主人公さん。
鍋の上に手を翳し――
“我に合う、形と成りて……我の為と成れ”
――そう、唱えてください」
「は、はい……では! ――」
店主さんの言う通りに呪文を唱えた俺。
瞬間、鍋の中で三色に変化した素材のそれぞれが俺の手に絡みつく様に浮かび上がった。
……かと思うと、直後、俺の体を今までに感じた事の無い“激痛”が襲った。
それもその筈だ……あろう事か、浮かび上がった素材は俺の中に“入り込もうと”し始めたのだから……
「――何……だ……これッ?!
ぐッ……あぁぁぁッッ!! 」
「……辛いでしょうが我慢してください。
多少の痛みが来るかもしれませんが……我慢を」
苦しむ俺に対し、店主は“多少の痛み”……と言った。
だが、掌から溶解した純金が入り込む痛さが“多少”な訳が無い……寧ろ、それは激痛と言う言葉さえ生易しい程だ。
「ぐッ!! ……体が……胸が……
痛い……ッ……何なんだよこれッ!! ぐッ。
……あ゛ぁぁぁぁぁッ!!! 」
「……主人公さんっ?! 」
「触れてはいかんマリア殿っ!!! 」
「でも、主人公さんが!! ……」
俺を心配するマリアの姿が微かに見えた。
ラウドさんに対し必死に何かを訴えて居る様子だけは分かったが、俺にはその声すら聞こえては居なかった。
それは多分、俺自身が発する叫び声が遥かに上回って居たからだろう……痛過ぎて気絶したいが、それすら“叩き起こす”程の痛み。
そんな中、微かに聞こえた店主の“後半分”と言う声。
……まだもう半分もこの痛みが続くのか?
くそッ……早く完成……してくれよッ!!
「……もう少しです、あと少し! 」
◆◆◆
最後の一滴が主人公の体へと入り込んだ瞬間、その耐え難き痛みが故か、彼はその場に倒れ、意識を失った。
◆◆◆
「……主人公さんっ!!! 主人公さんっ!!! 」
マリアの声だ。
やっと終わったのか……声も聞こえる。
重い瞼を開けた瞬間、其処には俺を心配するマリアの姿があった……嗚呼。
やっぱりマリアはとんでも無く綺麗だ……
……泣き腫らしたその目さえ余りに美し過ぎて。
心配を掛けてしまった事は申し訳無かった。
だけど、これはきっと彼女のお陰だ。
“痛みに耐えて良かった”
そう、思えたのは……
「……完成ですよ、お客さん」
「死ぬかと思った……トライスターなんて断るべきでしたかね?
初めての経験でしたよ、こんな規格外の痛み……」
などと話していたら、マリアが俺の事を抱き締めてくれた。
とても温かくて、優しい心を感じた……まぁ、とは言え、実際は甲冑がガツガツ当たるから“すっげぇ痛かった”のだが。
「良かったよぉぉっ~……主人公さぁ~んっ! 」
「……心配掛けてごめん。
でも、もう大丈夫だから……ってあれ?
あ、あの……肝心の武器は何処へ? 」
俺の体に入ったっきり、三色に染まった材料は何処かへと消えたままで……
「ん? ……おかしいのぅ、見当たらんぞぃ? 」
ラウドさんを含め、皆が俺の周りを探すが見当たらない。
そんな中、店主さんは俺に対し……
「まさかとは思いますが……主人公さん。“我の元へ”……と仰ってください。
……恐らくは“内蔵型”なのでしょう」
「な、内蔵型? 便利は良さそうですけど……我の元へッ! 」
言われた通りに呪文を唱えた瞬間、俺の周りに現れた武器……まぁ、確かに現れてくれた。
だが、同時に……俺が最も“危惧して居た結果”を齎しても居て……
「ぬおわッ!? って……えッ?
あ、あの……“これ”
何だか……凄く……
とっても……“目立ち過ぎて”ないですかぁぁぁぁぁッ?! 」
俺が最も危惧していた事が現実に成った瞬間だった。
何故か? ……判らないなら見て欲しい。
俺の体の周りを元気に飛び回る紫・黒・金の粒子を。
光り輝きながら舞い続けている紫・黒・金の粒子の数々を!!!
「ふっふっふ~ッ♪ ……主人公さん、凄っっごい目立ってますね~」
とニヤけた顔で俺をからかったマリア。
……前言撤回だ。
マリアは断じて“優しく”なんか無いッ!!!
「い……嫌過ぎるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!! 」
どうにか異世界転生を成功させた俺は、異世界での生活の為“トライスター”と言う職業を選んだ。
けど、ご覧の通り……俺が思い描いて居た様な“楽勝な異世界生活”が出来る訳も無くて……
===第四話・終===




