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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第一章

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第三十五話「仲間の為なら楽より苦を取れッ! 」

《――突如として訪れたディーン隊の危機

主人公はマリーンを引き連れ急ぎ東門へと走った。


一方、東門宿では――》


………


……



「……ですから!

その様な方は当宿にお泊りでは無いと何度も申しております!

他のお客様のご迷惑となりますのでお引取りください! 」


「ええ、承知しておりますが……念の為捜索するだけです

決してご迷惑はおかけしませんので……」


「ですから! 私共の宿の評判が下がる様な行為自体を……」


「チッ、面倒だ……殺れ」


《――白衣の男が“お付き”の一人にそう命じた瞬間

一刀の元に斬り伏せられた宿の主人――》


「馬鹿が……素直に通しておけば良い物を。


おい、お前……此処の主人のフリをしておけ」


「承知……」


「さて、捜索だ……」


《――直後

数名のお付きと共に階段を上がって行った白衣の男。


……これに遅れる事数分

宿の前に辿たどり着いた二人は――》


………


……



「足跡は全部宿に……何だかマズイ感じがする。


……慎重に行くぞ」


「ええ……」


《――直後

緊張の面持ちで宿の扉を開いた主人公……だが

宿の主人が先程のお付きの一人であると直ぐに気付いた彼は

敵に気付かれぬ様、ゆっくりと減衰装備を外し――》


「あの~……泊まりたいんですが」


「……お帰り下さい、本日は満室です」


「そうですか、仕方無い……眠れ、永久にッ! 」


《――直後、強い睡眠状態に陥った敵兵

一方、さまカウンターの裏を確認したマリーンは

隠された死体を発見し――》


「……酷い、この人がきっと本物の主人よ。


兎に角……急ぎましょ! 」


「ああ! ……」


………


……



《――同時刻

ディーン隊はまだ宿の部屋に居た――》


「全員……戦闘準備を」


「いえ、ディーン様……私めに御任せ頂きたく存じます」


「ギュンター……やれるか? 」


「ええ、老骨ですが……まだまだ若い者には負けませんゆえ


「分かった……全員ギュンターの援護を行え」


《――この直後

彼らの部屋をたずねて来た白衣の男――》


「失礼、扉を開けて頂けますか? 」


「ええ、構いませんが……その前にお名乗り頂けますかな? 」


「宿の者ですが、一度お部屋の点検を……」


《――宿の主人をかたった白衣の男


彼らに緊張が走った。


だが――》


………


……



「あ~居た居たッ!


なぁ! あんた達が探してた似顔絵の奴らだけどさ

ついさっき、あっちの方に走り去っていったぞ? 」


《――と、白衣の男らに対し“偽の情報”を伝えたのは


“主人公”であった――》


「……何っ?!


あ、いえ……有難うございます!

では急ぎ追いますので失礼を……


……おいお前達っ! 急ぐぞっ! 」


《――直後“お付き”を引き連れ慌てて階段を駆け下りた白衣の男


そして……


彼らが立ち去った事を確認した後――》


………


……



「ディーン……居るか? 」


「ああ、全員居る……いま扉を開ける」


「……良かった、全員無事だな。


詳しい話は後でいくらでも聞く

今は奴らが戻ってくる前に全員俺に掴まってくれ。


よし……行くぞ。


転移の魔導、ヴェルツへ! ――」


………


……



《――同時刻

宿の一階へと駆け下りた白衣の男はお付きの“状況”を確認し――》


「何を悠長ゆうちょうに眠っているっ?!

いや……まさか先程の男……クソがっ!!


急げ、上だっ! ……」


………


……



「ふぅ~……危ない所だった」


《――間一髪、危機を脱しホッと胸を撫で下ろして居た主人公。


だがそんな中……礼もそこそこに

ディーンは“ある決断”をした――》


「主人公……迷惑を掛けてすまなかった。


だが、我々はもうこの国には居られない……主人公

今日で我々と政令国家との間に結ばれた傭兵としての契約を

解除として貰いたい……」


《――真剣な面持ちでそう言ったディーン。


だが、主人公はそんな彼に対し――》


「……要するに彼奴等あいつらを倒せば良いんだろ?

俺も手伝うから、取り敢えずは……」


《――と協力する旨を伝え掛けて居た主人公、だがその瞬間

突如としてヴェルツの入り口が開かれた。


慌てて振り返った一行だったが――》


………


……



「……ガンダルフさんに五〇万金貨渡して来たよっ!


って……皆殺気立ってどうしたんだいっ?! 」


「よ、良かった……ミリアさんでしたか。


って……詳しい話は後です! 危険な奴らがこの国に入り込みました!

安全を考え、此処ではなく一旦城に飛びます!

ミリアさんも含め、全員俺に掴まって下さい。


行きますッ!


転移の魔導、大統領執務室へ! ――」


《――同時刻


白衣の男らは扉を破壊し部屋へと押し入った。


だが、既にもぬけの殻と成って居た事に腹を立てた白衣の男は――》


「クソが……クソがクソがクソがクソがぁぁぁぁっ!!!

あの男、魔導師だったか……くっ、転移魔導とは厄介な!!

だがしかし、あの人数ならそう遠くへは飛べん筈。


お前達……周囲の捜索を急げっ!!! 」


「承知ッ……」


《――その一方


執務室へと転移した一行は、ラウド大統領に現在の状況を伝えて居た――》


………


……



「……では、ディーン隊は此処に待機

主人公殿は“面が割れた”様じゃが……それを逆に利用し

えての“おとり作戦”に参加して貰うぞぃ! 」


「お、おとり? ……何をすれば? 」


「うむ……主人公殿以外は皆、頭巾フードを被り

其奴そやつらの近くで分かりやす

“逃げる素振そぶり”をしてやるんじゃよ、そして

怪しんで追って来た所を逆に一網打尽にするんじゃ! 」


《――そう説明したラウド大統領

だが、この作戦を聞いていたマリーンは猛反対し――》


「……待ってよ!

そんな危険な事しなくても、敵を全員倒しちゃうだけなら

おびき寄せて主人公の技でまとめて叩けば良いじゃない! 」


《――そう指摘したマリーン。


だが、そんな彼女に対しディーンは――》


「いや……それは不味マズいかも知れない」


「何でよ?! 」


「……私達の体には

即効性の毒を発生させ、絶命させる呪いが掛けられている。


国外に逃亡し範囲外に逃げたつもりだったが

奴らの中にはまず間違い無くその“呪具”を持っている者が居る筈だ。


そしてその“呪具”は、破壊された瞬間発動する作りに成っている」


「成程、巻き込んで発動もあり得る訳ね……」


《――圧倒的に不利な状況

だが、主人公は――》


「……何かしら手は考える。


取り敢えず、ラウドさんの作戦を軸に進めるのが一番適切だけど

向こうに勘違いさせるなら、俺以外の“ニセディーン隊”を

ラウドさん、マリア、メル、マリーンにって貰ったとしても

一人足りない計算に成るんだ……」


《――そう言った主人公に対し

即座に“追加のおとり役”を申し出た者が居た――》


………


……



「なら……あたしにも頭巾フードを頂戴」


「!? ……それだけは駄目ですッ! “ミリアさん”

ミリアさんにもしもの事があったら、俺は……俺はッ!! ……」


「……大丈夫さね、危なくなったら隠れるよ」


「だとしてもっ!!! ……」


「いいや……主人公ちゃんが拒否してもあたしは行くよ」


《――ミリアの決意揺るがぬ眼差しに

主人公かれ一度ひとたび大きくため息をついた。


そして――》


………


……



「分かりました……でもせめて、出来る限りの防御魔導を掛けさせて下さい」


《――そう言うと

ミリアに対し、考えうる限りの最上級防御魔導を

これでもかと言う程厳重に重ね掛けし始めた――》


「……心許こころもと無いかもしれませんが

これが今の精一杯です。


正直“永久防護エターナルプロテクト”が全員に使えたら良かったんですが……


……すみません」


「いいや、あたしはこれで充分さね……さぁ、作戦開始だよ! 」


「ええ、では……転移の魔導。


東門へ! ――」


………


……



「……皆、見るからに怪しい動きをするのじゃよ? 」


「ああ、分かってるさ……ラウドさんが

“そう言うお店に行く時”の挙動を真似すりゃ良いだけさね」


「なっ?! ……ミリア殿っ!? 御主、何故それを!?


ゴ……ゴホンッ!


兎に角……怪しく動くのじゃよ! 」


《――突然の暴露に驚くラウド大統領


だが、この直後“怪しい動き”を続ける一行の元に

事情を知らない憲兵が現れた――》


「……貴様達! そこで何をしている?!

って……主人公様?! ラウド大統領まで?!


い、一体……どうされたのです!? 」


「静かに! ……“おとり捜査”です

怪しい男数人が俺達を追い掛けて来てもそのまま通して下さい! 」


「な、何と……承知致しましたッ!

皆様……お気をつけて! 」


「ええ、では……


さぁ、そろそろだ……皆、走ってッ! ――」


………


……



「ん? あれは先程の魔導師ッ!? ……追えッ! 」


………


……



「皆……はぁはぁ……早っ……」

(物理適性無いって走るのも駄目なのかッ……くそっ! )


「主人公さん遅いっ! ……エイッ! 」


《――懸命に走る一行の中で一人遅れて居た主人公。


……だが、次の瞬間

勢い良く主人公を担ぎ、そのまま走り始めたマリアの行動に――》


「……へっ?!

ちょっ?! ……まっ?! マリア!?


……いやぁぁぁぁぁっっ! 」


《――瞬間

きぬく様な主人公の悲鳴が辺り一面に響き渡った。


ともあれ……この後も

必死に逃げ続けていた一行であったが――》


………


……



「待て貴様らっ!!! ……どう言う状況だ?

いや、そんな事は良い……止まれっ!

止まらないとこの“呪具”を使うぞ?!

知らぬのなら教えてやろう! ……これを破けばお前達は死ぬのだっ! 」


「……み、皆止まってッ!! 何ですか? 俺達は別に何も……」

(成程……あれがディーンが言っていた“呪具”か)


「貴様……まだ私に貴様の嘘が通用すると思っているのかっ!!

転移魔導など使いやがって……何者だ?

言えっ! 言わんなら“呪具”を! ……」


「……待ってくれッ!!

と、友達になったからつい……すまなかった!

それを破らないでくれ! ……頼む! それを破ったらディーン達が……」


「ククク……最初から素直に居場所を言えば良かった物を

転移魔導なんぞ使いやがってっ!


差し詰め貴様の身の丈に合わぬ魔導を使った所為で

既に自分で走れぬ程に弱って居るのだろう?


……フハッハッハ! 」


「そ、それは……」

(よしっ!! ……良い“勘違い”をしてくれた!

この調子で油断させて、どうにかあれを奪わないと……)


………


……



「お……お願いだぁ~……み、見逃してくれぇぇぇっ……」

(よし、このまま少しでも近づけば……)


《――すがる様な態度で“匍匐全身ほふくぜんしん”を始めた主人公

そんな彼の態度に、白衣の男は――》


「ふっ……どうするかな?

そうだっ! ……貴様、私の靴をめてみろ。


そうすれば……許してやらん事もないぞ? 」


「ああ、分かった……だから、ディーン達の事を……」

(……よしッ! この流れなら近づいて一気に……)


《――直後

それまでよりも少し早く距離を詰め始めた主人公


少しずつ……少しずつ……怯えた演技を続けながら

彼は白衣の男との距離を詰めて居た……だが。


彼のそんな姿に――》


………


……



「……ふざけないでよ!

あんた達なんか主人公が本気出したらッ! ……」


「なっ?!! ……マリーン違うっ!! 」


「何っ?! ……貴様ら全員、頭巾フードを外せッ!!

だ、騙したなっ?! 言えッ! ……本物は何処に居るっ?! 」


「そ、それは……」

(クソッ……この流れは不味マズい! )


「構わんぞ? ……貴様が言わずとも

この国の何処かに居るのならばこの“呪具”の効果範囲内だ。


最悪“全員殺しても良い”と所長からの許可が出ているのだからな」


「お、お願いだ……見逃してくれっ……」


「貴様……臭い芝居をするなぁっっ!!! 」


《――瞬間


白衣の男の鋭い蹴りが主人公を襲った……だが、それでも諦めず

傷だらけに成りながらも、白衣の男の足に必死にすがり付き――》


「ぐっ! ……たっ、頼む……っ……」


「ふっ……愉快な事だな? 魔導師の男よ。


……主人公と言ったか?


先程も言ったが……お前が“友”だと言ったゴミ共は

所長から“殺しても構わない”……と言われたゴミ共なんだが

そんなただの“失敗作共”の所為で

私はとても機嫌が悪いのだよ……こんな辺境の地に来て

私のお気に入りの服を泥と血で汚す様な者と会話をするなど。


少しは気が晴れるかも知れん……全員一気に

纏めて破り捨ててしまえばなあぁぁぁっ!!! 」


「やっ……やめろおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!! 」


………


……



「“瞬盗モーメントスティールッ! ” ……」


《――瞬間

大量の土煙を巻き上げ、凄まじい突風が吹き……そして


白衣の男の声だけが響いた――》


………


……



「なっ?! ……何だ?! ……呪具が無いっ!?

何っ!? ……貴様、誰だっ!?

一体何処から……」


「……大丈夫? 主人公。


事情は分かんないけど……この禍々しい紙は

僕が回収したからもう安心さ! 」


《――大量の土煙を巻き上げ

凄まじい突風を吹かせ……そして、白衣の男から“呪具を奪い去り”

主人公に対し“天真爛漫な態度で接した”のは――


――獣人族族長リオスであった。


だが、そんなリオスから呪具を取り返そうと

必死に彼の事を追い掛け始めた白衣の男。


無論どれ程頑張った所で、人族の身で彼に追いつける事など

万に一つも在りはしない……


……そんな中、楽しそうに走り続けて居るリオスを眺めながら

砂だらけの服をはたき、ゆっくりと立ち上がった主人公。


彼は――》


………


……



「……おいお前

ディーン達を失敗作って言いやがったな? 」


<――リオスに追いつけなかったどころか

“バテて”しゃがみ込んで居た白衣の男に対し

そう声を掛けた俺――>


「チッ……呪具を奪った程度で粋がるなど!

力の切れた魔導師風情に……はぁはぁ……やられる護衛など……


はぁはぁ……連れては……居ないっ!


改造兵共! ……主人公そいつを殺れっ! 」


《――そう命じた白衣の男。


だが――》


「……なぁ、誰の力が切れてるって?

俺が“ブチ切れてる”の間違いだろッ?!


氷刃・“乱舞之太刀ランブノタチ”ッッ!!! ――」


《――主人公かれの怒りに任せた過剰とも言える技の威力に

改造兵達は跡形も無く消え去った。


そして……彼がえて一人残した白衣の男は

その圧倒的な力の前に――》


………


……



「なっ!? なっ?! ……何なんだ貴様はぁぁぁぁっ?!! 」


「何って……ブチ切れてる“魔導師風情”だが? 」


「……ひぃっ?!


たっ……頼む! 見逃してくれっ! ……私はただの研究員なんだ!

……戦闘する腕なんてこれっぽっちも無い!

見逃してくれるなら……靴でも何でも舐めるっ!!


だから……た、頼むっっ!!! 」


「さっきまでの俺を見られてた以上

俺もあまり人の事は言えないけどさ……


……信じられない程“変わり身早い”な、お前

あと、お前みたいなのに舐められたら靴が腐るから断る。


それとな……お前みたいなのが居るから

弱い立場の人間は何時も何時も辛い目にうんだよ

分かったら……もう諦めろ。


氷刃・終之ツイノ……」


<――直後

詠唱を開始した俺をラウドさんは慌てて制止した――>


「……待つんじゃ主人公殿!

此奴は何か情報を持っておるやも知れん!

気持ちは分かるが、一度尋問をするべきじゃろうて! 」


「あ~……確かに。


では、そうしましょうか……捕縛の魔導ッ! 」


「なっ?! ……ウグッ?! 」


<――苛立いらだちもあったからだろうが

俺は心做こころなしか少し強く捕縛の魔導を掛けた。


だが――>


「主人公ちゃん……よく我慢したね」


<――そんな俺の事をそう褒めてくれたミリアさん。


それだけじゃ無く、直ぐに俺の怪我まで心配してくれて――>


「そんな……俺なんかよりも

ミリアさんに何も無くて本当に良かったですよ……」


「そりゃあ主人公ちゃんに防御魔導を沢山掛けて貰ってたからねぇ!

そうだ! 帰ったら怪我の治療してあげるからね! 」


「い、いえその……流石に自分で出来ますから!

とっ、兎に角……一度執務室へ戻りますので手を掴んで下さい」


「手を繋ぐんだね! 主人公ちゃんとなら喜んで繋ぐさ! 」


「い、いやその……ま、まぁ兎に角。


行きます……転移の魔導


大統領執務室へ! ――」


<――ミリアさんの優しさで調子が狂った。


いや……むしろミリアさんは

俺の調子を戻してくれたのかも知れないが……兎に角。


俺達の帰還後、ディーンは――>


………


……



「皆無事の様だな、安心し……ッ?! 貴様はッ!? 」


「ディーン落ち着け! ……情報を聞く為に生かしてるだけだ

じゃなければ俺がとっくに手を下してるよ。


それと……リオスからディーン達にプレゼントが有るらしい」


「えっとね~……はいっ! “これ”あげるっ! 」


<――直後

リオスから手渡された“呪具”に驚きを隠せず居たディーン――>


「こ、これは!? 一体どうやって……いや、違うな

私達の所為で皆を危険な目にわせてしまった事

心から謝罪する、申し訳……」


「待った、ディーン……俺達は謝罪より感謝が欲しいんだ」


「主人公……皆、本当にありがとう。


……ラウド殿、私達は一時的な傭兵等と大変に失礼な事を頼み

今日、追っ手の為貴方に許可も取らず任を離れようとした。


だが……我々を縛る“呪具”を主人公達が取り返してくれた事で

我々は、本当の意味で“自由に戦う力”を得た。


この力をみずからの為に使う事も出来る……だが

私は、この国で引き続き傭兵として……いや

出来る事ならば正式に仲間に加えて頂きたいと思っている。


何とも身勝手な申し出だが……許可しては頂けないだろうか? 」


「わしは一切異論など無いぞぃ?

何故なら、御主達は主人公殿が“信頼しておる”相手じゃからのう?


じゃがずはその“呪具”の解除方法も含め

此奴に色々とたずねるのが先決じゃろうて」


<――そう言うや否や

白衣の男を威圧するかの様に見つめたラウドさん。


すると、白衣の男は――>


「な、何でも話す! ……話すから殺さないでくれ!

そ、そうだ! ……此処で雇ってくれ!

損はさせない! だから頼む! ……死にたく無いっ!

そもそも私はただの研究員なんだ! ……だから頼む! 」


<――ついさっきまでの威勢の良さは何処へやら

一八〇度態度を変えた白衣の男。


何だか本気で気分が悪く成った――>


………


……



「……いくら油断させる為だったとは言え

お前みたいなのに足蹴あしげにされたのかと思うと虫酸むしずが走るし

お陰で“嫌な記憶”も沢山よみがえったよ」


「……も、申し訳ありませんでしたぁっ!!!

お願いします! 何でもしますからどうか命だけは……」


「ならこの呪具の解除方法をけ……どうすれば解除出来る? 」


「……し、知らないんです!

ですが、手元に呪具をお持ちであれば安全な筈で……」


「……ん?

お前……俺が最も嫌いな“典型的嘘つきの目”をしたな?

ま……最初から期待も信頼もして無いから良いけどさ。


自白の魔導! ――」


「……ぐっ?!

何なりとおたずね下さい……」


「この呪具の解除方法は? 」


「所長が掛けた呪いですから……所長が解くか

所長が死ねば解除されます……

呪具が此方に無くとも、作動範囲で所長が呪文を唱えれば……


いつでも……完全な状態で……発動します……」


「やっぱ嘘だったか……もう一つ質問だ

この国で雇われたら何を目的に働くつもりだった? 」


「隙を見て逃げ……国に帰り……内部の事情を所長へお伝えします

手柄を認めて……頂く為……全ては出世の為……」


「ほうほう……俺達に協力するつもりは? 」


「微塵も……ありません」


「大した忠誠心だな……感心するよ」


《――そう吐き捨てる様に皮肉を発した主人公の横で

ラウド大統領は――》


「御主の国の所在、および防衛策や攻撃兵器

その他の設備等を分かる限りこの紙に書くのじゃ」


「はい……」


《――白衣の男に対し様々な情報を書きしるさせた。


そして――》


………


……



「……設備はこれで全てかね? 」


「はい、私が知る限りは……」


「ふむ……では、わしからの質問は以上じゃ。


他に何かたずねておきたい者はおるかのう? 」


「じゃあ僕が! ……ディーン達みたいな人達って他にも居るの? 」


<――と質問したのはリオスだった

白衣の男は彼の質問に対し――>


「ええ……特殊な実験体を……三体程生成中と聞いた事が……

ただの改造兵なら……あと三〇体程は居た様に記憶しております……」


「酷いね……もう他に隠してる情報はないの? 」


「……ございません

私の生い立ちならばお話できますが……」


<――この答えを聞いた瞬間

ディーンは――>


ようやくか……魔弾ッ!! ――」


………


……



「……しかし

このままじゃと追撃ついげき部隊が攻めてくる可能性が高い。


情報を元に“研究所”とやらは早急に叩くべきじゃろうが

魔族が何時攻めて来るやも知れん中

国民に要らぬ不安を与えてしまっては元も子も無いし

この上、三日後にはゲーム大会も予定しておる。


少数精鋭、つ内密に動くにしてものう……」


《――そう頭を悩ませて居たラウド大統領

だが、そんな彼に対し――


“俺が魔導力をめその国へ行き、固有魔導を使えば良いのでは? ”


――そう答えた主人公。


だが、ディーンはこの案に否定的で――》


「……消滅させる為とは言え

転移魔導も使わずあの国に向かうなど

いくら主人公であっても危険過ぎて現実的とは思えない。


それよりも……私達の体内に仕組まれている呪いを

主人公の固有魔導で消せるか試すのはどうだろう? 」


《――ディーンの案に納得した主人公

そして――


“例の地下牢で使用する分には

仮に主人公殿が弱ったとしても充分守れるじゃろうて”


――と、提案を大筋で受け入れた様な発言をしたラウド大統領。


すると――》


「……なら俺は、ディーン達の呪いを解く事に専念し

今日から一切の魔導消費を行わない。


……今出来る事はそれ位しか無いかもしれないですね。


でも、そうしてみると……ミリアさんの存在が本当に有難いですよ」


《――唐突にミリアへの感謝を口にした主人公

不思議に思ったミリアは“何故だい? ”とたずねた。


すると――》


「……魔導が使えない以上ギルドの依頼は受けられない。


そうなると、五〇万金貨を“急がなくて良い”形にして頂いた事が

とても有難くて……」


「……何だいそんな事かい!

それにしても……まさかあたしが

主人公ちゃんを助ける事が出来るなんてねぇ」


「いやいや! ……ずっと助かってますよ!

だからこそ申し訳無いので

お金は出来るだけ早くお返しします! ……それで

ちゃんと自分達のお金でヴェルツに住みますから! 」


「馬鹿だねぇ……急がなくても良い形にしたんだから

急がなくたって良いんだよ? ……それに

主人公ちゃん達が笑顔で居るのがあたしにとって一番のご褒美さね!

宿代なんてのはどうだっていい話さね! 」


《――笑顔でそう答えたミリアの優しさに涙をこらえていた主人公

そんな時、ディーンは唐突に――》


「……所でミリアさん、もし迷惑でなければ

我々の宿をミリアさんの所に移したいのですが……構いませんか? 」


「勿論さね……でも、何でいきなりウチに来る事にしたんだい? 」


「いえ、その……主人公を見ていると羨ましくなりましてね。


それと、ミリアさんの作る料理は天下一品です

ヴェルツの宿に住んでいれば

何時でもあの美味い食事が楽しめるのです、希望しない方が不自然です」


「……嬉しい事を言ってくれるじゃないかい!

勿論構わないよ! ……今日からでも歓迎するからね! 」


「心から……感謝します」


《――彼らがヴェルツの宿へと移り住む事が決定した一方で

ラウド大統領は主人公に休みを取らせる為

えて“休息命令”とした――》


「えっ、でも……ここ数日間は

俺の担当する仕事が多かった筈ですけど……よろしいんですか? 」


「何、構わんよ……ゲーム大会の細かい支度は

全てわし達に任せるのじゃよ! ……主人公殿の事じゃ

一日でも早く治療してやりたいと思って居るのじゃろう? 」


「ええそれはそうですが……って、ありがとうございますッ!


ですが……国民に対して

“固有魔導を使用しない”と約束してしまいましたし

いくら仲間の命の為とは言っても

この話が外に漏れない様に気をつけないとですね」


「状況が状況じゃし、わしは構わんと思うのじゃが……一応

注意は払っておかねばならんかもしれんのぉ」


………


……



《――翌日


大会まで残す所後二日……主人公達は

ヴェルツでのんびりと過ごして居た――》


………


……



「ディーン達の為とは言え暫く休暇だ~っ! ひさびさ休めるぞ~っ!


ただ、移動がしばらく歩きになる……ごめんね」


「……健康的でいいじゃないですかっ♪

私達も同じく休暇です……よね?

主人公さんは普段余りにも激務ですし

この際ですから一緒にのんびりしましょ♪ 」


《――と、心做こころなしか上機嫌のメル。


一方のマリアは――》


「そーですか……じゃあ私は

ガンダルフさんの所に遊びに行ってきま~す」


《――主人公が“行ってらっしゃい”と言うよりも

遥かに早く外出したのだった――》


「行って……って、もう居ないし!

しかしガンダルフと仲良いなぁ~マリアは。


ひょっとしてガンダルフの面倒見が良いのかな? 」


「それは……やっぱり装備の関係もあるんじゃないかしら? 」


「あ~……マリーンの言う通りかも。


よく考えたらマリアの装備って“ドワーフ技術の塊”みたいな物だし

仲良くなるのも不思議は無いか……


……って、いざ休みとなると

じっとしてるのも何だか暇に感じるね」


《――と、少々贅沢な悩みを打ち明けた主人公に対し

メルとマリーンは――》


「で、でしたら……お部屋でゲームしませんかっ? 」


「あっ! それ私も参加したいわ!

ゲーム大会にも出たいし、練習がてら遊びましょうよ! 」


「それもそうだね……じゃあ部屋に戻るか。


転移の魔……あっぶね!


素で使い掛けたわ……」


「え、えっと……もし“使い掛けても”良い様に

装備を外しておきましょ~っ! 」


「メルの意見に賛成っ! ……っと、部屋に戻ろっか」


「ええ“歩き”でね! 」


「ちょ?! イジるなよ~マリーン! ……」


………


……



《――その一方

ドワーフの工房では――》


「ガンダルフさ~ん! ……来ちゃった♪ 」


「おぉマリア殿! ……御主の斧じゃが予定より上手く行っておるぞぃ!

この調子ならばもうそろそろ完成するじゃろう!

それと、良いアイデアが浮かんだんじゃが……盾を預かっても良いか? 」


「……わ、私は構いませんけど

主人公さんにこれ以上お金を出して貰うのは正直申し訳無いんですけど……」


「なぁに……わしの思いつきじゃし、材料の端材で出来る“改修かいしゅう”じゃ

盾の分は完全にサービスじゃよ! ……安心せい! 」


「おぉ~それは助かります! ……けど、それにしても

私の装備に掛り切りで普段の商売は大丈夫ですか? 」


「うむ! ……それに関しても問題無いぞぃ!


……主人公発案のゲームが売れに売れてくれたお陰で

弟子達も腕を上げ、道具も良い物を扱える様に成ったんじゃよ。


お陰で弟子の作る物だけでも稼ぎが出ておる……主人公様様じゃ。


まぁその礼と言っては何じゃが

主人公がまた新しいゲームを思いついてくれた暁には

主人公に対する利益の割合を今までよりも増やすつもりじゃよ!


わしらの利益など一割程度有れば良いわい! 」


「……それ、主人公さんが聞いたら喜んでくれると思います!

帰ったらそれと無くゲームのアイデアを聞いておきますね! 」


「うむ、ぜひ頼むぞぃ! 」


「……ってそう言えばガンダルフさん

ずっと私の装備に掛り切りですし

息抜きがてら、オセロを一戦……やってみます? 」


「ぬっ?! ……まだまだマリア殿には負けんぞ? 」


「望む所ですッ! ……」


《――こうして

マリアとガンダルフがオセロにきょうじて居た頃

主人公達もゲーム大会の予習がてらゲームを始めようとして居た。


だが――》


………


……



「え~っと……まずはどっちで遊ぶ? 」


「ね、念の為……どっちも練習したいって思ってますっ! 」


《――メルがそう希望した瞬間

マリーンはそれに“ある条件”を付け加えた――》


「……私も両方練習したいけど

ただ普通に練習しても張り合いが無いじゃない?

だから、勝った方には“景品が欲しい”って思ってるんだけど

お金が掛かる事は出来ないでしょ?

だ・か・ら! ……主人公に勝った方は

主人公を“一分間自由に出来る権利! ”……とかどうかしら? 」


「なっ!? ……何言い出すんだよマリーン!?

そんなルール……」


「そ、それ良いですっ!! 」


「って……メルまで何を?! 」


「……じゃあ、オセロとバックギャモンの両方で勝てたら二分!

いいえ……五分自由にするのはどうかしら?! 」


「さ、賛成ですっ! 」


「おいおいッ! 二人共悪ノリが過ぎ……」


「ねぇ……どっちが先に対戦する? 」


「じ、じゃんけんで決めたいですっ! 」


「ちょ?! 俺の意見も聞いてよッ! 」


………


……



「じゃんけん……負けちゃいましたぁ……」


「やった! ……私の勝ちね!

じゃあ私から……ってちょっと、何ぼーっとしてるのよ?

早くやるわよ主人公! 」


「は~っ……こう言う“恐ろしいルール”って

普通、男が女の子に強要するんだと思ってたんだけど? マリーン……」


「何よ! ……恐ろしく無いわよ!

綺麗な女の子に囲まれて幸せだって思いなさいよね! 」


「流石は“マリーンお代官様”

ルールだけじゃなくて美貌まで褒めろと強要するとは。


まぁ確かに二人共絶世の美女だとは思うけどさ……」


<――完全に俺の意見が無視されて暫くの後。


二人との勝負を終え、勝敗の結果に喜んで居たのは――>


………


……



「フッフッフッ……主人公!

オセロでは負けたけどバックギャモンは勝てたわ!

私の技術を見せてあげるんだから……覚悟しなさいよ? 」


<――そう言いながら

指を“わしゃわしゃ”とさせて居たマリーン――>


「ま、待て! ……止めろって!


そ、それは流石に!……」


《――この後、二人の様子を見ていたメルは

恥ずかしさのあまり顔を隠した。


……そんな中、ゆっくりと主人公に近付いたマリーンは

そのまま主人公の“腰の辺り”に手を滑り込ませ、そして――》


………


……



「こ~ちょこちょこちょこちょ~っ!!! 」


「ああああああああああっはっはっはっはっはっは!!!

やめっ! ……やめっ! ……あひゃひゃひゃぁぁぁっ!!

し、しぬぅぅぅぅ~~しんじゃう~~っ! ……」


《――主人公を“くすぐりの刑”にしょしたのだった。


そして、酸欠寸前に成る程笑い転げた主人公に対し――》


………


……



「……ハイ終了っ!

余った時間は……わ……私の事……抱きしめてよ」


「はぁはぁ……笑い死ぬかと思った……って。


え゛っ?! ……だっ、抱きしめるって……そんな……」


「……嫌なの!? 私には魅力が無いって事なの!? 」


「い、いやそう言う意味じゃ無くて! ……って。


あ~もうっ! ……分かったよッ! 」


《――直後

観念したかの様にマリーンの事を抱きしめた主人公――》


………


……



「い、いきなりっ! ……って、主人公……温かいわね。


っと……次はメルちゃんの番よ」


「あ、ああ! ……流石にメルはお手柔らかに……」


「嫌ですっ! ……私は時間いっぱい抱きしめて下さい!


それから、最後に……キッ、キスもっ! 」


《――頬を真っ赤に染めながらそう言ったメル。


一方の主人公は――》


「……な゛っ?!


そっ……それは流石にほら!


その~何と言うか……取り敢えず抱きしめはするけど……


キスは……でもその……」


《――そう“モゴモゴ”と言いつつも

メルを優しく抱きしめて居た主人公。


だが、主人公の腕の中にあったメルに対し

流石のマリーンも――》


「……メルちゃん、流石にそれは駄目よ

ハグだけにしておきましょ? ……ね? 」


「そ、そうだぞメルっ! マリーンの言う通り……って

そろそろ一分かな? 」


《――残り十秒程と成った頃


メルは――》


「……あのっ!

主人公さんは私の事、女性として見て下さっていますか? 」


「ふひぇっ?!

そ、それは……メ、メルは素敵だし女性としても魅力的だと思うよ?!

でっ……でも、それとこれとは別問題だよ!

俺、キスなんて……した事も……無いし……」


「そ、そうですよね! ……さ、流石に私も強引過ぎましたっ!!


その……魅力的って褒めて下さって有難うございました。


私……もっと、主人公さんが自分から……キス、したく成る様な

大人の女性に成れる様に……頑張りますっ……」


「メル……俺の事、そんな風に想ってくれて有難う。


なのに、ごめん……って。


あっ! ……そうだ! ほ、頬位なら俺にでもっ! 」


《――終了間際

主人公かれはメルの頬にキスをした――》


………


……



「ちょっとぉ?! ……それが有りなら私にもしてよ!! 」


「い゛っ!? いやその……二人共時間終了だから!!

俺を自由に出来る時間は終了でーすッ!


……ハイ終わりッ! 」

(……って。


勢いでしてしまったけど何してるんだ俺は?!

やばい、頭が回らない! 顔が熱い……恥ずかし過ぎるッ!!! )


<――と、内心穏やかでは無かった俺に対し

妙なテンションに成って居たマリーンは――>


………


……



「……嫌よ?!

私も頬にキスして貰うまで時間終了とか認めないからッ!

どうしてもしてくれないなら……私からするんだからっ!!


えいっ!! ――」


<――直後

妙なテンションに成ったマリーンは俺に飛び掛かり――>


「ぬわぁっ?! ……危ないよ!!

な、何でそんなに積極的に……って、やめろぉっ?! 」


「あっ! ……マリーンさん自分からとかずるいっ!

私だってぇっ!


えぇぇぃっ! ――」


<――直後

タガが外れた”様子のメルも飛び掛かって来て――>


「ふ、二人共離せぇぇっ! ……って。


うわあぁぁっ?! ――」


《――直後

二人を支え切れなく成った主人公かれと共に

勢い良く転倒した二人……そんな中


ガンダルフとの“激闘”を終え帰宅したマリアは

部屋の外まで響き渡った主人公の叫び声を聞きつけ慌てて部屋の扉を開いた。


……そして。


その“惨状さんじょう”に呆気あっけに取られて居た――》


………


……



「何……してるんですか? 」


《――彼女が目にした光景


それは――


“横たわるメルとマリーンの胸に手を置き二人に覆い被る主人公”


――の姿であった。


最早もはや言うまでも無いが……どこからどう見ても

“誤解”しか生まれない状況で――》


………


……



「ち、違うんだ! ……これは!

って何だ? 何だか柔らかい感触が……」


「……ひゃぁんっ?! 」


「どっ、何処触ってるのよっ馬鹿主人公ッ!! 」


「へっ?! ……ゴ、ゴメンッ!! ……てか何でこんな所に手がっ?!

って……う゛ぐっ?!


こ、腰が……起き上がれない……


た、頼むっ……マリア……起こしてくれ……」


「……へぇ~っ?

“起き上がれない程”お二人と……“何を”してたんですか? 」


「へっ? ……ち、違う!!

な、何変な誤解してるんだよ?! ……っておい

何で拳を固めてるんだ? なぁマリア?


一旦落ち着け? ……なぁって……やっ……やめっ……


いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!! ……」


………


……



《――この後

誤解を解く為、必死に釈明をし続けた主人公……だが。


メルとマリーンの二人が

主人公を“景品”にしていた件について最後まで完全否定を続けた結果

彼は、マリアから“変態”の称号を授けられてしまったのだった――》


===第三十五話・終===

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