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第6話 リリとカガック

『金のプレートって・・・・・・もしかしてイフくんが倒そうとしてるのって・・・・・・』

『そう。俺が殺すのは勇者。この大陸で唯一のゴールドランクの冒険者だな』

『なーんでそんなに気楽にいってんの~~!!』

『いや、そんなに怒ることないだろ』

『いや、あのねぇ。はあ。それじゃあ勇者の強さを教えてあげる。私は魔王だから知ってるんだけど、勇者には勇者専用の『勇者の権限』ってのがあるの。魔王にもあるんだけどね。

それで、『勇者の権限』の能力は

・聖剣変化︰持った武器を聖剣へと変える

・完全防御︰自分の魔力量以下の相手からの攻撃を無効化する

・魔力量増加︰戦闘に入ると魔力量が3倍に増加

・断罪︰過去に罪を犯した相手をスキルの影響を受けずに罪の重さに応じて魔力を抜き取る

・静寂︰精神攻撃を無効化

・剣技『極』︰剣の腕を極める

・魔力防止︰魔法のダメージをすべて無効化

・魔の崩壊︰魔物に対して強い力を得る


ざっとこんなもんかな~。わかる?』

『・・・・・・』

『それと、一つだけ言うと、勇者の魔力量は今のイフくんの数十倍で戦闘に入ったら更にその3倍だよ?』

『・・・・・・まあいいや。それまでに強くなればいいだけだ』

『ほんとに楽観的だよね~。イフくんって。・・・・・・本当に勝つつもり?』

『勿論だ。俺のお父さんと母さんを殺した犯人はそいつで確定だからな』

『・・・・・・。なら強くならないとね!!あと、『断罪』を持っているから絶対に犯罪はしちゃいけないよ~。いい事すればするほど効果は薄くなるからね~』

『いや、別に俺は何もしてないだろ?効果もクソもないんじゃないのか?』

『違うんだよね~。例えば、虫がうるさいな~とか思って潰したらそれだけでも罪になるんだよ~。だけど良い事をすればそれをなかったことに出来るんだよ』

『めんどくさいな・・・・・』

『そうなんだよね。だから、人助けを積極的に助けよう!・・・・・・それで?勇者とはどう戦うの?寝てるところでも襲う?』

『さっき聞いた話なんだけど、4年に1回大会があるらしいんだよね。カラーランクだけのね。それで優勝すると勇者に挑める権利があるらしいんだ。そして、その大会は二年後に開かれるんだってさ』

『それはそれは。まだまだ時間はあるから修行しないとね。あとカラーランクまで上げないと』


そこまで話して、少しこれからの道のりの長さに呆れかけていると、いきなり4階への扉が盛大に開く。

何事かと一旦ミルルとの話を辞め、振り向くと


「おい!逃げんじゃねえぞこの野郎!早く俺の女にならねえか?金ならいくらでもあるぜ。ギハハハ」

「や、やめてください!私はあなたの女になんてなりません!」

「ああ?いい度胸じゃねえか。それじゃあ殺しちゃおっかな~!めでたい20人目だぜ!」


ムッキムキのがらの悪そうな男が魔術師の格好をした女の子を襲っている。

見なかったことにしよう。


『だめだよ!!さっき言ったでしょ!いい事しないと!それとここで女の子を見逃したらそれも罪になるんだよ?!』

「はあ?!そんなのも罪になるのかよ!めんどくせぇ・・・・・・」

『さあ早く早く!かっこよく助けちゃって!』


そうミルルに言われて俺は渋々男の前に出る。


「なんだお前は。かっこよく助けちゃってヒーロー気取りか?やめといた方がいいぜ。なんだって俺様は第三級冒険者だからな」


そんなことを言って手に持った剣を振り回す。

第3級か。なかなかだな。


「いや、俺はめんどくさ・・・・・・」

『バカ!そういう事は言っちゃダメなの!』

「へいへい・・・・・・」

「なあに一人で喋ってるんだ?ひょろひょろ小僧」

「俺が男だって分かるのか?」

「あたりめえだ。俺はいろんな女を抱いてきたんだからな。全部匂いでわかるぞ?ギハハハ」


き、キモい・・・・・・。少しだけこいつにイラッときたな。


「キモいな」

「なんだと?ぶち殺してやろうじゃねえか。今すぐ街の外に来いや。グッシャグシャにしてやるよ!!ギハハハ!」


そう言って男はとんでもジャンプをして屋上から飛び降りる。

少し感心して眺めていると


「何してくれてんですか!!あなた!」

「ん?・・・・ああ。襲われてた奴か。何って助けただけだけど?」

「あなたが殺されちゃうじゃないですか!」

「殺されないよ」

「う・・・・・・はあ。あなたは誰なんですか?なんで私なんかを助けたんですか?」

「あ、えっと、うーんと・・・・・・」

『はい!リピートアフターミー。女の子が襲われていたら助けるのが男の勤めだろ?』

「・・・オンナコガオソワレテイタラタスケルノガオトコノツトメダロ」

「なんでそんなカタコト何ですか。まあいいです。私が行ってくるのであなたは部屋に戻っていてください。関係ない人を巻き込むわけにはありませんから」

「大丈夫大丈夫。俺が言ってくるから」


俺はそう言ってアイツがやってたみたいに飛び降りる。そして、街の門まで走り出す。


『なかなかかっこよかったよ!』

「うるせ。自分でも小っ恥ずかしかったんだからな」

『良いんだよ良いんだよ!それくらい直球だと女の子はときめいちゃうんだから!』

「どうだか」





「おう。本当に来たんだな」

「当たり前だ。俺は勝てる勝負しかしないんだからな」

「ほう?それは俺に勝てると受け取っていいのか?俺はこの街で最強の冒険者「カガック様」だぞ?」


言葉は冷静だが、その額には青筋が浮かんでいる。


「それじゃあお前から来いよ」


俺は大剣を取り出して構える。

そして、カガックは俺の大剣をみて少し驚いた顔をする。


「・・・おめえ。その剣どこで手に入れた?」

「お前に教える義理はないね」

「ふん。まあいい。なかなかお前はやりそうだ。久々に本気でも出すか」


そう言って持っていた剣を捨てて、腰についた剣を取り出す。その剣の形は特殊で、刃に凹凸が付いている。


「こいつは斬首刀ざんしゅとう『カクギリ』だ。そして、この剣はユニークスキルを獲得している。それは、殺した人間の魂を吸って自らを強化するユニークスキル『│魂喰い《こんぐい》』だ。俺は今まで殺した人間の数は19人だ。おめえはめでたい事に20人目だ。誇ってもいいぞ?」

「そんなこと言っていいのか?冒険者同士の殺しはタブーだとギルドカードの裏に書いてあったぞ?俺がギルドに言ったらお前は首じゃないのか?」

「はっ!お前がギルドに言うだと?・・・・・・殺せば関係ねえよなぁ?!」


その瞬間に剣を突き立ててこちらに走ってくる。


速い!


ザスッ


「おいおい。イキってた割には弱いなあ!」


俺は刺された肩を押さえて一旦後ろへと下がる。


『頑張って!』

「それだけかよ!もっとアドバイスないのか?」

『そんなこと言ったら修行にならないよ~』

「こんな時にも修行かよ」


俺は心を入れ替えて剣を構える。そして、一気に切り掛る。


「力はなかなかじゃねえか」


そう言って俺の剣を簡単にさばく。

だが、これは囮だ。


「グッ!」


カガックは腹を抑えて口から血を出す。


「お前・・・・・何をした?」

「簡単な話だよ。お前は俺の剣を警戒していた。だからナイフを剣を振った瞬間に投げたんだッ」


俺は最後まで喋り終わると同時に近づいて振り下ろす。だが、それも弾かれる。

次にカガックは片手で剣を振るが、それを交わしてその手を切り落とす。


「グハッ」


遂にカガックは跪く。


「せめて一撃で殺してやる。白夜天山びゃくやてんざん第七ノ門・・・瞬・一頭切り!」


ザッ ゴトッ


一瞬で俺は首を落とす。


『おお!やるじゃん!スキル『瞬歩』で瞬間的に動いて首を落とすのか~!普通の第八ノ門 一頭切りを進化させたわけか!すごいね!スキルも活用していくのも重要な事だからね』

「ああ。瞬歩を獲得した時から考えていた技なんだけどな」

『・・・・・・ユニークスキル『成長グランディール』のレベルアップを確認。レベル6~7へとレベルアップ。スキル『格闘』を獲得。詳細 スキル格闘︰拳や蹴りの威力が大幅に上がる・・・・・・と。いいね!人間から得る経験値は高いね!』

「そう言えばこれは罪にならないのか?」

『うん。こいつは19人も殺してる犯罪者だから、どっちかと言うといい事をしたことになるよ~』

「なるほどな」


そして、カガックの死体を眺めながら少し思う。


「なあ、この死体どっかにやれないかな?犯罪者って言っても冒険者だし俺が殺したことになっちゃうからな」

『そうだね・・・・・・。まあ私に任せて~。早く交代して!』

「うえ?!あれ疲れるから嫌なんだよな・・・・」


そう言いながらも、魔力を高めて混ぜていく。

自分の魔力の4分の3を混ぜて、魂へと戻す。

その瞬間体が光り出す。おれの意識は少し消えかかり、またハッキリしていく。

目を開けると、俺は真っ暗な空間にいた。そして前にはさっきまでの光景。


「ふあー。イフくんの体はやっぱりいいね!」

『お前は魔力使わないから楽だけど俺はほぼの魔力を使い切ってるんだからな』


この技は俺とミルルの魂を入れ替える技、『魂沌こんとん』だ。6時間固定になるが、ミルルが外に、俺が中になる。


「さて、処理しちゃいましょうかね!」


そう言ってミルルは魔力を高めていく。さっきの俺とは比較にならないほどの魔力量。これが魔王。


「虚無魔法『黒雷』」


その瞬間視界が真っ白になり、後から尋常じゃない音が落ちる。


『おい。やりすぎじゃないか?』

「消し炭にすれば死体はなくなるでしょ?」

『それにしてもやりすぎだぞ』

「いいじゃん!久しぶりの外なんだからはっちゃけちゃっても!」

『はあ。それよりなんだ?虚無魔法って』

「闇魔法の派生魔法だよ。私の一番の得意魔本なんだ!」


俺が、魂の中から消し炭になって人型に焦げている地面を見ながら喋っていると、


「あ、あの!ありがとうございました!!まさか本当に倒してしまうとは・・・・・」


そう後から声をかけられて、(ミルル)が振り返ると、そこには頭を下げている女の子がいた。よく見るとさっき襲われていた女の子だ。


「私、リリって言いまふふぎっ!か、噛んだ・・・・」

「おっと大丈夫かい?」

『うおい!そんな口調じゃないだろ俺!』


俺はミルルにそう叫ぶが、ミルルは聞いていないふりをする。


「君はカワイイからこれから僕が守ってあげよう」

「へ・・・・・・?」


リリは顔を赤くして首を傾げる。


『おおおぃぃいい!!!!!!!!!』


そんな俺の叫びは虚しく真っ暗な空間に響いた。


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