空中鉄板焼き。……あるいは、踊る鰹節(エア・ダンシング)
「……ふにゃぁぁ!! 止まりませんわ! 鼻が、……鼻が再起動を繰り返して、……私の体がマッハ1.2に到達してしまいますわぁぁ!!」
要塞の廊下を音速で往復する私。横を向くと、フェリクスが「くしゃみの衝撃波」で眼鏡を粉砕されながらも、必死に計算(叫んで)していた。
「リリアーナ様……! このままでは……断熱圧縮で……ドレスが燃え……、……私たちが……『焼き鳥』になってしまいます……っ!!」
「……させませんわ! ……こういう時は、……空気の粘性(粘り)を高めて、……『物理的ブレーキ(ソース)』をかけるのが定石ですわ!!」
私はマッハの速度で移動しながら、秘蔵の魔導食料庫を開放した。
「……サーシャ!! 鋼鉄のエプロンを『フライ返し』に変形させて、……『超・高粘度お好みソース(プロトコル・ネバネバ)』と、……『厚削り鰹節(アミノ酸・フレーク)』を大気中にパッチ(散布)しなさい!!」
「お任せくださいお嬢様! 空を鉄板に変えますわぁぁ!!」
【空気抵抗の強制書き換え:粘性流体プロトコル】
F_d = 1/2 · ρ · v² · C_d · A
(F_d: 抗力。空気密度 ρ に『ソースの粘性』を加え、さらに『鰹節の形状抵抗 C_d』をランダムに配置することで、音速移動する物体に強烈な減速をかける)
シュゥゥゥゥ!! と、空中に甘辛い香りが充満した。
ソースの飛沫が空気と混ざり合い、マッハで飛ぶ私たちの体に「旨味のブレーキ」がのしかかる。
「……ぐ、……おおっ!? 空気が、……空気が濃厚なソースの味になって、……私の加速をヨシヨシしてくるぞ……っ!!(兄様)」
「……ひゃぅっ!? そしてこの鰹節……! 音速の風を受けて、……まるで狂ったように舞い踊っていますわ……っ!!」
空中を舞う鰹節は、単なるトッピングではなかった。
リリアーナの魔力が宿ったそれは、音速の衝撃波を吸収して「おっさんの魂を癒やす、極上の出汁の香り」へと昇華される『衝撃吸収型・ダンシング・フレーク』だったのだ。
「……は、……はくしゅんっ!! ……あ、あれ? 止まった……?」
ソースの粘性と鰹節の空気抵抗により、ようやく私の速度が「定時(時速4キロ)」程度まで減速した。
気がつくと、要塞の廊下はソースと鰹節でコーティングされ、摩擦ゼロだった床には「最高のグリップ力」が戻っていた。
「……ふにゃぁ。……助かりましたわ。……ですが、……これは……」
「……リリアーナちゃん。……この『空飛ぶお好み焼き』……、……最高に、……最高にビールが欲しくなるじゃないの……!!(バルバラ皇帝)」
「……っ!! 皇帝陛下、……ドレスに鰹節が山ほど張り付いていますわよ!!(リリアーナ)」
「いいじゃない、……これが『帝国の最新トレンド(トッピング)』よ!!(皇帝)」
加速の地獄を生き延びた人類は、今や全身からソースと鰹節の香りを漂わせ、空気中に浮遊する「踊る鰹節」を口でキャッチしながら、『空中・昼飲み大会』という新たなデスマーチを開始するのであった。




