エントロピー増大・ソファ。……あるいは、多国籍ヨシヨシ・デッドロック
「……ふにゃぁ。……帝国のラボ、……重力設定が『微睡』に固定されていますわ……」
私は今、帝国の空中要塞内に新設された「リリアーナ専用・研究開発(R&D)センター」の中央で、液体窒素のように冷たく、かつ綿菓子のように柔らかいソファに沈没していた。
「リリアーナ様、開発は順調ですね。貴女が提唱した熱力学第二法則を応用した、究極の『サボり用(保守用)家具』……。これこそが帝国の次世代兵器だ!」
フェリクスが、隣国から「出向」してきたにも関わらず、既に帝国のシステムに勝手にログインして、私の周囲を魔導センサーで監視している。
「……フェリクス様。……これは兵器ではありませんわ。……**エントロピー(乱雑さ)**を極限まで増大させ、周囲の『やる気(自由エネルギー)』を奪うことで、相対的に私の『怠惰(効率)』を最大化するシステムですわ……」
【熱力学第二法則:エントロピー増大の原理】
ΔS ≧ 0
(孤立系において、全エントロピー S は減少することはない。リリアーナがだらけるほど、周囲の混沌は加速する)
私がソファでゴロゴロするたびに、周囲の空間から「熱(やる気)」が奪われ、その余剰エネルギーがなぜか周囲に侍る「帝国の若手エリート研究員(美形マッチョ)」たちの筋肉を、**非接触型電磁誘導**で肥大させていく。
【エネルギー変換式:怠惰エネルギーの転移】
ΔG = ΔH - TΔS
(G: ギブズ自由エネルギー、H: エンタルピー、T: 温度、S: エントロピー。リリアーナの ΔS 増大により、周囲の ΔG が負となり、筋肉の合成反応が自発的に進行する)
「ひゃぁっ! 聖女(CTO)様が寝返りを打つたびに、僕の大胸筋が『再構築』されていく……! なんて効率的な研究室なんだ!」
そこへ、部屋の扉が爆破された。
「リリアーナ! 帝国のソファがそんなに良いなら、僕が『人間ソファ』になって、君の背中のエントロピーを全部受け止めるよ!(王子)」
「妹よ! 帝国の研究予算に対抗して、私はベルシュタイン領の全麦芽(ビール原料)をここに輸送した! 飲んでだらけろ!(兄様)」
王子と兄様が、帝国のエリート研究員たちを「バルク不足だ!」と蹴散らしながら、私の左右を陣取って「交互にヨシヨシする」という、マルチスレッド・ヨシヨシを開始した。
「あらあら、賑やかね。でも、リリアーナちゃんの『ルート権限』を持っているのは、この私よ?」
バルバラ皇帝が、自身の完熟した二頭筋で王子たちの頭を軽く小突きながら、私をソファごと抱き上げた。
「さあ、リリアーナ。今夜は各国の貴族たちを招いた『合同デバッグ(夜会)』よ。貴女はただ、このソファで私の膝枕を堪能していればいいわ。……その姿を見せるだけで、男たちは勝手に筋肉を競い合い、女たちは貴女の肌のツヤを解析しようと必死になる……。これこそが、私の望んだ『ヨシヨシによる世界平和』よ!」
「……ふにゃぁ。……皆様、……私を巡って、……リソース(予算と愛)を奪い合いすぎですわ……。……私はただ、……ビールを飲んで、……おっさん(前世)みたいに、……プロ野球の速報でも見ていたいだけなのに……」
リリアーナの「何もしないためのガチ科学」が、各国の最高権力者たちを「誰が一番彼女を甘やかせるか」という、国家予算規模のデスマーチへと叩き込んでいく。
「……っ!! ……リリアーナ様、……今、……隣国のヒルデガルド叔母上から、『おっさん幻影ダンス隊』を引き連れてこちらに向かっていると入電がありました!!」
「「「「「「「「「「バグ(叔母上)が来るぞぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」
研究室は、さらなるカオスな多角関係へと突入するのであった。




