おっさん・オーバーフロー。……あるいは、鋼鉄の美魔女の「解釈一致」
「……ひゃっはぁぁぁ!! ……これですわ、これこそが……『真理』ですわぁぁ!!」
ベルシュタイン邸のテラスは、もはや地獄と化していた。
リリアーナがビールの酔いと魔導プロジェクターを暴走させた結果、周囲には「腹の出具合が絶妙な45歳の全裸のおじさん(リリアーナの前世イメージ)」の幻影が、百体単位でデプロイ(実体化)されていた。
「リ、リリアーナ様ぁぁ!! ……論理的な『添い寝』を要求したはずが、……なぜ私の周囲には『知らないおっさんのバルク』が溢れかえっているのですか!?」
フェリクスは、実体化したおっさんたちに揉みくちゃにされ、眼鏡を歪ませながら悲鳴を上げた。
「……フェリクス様、……これが私(本質)ですわ……! ……さあ、……朝まで、……ベンチプレスの挙上重量と、……効率的なキレート反応について、……おっさん同士で熱く議論しましょう!!」
「ぎ、ぎゃぁぁぁ!! ……リソース(精神)が、……リソースが削られていく……っ!!」
そこへ、騒ぎを聞きつけたアレン王子とカシアン兄様が駆け込んだが、彼らは一瞬で石化した。
「……リ、リリアーナ? ……なぜ、……おじさんが、……こんなに増殖しているんだ……?(王子)」
「……妹よ、……これが君の隠していた、……『究極のバルク(真実)』なのか……!?(兄様)」
二人がショックで膝をついたその時、密林(王宮の庭)をかき分けて、あの「鋼鉄の美魔女」ヒルデガルド様が悠然と姿を現した。
「……あら? ……あらあらあら……!!」
ヒルデガルド様は、阿鼻叫喚のテラスを見渡し、……その瞳をかつてないほど「乙女」のように輝かせた。
「……なんて素晴らしい、……『枯れた美学』なのかしら! ……リリアーナちゃん、貴女、天才ね! この、……若さゆえの荒削りな筋肉ではない、……人生の重みを背負った『おじさんの背中(哀愁)』……! これこそが、私が求めていた真のアンティーク・バルクだわ!!」
「……っ!! ……わ、わかってくださいますの……!? ……叔母様(ヒルデガルド様)!!」
リリアーナ(中身おっさん)とヒルデガルド様(筋肉マニア)が、固く握手を交わした。
二人の間には、もはや「性別」も「国境」も超えた、『おっさん萌え』という名の強固なプロトコルが確立されたのである。
「フェリクス、貴方にこの子は勿体ないわ。……リリアーナちゃん、……今夜は私の部屋で、……その『おっさん実体化パッチ』を維持したまま、……二人で朝までおじさんの魅力について語り明かさない……?」
「……ひゃぅぅっ!! ……行きますわ! ……今すぐ、……今すぐ『現場(別邸)』へ直行しますわぁぁ!!」
「待ってくださいリリアーナ様ぁぁ!! ……私の構築した『婚約仕様』が、……叔母上の『特殊な性癖』によって完全に上書き(オーバーライド)されているぅぅ!!」
フェリクスの絶叫が響く中、リリアーナはヒルデガルド様の「鋼鉄の二頭筋」に抱えられ、大量のおっさんの幻影を引き連れて、隣国の別邸へと連れ去られていくのであった。
「……ふにゃぁ。……おっさんとして、……愛されるのって、……最高にクール(定時退社)ですわぁ……」
リリアーナの「幸せな誤解」は、もはやフェリクスの手に負えない領域へと昇天していくのであった。




