孤独な魂の邂逅。……友よ、その背中に私の夢(バルク)を背負ってくれ
学園の放課後、夕日に染まる屋上。
リリアーナは、隣で熱心に筋肉の構造図を眺めるミリーとテオを、静かに見つめていた。
(……ふにゃ。……なんだか、胸が熱いですわ)
リリアーナのこれまでの人生は、まさに「不毛の荒野」だった。
貴族として親が用意した幼馴染たちは、彼女が「君の腕撓骨筋の起始・停止を教えてくれ」と問いかけるたびに、恐怖に顔を歪めて逃げ出した。
学園でも、彼女の美貌に惹かれる者は後を絶たなかったが、中身が「筋肉に狂ったおっさん」であることに気づくと、誰もが距離を置いた。
彼女は、孤独だった。
だが今、目の前に、自分の狂気を笑わず、むしろその先を見ようとする若者がいる。
(……私は、前世ではしがないおっさんでしたわ。……友情なんて、居酒屋で愚痴をこぼし合う程度のものだと思っていました。……でも、今の私は、この若者たちのために……命すら懸けられる気がしますの)
リリアーナの「おっさん魂」が激しく燃え上がる。
彼女は意を決したように、ミリーとテオの肩をガシッと掴んだ。……その手つきは、完全に「部下を飲みに誘う部長」のそれだった。
「……ミリー様、テオ様。……貴方たちは、私の『真の友』ですわ。……いいですか、世界が貴方たちを否定しても、この私が、貴方たちの『脊柱起立筋』を支える支柱になって差し上げますわ!」
「ベルシュタイン様……! その力強いお言葉、胸に響きますわ!」
「ああ、なんて情熱的なんだ……!」
感動する二人。だが、ここからリリアーナの「おっさん流・友情」が、恐ろしいジェネレーションギャップを伴って暴走を始める。
「……さあ、友情の証ですわ。……今夜は私の屋敷で、**『一晩中、互いの筋肉の隆起を肴に、温めたプロテインを酌み交わし(飲みにケーション)』**ましょう!
……大丈夫ですわ、終電(馬車の門限)を逃しても、私の部屋で雑魚寝すれば良いのです。……昔の男たちの友情は、そうやって拳と大臀筋で語り合ったものですわ!」
「……しゅ、しゅうでん? ……ざこね?」
首を傾げる若者たち。リリアーナの話す「友情の作法」が、微妙に古臭い昭和のサラリーマンのようなのだ。
「……テオ様、君には私がとっておきの**『特製サウナ付き個室(もみほぐし込み)』を用意して差し上げます。
……男同士、裸で語り合えば、筋肉の隠し事など無くなりますわ! ……ミリー様、貴女には私が、『肩こりに効く秘伝の湿布(サロンパス風ポーション)』**を貼って差し上げましょう。……これぞ、大人の付き合いというものですわよ!」
「リ、リリアーナ様……。……なんだか、お話の内容が、私のおじい様が酔った時に言うことと似ていて……少し、切なくなりますわ」
「……僕も。……なんだか、君の背後に『古びた赤提灯』が見える気がするんだ……」
リリアーナは、慈愛に満ちた(おっさん特有の)笑顔で二人を見つめていたが、若者たちの困惑には気づかない。
彼女にとっては至高の友情。だが彼らにとっては、美少女から放たれる「加齢臭のする情熱」。
「(……ふにゃぁ。……いいものですわね、友人というのは。……よし、明日の朝は、二人に『しじみ汁配合の回復プロテイン』を振る舞って差し上げましょう……)」
孤独だった美少女が、ついに手に入れた宝物。
その友情は、あまりにも厚く、そしてあまりにも……「おっさん臭かった」。




