学園の三銃士。……同志よ、君の眼差しは「バルク」に飢えている
サーシャが「真の筋肉愛者」ではなかったという事実は、リリアーナの心に深い影を落としていた。
「……ふにゃぁ。……結局、私は孤独な巡礼者なのですわ……」
重い足取りで学園の門を潜るリリアーナ。しかし、そんな彼女を、熱い視線で見つめる二人の生徒がいた。
一人は、リスのように小さく愛らしい女子生徒、ミリー。
もう一人は、背が高くのっぽだが、風が吹けば折れそうなほどガリガリな男子生徒、テオ。
二人はおずおずとリリアーナに歩み寄ると、震える声で切り出した。
「あ、あの……ベルシュタイン様! ……先日の『筋肉見本市』の噂、聞きましたわ! ……冷蔵庫のような筋肉、私……私、感動して昨日は一睡もできませんでしたの!」
「……僕もだ。……僕は体質的に太れないけれど、……筋肉の『構造』には、宇宙の真理が隠されていると信じているんだ。……君の話をもっと、もっと深く聞かせてほしい!」
「…………ふにゃっ!?」
リリアーナの「おっさん脳」に、かつてない強烈な共鳴(共鳴)が走った。
「……貴方たち。……もしや、大腿四頭筋のカットを見て、白飯が三杯食べられるタイプですか?」
「「……当然ですわ(さ)!!」」
こうして、学園の片隅で「筋肉同好会(非公式)」が結成された。
三人は友情を深め、放課後の茶会はいつしか「バルクの批評会」へと変貌していった。だが、友情が深まるにつれ、リリアーナの「深淵」が牙を剥く。
「……ミリー様。貴女は『ゴリラのような筋肉』を褒めていましたが、甘いですわ。……真の筋肉とは、細胞の一つ一つが神への祈りを捧げ、服という名の『束縛』を内側から破壊する衝動のこと。……私は今、学園の講堂を、プロテインの粉末だけで塗り固める計画を立てていますの」
「……えっ?」
「……テオ様。君ののっぽな骨格は、素晴らしい『足場』ですわ。……そこに私が開発した超速肥大薬を打ち込めば、君は一晩で『校舎より巨大な肉の柱』へと進化できる。……君自身が学園のシンボルになるのですわ。……ふにゃにゃにゃにゃ!」
あまりの過激思想。普通なら、ドン引きして逃げ出すレベルの狂気。
しかし、ミリーとテオは違った。二人は顔を見合わせると、頬を紅潮させ、感動に打ち震えたのだ。
「……す、凄いですわ、ベルシュタイン様! ……校舎より巨大な筋肉……!! 私、自分の想像力の小ささが恥ずかしいですわ!」
「……筋肉のタワー……!! 究極の機能美だ……! ベルシュタイン様、僕を……僕を君の設計図通りに改造してくれ! 僕は筋肉の柱になりたい!!」
二人はリリアーナの置き去りにするほどの筋肉愛に、引くどころか「更なる高み」を見出し、信者のように目を輝かせたのである。
「……ふにゃぁ。……ついに、ついに見つけましたわ。……私の狂気を、狂気で返してくれる真の友を……!!」
学園の放課後。
リスのような美少女と、折れそうなのっぽ男子、そして至高の美少女。
一見、絵画のように美しい三人が、口を揃えて「バルク!!」と叫ぶ異常な光景が、そこにはあった。




