王家のメンツはボロボロ。……でも、閣議決定なら仕方がありませんわね
「……陛下。……正直に申し上げます。リリアーナ嬢を王宮に閉じ込めた瞬間、三日以内に王宮の全衛兵が『服のサイズが合わない』と悲鳴を上げ、一週間後には近衛騎士団が『リリアーナ様の広背筋教』に入信します。それはもはや政権交代ですぞ!」
宰相エドワード(剛毛)の必死の進言により、王家の「リリアーナ囲い込み計画」は瓦解した。
しかし、問題はここからだ。すでに「ベルシュタイン家は侯爵に陞爵!」と国中に大々的に発表し、華々しくお披露目まで済ませてしまったのである。
「……ぐぬぬ。今さら『やっぱり間違いでした』などと言えるか! 王家の権威が、筋肉よりも脆いと思われてしまうではないか!」
頭を抱える国王陛下。一方、リリアーナ本人は至高伯爵家の認可(自由)さえ得られれば満足で、王宮のテラスで優雅にプロテインを啜っていた。
「……ふにゃぁ。……陛下、そんなに悩まなくても。……『リリアーナが美しすぎて、侯爵という型には収まりきらなかった』とでも広報しておけば、民衆は勝手に納得しますわよ」
「そんな適当な理由で納得するわけが……」
「……あ、それいいかもしれませんな」
宰相が真顔で同意した。
そこから、王宮広報局による「国家規模の言い訳(後始末)」という名のコメディが始まった。
翌日、街中の掲示板には驚天動地の「お詫びと訂正」が貼り出された。
【王宮広報:ベルシュタイン家の爵位に関する重要なお知らせ】
先日発表した「侯爵」への陞爵ですが、あれは王家の**「計算ミス」**でした。
リリアーナ様の功績と美貌、およびその「特殊な魂の質量」を再計算した結果、既存の『侯爵』という枠組みでは彼女の存在を支えきれないことが判明いたしました。
したがって、ベルシュタイン家は**『至高伯爵』**という、宇宙で唯一無二の特別階級へ移行いたします。これは侯爵より下というわけではなく、むしろ『別次元』の存在です。
「……陛下、民衆が『やっぱりリリアーナ様は人間を超越していたんだ!』『侯爵程度じゃ足りないのか!』と熱狂しております」
「……なぜだ。なぜこんな、デタラメな後付け設定が通用するのだ……」
陛下が呆然とする中、さらなる後始末が続く。
お披露目パーティーのために用意された「侯爵」の看板や公文書は、すべてリリアーナの要望により**「黄金のバーベル」**のデザインに書き換えられ、公式行事のはずが「第一回・至高伯爵家設立記念マッスル祭」へと強引に軌道修正された。
「陛下! 侯爵家用の予算を、リリアーナ様が勝手に『全騎士団への高品質ささみ配給費用』に転用しております!」
「あぁ、もう好きにさせろ! 彼女に逆らってお父様(マッチョ公爵級)が暴れ出すよりはマシだ!」
数日後。
ようやく騒動が収まり、王宮には平穏(と、ほのかなバニラの香り)が戻った。
陛下は、残務整理の山に埋もれながら、ぽつりと呟いた。
「……結局、余は何のためにあんな謀略を練ったのだ……」
「陛下。……おかげさまで、私の髪はフサフサになり、騎士団の戦力は上がり、国民はリリアーナ様の美しさに酔いしれています。……王家のメンツは粉々ですが、国家のバルクは過去最高ですぞ」
宰相の言葉に、陛下は力なく笑うしかなかった。
当のリリアーナは、新調された「至高伯爵令嬢」の紋章(ダンベルを抱く女神)を眺めて、満足そうに鼻歌を歌っていた。
「……ふにゃにゃにゃにゃ。……やっぱり、自由な伯爵(風)が一番ですわ。……さあ、アレン王子。……陛下の後始末を手伝うくらいなら、私と一緒に『腹直筋を鍛えるダンス』の練習をしましょう?」
「……喜んで、リリアーナ。……でも、ダンスというよりは、ただの腹筋運動だよねこれ?」
王家の威信をかけた大謀略は、一人の少女の「筋肉愛」と、それを支える大人たちの「理性の敗北」によって、この国の歴史に残る「最大の勘違い劇」として完結したのである。




