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愛の重力(バルク)が、夫婦の絆を再構築しました

騎士団を「神速の細マッチョ集団」に変えてしまったあの日以来、私はショックで自室に引きこもっていた。


窓の外を見つめ、物憂げな表情で溜息をつく私の姿は、学園や王宮で「悲劇の聖女」として噂になっているらしい。


「(……あぁ、理想のバルクが消えた。冷蔵庫のような背中が、ただのスリムな壁に……。私の計算式のどこに過緊張オーバーテンションが紛れ込んだんだ……)」


実際はただの**「筋肉への未練」**なのだが、銀髪を揺らして窓辺で伏し目になる私は、誰が見ても「儚くも美しい、神秘の乙女」そのものだった。


そこへ、一人の女性が血相を変えて飛び込んできた。

騎士団長ガルガンの妻であり、王都でも指折りの美魔女、ロザリア夫人だ。


「リリアーナ様! 感謝……感謝を伝えに来ましたわ!」


「……ふにゃ? ロザリアお姉様? (あ、今日も広背筋のラインが素晴らしい)」


私は一瞬でおっさんモードを切り替え、夫人の手を取った。夫人は頬を赤らめ、私の美貌に気圧されながらも熱っぽく語り出した。


「リリアーナ様のおかげで、主人が……あの岩石のようだった主人が、見違えるほど素敵になったのです! 無駄な肉が取れて、昔のようにしなやかで……。昨夜、久しぶりに主人が私を抱き上げた時、その俊敏さと力強さに、私、新婚時代を思い出してしまいましたの!」


「…………は?」


「主人は今、『リリアーナ様に頂いたこの肉体(宝物)を維持せねば』と、毎日庭で熱心に汗を流しています。夫婦の会話も増え、主人の目にはかつての輝きが……! おお、リリアーナ様。あなたは夫婦の愛を繋ぎ止める、慈愛の女神ですわ!」


「(……いや、私がやりたかったのはバルクアップであって、夫婦の夜の再構築リカバリーじゃねぇ……。でも、お姉様が幸せそうなら、まあ、いいか)」


私は悲しみを胸に秘め、最高に美しい「慈愛の微笑み」を夫人に向けた。


「……お姉様。愛とは、互いの『アミノ酸スコア』を高め合うこと……。団長があなたのために汗を流しているのなら、それは最高のトレーニング(愛)です。……ふにゃ。幸せなら、それで……」


「リリアーナ様……! なんて尊いお言葉! 『愛はアミノ酸』……一生忘れませんわ!」


夫人は感動のあまり私を抱きしめた。


豊かな美魔女の感触。バニラの香り。私はその心地よさに「ふにゃにゃにゃにゃ」と力を抜き、夫人の胸の中で完全に溶けた。


「ちょっと待て、その位置ポジションは僕のものだ!!」


そこへ、またしても空気を読まない第一王子アレンが、騎士団の視察ついでに乱入してきた。


「リリアーナ! 君は母上だけでなく、騎士団長の妻まで虜にするのか!? 窓辺で悲しげに空を見ていたと聞いたから心配して来てみれば、女性の胸でとろけているとは!」


「アレン様、うるさいです。今、私は大事な『精神的パンプアップ』をしている最中なんです。……あぁ、お姉様の抱擁が、私の荒んだバルクを癒していく……」


「精神的パンプアップだと!? わけがわからないが、とにかく僕にもその、君が開発した『夫婦円満の薬』をくれ! 将来、君との関係が冷え切らないために、今から飲んでおく!」


「……(お前はまず、その重すぎるプライドをカタボリック(分解)してこい)……ふにゃぁ……」


こうして、私の「実験失敗」は、なぜか**『冷え切った夫婦を新婚に戻す奇跡の霊薬』**として、王都中のマダムたちの間で伝説となった。


本人は「ただのマッチョ好きのおっさん」なのに、その美貌とシュールな言動が、国中の男女をさらなる混乱と幸福に叩き落としていくのであった。

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