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魔王が死んでも、世界は思ったより平和じゃない  作者: Soh.Su-K
第1章 4節 盗賊団討伐依頼編

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第57話 所帯染みたくないんだが

「で、なんでお前らは俺の家にいるんだよ」


 帰宅すると、グロー、エルウィン、スゥが揃って居間に上がり込んでいた。

 何なんだコイツ等。


「なんでって、パーティも増えたし、スゥには保護者が必要でしょ?四人で共同生活、しない?」


 エルウィンがテーブルに羊皮紙の束を広げた。

 賃貸の間取りが並んでいる。


「フィロー商会に頼んだら、見繕ってくれたわ」


「……あの商会、不動産までやってんのか」


「便利でしょ?」


「近くに酒場があれば、ワシは何処でも良いぞ」


「グローは黙ってろ」


「ガルと一緒がいいよね、スゥ?」


「うん!」


 所帯染みた光景に、頭痛がしてきた。

 俺の平和な日々を返してくれ。


†


 翌日。

 まずはスゥの冒険者登録のため、ギルドへ向かった。


「今度は未成年者略取ですか……?」


「違ぇーよ。コイツを冒険者として登録して欲しい」


「年齢は?」


「十五歳だよ!多分!」


「多分……?」


「コイツは貧民窟《スラム》出身だ。両親も親戚もいない」


「……はぁ、ガルさん……、めんどくさい事を持ち込まないで下さいよ……」


 あからさまに嫌な顔をされた。

 冒険者登録は人間《ヒューム》年齢で十五歳から。十八歳未満は保護者の許可が要る。

 貧民窟出身だと戸籍からだ。後見人も立てなきゃならん。

 ギルドが一括でやってくれるが、面倒臭がられた。

 いやいや、仕事しろよ。


「それもお前の仕事だろ。文句言わずにやれ」


「はいはい、分かりましたよー。お名前は?」


「スゥだよ!」


「あだ名?本名?」


「えーっと、オジサンは僕の事を『スチュワート』って呼んでた!」


「じゃあ本名はスチュワートね」


「うん!」


「後見人はガルさんで?」


「あぁ、頼む」


「戸籍取得まで五日。それから冒険者登録です。先に同意書を」


 文句を言いつつも、手は早い。

 仕事は出来るが、やる気が無いだけだな。


「ガル!」


 振り返ると、槍《スピア》使いのロブがいた。

 正直、面倒臭い。


「お前、子供がいたのか!?」


 ロブの声が、フロア全体に響き渡る。

 全員の視線がこちらに集中して、ざわつき始めた。

 これは完全に、隠し子と思われている。


「違う!身寄りがなくて、俺が保護したんだよ!」


「ホントかー?」


 声を落として、呆れ顔でロブを見る。


「……どう見てもコイツは圃矮人《ハーフリング》だろうが」


「いつ圃矮人と付き合ったんだ……?」


 別の冒険者まで混ぜっ返してきた。

 もう、何だこの空気。


「お前、ホントめんどくせーよ、ロブ」


 俺はスゥの手を引いて、ギルドを後にした。


「あの人誰?」


「ただの馬鹿だ。気にしなくていい」


 ギルドを出て、待ち合わせの広場へ向かった。

 今日はもう一つ用事がある。物件の内見だ。


「二人とも、こっちー!」


 広場でエルウィンが手を振っていた。

 グローは案の定、来ていない。「酒場が近きゃ何処でも良い」だそうだ。

 合流して、三人で歩き始める。


「皆さーん!」


 待っていたフィロー商会のピュートが、手を振ってきた。


「物件の内見、ご案内しますね!」


「この人誰?」


「お前と同じ圃矮人で、商人のピュートだ」


「初めまして、ピュートです。お見知りおきを」


「僕はスゥ!よろしくね!」


 同種族ゆえか、スゥの警戒心が無い。

 顔見知りになっておくのも悪くない。


 ピュートを先頭に、俺、エルウィン、スゥの順で歩く。


「なんだか、ご家族のようですね」


 楽しそうに、ピュートが言った。

 地味に傷ついた。


「誰が家族だ」


「いいじゃない。傍から見たらそうとしか見えないわ。子連れの夫婦が新居の内見、ってとこかしら」


 エルウィンが乗っかる。

 俺はますますうんざりした。


 二、三軒見て回った辺りで、酒場帰りのグローと鉢合わせた。

 既に出来上がっている。


「お、お主等か。ワシも見ていこうかのぉ」


 結局、最後の物件はグローも交えて内見する事になった。

 決め手は、近くに行きつけの酒場があった事らしい。


†


 数日後、引っ越し当日。

 新居の前で、グローが俺達を待っていた。

 扉を開けると、グローは髭を撫でながら家の中を見回した。


「ほほ~、ここが新居か~」


「ワシの家よりギルドにも酒場にも近い、気に入った!」


「そーかい、それは良かった」


「何じゃい、何故不機嫌なのだ?」


「さぁ、知らないわ」


 面倒くさいからに決まってるだろ……。


「一人暮らしが良かったとか、抜かすのだろう。別に良いではないか、何も変わらん」


「俺の平和な生活を邪魔しないでくれ……」


「邪魔はしないわ。ねぇ、グロー?」


「ワシは勝手気ままに酒を飲めればそれで良い」


「ガル!ボクの部屋ここがいい!」


 スゥが二階から駆け下りてきた。


「好きにしろ」


「お風呂、広いわよ。あとで一緒に入る?」


「入らねぇよ」


 エルウィンに肘でつつかれた。

 酒瓶片手にグローが近付いてくる。


「ふむ……。まぁお主がおれば大丈夫だろ。どうだ、一杯」


 そう言ってグローはショットグラスに注がれた赤い酒を俺に渡してきた。


「朝から飲んでんのかよ……」


「良いから飲んでみろ。ワシの秘蔵だ。お主には教えてやるが、変に広めるなよ?稀少なもんだからの」


 ショットグラスをグイと押し付けてくる。

 俺は渋々受け取り、一口飲んだ。


「なんだこれ!?」


「旨いだろ?ワシからの引っ越し祝いだ」


 ガハハと笑いながら自室へ戻るグロー。

 何とも不思議な味わいの酒だ。


 俺は煙草を取り出して、火を点ける。

 所帯染みたくない、と心底思った。

 だが、もう手遅れだ。






『盗賊団討伐依頼』————Quest Accomplished

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