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魔王が死んでも、世界は思ったより平和じゃない  作者: Soh.Su-K
第1章 4節 盗賊団討伐依頼編

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第48話 化石がこんなに柔らかい訳ないでしょ

「ガル、どう思う?」


 エルウィンが俺に訊ねてきた。

 俺達2人は休憩所から少し離れた森の中にいる。

 エルウィンから呼び出されたのだ。


「何のことだ?」


「盗賊の中には魔術師(ストライゴン)がいるのよ?」


「あの村には人間(ヒューム)しかいなかった。人間の魔術師が潜んでると?」


「人間の魔術師……。私のいた古代ならともかく、現代で魔術が使えるとなると、それこそ暗黒種族くらいよ」


 エルウィンはそこまで言って、ガックリと肩を落とした。


「どうした?」


「『私のいた古代』って、何だか私が化石みたいじゃない……」


「自分で言ったんだろうが。それに、化石ってのもあながち間違いじゃないぞ?」


 冗談のつもりで言ったが、エルウィンはギロリと俺を睨んだ。


「冗談だって」


「化石がこんなに柔らかい訳ないでしょ!」


 エルウィンは俺の手を掴んで、自分の胸に押し当てた。

 柔らかい感触。

 コフィーヌの胸を触ってしまった時の事を嫌でも思い出した。

 しかし、コフィーヌの時よりも柔らかさや重みが違う。

 可哀想だが、圧倒的にエルウィンの勝利である。

 ……、何の話だ?


「だから冗談だって言ってんだろ!」


「照れてるのかなぁ~?」


「んな事やってる場合かよ!」


 俺はエルウィンの手を振り払う。


「もし、魔術師が暗黒種族だったとして、それを村が匿ってる可能性がある」


「そうね。だとすれば盗賊行為の幇助(ほうじょ)って事で、村ごと処罰されるんじゃないの?」


「その通りだ。村ごと消され兼ねない」


「……、村人全員が操られてるって可能性もあるわよ?」


「そんなの不可能だろう?」


「魔術師の技量によるけど、そこまでの大魔術師なら有り得る。ただし、その分の負荷は術者に掛かる」


「複数の魔術師でやってる可能性は?」


「有り得るけど、そうなると魔術師の大部隊がいる筈」


「はぁ、どう転んでも村は消える運命じゃないか?」


「かもしれない……。だからこそ、どうするつもりなの?正義の味方さん?」


「その呼び方はやめろ。正義なんて虫唾が走る。とりあえずは、襲ってきた奴を捕まえないと何も始まらんだろ?」


「……」


「どうした?」


 エルウィンの歯切れが悪い。

 何か懸念があるのか?


「言いたい事があるなら言えよ、エルウィン」


「前、ガルに聞こうとしたじゃない、『その印は何処で貰ったの?』って」


「あぁ、あれか」


「で?それは誰から貰ったの?」


「……、俺の貰ったその印って奴が、お前が懸念してる事なのか?」


「質問に質問で答えないで欲しいんだけど……」


「悪い。エルウィンには話す。むしろ、エルウィンにしか話せない事だ」


 そう言って俺は、魂世界《アーラヤ》で魔王軍のウラグと話した事、その時にウラグからシンボルらしきものを貰った事を説明した。


「なるほどね、そういう事だったのね」


「で、俺が貰ったあのシンボルみたいなのが、お前の言ってる印(・)なんだな?」


「ええ。印っていうのは魔術師の研究の成果。代々受け継がれていくものよ」


「親から子に?」


「そうよ。受け継がれるごとに強化されていくの。だから複雑になればなる程、強い魔術師の証拠」


「ふーん」


「そして、その印にも系統がある。今回使用されたと思われる魔術印の系統は、ガルの印と同じ流れ。貴方の言った事が本当なら、確実に魔王軍関係の魔術師の筈よ」


 なるほど、ウラグと同じ系統の闇魔術師が、この事件に関わっているという事か。


「肝心なのは、犯人が誰で、関係者がどれだけいるかだ」


「そうね……。とりあえず私は、誰かさんの命令で上で寝るわ。何かあったら自分達でどうにかしてね」


「分かってる。前衛《バンガード》が2人もいるなら大丈夫だ」


「ホントかなぁ~」


 エルウィンは少々心配そうな顔をした後、音も立てずに木の上へと移動した。


†


 異様な気配で目が覚めた。

 気付かれないように、寝たふりをする。

 グローも起きているだろう。

 いつでも投げれるように、投げ小剣(ナイフ)を右手に2本持った。

 数は5人。

 休憩所を遠目から包囲して、少しずつ近付いている。

 距離にして30メートルくらいだろうか。

 にじり寄る様なゆっくりとした歩調だ。

 通常の人間の気配ではない。

 何か、禍(・)々(・)し(・)い(・)モ(・)ノ(・)を感じる。

 木を盾にしながら近付いて来るので、小剣が投げられない。

 これが操られていると言うなら、術者はかなりの手練れではないだろうか。

 不意にグローが寝返りを打つ。

 それに合わせて5人の脚も止まる。

 コイツ、マジで寝てないだろうか……?

 5人はしばらく止まっていたが、再び足を進め始めた。

 もう少しで休憩所内に入る。

 投げ小剣の準備をした時だ。

 木の影から5人が姿を現した瞬間、ヒュンという音と共に、5人それぞれの大腿部に何かが突き刺さった。


「!?」


「ガル待って。殺しちゃダメよ」


 声と共にエルウィンが木の上から降りてきた。


「折角殴り合えると思ったのにのぉ」


 グローが残念そうに立ち上がる。


「コイツら、前任のパーティか……」


 矢が脚に刺さり、崩れ落ちた5人を見下ろす。

 職と外見の特徴は、行方不明になっていた5人と完全に一致している。

 しかし、脚に矢が突き刺さったままうめき声1つ上げずにうずくまる5人を見て、少しゾッとした。

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