↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が死んでも、世界は思ったより平和じゃない  作者: Soh.Su-K
第1章 3節 軍令:調査依頼編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/65

第42話 お前ら、犬猿の仲かよ

「いつでも始めて良いぞ?」


 グローがニヤニヤと笑いながら言った。

 コイツ、エルウィンが合格しないと思っているな?

 まぁ実際のところ、30メートル以内の敵ならば俺の投げ小剣《ナイフ》で倒せる。

 弓に期待するのは、それ以上の距離での隠密殺害《スニーキングキル》だ。

 グローが試験している意味も分かる。


「じゃあ、始めるわ」


 エルウィンは右手の指の間に5本の矢を持った。

 すぐに番えられるように、矢筈の部分を指で挟んでいる。

 速射する気か?

 じっくり狙いを定めて射るのではないか?

 ますます心配になってきたが、その心配をよそに、エルウィンは立て続けに5本の矢を放った。

 まさに一瞬。

 こんなスピードの速射なんて見た事がない。


「結果はどうかしら?」


 自信満々の笑顔を見せるエルウィン。

 俺は我に返り、的になっていた小樽の元へ走った。


「うむ、当たってはいるようだの」


「ガルゥー!それ、持ってきてねー!」


 エルウィンの声が聞こえた。

 しかし、俺はその的を目にした時点で、度肝を抜かれ固まってしまっていた。

 有り得ない。


「どうした?ガル」


 見かねたグローとエルウィンが俺の元へやって来た。

 俺は的を拾い上げ、グローに見せる。


「見ろよ……。全(・)部(・)当(・)た(・)っ(・)て(・)る(・)ぞ(・)」


「何と……」


 5本の矢は全て樽に刺さっていた。

 しかも、ど(・)の(・)矢(・)も(・)触(・)れ(・)合(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)。

 樽を貫いた矢は、お互いに干渉するどころか、擦れてすらいないのだ。

 引き抜けば、ま(・)た(・)そ(・)の(・)ま(・)ま(・)使(・)え(・)る(・)状(・)態(・)だ。

 神業としか言えない。


「エルウィン、こ(・)れ(・)は(・)狙(・)っ(・)て(・)や(・)っ(・)た(・)のか?」


「当たり前でしょ?狙ってないと、必ず矢が破損するわ。安物とは言え、試験で浪費するなんて勿体ないじゃない?」


 あっけらかんとした答えに、思わず声を出して笑ってしまった。

 俺とは対照的に、グローは悔しそうだが。


「お前、本当に何者なんだ?」


「ガルに助けられた古代耳長人(エルフ)よ?」


「いやそうじゃなくて……」


 俺は言葉を飲み込んだ。

 現代に蘇った古代耳長人。

 それだけで規格外な存在なのだ。

 弓の腕がこれだけだとしても、おかしくはない。

 むしろ、これからエルウィンが何を見せるのか、楽しみにすらなってきた。


「参ったぜ、これは合格としか言えないな、グロー」


「うぅむ……、仕方ないのぉ……」


「これだけの手練れなら問題ないだろ?」


「じゃあ休業中のガルの代わりに、明日から私とバディね、グロー」


「うぅむ……」


 文句なしの腕前を見せつけられ、グローは不満そうだが、これだけの実力であれば問題なく2人で依頼をこなせるだろう。

 とりあえず、今日は大将の店で親睦会でもやってやる事にした。


†


「昨日も飲んで、今日も飲むのね、アンタ達……」


 セリファが呆れている。

 まぁ、仕方ない。


「いいじゃねーか。昨日は慰労会、今日は親睦会だ」


「何かと理由を付けて、ただ単にお酒飲みたいだけでしょ?」


「当たり前だ、酒はワシの燃料だぞい」


 開店とほぼ同時に雪崩れ込んだ俺達は、端のテーブル席に陣取って片っ端から注文していった。


「ここの葡萄酒美味しくて、毎日でも飲みたいもの!」


 エルウィンが葡萄酒の水割りを上機嫌に煽っている。

 昨日初めて酒を覚えた女とは思えない飲みっぷりだ。


「エルウィン、あんまりコイツらとつるまない方がいいわよ?」


「そう?腕は確かよ?」


 セリファの忠告をあっけらかんと切り返すエルウィン。


「腕は良くても素行不良よ」


「おい、誰が素行不良だって?」


「アンタよ、ガル!グローも!」


「うるさい小娘だのぉ。あれか?お主も混ざりたいのか?」


 ニヤニヤとしながらセリファを茶化すグロー。

 既に樽ジョッキ1杯を空にしている。

 相変わらず早い。


「なんでそうなるのよ!」


「女の嫉妬は怖いわい、のぉガル?」


「あ?何の話だ?」


「これだからこの男はダメなんだ」


 呆れた様にグローが言う。

 何故グローにそこまで言われなくてはならないんだ?


「とりあえず、もう1杯頼むぞい」


「はぁ……、はいはい、お好きなだけどうぞ!」


 不機嫌そうにセリファが厨房へ向かった。


「明日から2人はバディだ。仲良くやれよ?」


「あ?分かっておるわい。まぁせいぜいワシの邪魔をせんでくれればそれで良い」


 その言葉に、エルウィンのジョッキを持つ手が止まった。


「あら?鉱矮人《ドワーフ》に後れを取る程、私は愚鈍じゃないわよ?」


「何だと?」


「逆に聞くけど、私の射撃に追いつける足を持ってるのかしら?」


「……」


 グローの額に青筋が立つ。

 エールが空になったジョッキをドンとテーブルに置いた。


「だから、仲良くやれって……」


 俺は何度目か分からない溜息を吐きながらエールを飲む。


「お主の細腕で敵が斬れるのか?折れそうではないか」


「失礼しちゃう!何ならここで試してみる?」


 エルウィンの眼光が鋭く光る。

 なんでコイツらこうも喧嘩したがるのか……。

 現代耳長人(エルフ)と現代鉱矮人が犬猿の仲なのは知っているが、古代耳長人と現代鉱矮人も犬猿の仲なのか?


「やめろ、一応これは親睦会なんだぞ?果し合いがしたいなら出ていけ」


「この小娘が生意気なのがいかんのだろ」


「私の方が年上でしょうが!」


「あー、そうだったのぉ、年増(としま)の木乃伊(ミイラ)もどき!」


「なんですって!?」


 テーブルを挟んで言い合いが始まった。

 正直、先が思いやられる……。






『軍令:調査依頼』————Quest Accomplished

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。