↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が死んでも、世界は思ったより平和じゃない  作者: Soh.Su-K
第1章 2節 狗鬼討伐依頼編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/60

第19話 やはり簡単ではない

「ガル、これはいかんぞ……」


 あの穴からかなりの距離を歩いた筈だ。

 再びグローの足が止まる。


「なんだ?」


「すぐに戻ってギルドに連絡しろ!これはワシらの手に負えん!」


「どういう事だよ?」


「この先、500メートル程行けば少し広い場所に出る。そこにいる敵の気配は複数。大物もおる……」


 グローの顔に生汗が流れる。

 こんなに張り詰めたグローを見たのは久しぶりだ。


「大物……」


「黒醜人《オーク》ではないぞ……。それより遥かにデカくて強い……」


「……、分かった」


 俺はグローを押しのけ、前に出た。


「何をしておる!」


「ギルドへの連絡はグローがしてくれ。俺はその大物の正体を探る」


「馬鹿を言うな!ここは坑道だぞ!お主よりワシの方が適任だ!一度迷えば二度と出られなくなるぞ!」


「そう叫ぶな、気付かれるぞ。敵の規模を探るだけだ、道も覚えている」


「だが!」


「グロー、敵を感知したのはお前だ。俺にはまだはっきりとは危険度が分からない。お前がギルドへ連絡しろ。第2報として俺が大まかな規模を報告する」


 グローは何か言いたげだったが、それを飲み込んで頷いた。


「無理はするなよ、ガル。来た道をそのまま帰れ……」


 そう言って、グローが俺に何かを手渡してきた。


「……、これは?」


「地の精霊(ノーム)の加護を受けたお守りだ。持っておけ」


「ハハ、やけに殊勝じゃないか、グロー」


 笑う俺を、グローは一喝した。


「馬鹿者!土中を舐めるな!鉱矮人《ドワーフ》だろうが、土には勝てんのだぞ!ましてや、魔王軍もある!気を抜いたら死ぬぞ!」


 初めてグローに叱られた。

 俺にはまだ感知出来ていないが、それだけヤバい状況なのだろう。

 俺は笑うのをやめ、受け取ったお守りを仕舞う。


「分かった。戦闘は無し、偵察のみだ。すぐに追い掛ける」


「待っておるぞ」


 そう言い残して、グローは来た道を走って戻った。


「さて、何が出てくるか……」


 俺は速足で通路を進む。

 資料を基に探索時間は朝に設定した。

 この群れは夕方から夜にかけて外に出るサイクルらしい。

 今はまだ寝ているだろう。


「ここか……」


 グローが言った通り、500メートルほど進むと開けた場所に出た。

 俺は入り口の影に身を潜め、中を伺う。

 20メートル四方ほどの広間だ。

 天井も10メートルはあるだろうか。

 縦横無尽に足場が組まれ、点々と揺らめく蝋燭が足元を照らしている。

 そして鼻を突く、むせ返るような獣臭。

 目が慣れてくると、足場の上や地面のあちこちに丸まった影が見えてきた。

 狗鬼だ。ここだけで20匹以上は眠っている。

 一歩踏み出す。

 地面を確かめながら、音を立てないよう慎重に足を置く。

 狗鬼の1匹が寝返りを打った。

 俺は動きを止め、息を殺す。

 数秒後、また寝息が聞こえ始めた。

 ゆっくりと呼吸を再開する。

 壁面に3枚のドアがあった。

 開け放たれた1枚の中には採掘用の道具が雑然と積まれていた。

 閉じられた1枚に手を掛け、ゆっくりと開ける。

 蝶番が微かに軋んだ。

 心臓が跳ね上がる。

 しかし周囲に動きはない。

 隙間から覗くと、黒醜人《オーク》が1匹、大の字になって眠っていた。

 バズグルが着ていた鎧とよく似たものが傍に置かれている。

 やはり魔王軍だ。

 音を立てずにドアを閉める。


 残りのドアへ近付こうとした時、俺は足を止めた。

 地面のぬかるみが目に入ったのだ。

 狗鬼や黒醜人達の足跡に紛れて、一際大きなものがある。

 しゃがんで確かめる。

 人間の足跡の、優に3倍はある。


「これは……、サイクロプス!?」


 思わず声が出そうになり、口を手で押さえた。

 単眼鬼《サイクロプス》。

 3メートルを超える一つ目の食人鬼だ。

 ギルドで討伐依頼が出る際は、熟練の冒険者4人以上でなければ受けられない。

 それが魔王軍としてここにいる。

 グローが焦る意味がようやく分かった。


「チッ……」


 単眼鬼の存在は確認できた。だが、肝心の規模がまだ掴めていない。


 もう少し探索する事にした。

 危険は承知の上だ。

 更に奥へ続く通路へ入ろうとした時だ。

 強烈な殺気を感じ、咄嗟に左へ転がった。

 2.5メートルほどの槍が、矢のような速さで俺のいた場所へ飛んできた。

 槍はそのまま石化した壁面に何度も当たり、ガンガンと音を立て火花を散らしながら通路の奥へ消えていった。


「万事休す……、か」


 甲冑に身を包んだ単眼鬼がそこに立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。