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魔王が死んでも、世界は思ったより平和じゃない  作者: Soh.Su-K
第1章 2節 狗鬼討伐依頼編

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第17話 これ以上頭を抱えたくない

 顔に当たる朝日が眩しくて、俺は目が覚めた。

 頭が痛い、完全に飲み過ぎだ。

 とりあえず起き上がり、ベッドに腰掛けた。


「あ?」


 大きな欠伸をしていると、テーブルの上の書置きが目に入った。


『帰ります。飲み過ぎ注意』


 セリファだろう。

 結局あの後、エールを浴びるように飲んで、セリファを自宅に連れ込んだのだった。

 こんなに飲んだのは久々だった。


「勢いとは言え、抱いちまった……」


 反省した。

 だからと言って、セリファに謝るとなると、それはそれで失礼だろう。


「なんでこんなガキみたいな事考えてんだ……」


 重い頭を抱えながら紙巻煙草に火を点ける。

 ちょうどその時、ドアがノックされた。


「ガル、起きとるかー?」


 グローが俺の返事も待たずにドアを開ける。


「何だ、寝てたのか?」


「今起きた……」


 俺はグローに気付かれないように、セリファの書置きを隠した。


「お前が飲み過ぎるとはの。それより、準備は出来ておるのか?」


「あぁ、荷物は出来てる。とりあえず、風呂行ってくるわ……」


「おお、行ってこい。ワシはここで待っておるぞ」


 グローがテーブルの前にドカリと座り、パイプに火を点けた。

 俺は怠い身体のまま、公衆浴場へ向かう。

 街には公衆浴場が数件ある。

 王国の経営で、安く風呂に入れるのだ。

 自宅に風呂が付いている家など、王都に住む貴族か金持ちくらいしか住めない。

 俺は自宅から一番近く、常連になっている公衆浴場へ向かった。

 すると、女湯からちょうどセリファが現れた。


「あ」


 何とも気まずそうな顔をしている。


「おう、もっと早く帰ってたのかと思ったぞ」


「誰のせいで足腰立たなくなったと思ってんのよ!」


 開口一番怒られた。

 しかし内容が内容だけに、我に返ったセリファは自分の口を手で覆い、周りを見渡す。

 幸い、誰もいなかった。


「さっきやっと歩けるようになったのよ?自分だけスヤスヤ寝やがって……」


 今度は小声で文句を言ってくる。


「はぁ、抱いてる時はあんなに素直で可愛かったのに……」


 わざとらしく溜息を吐いてみせる。


「な!?二度とアンタの酒には付き合わないわ!」


 逆撫でしたようだ。

 しかし、朝から元気なもんだ。

 セリファの怒鳴り声で頭がグワングワンする。

 とりあえず、風呂に入ってサッパリしよう。

 俺は男湯の入り口をくぐった。


†


「おう、早かったの」


 パイプを咥えたグローが俺の自宅でくつろいでいた。


「眠気覚ましに行っただけだからな」


「フン、酒と目合《まぐあ》いの匂いがプンプンしておったくせに」


 バレていたらしい。

 迷惑な事に、鉱矮人《ドワーフ》は嗅覚が鋭いようだ。


「女抱くくらいいいだろ?」


「どうせ相手はセリファじゃろ」


「うっせーな」


「あんなガリガリのどこがいいのか、ワシには分からん」


「鉱矮人の女は小さすぎるんだよな……」


「そら鉱矮人と人間の平均身長が違うから仕方なかろう。だいたい、ガルは人間の癖にデカすぎるのだ」


「そうか?」


 俺の身長は197センチある。

 人間の平均より30センチ近く高い。

 グローは鉱矮人にしてはデカい方だが、それでも154センチだ。


「それより、今日出発なのだろ?もうすぐ昼になるぞ」


「分かってる。目的の村はここから近い。夕方には着く」


「知っておる。はぁ、お主が酔っ払うと面倒だのー」


「お前に言われたかねーよ……」


 文句の言い合いはいつも通りに、夕方には依頼現場となる村へ到着した。


†


 この村はその昔、鉄鉱石の産地として栄えていた。

 村が最も栄えていたのが90年程前、鉄鉱山として開発が始まったのは200年以上前だ。

 今では、より純度の高い鉄鉱石が取れる南方の鉱山に役目を奪われた上に、鉱脈自体の枯渇で50年前に閉山した。

 それ以降、元々大きな街だったが、今では住民が200人を切る小さな村だ。


「狗鬼《コボルド》の討伐に来た者だ。詳しい状況を聞かせて欲しい」


 村の役所で働いているのはたったの5人だった。

 いや、この規模の村にしては多いのかもしれない。


「あ、冒険者の方ですね!お待ちしておりました!」


 受付の人間の女性が嬉しそうに立ち上がった。


「資料をお持ちしますので、こちらへ!」


 奥の会議室らしき部屋へ通される。


「お掛けになってお待ちください」


 女性はパタパタと小走りで出て行った。


「なんじゃ、こんな丁寧な対応も珍しいのう」


「まぁ、被害が出始めて日が浅いからな。まだ余裕があるんだろ」


「余裕があるうちに来れたのは、こちらとしても有難いがの」


「そうだな。放置すれば1ヶ月で100近い数になる事もある。そうなってからじゃ手に負えない」


「冒険者だけでは無理だな。軍でないと」


「王国がそう簡単に動く訳ないだろ。小型種相手では軍事練習にもならんからな」


「まぁ、その分ワシらの出番がある訳だが」


「お待たせしました!こちらが我々が持っている資料です!」


 ドスンとテーブルの上に置かれた資料。

 そのあまりの多さに俺もグローも目が点になった。


「えぇっと……、これは……?」


「え?ですから、今回のコボルドの討伐に関連するであろう資料です!これが村周辺の地図、村民の名簿……。あ!坑道の地図もありますよ!」


 溜息と共に、頭を抱えた。

 二日酔いがぶり返してきたようだ。

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