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プロローグ
これは、英雄譚じゃない。
勇者が魔王を倒した。世界中に光が満ちた。
……めでたいこった。だが、それで何が変わる?
光が強くなれば影が濃くなる。魔王がいようがいまいが、路地裏の饐えた臭いは消えやしないし、誰かがどこかで惨めに死ぬのも変わらない日常だ。
俺が救えるのは、せいぜい自分の手の届く範囲だけだ。
いや、それすらも危うい。
だから俺は、世界の平和なんて大層なもんには興味がない。
目の前の賞金首を狩り、日銭を稼ぐ。俺のやり方はそれだけだ。
繰り返す、これは英雄譚じゃないんだ。
仕事が食える程度に世の中がざわついていたほうが、俺たち賞金稼ぎにとっては都合がいい。
……そう言っておかなきゃ、いちいちこのクソッタレな現実に付き合ってられねえんだよ。
三度繰り返す、これは英雄譚なんかじゃない。
綺麗事に唾を吐き、日常に転がる死体を跨いで、それでも不器用に「仕事」を全うする――。
そんなクソ野郎どもの、血と泥にまみれた抗争の記録だ。




