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8. 彼女の過去

 


「あっ……あぁ……」


 守護神を身体に受け入れたステラの喉から嗚咽が漏れる。大きく見開かれた目からは大粒の涙が溢れ落ちた。その瞳は何も映していない。身体を震わせると、その場にしゃがみ込んだ。


 その光景に誰もが息を呑み、静寂に包まれる中、ただステラの泣き声だけが召喚室に響き渡る。


 シアンは自身に発動無効魔法をかけ、魔法陣の中のステラに近づき、素早く抱き上げた。その速さは教員さえも超越していた。


「このまま救護室へ連れていきます」


 シアンは教員に伝えると返事を聞くこともなく、召喚室を出た。泣きじゃくるステラを、ただ黙って抱えたまま、足早に救護室へ向かう。


 救護室に着くと、腕の中で静かになったステラに視線を落とす。彼女は既に気を失っていた。そっとベッドに寝かせるとシアンは救護室の教員に事情を説明した。そして、授業へと戻る。


 ステラのことは心配だが、今、自分に出来ることは何もない。彼女が落ち着いたら話を聞くだけだと感じていた。


 彼女に、何が起こったのか。

 気になって仕方がなかった。



 〜・〜・〜



『ここは……?』

『やぁ。やっと目覚めたかな?』

『……貴方は?』

『ボクを覚えていない?』

『え?』

『よぉーく見て。キミはどうしてここにいるの?』

『私は……どうして……ここに、いるの……』

『思い出して。ボクの契約者』

『契約者?』

『そう。キミはボクと契約したんだよ』

『契約?』

『そうだよ。ボクの契約者、星 聖来(ほし せいら)

『……ほし、せいら……私の、名前……?』

『キミはこの世界で生き直したいと願った』

『……この世界?』

『そうだよ。星の花の神話を聴かせて?』

『……星の花? ……神話?』

『思い出して。待ってる。ボクはいつでもキミを』

『いや……待って! お願い、行かないで! 私を一人にしないで!』

『大丈夫。いつでもキミの側にいるよ』





「うっ……うぅ……」

「ステラ? 気が付いたのか!? ステラ!」

「ん……にい、さま?」

「そうだよ、ステラ」

「私……どうして?」


 よく知る天井。ここは……私の部屋? 学園にいたはず。


(どうして私室のベッドに寝ているのかしら?)


 ベッド脇に跪き、私の手をぎゅうっと握りしめていた兄が話し始めた。


「ステラは召喚魔法の講義中に倒れて救護室に運ばれたんだ。講義が終わっても目が覚めなかったからシアンが屋敷まで送ってくれたんだよ」

「シアンが? ……そう」

「いつの間に仲良くなったんだい?」

「え?」

「シアンさ。昔は、御世辞にも仲が良いとは言えなかったからね。学園に入ってからかい?」


 ヴェガ兄さまは、にっこり笑う。その優しい笑顔に癒されながらも私は眉をしかめてしまった。


「ほら、ステラ。可愛い顔が台無しだよ」


 そういって両手で握っていた私の手を片方離すと私の眉間に人差し指をぐいぐいと押し込んだ。それに頬を緩めると、兄は満足そうに微笑んだ。


「うん。ステラはその方が可愛い」

「兄さま」

「何だい?」

「私の守護神は、兄さまの守護神エオス様の夫婦神アストライオス様でしたわ」

「うん。感じ取ったよ。繋がっているからね」


 兄は私の頭をゆっくり撫でると続けて言った。


「でも僕は、もう一つ、感じ取ったよ?」


 ゆっくりと視線を私に向ける。


()()()()()?」


 優しい、優しい、視線だった。






評価をつけていただき、ありがとうございます!

本当に本当に嬉しいです!


『続きが気になる!』と思われたら、ブックマークや評価いただけると、とても頑張ってしまいます!


☆よろしくお願いいたします☆

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