7. 彼女の覚醒
神様の設定は、ゆるっと大目にみてください。
『ここは異世界……ここは異世界……』
と、いうことで。
ステラとの協同関係が結ばれた後。今までの疑問を一気に投げかけた。
「ずっと避けていたのは、なぜだ?」
「……え?」
「学園に入ってから俺のことをずっと避けていただろう? なぜだ?」
「いえ……避けていたわけでは……ないですわ」
「では、エラトス殿下とメリッサ嬢だけにするステラのあの態度の理由は?」
「ええっと……」
この二年、ずっと避けられていた。
ステラの行動を観察してはいたが、恐らくあの転入生の存在がなければ、今のように話すこともなく卒業していただろう。
口ごもる彼女に質問を続けた。
「何があった?」
「え……?」
「入学前に、何があったんだ?」
「――ッ!!」
ステラが目を見開く。
そして、すぐ眉間に皺を寄せると俯いた。
「俺に対して、悪役令息と言ったことがあったな? それに関係しているのか?」
あの時のステラは間違いなく、俺を怖がっていた。
ステラは顔を上げると、大きく息を吸って深呼吸してから言った。
「その話は今、ここではできません」
「わかった。また後日、改めて聞く」
「……それまでに心を決めておきます」
ステラはそういうと、クラスに戻っていった。
◇
午後の授業が始まる。
召喚室で魔法陣の授業だ。実践的な授業は基本的に二つのクラスが合同で受講する。
もう一つのクラスには第二王子エラトス殿下とラサラス、そしてメリッサがいる。
三年になると『召喚の儀式』を行い、その結果により卒業後の進路が決まる。
召喚した神とその守護力がどれほどかで変わってくるのだ。
召喚室は神殿のような造りになっており、中心に芸術的ともいえる見事な魔法陣が描かれている。
王族であるエラトスが先陣を切り、席を立つと中央の魔法陣へ優雅に歩みを進める。
その中心まで来て召喚魔法を唱えると、エラトスを包み込むようにぶわりと大きな風が巻き起こり、『法と予言の女神テミス』が姿を現した。
その神々しい姿に皆は絶句した。
テミスはエラトスに向かってふわりと微笑むと、すぅっとその身体に消えていった。
さすが王子というべきか。すべての所作に無駄のない完璧な姿だった。
生徒たちはどこか中性的な彼の、その麗しい姿に釘付けになっていた。
召喚の儀式は次々と続いていく。
シアンは『海神オケアノス』。ラサラスは『火の神ウルカヌス』。メリッサは『運命を司る女神の紡ぐ者クロト』。
そして、光魔法の遣い手であるアリサの順番がまわって来た。
彼女が魔法陣の中心に入ると、眩い光が放たれた。
彼女の元に現れたのは――『愛と美と性を司る女神アフロディーテ』だった。
その場にいた者すべてが、その姿に見惚れる。
自らの魅力を増し、神や人の心を征服することができるというその女神の力は本物だった。
それを見たシアンは、無表情ながらに眉を顰めた。
厄介な人物に厄介な神がついてしまった、と。
その様子に気が付いていたステラもシアン同様目を伏せた。
ついにステラの順がきた。
魔法陣に近づくと同時にステラは胸の鼓動が激しくなるのを感じた。
緊張とはまた違った感覚だ。なぜか、とても胸騒ぎがする。
ステラが魔法陣に足を踏み入れると、身体全体が光に纏われた。
それと同時に、ステラはすべてを思い出した。
――前世のすべて、を。
ステラに現れたのは『星空の神アストライオス』。
彼女の兄ヴェガードの守護神である『暁の神エオス』の夫婦神だった。




