22. 彼女の態度
夜会以降、ステラの態度がおかしい。特に、僕に対してだ。
屋敷ではあまり顔を合わせなくなったし、何故か二人きりになるのを避けているように感じる。
朝食の席で帰ったら、あの話をしようと伝えると承諾したので、二人でゆっくり話せると思ったら、帰宅したステラがシアンが来ると言った。
邪魔をされたような気がして、気付けば、シアンになかば八つ当たりのように接してしまっていた。自分のその態度に苦笑いし、シアンにステラの自分への態度について話すとその理由を知っているようだった。
これには、正直驚いた。知らないと思って聞いたのに、まさか本当にステラが話していたなんて。
それほどまでにシアンとステラの距離は近づいていたのか。
……良い事なのかもしれない。
兄である自分以外に信頼出来る人間がいるということは。それがシアンであれば、なお問題ない。
彼なら信用出来る。兄の立場から見ても優秀な男だ。家柄も問題ない。……婚約者としても。
ステラが第二王子と婚約を解消してから、釣書の数は増すばかりだった。それを考えれば、シアンがステラの婚約者になれば、落ち着くだろう。
ただ当の本人たちはその気がなさそうなのだが。
シアンとサロンに行くと、ステラから『この国に神話はないか』と聞かれた。確かに、この国の者は神の守護を受けているが、神話となると聞いたことがなかった。シアンに聞いても、やはり首を傾げていた。
ただ『星の花』については、シアンに思い当たるところがありそうだった。
ステラが明らかに落ち込んでいたので、いつものように慰めようと手を伸ばしたら、反射的に避けられた。避けた本人でさえも、驚くほどに。
結局、ステラはその理由を話してくれなかった。そして、シアンはそれを知っていて、黙っていた。
何ともいえない疎外感と寂しさを感じた。その場にいることができず、仕事を理由に席を立った。
◇◇◇◇
「どうしよう……兄さまを傷付けてしまったかも」
青ざめるステラに、何も言えずにいた。
ただ、先程のヴェガードの感じからすれば、彼は兄として本当にステラを……セイラを大切にしていると思う。心配する必要はないように感じた。
「心配しなくても大丈夫じゃないか?」
「え?」
「ヴェガードは、お前の兄として、妹をとても大事に想っていると思うが」
「……」
「それは、ステラも……セイラも、同じだろう?」
ステラは、ハッとしたように顔を上げた。
「そうね……そうだわ」
「ならば、今まで通りで大丈夫だろう?」
「うん、そうね。ありがとう、シアン」
「……いや、いい……」
『ありがとう』と微笑んだステラに胸が高鳴る。
またこの感情だ。言い様のない、感情。なんだ、これは?
俺は無意識に顔をしかめて、首を傾げていた。
「シアン? 具合でも悪いの?」
急に覗き込んできたステラの顔に驚いた。突然、顔をしかめた俺を心配したのだ。
「いや。大丈夫だ。そろそろ俺も帰るよ」
「ええ。今日はありがとう。助かったわ」
少し微笑んで、見送ってくれた。
プレアデス家に戻るとシアンは、いつものように『記録室』へ向かう。
今日、あった出来事を記録するために。ポケットから『記録玉』を取り出し、念写する。
必ずしなければならない、毎晩の日課だ。
念写が終わると水晶を眺め、記憶を確認する。
今日、ステラに確認して、わかった。
アリサ・ベルクルックス。
なるほど。彼女が主人公か。それであの絶対的に揺るがない態度なのか。これまで彼女にされた数々の態度に疑問を持っていたが、これでやっと理解できた。
そして、ステラのヴェガードへの態度や想いも。
ただ得体の知れない感情だけがシアンの心に靄をかけていた。
あの感情が何なのか。
まだシアンには理解することが出来ずにいた。




