情報収集は綱渡り
けっこう色々な事を教えてくれる。
そもそもそのような境界線などどうでもいいと、それ以上に下らない議論内容などこの世に存在などしていないと。高らかに宣言するが如く、エリーゼは何と言うこともなさそうに自然とした口調で話題を丸めこむ。
「まーね? 魔法使いと魔術師の違いなんてものは、そーんなに大したものじゃないんだと思うんだけれどねえ。ホント、いつもいっつもセンパイがエラそうに語るように、小難しい事じゃないと思うのよね。普通の小説と、ライトノベルの違いくらいどうでもいい事だと思わない? ねえ、アナタたち」
予想外の方向から川の水が流れるかのような自然さで、話題を吹っ掛けられたキンシは戸惑いながらも、
「え、えええ……、そうですね」
とりあえずの同意を並べる。
そのすぐ後に、
「そうなんでしょうか……先輩」
早口の小声でオーギに意見を求めてみた。
「知らねえよ、そんな事」
オーギはまず思ったままのことと、本心に基づいた意見をぞんざいに呟いて、それるかけていた話題を急いで元に戻す。
「そんな事よりも、どうでもいいんだよそんな事。それで結局のところ、あんたたちは一体何を目的として、ここまできて俺たちに話を聞こうとしてるだって。そのことを早く教えてくれよ」
苛立ちのあまり他人に対する最低限の礼儀までも失いかけているオーギ。
焦燥感に人格を崩されかけているのは他にもいたらしい。
うっかり自分の脳内に存在するがままの言葉を発しかけていたエミルは、さすがに大人として、如何にもらしくすぐに気を取り直し、為すべき本題へと方向転換をする。
「ああ、そうだな、オレなんかの超絶個人的曲解見解なんてものは、どうでもよくて。えっと、何だったかな?」
しっかりと取り繕った見た目をしている割に、エミルと言う名の男性はどうやら物事を複数にまとめて考えることが苦手らしく、自分側の情報も上手く引出しから見つけられないでいると。
「センパイ、ほら、あれですよ、A君の事々……」
エリーゼがくるくると巻かれた毛先に指を絡ませながら、動作に見合わぬ有能さで先輩魔術師をサポートする。
「ああ、そうだったな、そのことがあった」
後輩魔術師の有能さに感銘する暇もなく、エミルは正直あまり思い出したいとも思っていない事柄に対して、深々と疲労感の滲む吐息をこぼす。
しばらく面と向かって音声を交わしている内、キンシ達魔法使いはこのエミルと言う名の男魔術師がものすごく、もうすぐ健康を害すレベルにまで顔色が悪いことに察しが付く。
魔法使いの中で一番若いものがそのことに追及しようとした、やはりそれよりも早くエリーゼが補助の続きを行った。
「えー我々は今ね、とある犯罪に関係していると思わしき、重要参考人の行方を捜査している訳なのよ」
犯罪、重要参考人。
女性の明朗な口調にはおよそ似合わぬ単語の物々しさに、キンシの体の筋は自然と硬直をしてしまう。
「それはつまり、容疑者を探している訳で、その行き着く果てにここへと辿り着いたってことか」
部外者ならではの無遠慮さで、オーギは相手の立場をそれとなく要約する。
「それは、はたして信用に値するもんかね?」
窺うように疑いを向ける、若い男性の魔法使いに対してエミルは片眉を少し上げる。
「と、言うと?」
「いやな、何も自分の地元に対してこんなことを堂々と言えたものではないと、承知の上で言わせてもらうが」
オーギは申し訳程度の言い訳を前置きにして、体力の差に鎌をかけて次々と言葉を並べ立てていく。
「ここは、灰笛なんてもんは怪しい奴がいすぎて、視認できる人間の六割以上が奇怪な奴らで、それどころか仏の奴でも何かしらくるっているような。そんな場所で犯罪を犯した奴だけを見つけ出すなんて、はたして出来るもんなんかね?」
悪意があるともいえない、内情を探れば確実に存在はしているのだろうが、視界表面にそういった感情を見出すことは小難しい。
微妙ともとれぬ小憎たらしさで様子を見てくる魔法使いに対し、エミルは特に反応を示すこともなく淡々と開かせられる事実のみを掲示する。
「出来るも何も、その辺の事を何とかするのがオレ達の仕事なもんで」
軽口風に微笑む、魔術師の青い目は全く笑顔を含んでいない。
「今回はねえ、とても特例ばかりが起きていて、まさしく例外ばかりが起きていてね。ホントさあ、アタシも困りに困り果てている訳で」
エリーゼは愚痴ともとれぬ口調にて、馴れ馴れしさを演出する挙動を作った後に。
「まあ、ね。この町で特別なんてものが、一体どこに存在しているのかどうかも怪しい所だけれどー」
世間一般で言う所のキレイに属する形状に整えられている睫毛を、どこか気だるげに伏せると。
すぐに空気を換えて、事務的に明るい説明の続きをする。
「今から話すことは秘密中の秘密、まだどこのマスメディアにも、おそらく高確率で漏出していないと思われるほどに、機密性の高い情報ですので。出来得る限りでご内密にお願いしますね……」
キンシが素直に固唾を飲んでいる、その横でオーギは呆れたように目を細める。
「絶対の絶対に、誰にも話しちゃいけませんよ……」
不必要なまでに秘密性を誇示するが故に、むしろ逆に安っぽくなる語り口調のまま、エリーゼははちきれんばかりに膨らみを帯びている胸元から何かを取り出した。
もしかして、口紅色の弾丸かも?
キンシは場違いな期待を抱いてみたが、当然の如くそのような妄想が実現することは無い。
「とりあえずは、これをご確認してください」
胸の隙間、上着とシャツの間にあるポケットから取り出された物。
それは一枚の写真だった。
手のひらほどの大きさ、軽く長方形に切り取られている紙切れ。そこにはカラー材で染められた像の荒い絵が映し出されている。
「これは、えっと……誰だ?」
差し出された情報に対し、オーギはとりあえず思ったままの事実を述べてみる。
エリーゼはそのような反応に対して特に何の感想も抱くこともせず、どこか錆びついた馴れ馴れしさの延長戦にて事情説明を続けた。
「先日ね、我々の関係者が、つまりは灰笛城の魔術師連合に関連している人間と言うことになるんですが……」
言葉を濁すエリーゼに対し、キンシが特に大した思惑もなさそうな声音で介入してくる。
「それって、やっぱりエリート中のエリートな魔術師ってことになるんでしょうか?」
キンシとしてはそんなに大した問題でもないと思い込んではいたのだが、しかしエリーゼの方は困ったように首をかしげる。
「うーんと? そういう訳でもないんだけどね」
相手の無知加減にどう対応すべきなのか、少しの間悩んだ後。
割とすぐに諦めをつけて、とりあえず質問内容だけを先送りにした。
「その辺の事情については想像の内にお任せしますが。とにかく、広い意味においてアタシとセンパイに関係が強い方がいまして。その人がですね」
「ふんふん」
「殺害されたのですよ」
「へえ、……っえ?」
緊張感を抱かせないゆったりとした、童謡がとても似合いそうな声音の上にぽつりと登場した。
どうにも前後関係が見いだせない、読んで字の如く殺伐とした単語。
キンシは状況が読み取れずにポカンと口を開けてしまう。
「今、なんと?」
「だからね、私たちの関係者が殺されたのよ」
およそ平和を感じさせることのない話題。
二人の若い魔法使いが話題の流れについていけず、それに構うことなく女の魔術師は平然とありのままの事実を口にする。
「その殺害について、深く関係している人物がこの灰笛まで逃走を図った痕跡が確認されてね。そういう訳だから自警団の中でこの区域を担当している魔術師の中で、アタシとセンパイが上方から直々にご指名を受けたってワケ」
エリーゼは殺伐とした内容を一定のリズム感に乗って話し終る。
差し出した写真を魔法使いたちから離す。
その動作には何の感慨もなさそうで、それ故に業務的に安定した無感情が保たれているようで。
キンシの視線は女魔術師を支点に、仕舞い込まれる写真へずっと釘付けとなっていた。
何か、何か声だけでも発するべきだったのか。魔法使いの中で後悔が生じる。
せめて、「もう少し写真をよく見せてください」と、そのぐらいのことを言ってみるべきだったのか。
あれやこれや考えても意味はなく、実際の現実においてもその葛藤は無意味でしかなかったらしい。
「やはり非魔法媒体だといまいち詳細さに欠けますね」
写真の像を自分の方にじっと向けるエリーゼは、些細なる失態に若干気まずそうな笑みを浮かべ。
そして先輩魔術師の方へと普遍なる笑顔を向ける。
「センパイ、せっかく貴重なお時間をとらせているんですから、もう少しこちらも誠意を見せようじゃありませんか?」
そして胸元にしまおうとしていた写真を、そのまま自身の先輩である男魔術師へと差し出した。
恵土、神坐ー、洲van手、照れ遍と、ニート、止め。
刑事古図米ジーンの様な城織田トホーダン。
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弁沿い瑠版反応をー社生まんブレ率とコート。
肌を分ける線を通して鮮血が滲み出てくるゆっくりと。
胸は薄く染められる。
衝動は徐々に大きくなり私は息を荒くする。
イメージは消滅しない。
刃物をそのままに奥へと押し込む。
刃物で彼女の体を蹂躙する。
思考が戻ってくる途端頭が狂い始める。
銃弾で痛みが私の思考を共に心をブチに浮いた。
これは意味に杭糸尾をです、どうして困難事を考えられるのか。
だがこれは確かない事実です、欲望はケツ栄キロで私の小k路を巡りに目ぶっていて。
(計画書の一部、モア氏訳)




