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ハリを探せ、眼鏡は探さないで

ビックリドッキリ機械

 無機物であるはずのそれは人間の意思とは離れた動作で、鉄の箱は鎖を動かしながらゴトンゴトンと音をたててキンシ達の横を通り過ぎて行く。


 鎖によって支えられる、その姿はまるで海の底を移動するタコのように。それ自体が一つの生き物のように動いている。


 ミッタは横目で、じゃらんじゃらんとのっそりと、通り過ぎて行く鉄の箱の中に収められている品々へと視線を注ぐ。


 箱の中には石が、薄墨色の空気から削り取られた石だと思われる物体が、すでに底が見えないくらいの量でぎっしりと詰め込まれていた。


 基本的には路傍の石と同様の、踏み潰しても何の躊躇いも持てなさそうな色合いの粒。しかしその中に所々、キラキラと透き通る光が見え隠れしている。


 あれは、一体? 


 ミッタはもう少し詳しく見たかったのだが、そんな意図とは関係なく鉄の箱は勝手に、その重たそうな体を時々不安定に揺らしながらいずこへと、別の作業現場へと去って行った。


 それでも名残惜しく、ミッタは箱の後を追おうとしてトゥーイの背中で蠢く。


 小さな鼻腔から吹き零れる鼻息が温かく空気に混ざる。


「あんれ、これはまた」


 箱に意識を注いでいたため、ミッタは自分のすぐそばまで近づいていた大人の姿に気付くことが出来なかった。


「まー! まあまあ、かーいらしーもんを引っ提げて、どうしたってんだ。なあ? トイ坊よ」


 それは十分に中年を感じさせる外見年齢をしている、メラニン色素の濃い人間であった。


 花も尻尾も、耳も生えていない、オーソドックスな人間の形状をしている。

 この場所にいるということは魔法使いの一人であることは確実だとしても、突然自分の視界に登場した初めて見る大人の人物に、ミッタは体を大きく震わせてリアクションをしてしまう。


「ええ? なんとまあ、お前の隠し子か?」


 何の変哲もない男性の、年齢を感じさせる掠れと独特の抑揚をつけながら、大人の魔法使いはにこやかにトゥーイに話しかける。


「んー、それにしちゃあ全然、全くもって顔が似てねーけど……?」


「やだなあ旦那、違いますよ、それはとんだ勘違いですよ」


 若干無遠慮に二人を眺めまわす彼にキンシは苦笑いをしながら話しかける。


「その子は……、えーっと……」


 同業者にこの状況をどう説明しようものか、キンシがあからさまに言葉に迷っている、その間に。


「まあ、何でもいいけどなー。大人しくしてないといけないぞ、おちびさん」


 大人の魔法使いは勝手に会話を締めくくり、最後にさりげなくミッタの頬をぷにぷにとつつき。


「あいつらは子供の泣き声とか涙が大好物って噂もあるかな、喰われたくなければ良い子にしていなよ」


 これ以上の散策も追及も、そして訂正も受け付けることもなく自分の作業へと向かって行ってしまった。


「あ………」


 一方的に去っていく大人、キンシにとっては彼もまた先輩の一人に当たるのだが、その大きな後姿を眺めながら、キンシは物足りなさそうに唇をもぞもぞと。

 

「まあ、いっか」


 しかしすぐに見切りをつけて目を逸らす。


「相変わらず灰笛の魔法使いってのは、どうにもこうにもよく解らないな……」


 面積の限られた足場の上に視線を降り注ぎ、滴のように零れ落ちる独り言は誰に向けられたものでもなく。


 そのまま何を言うでもなく、とりあえずオーギの向かった場所を探して足を動かす。


 風がうなる現場、時々思い出したかのように揺れる足場の上でしばし無言の歩行。その最中にようやく、それは先ほどの魔法使いが大きな声を出したことが主に関係しているのだが、周辺で働いている魔法使いたちがキンシ達の姿を認識し始めていた。


 たくさんの大人の目線、こんな空の上にまだ全身にしどけなさを残している幼子の姿。己の仕事に集中していながらも、人々は好奇心と異物感による視線の騒がしさを抑えきれず、ミッタは少しだけ居心地が悪くなる。


「……そうだ、ねえミッタさん」


 枝の上を進み、情報へ向けて階段を上るように足を動かしていたキンシが、樹の中でもそこそこの高さに辿り着いたところで、不意にとまではいかくとも意味ありげにキンシがミッタの方へ向く。


「せっかくだから、……ええ、そうですとも。せっかく魔法鉱物の現場に来たのです、あれを見ずにして去ることが出来ましょうか?」


「しょう? (‘‐‘?)」


 脈絡もなく明朗な声音で何かの提案をしてきたことに、ミッタが意味を理解できるよりも先にキンシは早速、善は急げと言わんばかりに行動を開始する。


 ミッタと、そしてトゥーイが言葉もなく見守る中でキンシは、


「あーっと、どこにしまったっけな……?」


 ごそごそと鞄の中をまさぐり始める。


 侵入する指に掻き乱されてぐちゃぐちゃと、鞄の中身が主に紙っぽい摩擦音を立てる。


 目的のものがなかなか見当たらず、表情に一抹の不安が生じるよりも先に。


「あ、ありましたありました、見つけましたよ」


 目当ての物を察知した指が、鞄の中に渦巻く混沌の内からそれを引っ張り上げる。


「小さいからなかなか見つけられないんですよね、でもこれ以上大きなのを使うと痛そうですし……。いやはや、悩み所です」


 鞄から出されたそれは、

書くつもりはなかったんです、しかし書いてしまいました。テヘペロ

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