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63 きんだんの・・・、きんだんの?









「ふふふ・・・・。」

私は一心不乱に白い液体をかき混ぜます。


「うふふ・・・・。」

今の私に怖い物などありません!



腕が少し痛くなって来ましたが、これからの幸せを思うのであれば耐えられない事などありません!






「うふふふふ・・・!」

・・・出来ました!出来ましたよ!



「私の愛しい生クリームちゃん!」

頬ずりしたくなるほど真っ白なクリームに、思わず笑顔になります。




「アスラさんは今日から夜番のお仕事です!ソールさんも夢の中へと旅立っています!

・・・さぁ!これからが私のパーティータイムですよ!」

1刻以上前にソールさんは夢の世界へ旅立っていますし、つい半刻前にアスラさんの出勤をお見送りしました。私の時間は始まったばかり、まだまだこれからなのですよ!



あまり大きな声で言えませんが、私はお祭り気分の大フィーバー中です!

今、このお家で起きているのは私だけなのですよ!

お家の中の明かりは最小限にしてありますし、準備が終わってしまえば1人でムフフな時間を過ごせるので問題はありません!



お昼のおやつの時にクレープを作って、クレープ生地を大量に生産しておいたおかげで、私の目の前には私の大好きな「ミルクレープ」が出来上がりました。

それ以外にもロールケーキや生クリームのサンドイッチなどなど・・・。



目の前に広がる「生クリーム尽くし」は、夢のような光景です!




今日、この日をどれだけ待ち望んでいたか!





「まずは、生クリームたっぷりのロールケーキからいただきましょう。」

そう言ってロールケーキにフォークを伸ばします。


「・・・・。うん。間違いない!」

口に入れた瞬間のロールケーキのスポンジと、生クリームのハーモニーがとても良く合っていて美味しいです!


その次に手を伸ばすのはサンドイッチです。

今日はこの為だけに滅多に作らない「ミルクパン」を作りました。普段の食事用に作るパンとは違って、ミルク多めの甘めのパンです。このパンと生クリームで作る「生クリームサンドイッチ」は至高の組み合わせでは無いのでしょうか?このサンドイッチは果物が入っても美味しいので、今度生クリームが手に入った時には果物も買っておきましょう。


・・・そして、メインディッシュのミルクレープちゃん!

豪華に20枚のクレープ生地を使ったミルクレープちゃんは、見るだけで心がときめきます!


「・・・ついにこの時が来てしまいましたね!」

私はミルクレープちゃんにナイフを入れてお皿に切り分けます。ウエディングケーキ入刀のそんな気分です。


・・・私1人ですけれど。



切り分け、お皿にのったミルクレープちゃんの可憐な姿に思わず笑顔になります。





「ふぉ~~~~!」


そうっ!そうなのです!




・・・・・?




「・・・・・・おかしゃん・・・?・・・そーるのは?」

恐る恐る声がした方に視線を向けると、眠たそうにお目めを擦りながら不思議そうに(私の)ミルクレープちゃんを見ているソールさんがいらっしゃいます。・・・あれ?



「そーるさん・・・?」

「?あい・・・?」


ソッとソールさんのほっぺをムニムニします。うむ、良いムニムニです。


「ふぉ~~。おかしゃん、どうしたの~~~?」

ソールさんは眠たさで反応が鈍っているのか、パタパタと手を動かしています。



「・・・ソールさん、よい子のソールさんはもうお休みの時間ですよ?」

「ぴょっ!?」

私はソールさんにそう言いますが、ソールさんは私の言葉に衝撃を受けた後にソファーによじ登って来ました。



「そーるも!」

ソールさんはそう言って私を見上げて来ますが、もう深夜の1刻です。


「ソールさんは、「そーるは、だめでしか・・・。」

ソールさんの言葉にハッとしてソールさんを見ると、大きな瞳をうるうるとさせて私を見ています。



「そー「だめでしか・・・?」

私が食べようと切り分けたミルクレープを、そっとソールさんに渡します。


「・・・ありがと!」

そう言ったソールさんが、満面の笑顔を浮かべてミルクレープを食べ始めます。


「!おいしいの!・・・おかしゃん!おいしいでし!」

ソールさんは「うまうま・・・!」とミルクレープを1口食べて、ご満悦の様です。むしろ、興奮してしまいましたね・・・。



・・・あざと可愛いソールさんに敗北してしまいましたが、後悔はしていません。




気を取り直して、自分用にお皿に乗せたミルクレープを1口食べます。うま~~。

















「・・・・・それで?」

今現在、絶賛アスラさんから状況の説明を求められたので説明中です。



・・・私1人が。




実は、私とソールさんの「生クリームパーティー」は朝方まで続いていました。


あの後、追加の生クリームに大ハッスルした私達のテンションはおかしな方向に突っ切ってしまって、気が付いたら時計の針は朝の5刻を示していました。時計を見て驚きましたが、もうこのまま起きていてアスラさんを迎えようと思って開き直った私はテーブルの上を片付けたのですが、その時にソールさんを見たらソファーからゴロ寝スペースに移動していました。・・・そう、ソールさんはソファーから降りて、マットの上をコロコロと転がりながらクッションの中に埋もれて行ったのです。


少し早いのですが、リビングの鎧戸を開けて朝の日差しをお家の中に入れました。お茶を飲んで気が緩んだのでしょう。





お仕事から帰ってきたアスラさんに揺り起こされるまで眠ってしまっていたようです。





その時に、アスラさんがアレコレと心配をしてくれて、そのあまりの様子に心苦しくなった私が(ソファーの上で)土下座をしながら謝罪をして今に至った訳です。



ソールさんですか?ソールさんはゴロ寝スペースのクッションの中からこちらを見ています。


・・・大丈夫です。私は覚悟を決めたので、アスラさんからのお説教を耐えて見せます!

ソールさん、そのままそこから私の勇姿を見ていて下さい!



・・・決して出てきてはいけませんよ!



「そうですね、フィーナはいつも私達の為に頑張っていますし・・・。

ですが・・・。」

アスラさんの言葉はまだ続きます。開始から既に1刻は経っています。アスラさんの背後にあるクッションの塊の中から「きゅるる~。」と切ない音が聞こえてきます。

・・・耐えて!耐えるのよ!ソールさん!


朝方まで一緒に生クリームパーティーをした仲でしょう?

その小さな体の燃費の悪さに改めて驚きますよ!?



「・・・私はフィーナにいつもお世話になっていますし、フィーナも息抜きは必要でしょうが・・・。」

アスラさんはまだまだ止まりません。


私の体勢は土下座に驚いたアスラさんによって戻されています。ソファーの上での土下座だったので大丈夫だと思ったのですが、やっぱり土下座は問題だったようで最初の言葉は土下座に関する内容でした。


きゅるる~・・・・。

きゅるるるる~・・・。


こんな切ない音が響くこの状況に、アスラさんは私の手を握り苦笑いを浮かべ始めます。



「・・・ソール、そろそろ出てきただどうだ?」

アスラさんはゴロ寝スペースを見ないでそう言います。


ですよね~。ここまでハッキリとした自己主張されたら、気付いてしまいますよね。



ソールさんは、お腹が空きすぎて切なかったのか「ふえぇ~~。」と言いながらアスラさんの足にタックルして来ましたが、そのままアスラさんの隣りによじ登ってきました。


「おかしゃんをおこらないで~~!おいしかったの~~!」

ソールさんは私への嘆願なのか、生クリームパーティーの感想なのか良く分からない内容をアスラさんに言います。



「そーるもおいしかったの~~~。」

うりうりとアスラさんの背中に頭を押しつけながらソールさんが言っている事は、生クリームパーティーの事なのでアスラさんは益々苦笑いになって行きます。


私はソールさんの「潔さ」に笑ってしまったので、アスラさんは困ったようにしてしまいます。




「そうですね・・・。それならば、フィーナ。次の休みの時に私と出掛けませんか?

・・・ソール抜きで。」

何を思ったのか、とても素敵な笑顔でアスラさんが私に言います。

内容がイマイチ噛み砕けなかったのですが、何か大きなお買い物があるのでしょうか?


「ぴぃっ!」

ソールさんがショックを受けた様にアスラさんに抱きついています。


「良く考えてみたら、ソールはいつもフィーナと一緒に居ますよね。私もフィーナと一緒に居たいです。

・・・ソール抜きで。」

「ぴぃっ!」

アスラさんがソールさんに対して言っている様に聞こえるのですが、アスラさんのその手は私の手を掴んでいますし、何だか近い位置に座っているのでアスラさんの視線が私に向いているのがとても良く分かります。


「そーるも!そーるもいっしょ!」

ソールさんはアスラさんの後ろに立ち上がって背中に抱きつきます。



・・・アスラさん、お父さん大好きっ子のソールさんにそれは耐えられないと思いますよ・・・?



「お出掛けですか?何かお買い物ですか?」

いつものお買い物ならばソールさんが一緒でも良いと思うのですが・・・?


「いえ、帝国劇場の方で演劇が公開されているようなので、そちらを見に行こうと思うのですが如何でしょう?」

アスラさんの言葉に一瞬付いて行けませんでしたが、何て言いました?



・・・帝国劇場ですって!?



「えぇっ!楽しみです!」

素直すぎる私のお口からは「肯定」の言葉が出ています。今はどんな公演が行われているのでしょう!

楽しみ過ぎて、ドキドキします!


「ぴぃ~~~!!!」

私の言葉を聞いてソールさんは驚いたように私を見ます。



「あぁ、ソールならば大丈夫ですよ。両親が『何かあったら預かる』と言ってくれていましたから、その日は両親に任せます。」

ふと、私がソールさんを見た事にアスラさんがそう言います。アスラさんの言葉にソールさんのしがみ付いている手が強くなっている様に見えるのは、気のせいではありませんよね?騎士の制服がシワシワになってしまいそうです。



義両親が一緒ならばソールさんも安心でしょう。

・・・って言いますか、義両親には根回し済みなのですね。



帝国劇場ってどの辺にあるのでしょうか?観劇は久し振りなので、とっても楽しみです!















仕事から帰って来たアスライールは、ゴロ寝スペースのクッションの中に居たソールの事も気になったのですが、フィーネリオンがソファで寝ていた事に驚きました。(体調不良だったら大変なので)起こすかどうか暫く悩んでいました。なので、アスライールはソファーで眠っているフィーネリオンを起こすのに多大な精神力を使いました。


フィーネリオンとソールの「生クリームパーティー」はとても羨ましかった模様です。




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